
6月29日、「メンタルヘルスと若年労働者」をテーマに、UNI世界青年委員会ウェビナー第2弾が開催された。
最初に、WHO(世界保健機関)のアイシャ・マリカ博士及びノルウェーのライフマネジメント・公衆衛生センターのイングリッド・ブルン氏から、メンタルヘルスの概要について聞いた。
アイシャ博士は、若年層は精神的に影響を受けやすく、支援も行き届かない中、コロナ禍で状況は悪化しており、若年層の自殺の半分はメンタルヘルスが原因だと述べた。「仕事との関連では、精神的に不健康な労働者は本人の生産性だけでなく職場全体にも悪影響を及ぼす。その解決には、国連やWHOが推進するような世界各国を関与させるアクションが不可欠であり、コミュニティサービスを強化したり、職場においてはメンタルヘルスへの偏見をなくす取組みを行ったり、皆それぞれにできることがある。」
イングリッド氏は、若年層の精神的苦痛の要因や、成人のメンタルヘルスとの違い、その後の人生への影響等を概説し、コロナ禍で孤立感・否定的思考が強まり、かつ適切なケアが受けにくい状況にあると指摘した。こうした若年層をメンタルヘルスから守るには、オープンなコミュニケーションとメンタルヘルスに関する正しい情報、若年層に寄り添ったサービスが重要だと述べた。
続いて、ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長は、コロナ禍がメンタルヘルスに及ぼす影響についてジェンダーの視点から分析した。無給の家事労働の他に、登校できない子供の世話が加わり、負担が倍増するが、女性の仕事だと思い込み助けをなかなか求めない。家庭内暴力の被害者である場合、加害者から逃れられない。こうしたことから女性の方が男性より影響を受けやすく、コロナ禍で状況は悪化している。
ベルナデット・レイズUNI Apro青年委員会議長(フィリピン銀行労組)は、アジア太平洋地域の若年労働者がコロナ禍により受けている精神的ストレス(失業、仕事の不確実性、収入減、休業要請、賃金支払いの遅延等)により、恐れ、不安、鬱等に陥り、自殺に至る例もあると述べた。既に警戒すべきレベルに達しており、組合は組合員及びコミュニティを守るため手を差し伸べなければならないと主張した。
チェコの東欧組織化センターのオルグである、パブラ・ジェンコバによれば、コンタクトセンター労働者はコロナ禍のためテレワークを強いられ、オンラインアンケートでもストレスの増大やメンタルヘルスの悪化が浮き彫りになった。しかし、メンタルヘルスはタブー視されており、相談すら躊躇するため、オンラインカウンセリングを実施しても誰からも支援の要請がなかった。そこで、「メンタルヘルスの問題は異常なことではなく、誰にでも起こり得るもの」と意識を変えさせ、自由に話せる雰囲気を作ることが重要だと述べ、支援を必要とする労働者にどうアクセスし、どう支援していくかを検討していると報告した。
英国通信労組(CWU)のルーク・エルガーも、「自分が弱いから、自分に問題があるから、メンタルヘルスに異常をきたすわけではない」と述べた。CWUでは若手が主導してメンタルヘルス対策チームを設置し、700人の職場代表がこれまでメンタルヘルスの研修を受けたという。身体的健康を維持するため、自宅での運動や十分な睡眠も奨励し、「みんなで困難を克服していこう」というメッセージを発信している。研修を受けた職場代表が身近におり、組合は不安を抱える他の人の問題に耳を傾ける体制を整えている、と知らせることが重要だと述べた。
最後に、マルタ・オチョアUNI青年委員会担当局長は、コロナ禍で更に浮き彫りになったメンタルヘルスの問題は、孤立を防ぐコミュニケーションや、メンタルヘルスに関する正しい情報、タブー視や偏見をなくす努力等、組合が解決に向けて取組むことのできる課題だとまとめた。