コロナ禍の世界におけるEコマース:労働者と組合の課題

UNIが委託して実施されたCOVID-19のEコマースへの影響に関する最新の調査では、パンデミック期間中のオンライン小売の勝者と敗者、また労働者と労働組合への影響が明らかになった。

FESの支援を受けて実施したこの調査では、オンラインストアのみに特化したアマゾンのようなピュアプレイヤーと、従来型の小売業として実店舗を持ちながらも、一体型もしくは別のオンライン販売チャンネルを開発してきたカルフールやH&M等のハイブリッドプレイヤーにも注目している。

予想通り、コロナの影響で人々は密を避けるようになり、ロックダウンによって何百万もの人々が在宅を余儀なくされたため、通販業界はコロナから大きな恩恵を受けた。販売数・販売量、収益は大幅に増加した。アマゾンの国際小売部門は初めて黒字となり、大手ピュアプレイヤーのほとんどが2020年の第2四半期に10~20%ポイントの上昇となった。

しかし、ネット通販の楽天は、コロナの影響を大きく受けた旅行や娯楽チケット販売への依存度が高いため、マイナス(3.7%ポイント減)の影響を受けた。

多くの場合、ピュアプレイヤーの業績は、オンライン注文の急激な需要増加に対応できるインフラを持たないハイブリッドプレイヤーの業績を上回っている。ファストファッション小売企業の多くは、オンライン販売数を2~3倍に増やしたものの、パンデミック時の店舗閉鎖を補うには十分ではなかった。

同様に、大手ハイパーマーケットチェーンによるEコマースへの投資も、商品配送に膨大なリソースを要するため、利益を上げることはできなかった。報告書によると、食品小売の一般的なラインモデルのほとんどがマイナス利幅で経営されていることがわかった。にもかかわらず、市場の投資家圧力と、利益が出るようになる日に備えて、オンライン小売への投資を続けている。このパラドックスの一例が、英国のオカドだ。実店舗を持たないオンライン専門のスーパーマーケットで、2000年に設立以来、まだ利益を上げていないが、欧州第2の高評価を得る食品小売業者になった。

報告書は、コロナ感染拡大以来、小売業者は将来の危機に備え、特に倉庫やレジにおいてロボット化や自動化の投資を増やすだろうと予測する。労働者の仕事に影響が及ぶのは避けられないだろう。

在宅勤務が増えたことで、クラウドサービスの利用が加速し、アマゾンやアリババのようなピュアプレイヤーの利益につながった。これらの企業は余剰資金を、市場シェアを独占するためにつぎ込むことができる。略奪的な価格設定により競合他社を駆逐し、独占体制を築いていく可能性を、報告書は警告している。

Eコマースや自動化、デジタル化、AIは未曽有のレベルまで成長を高める可能性を秘めているが、それによって得られた利益がいかに分配されるかについては懸念がある。通販業界のピュアプレイヤーからのデジタル配当金は、ほぼ独占的に経営者、株主、ベンチャーキャピタルファンドに回収されている一方で、この業界の仕事は不安定、低賃金、社会的保護が無いことで悪名高い。更に、テック大手企業の多くが反組合的方針を採っているため、こうした労働者の組織化は困難である。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、次のように主張する。

「この報告書から、なぜEコマースにおける労働者の組織化と、利益の公平な分配を要求する取組みの強化が必要かがあらためてわかる。放置すれば、通販業界に底辺の階級が生まれ、何百万もの労働者が人間らしい生活を送れず苦境に陥ることになるだろう。Eコマースが成長している今こそ、我々は、まともな賃金が払われ、有給病気休暇のような社会的保護のある、質の高い仕事を求めて闘う必要がある。それがコロナ感染拡大を防ぐ鍵にもなる。」

UNIは、個人用防護具支給、安全ルールの徹底、危険手当、感染時・自主隔離時の有給休暇付与等、エッセンシャルワーカーのために不可欠な権利を要求するキャンペーンを展開している。

報告書は、UNIが委託し、ルーマニアのシンデックス社がまとめた。

UNI Commerce E Commerce 2020 (full version in English)