スポーツの人権団体、虐待の被害に関する新たな報告書

2023年5月中旬、スポーツの人権団体「スポーツ・アンド・ライツ・アライアンス(SRA)」は、25名以上の虐待被害を受けたアスリートと被害者組織の代表者を対象としたフォーカスグループ調査とインタビュー等をまとめた報告書を発表した。 SRAは 、経験共有や学びの促進、より強力な提言を行う国際ネットワークの幅広い必要性が明らかになったとしており、調査結果に基づき、まもなく「アスリート被害者の世界ネットワーク」を立ち上げる予定である。

アンドレア・フローレンスSRA事務局長は、「今回の取組みは、アルゼンチン、ブラジル、米国、その他の国々における警察暴力に反対する母たちの運動に触発されたもの」と語り、「世界レベルのつながり、代表性、アドボカシー、支援を促進するため、被害者主導のネットワークを構築する機会を探っていたが、被害者の答えは「イエス」であった。我々はこのニーズを満たす後押しができることを、嬉しく思う」と述べた。

調査では、多様な層から視点を集めるため、交差的かつ横断的なアプローチが取られ、アフガニスタン、アルゼンチン、ブラジル、イラン、ケニア、マリ、南アフリカオーストラリア、カナダ、フランス、アイルランド、英国、米国から25名が参加した。

本調査を主導した元オリンピック選手で自身も虐待被害者であるヨアナ・マラニョン氏は、「我々が望む変化を得るためには、生きた経験を持つアスリートの声から始める必要がある」と述べ、「これまで黒人、先住民、有色人種はこうした議論から排除されてきた。あらゆる取組みの確固たる証拠基盤を確立できるよう、グローバルサウスのできるだけ多くの人々から話を聞き、周縁から始めることが重要だ」と強調した。

プロジェクトでは、被害者と関わる上で再トラウマ化や苦痛が生じるリスク等を認識し、トラウマに配慮した原則と「害を与えない」ケアの倫理を用い、すべての参加者の安全、ウェルビーイング、自律性が優先された。プロジェクトの進行を管理した、パラリンピック選手かつ研究者でもあるステファニー・ディクソン氏は、「我々のアプローチでは、参加者が認められ、肯定され、耳を傾けられるような空間を作ることを目指した」と述べ、「参加者の安心感や肯定感に配慮することは、チェックリストにあった事項ではなく、参加者の合意や継続的な傾聴、学習、成長へのコミットメントを通じて醸成・促進された」と振り返る。参加のレベルや参加方法には選択肢があり、不快感を伝えたり、苦痛を伴う話題から会話を遠ざけるよう、進行役に依頼したりすることも可能だ。

プロジェクトのコミュニケーションと被害者支援のコーディネーターであるレイチェル・コージー氏は、「最も驚いたことの1つは、被害者が、補償やサポートが提供されないまま、相談やインタビュー、スポーツにおける虐待の話について講演を求められることが、いかに多いかということ」と述べ、「スポーツにおいて彼らがすでに経験した被害を考えると、無償の労働を期待するこうした慣行と、それに伴ってしばしば生じるさらなる被害は、本当に衝撃的であり、終止符を打たなければならない」と強調した。

2022年5月から11月にかけて実施された調査を通じ、被害者であるアスリートの3つのニーズ(回復、声、正義)に焦点を当てた国際的な連帯ネットワークの必要性について、強いコンセンサスが得られた。

マラニョン氏は、「取り組まなければならないことが多くあるが、被害者がピアツーピアのサポート、研修、緊急資金を得ることができる場所、そしてアドボカシー、研究、代表活動を行うための基点となる場所を作りたい」と述べ、「その目的は、被害者による被害者のためのネットワークを構築することであり、すべての段階において被害者の利益を最優先することだ」と訴えた。

ブレンダン・シュワブ世界選手会担当局長は、「競技者の組合は、被害者に連帯し、虐待をめぐる組織化、安全な職場環境の交渉、被害者のニーズ充足に向けて尽力する。特に組織化する権利が尊重されていない国々において、この取組みは重要だ」とし、「世界選手会はこの新たなプロジェクトを全面的に支援しており、我々は制度改革に向けて被害者の声と要求を増幅させていく」と語った。

報告書の全文は、こちらから(UNIウェブサイト内、英文)


UNI、世界選手会、ITUC、アムネスティ・インターナショナル等の組織が、スポーツ・アンド・ライツ・アライアンス(SRA)のパートナーとなっている。SRAは、主要なNGOや労働組合の世界的な連合体として、スポーツ団体、政府、その他の関係者が、人権、労働権、子どもの福祉と保護、腐敗防止に関する国際基準を保護、尊重、実現するスポーツ界を実現するため、連携している。