インド郵便のデジタル化による郵便労働者へのストレスと影響

インド郵便の近代化は1990年代初頭に始まった。当時、書状の取扱量は1日あたり約2000万件だったが、以来、通信技術の利用増加によって、現在は1日あたり100万件に満たないほどに減少した。インド郵便は、取扱量減少に伴う収益減少を打開すべく多くの補助的サービスを導入したが、期待されたほどの収入を生み出すことはできなかった。それにも関わらずインド郵便は、顧客経験と収入を改善するため郵便部門のサービス革新を止めなかった。

最新の取組みは、2017年にDARPAN(新しいインドに向けた、農村部の郵便局におけるデジタル技術の促進)という形で実施された。これは、サービスの質を改善して付加価値を与え、さらに銀行口座を持たないインドの農村部に暮らす多くの人々の「金融包摂」実現を目的とするプロジェクトである。インド全土の12万9千か所の郵便局に低電力の設備を整備するため、このプロジェクトに対し政府から1億4千万ルピー(約185万米ドル)が投じられた。これまでに、4万3千以上の郵便局がDARPANプロジェクトに移行した。

最近のデジタル化の取組みによって、インドの郵便サービスは様々なレベルで影響を受けている。同時に、民間企業との競合や、アマゾンやフリップカート等の通販大手企業との協力・提携の場も開かれた。しかし、こうした変化の裏には労働者への影響がある。

課題は新たな技術と従業員のストレス

UNIに加盟するインド郵便労連(FNPO)は、これらの取組みには、農村と都市間の格差解消に向けた金融包摂の拡大という大きな目的があり、また従来の郵便事業からの収入減に対処するために導入されたものだと考えている。とはいえ、人々へのサービス提供義務と、新たなサービスの裏にある商業的意図は本質的に相いれないことから、その結果は余りはっきりしない。

FNPOはまた、デジタル化の移行により生じる大きな問題は、導入されたサービスを支えるためのインフラが十分に整っていないことだと指摘する。今日に至るまで、70〜80%の郵便局しかインターネットに接続できていない。また接続できたとしても、多くの場合、速度が遅いため、サービス提供のプロセスに影響を及ぼしている。

また新たなサービス導入によって、郵便労働者は、預金、証券、顧客への社会保険支払いに関連するデジタル決済業務を行うことが求められた。しかし、これらの業務の多くは、最低の手数料もしくは付随的な費用で行うことが期待されていた。更に、サービス提供の質を支える研修も不足していた。その結果、郵便労働者がストレスを抱える事態になった。

特に金融取引において顧客に円滑で便利なサービスを提供する目的で、郵便局のバックエンド・オペレーションのワークフローを改善するため高負荷のソフトウェアをいくつか導入した。しかし、新しい技術の導入により、手作業の取引記録といった事務作業がなくなり、郵便局の労働者の30%の余剰に直結した。

シバクマールFNPO書記長は、「労働者は皆、不十分なインフラと研修不足で行われたシステム近代化のためにストレスを抱えている。また、仕事がなくなる可能性についても心配している。デジタル技術の利用を反対するわけではないが、顧客と労働者の両方に有益でなければならない。とりわけ、新型コロナウィルスのパンデミックの間、組合員のストレス度と労働負荷が一層高まった」と訴える。

UNIはFNPOの闘いを支援する

デジタル化は顧客や社会だけでなく労働者にも利益をもたらすように利用されるべきだと主張し、UNI世界郵便・ロジスティクス部会は、オンラインの意見交換を通じて、デジタルサービス利用のメリット・デメリットのバランスを図っている加盟組織のベストプラクティスを共有してきた。ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「FNPOが危機の間に労働者を守るための闘いをUNIは全面的に支持すると共に、インド郵便におけるより良いデジタル化のアプローチをFNPOが交渉するための戦略の策定を支援していく」と断言した。