
オーストラリアのUNI加盟組織である店舗流通関連労組(SDA)が6,000人以上の組合員を対象に調査を行った結果、不安定な労働と予測不可能なシフトが、小売、通販、倉庫、ファストフード等で働く労働者に深刻な影響を与えていることが明らかになった。
SDAがニューサウスウェールズ大学に委託して実施した調査によると、エッセンシャルワーカーである小売労働者は、生計を立てるには短すぎるシフトをこなし、変更の多いシフトに対処するため、安価で適切な保育園を見つけることができないことがわかった。回答者の42%は、主に大手スーパーマーケットチェーンで働く女性で、シフトがストレスになっていると答えている。
「シングルマザーとして子供のために一生懸命働いているが、週たった9時間という短い勤務時間のせいで、突然、ストレスがたまり、どうやって生きていけばいいのか不安で夜も眠れなくなった。子供のスポーツはやめさせようと思っている。練習や試合に連れて行かなければならないが、上司の考えるシフトには合わないので。」
子供のいる労働者の41%が「シフトは突然変更されることがある」と回答した。うち、常用雇用のパート及びフルタイム勤務者のそれぞれ36%もそう答えている。全体の34%が「勤務時間がもっと予測可能であれば、もっと働けるようになる」と強く感じている。
場当たり的な労働時間は、労働者の子供にも影響を与えており、生涯にわたる不利益をもたらす。全国で95%の子供が就学前の1年間に週15時間の幼児教育を受けているが、調査対象となった小売労働者の子供については72%にとどまった。更に、家庭の事情に合わせてシフトを希望すると、懲罰的な扱いを受けるという親からの報告もあった。
障がい児を持ちパートタイムで働くある母親は、「子供のために1回シフトを外してほしいと頼んだら、何週間もシフトを外されたように感じることがある」と打ち明けた。
また、賃金の低さを訴える女性もいる。「この給料では落ち込んでしまう。ホームレスになるかもしれないと、いつも不安になる。」「2~3回しかシフトに入れない週は、食べ物を買うのも難しくなる」と言う女性もおり、スーパーで働いているのに、不安定な勤務予定のため食料品を買うこともできないという、辛く皮肉な状況に陥っている。
ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「不安定労働は、アジア太平洋地域、そして世界中で重要な問題となっている。重度のストレスや経済的不安等、労働者にのしかかる大きな負担は、ひいては社会の負担にもなる。その非効率性から、企業にとっても負担になる」と指摘した。そして、「SDAの調査により、エッセンシャルワーカーが直面する不安定な状況がはっきり示された。オーストラリアにおける不安定労働の実際のコストを示すものだ」と述べ、SDAの取組みを称えた。
ジェラルド・ドワイヤーSDA書記長は、「オーストラリアの何万人もの低賃金労働者は、地域社会の生活に完全に参加する機会を奪われている。いつ働けるのか、翌週を乗り切れるだけの賃金がもらえるのか、わからないからだ」と述べた。「これでは不十分だ。オーストラリアらしくもない。こうした状況を正すため、仕事とケアについてサミットを開催する時が来ている」と強調した。
SDAは、以下の点を要求している。
- あらゆるコミュニティを対象に「仕事とケア」サミットを2022年に開催し、育児・介護責任を担う全ての労働者が抱える経済的・精神的プレッシャーに目を向けること
- 法的強制力のあるケアの権利
- 利用しやすく、手頃な価格の保育サービス
- 生活賃金を支給する、安定、安心かつ予測可能なシフト割当
- 全ての労働者の有給の個人休暇、介護休暇を増やすこと
- 父親/パートナーの有給育児休暇を直ちに増やすこと
- 有給育児休暇を取得するための障壁を取り除くこと
- 介護を重要な社会インフラとして認識し、公正な経済的価値を与えること
報告書の詳細については、national.sda.com.au/careを参照。