4月 2024のお知らせ

UNI世界商業部会、Eコマース労働者の組織化に向けた野心的な活動計画を採択

2024年3月21~23日にシンガポールで開催されたUNI世界商業部会委員会では、Eコマース労働者の組合の力を拡大し、変化し続ける小売業の世界がもたらす課題に取組むための活動計画が、満場一致で採択された。

活動計画では以下の点が掲げられている;
●既存の3つのサブセクター(食品小売り、ファストファッション、自動車販売)に加え、世界商業部会内に新たなサブセクター「Eコマース」を創設する。
●新しいサブセクターには、ダーク・ストア、消費者への食品小売の直接配送、その他ダイレクト・コマース関連の活動が随時含まれる。
●Eコマースの組織化キャンペーンを支援する。
●Eコマース労働者の組織化・交渉に関するベストプラクティスを特定し、加盟組織に広める。

常に変化し続ける小売業に対応するため、活動計画には、UNIをグローバルな小売部門における研究、政策、交渉のベストプラクティスのハブとすることも掲げられている。
●商業部門のあらゆる側面に関する研究プロジェクトと報告。
●会議や大会、研修での興味深くダイナミックなパネル、ゲストスピーカー、プレゼンテーション。
●デジタル化、AI、シフト組みなどの主要トピックについて、商業部門における団体交渉や部門別交渉のための重要な戦略を収集し、共有すること。
●商業部門に影響を与える最新の革新的な法改正について注視し、報告すること。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「商業部門における技術革新のペースが速いことを考えると、我々にとって未来は今である。我々は加盟組織とともにこの活動計画を実施し、変化のペースに対応し、労働組合として可能な限り最良の対応を実現する」と述べた。

また委員会では、食品小売部門で急速に拡大するフランチャイズ化の影響について議論し、フランチャイズ化に関する宣言が採択された。これは、フランチャイズ化のさらなる拡大を阻止し、フランチャイズ店舗で働く労働者を支援・代表するUNI世界商業部会の取組みを強調するものであり、同宣言は、「労働者は売り物でも貸し物でもない」と指摘し、フランチャイズ化に関するいかなる決定も、労働組合と交渉し、その合意を得なければならないことを要求している。

シンガポールのUNI加盟組織SSMWUがホストした今回の会議には、世界各地の商業労組の役員が結集した。

同委員会においてクリスティ・ホフマンUNI書記長は、この分野における最近の組合の勝利について言及し、「グローバルな連帯で団結すれば、私たちを止めることはできない。共に、立ち上がり続けよう」と訴えた。

会議では、既存のサブセクターの活動、イケアとアマゾンの組織化、商業部門における暴力とハラスメン トに反対するキャンペーン、部門別対話、デュー・ディリジェンスの実施、数多くのUNIの連帯プロジェクトについても取り上げられた。


英国でGMB労組が組合選挙に向けたゴーサインを獲得-アマゾン、歴史的な組合躍進に直面

英国の労使間の団体交渉を管轄する政府機関である中央仲裁委員会(CAC)が、アマゾンのコベントリー倉庫におけるGMB労組の組合承認投票申請を支持する裁定を下した。2024年4月19日、UNI加盟組織である英国のGMB労組が発表した。GMB労組が、アマゾンでは欧州初の公認組合に一歩近づいたことを意味する。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「この日は、英国および世界中のアマゾン労働者の権利にとって分水嶺となる瞬間だ。英国政府がコベントリーにおけるGMBの組合承認申請を受理したことは、アマゾンの労働者が労働条件と生活の形成において発言権を持つことを可能にする歴史的な一歩だ。この勝利は、アマゾンのような企業の責任を追及する集団行動の重要な役割を強調するもの。労働者と社会にとって真に意味のある変化を実現するために、我々は、労働者の声を聞き、尊重する、このような組合の取組みをさらに求めて闘い、支援し続けなければならない」とコメントした。

アマンダ・ギアリングGMB労組シニアオルグは、「GMBがアマゾンで組合の権利を求めて闘いはじめた初日から、それは現代のダビデとゴリアテの戦いだった。アマゾンの執拗な反組合的プロパガンダに労働者が立ち向かい、1年経った今が本当に歴史的な瞬間だ。労働者は不利な状況に打ち勝ち、アマゾンでは欧州初の公認労組の結成について、法的拘束力のある発言権が与えられることになった。(…中略…)アマゾンの経営陣は、貧困賃金と危険な労働条件を拒否し、職場の尊厳と自らを代表する組合を要求するのだという、明確かつ率直なメッセージを自社の労働者から突き付けられたのだ」と語った。

1年以上にわたる大規模な労働者の動員を経て、アマゾンのコベントリー施設における組合員数は急増した。

英国のアマゾンにおける組織化の推進は、より広範な世界的な取組みの一環である。2023年11月にGMB労組は、各国の組合と国際連帯し、ブラックフライデーに「Make Amazon Pay」のスローガンの下、ストライキと抗議行動を実施した。UNIが共同提唱したこのグローバル・キャンペーンは、世界中のアマゾン労働者の労働条件改善と公正な待遇を求める広範な要求を示している。


UNI世界ICTS部会大会:2日目‐今後4年間の方針を決定

UNI世界ICTS部会大会の2日目では、同部会の今後4年間の方向性が決定した。95か国のICTS労働者を代表する代議員は、新しい指導部を選出し、テレコム、テック、ビデオゲーム開発、ビジネスサービスの各部門における労働者の力を構築するロードマップとして機能する戦略的行動計画を採択した。

この日は、安藤京一UNI Apro ICTS部会議長(情報労連)が、新たなテクノロジーによる同部門の変革と、それに対応する労働力スキルの進化に焦点を当てたセッションを導入して幕を開けた。国際電気通信連合(ITU)のフレッド・ワーナー氏が基調講演を行い、世界の電気通信を調整するITUの役割と、労働力に直接影響するAI標準設定への同組織の関わりを強調した。また、ITUが他組織とともに「AI for Good」を立ち上げ、国連の持続可能な開発目標を推進するためにAIを活用する具体的な方法を策定した経緯を説明した。

ワーナー氏の講演に続いて、ヨハネス・ホフマイスター氏(オーストリア、GPA)が、テレコム部門における新技術の導入に向けた欧州電気通信事業者協会(ETNO)の連携した取組みについて報告した。同氏は、テレコム部門の二酸化炭素排出量を削減し、持続可能性を高めるための取組みについて強調した。

次のパネル・ディスカッションでは、ソー・ソウルマンUNIアフリカICTS部会議長が進行役を務め、安全な労働の確保におけるICT労組の役割に焦点が当てられた。

いずれもセネガルからSNTPT労組のローズマリー・デューフ氏とSYTS労組のネネ・コイタ氏は、COVID-19パンデミックの際、両労組がオレンジの安全衛生グローバル協定をどのように実施したかについて詳述した。10年以上前に締結されたこの協定によって、オレンジの全事業所で安全衛生委員会を通じ、パンデミック関連の課題に関する意思決定プロセスや安全確保の中心的役割を、労働者が担えるようになった。

このセッションでは、ICTS部門のさまざまな分野における課題について検討された。フランスの組合STJVのアントワヌ・ディオセント氏は、ビデオゲーム開発における「クランチ・タイム」(ストレスや燃え尽き症候群など、健康に重大な影響を及ぼす業務上のプレッシャーの強い時期)について議論し、「労働者に対する影響について、管理がなされていない。上司は、労働者は生産が終わればスタジオを去るのだから、長期的な影響に対処する必要はないと考えている。労働者は使い捨てとみなされている」と訴えた。フランス全土、そして世界中のビデオゲームの開発に携わる労働者が、労働者を大切にし、労働者の権利を尊重する業界にすべく、組織化を進めている。

ベンソン・オクワロ氏(ケニア、COWU)は、コンテンツモデレーターが直面するメンタルヘルス上のリスクを強調した。こうした労働者は、想像を絶する過激で恐ろしいコンテンツにさらされていると同時に、インターネットから偽情報を取り除く最前線にいる。彼らがこの労働に対して受ける見返りは、低賃金とトラウマであることがあまりにも多い。COWUはケニアでこうした労働者の組織化を支援し、フォード財団の支援を受けて、国際的な安全衛生基準の確立を主導している。

UNIアフリカ女性委員会議長を務めるパトリシア・ナイマン氏(南アフリカ、SACCAWU)は、セッションの最後に、第三者からの暴力、特にその女性への影響の問題を取り上げた。顧客や取引先からのこうした暴力には、ハラスメントや身体的脅迫が含まれ、これを抑制するには包括的な職場のガイドラインと強力な組合活動が必要である。

この後、大会参加者はUNI世界ICTS部会の2024~2028年の5本柱となる戦略計画について討議し、承認した。

1.ICTS部門の主要多国籍および地域企業における組合の力の構築: ソー・ソウルマン氏が再び登壇し、多国籍企業で労働者を組織化し、これらの企業内で人権の適用を強化し、テレコム部門の技術的・構造的変化を通じて組合を支援するこの動議について説明した。この戦略には、組織化キャンペーンや、特に外部委託に関して労働者の権利を保護するためのグローバル協定や人権デュー・ディリジェンスの活用が含まれる。

2.ビジネスサービス部門における組織化と基準の引き上げ:マリカルメン・ラマスUNI米州ICTS部会議長(メキシコ、STRM)は、コンタクトセンターやコンテンツモデレーター等、ビジネスサービス部門における労働条件改善に向けた取組みを強調した。活動領域を拡大し、テレパフォーマンスのグローバル協定を実施し、特にオンラインプラットフォームの安全性とコンテンツモデレーションに関する業界標準を設定する計画である。

3.グローバルなテック企業およびゲーム開発企業で、共に立ち上がる: アンディ・カーUNI世界ICTS部会議長が動画で発表したこの3つ目の戦略計画は、UNIをテックおよびゲーム開発労働者のハブとし、大手テック企業での組織化・団体交渉を支援することを目指すものだ。戦略には、可視化活動の取組み、組織化・交渉訓練の提供、労組アライアンスの構築が含まれる。

4.ICTS 労働者のための政治的影響力と経済力の構築:フグリ氏(スイス、Syndicom)は、尊厳ある労働、良好な賃金と労働条件を促進し、 人権とILO基準を擁護する必要性について議論した。この行動計画では、政策立案時に労働者の懸念が代表されるようにするため、選出された指導者、規制当局、社会対話メカニズムの関与を求めている。

5.デジタル時代におけるディーセントワーク戦略の構築:安藤京一UNI Apro ICTS部会副議長がこの動議について説明し、AIや新たな労働形態による悪影響を緩和し、産業の変化に適応するためのスキル開発の促進に焦点が当てられた。行動としては、団体交渉の促進、リモートワーク慣行に関するデータベースの維持、グローバル協定を通じた継続的な能力開発の提唱などが含まれる。

大会参加者はその後、一連の動議を採択し(テックおよびゲーム開発業界における大規模解雇の中止を求める緊急動議を含む)、新議長を選出した。

UNI世界ICTS部会創設以来、初めてアフリカ大陸から選出されたソー・ソウルマンUNI世界ICTS部会新議長は、「我々はこの先に待ち受ける課題の大きさを知っているが、これはすべての地域の支援を得て進めていく課題であることも知っている」とスピーチした。

退任するアンディ・カー議長は、過去9年間の在任期間中のテレコムおよびテック部門の変化を振り返りながら、エリクソン、テレパフォーマンス、グーグル、マイクロソフトといった大手企業との大きな進展について語り、「団結した労働者は決して負けることはない。そのことを決して忘れてはならない」と締めくくった。参加者は、世界の労働組合運動に対するカー前議長の多大な貢献を称えた。


UNI世界ICTS部会大会:1日目

UNI世界ICTS部会大会は、2024年4月15日、南アフリカ・ケープタウンで活気あふれる地元バンドの演奏とともに幕を開けた。今後4年間の戦略的優先課題を設定し、新議長を選出するため、世界中から230人以上の組合指導者が結集した。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、冒頭のスピーチの中で、IT、テック、テレコム、ビジネスサービスの労働者を含むこの部会における組織化の取組みについて改めて強調した。「こうした産業の変化・進化にあわせて、組合も変化することができる。我々は、この産業で働くすべての労働者の組織化を支援する決意を固め、重点的に取組んでいる。この部会は注目を集めており、仕事の世界における移行の中心にある」と訴え、「AIは人間の仕事を代替するのではなく、人間の仕事を補強するものでなければならず、AIの恩恵は億万長者がため込むのではなく、みなに共有されなければならない。我々にはこれを実現する方法がある」と鼓舞した。

ジンギスワ・ロシ南アフリカ労働組合総連合(COSATU)会長も、新たな現実に適応する必要性を唱え、「現在と未来の闘いに備えるため、我々は過去の道を歩み続けることはできない。我々は革新を遂げ、労働者を組織化し、労働者の声に耳を傾けなければならない」と呼びかけた。

ソー・ソウルマンUNIアフリカICTS部会議長(ブルキナファソ、SYNATEL)は、UNIがこの分野で過去5年間に成し遂げてきた「とてつもない進歩」について説明するとともに、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ、モロッコ等の国々が世界のテック企業の重要な拠点となっており、大陸におけるテック産業の成長についても強調した。ビジネスサービス部門では、モロッコとチュニジアはフランスのコールセンターにとって重要であり、モーリシャスとマダガスカルでも産業が成長している。しかし、ソウルマン議長は、多国籍企業が市場に参入する際、外部委託やプラットフォーム労働によって、アフリカにおける非正規労働の問題が悪化することは許されないと警告した。また、労働者が正規の雇用契約を結べるようにすることを各組合に求めた。

クロード・カミングス全米通信労組(CWA)委員長は、テック産業における組織化の議論を主導し、米国における労働組合への支持の高まりを強調した。「今は世界中のすべての労働者にとって困難な時代であり、テック産業も同様だ。しかし、我々は労働者がこの難局に立ち向かい、力をつける方法として組織化や団体交渉を受け入れているのを目の当たりにしている」と語り、「CWAはこのチャンスを活用すべく、労働者が職場で組合の声を得るための取組みを支援している。CWAはテック部門で大きな躍進を遂げ、グーグルで数千人の労働者を組織化し、マイクロソフトと新たに買収したゲーム会社アクティベーション・ブリザード・キング(ABK)では中立保持協定を確保した。この協定により、ABKで1,000人以上の労働者を組織化することができ、協定は同社の他の部門にも拡大されている」と報告した。

討議において、英国Unite the Unionのルイーザ・ブル委員が、リモートワークであっても、同労組では組織化を支援するために多くの古くからの戦略を用いていると述べ、「テックは組合にとって比較的新しい部門かもしれないが、テック労働者は他の労働者と同じ問題を多く抱えている」と語った。

グーグル労働者を組織化しているスイス Syndicomのダニエル・フグリIT部門担当部長は、2年前と比較して、労働者は自らの利益を共有し、社内の労使間の溝を意識するようになっていると述べた。

Engineers of Swedenのハンネリ・リンドホルム国際担当委員は、労働者の組織化を支援し、労働者の連携を強化する上で、UNIのグーグル労組アライアンスの重要性を強調し、「グーグル等の企業のテックワーカーは、国境を越えたチームで働き、話をするので、組織化も国境を越える必要がある」と訴えた。

ICTS部会大会1日目はこの後、ビジネスサービス部門の労働者を対象とし、テレパフォーマンスとのグローバル協定に焦点が当てられた。 この協定は世界最大のコンタクトセンター企業で働く50 万人以上の労働者を対象としている。コロンビア、ドミニカ共和国、フランス、ガーナ、フィリピンの労働者や組合指導者は、この協定が自国での組合結成と権利行使への扉を開いていることを強調した。この協定は2022年12月に締結されて以来、コロンビア、エルサルバドル、ジャマイカ、ポー ランド、ルーマニアで展開され、成功している。


英国の介護労働者19,000人が初日の傷病手当を獲得

UNI加盟組織のGMB労組が、英国最大の介護施設運営事業者であるHC-Oneの介護労働者19,000人に対し、初日の傷病手当を勝ち取った。2024年3月22日に発表されたこの新しい協約は、傷病休暇初日からの手当を保証しており、介護労働者が体調不良時にも働かざるを得ないことで、高齢入居者に感染拡大のリスクが及ぶ状況にも対処している。

英国政府は2023年5月に、COVID-19感染拡大抑止策として導入していた病欠初日からの傷病手当金の支給を停止しており、会社側は従業員が病気になって最初の3日間は手当を支給していなかった。

だが、この状況を変えなければならないのは明らかであった。最近、GMB労組が行った調査では、HC-Oneの介護労働者の4人に1人が、「貧困賃金」 を理由に離職を考えていることが明らかになった。

GMB労組役員のナタリー・グレイソン氏は、「初日から支給される傷病手当は、介護部門で働く労働者に最低限支払われるべきものであるにもかかわらず、英国全土で、介護労働者は支給されずに生き延びることを余儀なくされてきた。今回の動きは大きな勝利であり、介護部門全体の風土における画期的な転換だ」と述べ、続けて「だが我々はここで立ち止まりはしない。介護に尽力している専門職の時給が、少なくとも15ポンドになるまで、闘いをやめない」と固い決意をみせた。

この勝利は、介護専門職の最低時給15ポンドを確保するためにGMB労組が展開している『15ポンドを目指す闘い』における重要な一歩であり、集団的な行動によって変革が起こりうることを示している。

アラン・サブレUNI世界ケア部会担当局長は 「多くの労働者にとって、病気休暇の一日目に手当がないということは、自分自身や介護を受ける人々の健康にとって最善のことと、請求書の支払いができるのかということの間で苦しい選択を迫られるということ」と今回の勝利の背景を強調し、「我々は、HC-Oneの労働者とGMB労組の勝利を祝福し、英国の介護制度の労働条件改善を推し進める仲間と連帯していく」と述べた。


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