
英国のメディア・エンターテインメント産業の労働者を組織する組合「Bectu」が2025年に実施した大規模調査によると、英国の同産業に従事する労働者の10人中6人近くが、過去12ヶ月間に不安や抑うつ感を抱いたと報告しており、これは舞台裏で深刻化するウェルビーイングの危機を如実に示す指標となっている。
長時間労働、過密な制作スケジュール、不安定な雇用、そして心理社会的リスクが、世界中の映画・テレビ産業の担い手に依然として多大な負担を強いている。ストレス、疲労、バーンアウト、不適切な行為、薬物乱用は、長年この業界に存在するリスクであるが、COVID-19パンデミックや#MeToo運動以降、より大きな注目を集めるようになった。
若年労働者は特に大きな影響を受けている。Bectuの調査によると、35歳未満のフリーランスの63%がメンタルヘルスの問題に苦しんでおり、10人中6人が職場でのいじめやハラスメントを実際に経験している。
変化をもたらす手段としての「親密なシーン」の調整と団体交渉
世界中の労働組合や雇用主は、具体的な措置を講じて対応している。スウェーデンでは、スウェーデン映画・テレビプロデューサー協会とスウェーデン舞台芸術・映画労組が共同で、映画およびドラマ制作における親密なシーンに関するガイドラインを策定し、プロデューサー、監督、俳優、スタッフに指針を提供している。オーストラリアでは、オーストラリアのジャーナリスト、メディア関係者、パフォーマー、クリエイターを支援する労働組合MEAAが、スクリーン・プロデューサーズ・オーストラリア、オーストラリア監督協会、オーストラリア・キャスティング・ギルド、オーストラリア脚本家協会と提携し、舞台および映像作品における親密なシーンに関するガイドラインを作成した。
フランスでは労使双方がさらに踏み込み、ジェンダーに基づく暴力や性的暴力に直接対処する労働協約の改正案を交渉し、映画業界向けには2024年5月に、テレビや映像業界向けに2025年3月に署名が行われた。各協定では、明確な定義、予防策、およびジェンダーに配慮した安全衛生戦略が定められている。フランスの国立映画基金である国立映画・映像センター(CNC)も、性差別的暴力および性的暴力の防止に関する雇用主および制作スタッフ向けの研修を必須とすることを、を、資金提供の条件としている。
欧州の社会パートナーがリスク評価ツールを改定
欧州レベルでは、テレビ・映像業界の社会パートナーが、重要な労働安全リソースの改訂を進めている。EUの支援を受けて2019~2021年にかけてこの分野のために開発された「オンライン対話型リスク評価(OiRA)」は、ストレスの予防、不適切な行為、職場での暴力、親密な場面を含む心理社会的リスクを組み込むべく改訂されている。改訂版は2026年秋に公開される予定だ。
ヨハネス・ストゥディンガーUNI世界メディア部会担当局長は、「これらすべての事例が示しているのは、強力な社会対話とジェンダーに配慮した団体交渉の必要性だ。業界のすべての労働者が、ハラスメントのない、公正で安全かつ健康的な労働条件を享受できることが、議論の核心となるべきだ」と述べた。
UNIは世界中のメディア・エンターテインメント産業の労働者を代表しており、使用者、放送局、公的資金提供者に対し、キャストやスタッフのメンタルヘルスと安全を、制作における譲れない条件とすることを求めている。