アジア太平洋地域のメディア産業労組の協力強化

UNI Aproメディア部会は、2019年8月21~22日、マレーシア・クアラルンプールにおいて、UNIマレーシア加盟協(UNI-MLC)と共催で、「UNI Aproメディア部会における組合の協力強化」を目的に、ワークショップを開催した。日本、マレーシア、フィリピン、タイ、インドネシア、台湾、ネパールから約40人が参加した。日本からは日放労の中村委員長(UNI Aproメディア部会議長)と佐藤中国支部委員長が参加した。また、アジア太平洋放送連盟(ABU)からナタリア・リエヴァ事務局長室長、ラーソン・モス公共コミュニケーション課題担当もゲストとして出席した。

まず、参加者から、各国における放送・メディアのデジタル化の現状について報告された。デジタル技術の進展はどの国でもめざましく、技術が発展するごとに、毎年、メディアを取り巻く環境が変わっている。ヨハネス・シュトゥディンガーUNI世界メディア部会担当局長は、「デジタル化は概念ではなく現実で、対処のためには労働組合の団結が必要だ」と訴えた。

台湾では、幼児向けや福祉といったこれまで公共放送にしかできないと思われていた分野でもインターネットのコンテンツ制作者が登場しつつあること、タイやインドネシアではメディア技術での新規参入が相次いでいる様子が報告された。つい数年前まで日本語がいわば「非関税障壁」となってグローバル化から免れていた日本でも、ネットフリックスやアマゾンが日本語による本格的なコンテンツを制作するようになり、遅ればせながらメディアの世界でもデジタル化がグローバル化と一緒になって襲ってきている現状を報告した。ABUのナタリア事務局長室長は、「変化と共に、放送番組という価値は変わらないという不変の部分も注目する必要がある」とし、放送の未来について楽観的すぎる議論も悲観的すぎる議論も避け、リアリティをもって将来をみていく必要性を示した。

2日目は参加者が3つのグループに分かれ、どのように組織化を進めるか、団体協約を結んでいくか、といった点についてワークショップを行った。最後に中村UNI Aproメディア部会議長は、「放送をめぐる状況は各国ごとに異なるが、デジタル化は各国共通で普遍的な課題だと認識できた。今後はこの観点から活動を続けていこう」とまとめた。モハマド・シャフィーUNI-MLC議長は「こうした活動は継続が重要だ。またマレーシアでこのような会議を開催したい」と述べた。