世界報道自由デー(5月3日)からわずか2日後の、2020年5月5日、フィリピン国家通信委員会は、同国最大の放送ネットワークABS-CBNの放送免許の期限が5月4日に切れた後、放送停止を命じた。規制当局のこの懲罰的措置により、1万1000人の放送労働者やアーティストから生計が奪われた。同時に、新型コロナウィルス危機を受けて政府が命じたロックダウンの最中に、何百万ものフィリピン人からニュースと娯楽の主要な情報源が奪われた。
2016年に就任して以来、ロドリゴ・ドゥテルテ・フィリピン大統領はABS-CBNに対する敵意を繰り返し表明しており、その放送免許は更新されないだろうと、公に同社を脅してきた。
ABS-CBNの閉鎖によって、労働組合及び人権が更に侵害され、報道の自由や自由な表現の権利が縮小される傾向が憂慮される。ドゥテルテ政権に批判的なメディアは嫌がらせを受けてきた。こうしたメディアに対する懲罰的措置は、フィリピン最大手の放送ネットワークの閉鎖にまで及んだ。
ABS-CBNの放送停止命令を受け、ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「UNI Aproは、ABS-CBNの閉鎖と、フィリピンにおいて報道の自由が侵害され続けていることを非難する。我々の加盟組合である放送労連(NABU)及びUNIフィリピン加盟協(UNI-PLC)に連帯し、フィリピン政府に対し、放送停止命令の撤回を要求する」と述べた。
中村正敏UNI Aproメディア部会議長(日放労委員長)は、「UNI Aproメディア部会及びUNIに加盟する世界中の放送関係の労働組合は、フィリピン国会に、ABS-CBNの放送免許の更新を要求する。報道の自由、労働組合権及び人権の侵害は、直ちにやめるべきだ」と述べた。
5月6日に出された声明の中で、UNIフィリピン加盟協(UNI-PLC)傘下の加盟組織は、この深刻な社会危機の最中に失職の危機に晒されているABS-CBN、DZMM、子会社、地方テレビ・ラジオ局で働くメディア労働者の雇用と福祉を守るための、NABU及び他の労組の取組みへの支援を表明した。
「政府は、国から情報を奪い、1万1000世帯から生計を奪おうとしているだけでなく、民主主義を弱体化している」とクリスティ・ホフマンUNI書記長は非難した。「ABS-CBNには直ちに免許が再交付されるべきだ。フィリピンにおける報道の自由は守らなければならない。」