7月 2023のお知らせ

UNI-LCJ青年・女性ネットワーク会議を開催!

UNI-LCJ第5次アクションプランに基づき、UNI-LCJ加盟組織の青年・女性役員の交流・情報交換の場として標記会議が開催され、印刷労連、UAゼンセン、全労金、損保労連、大日本印刷労組、日放労、JP労組、事務局より、21名が出席した。昨年の各ネットワーク会議を踏まえ、青年・女性の活動には多様性や機会均等の推進等の共通点も多いことから、今回は両会議を合同開催とした。

はじめに出席者が自己紹介を行った後、森川UNI-LCJ事務局次長より、UNIおよびUNI Aproの青年・女性活動について報告がなされた。女性委員会の活動として、メンタリングプロジェクトや労働安全衛生、LGBTI+、暴力・ハラスメント撲滅に向けた取組み、また青年委員会の活動として、各国での教育・研修、組織化、社会貢献活動、SNSを通じた情報発信の取組み等が紹介された。

次いで、参加組織から青年・女性、ジェンダー、ダイバーシティに関する活動や課題が共有された。


●印刷労連(古賀初代副中央書記長、佐々木冴子中央委員・女性参画プロジェクトメンバー):ジェンダー平等推進計画に基づく活動として、広報・アピール活動、連合「女性リーダー養成講座」への積極参加、ジェンダー平等・多様性推進会議等に取組んでいる。推進会議はプロジェクトメンバーが中心となって運営し、意思決定権のある男性役員にも参加を要請したことが、従来との違いである。今後はプロジェクトから専門委員会への格上げを検討しており、各組織にジェンダー平等を組み込んでいく事が課題であり、産別としてフォローしていきたい。

●UAゼンセン
✓女性に関する活動(寺嶋雪乃多様性協働局副部長、UNI Apro女性委員):同組織の掲げる男女共同参画推進計画では、①職場におけるジェンダー平等の実現、②ワークライフバランスの実現、③組合活動における男女共同参画の実現、の3つを柱とし、アクションプランを策定している。男女共同参画推進キャンペーンでは、短時間組合員向けのみに交流会や男性の育休取得促進に向けたツール(パパのリアルな育休ニュース発行など)の開発、女性の活躍・定着に関する調査とその活用、女性の健康支援の強化に向けた学習会や啓発リーフレット作成などを行っている。
✓青年に関する活動(藤原尚子運動推進局員。UNI Apro青年委員):同組織35歳以下の青年組合員による『Young Leaves』は、若年労働者の力を労働運動に生かし、次世代リーダーの育成を目的としており、弁論大会や自然保護活動、領土問題等啓発推進月間、北朝鮮による日本人拉致被害者家族支援、オンライン交流会などを実施している。

●全労金(桐田真弓書記次長):同組織のジェンダー平等推進計画について、まず、「全ての労働者を代表する組織体制の実現」に向けて、女性役員の三役・四役への選出、あらゆる意思決定の場への女性役員の参画などが掲げられている。また、「安心して働き続けることができる職場環境の実現」に向けて、全労金として再雇用支援策の運用実態の把握と改善、DV対策と休暇制度の新設にむけた検討、ハラスメント禁止ガイドラインの運用等に取組んでいる他、単組レベルでも、学ぶ→知る→考える→行動する、のステップ別に様々な取組みが行われている。さらに、「性のあり方の多様性を理解しあう社会の実現」、「社会的労働運動の実践によるジェンダー平等と男女平等参画社会の実現」を目指した取組みも展開中である。

●損保労連(須齋弥緒事務局次長、UNI Apro女性委員会副議長):「ユニオンサークル」は、単組の枠を超えた青年組合員の交流の場となっている。また、同労連の中期重点取組み課題の中に「多様性の受容」が据えられ、「ジェンダー平等推進アクションプラン」が策定されている。「多様性の受容」は、全国各地で開催されるユニオンミーティングでもテーマとなり、必要な対応策を労連として経営側に伝えたり、労使懇談会等においても「多様性の受容」について議論されたりするなど、課題認識が労使で共有されている。

●大日本印刷労組(三崎友香里副執行委員長、UNI Apro女性委員):専従の平均年齢が37.4歳、執行部の平均年齢が35歳であり、比較的若いメンバー構成である。専従の男女比は13:4であり、今回、時短勤務の女性もはじめて専従となった。若手向けの取組みとして、気軽に職場のことを先輩に相談できるランチ会を月1回開催している。また大阪の事業所では育休明けの社員に対して「おかえり会」を実施し、本人および周囲の意識付けが図られているが、組合としては今後、育休を十分にとれなかった社員の声にもしっかり焦点をあて、対応を検討していきたい。

●日放労(山下茂美中央執行委員、UNI Apro青年委員会副議長):全国で開催される新人対象のセミナーでは、組合の仕組みや意義、NHKを取り巻く状況や処遇・制度などを学んでいる。青年層はワークライフバランス等を重視する傾向が強く、組合としては、青年組合員の要望をしっかりと吸い上げて労使交渉に盛り込んでいく方針である。今年の春闘では、自己啓発休職について1年から2年に延長を勝ち取った。また、子育て世代が参加しやすい環境作りが急務の中、今年新たな取組みとして、全国の書記長会議に、子育て中の書記長等が子ども同伴で出張し、業務時間中は現地の保育園で一時保育を利用した場合、組合で保育料を負担することにした。子育て中の人も参加しやすい環境をどのように整えていくのか、今後も模索を続けながら取組んでいきたい。

●JP労組
✓青年に関する活動(齋藤優輔中央ユースネットワーク議長、UNI Apro青年委員):30歳以下の青年組織であるユースネットワークに約3万人の組合員がいる。2年に一度、組織活性化や人材育成を目的に、全国の青年組合員が集う「ユースマイル」というレクリエーション活動を行い、2017年から1000名以上が参加している。他に、社会貢献活動として、書き損じ葉書を集約、換金し、定期大会開催地の社協に寄付する取組みや、本やCDを換金し、国際協力NGOに寄付する活動などを行っている。
✓女性に関する活動(浅香朋子中央執行委員): JP労組の女性フォーラムは、約6.5万人の組合員を擁する。女性役員を中心に、職場での課題を洗い出してもらったところ、男性中心の普段の組合活動では発言しづらい、生理休暇や更年期障害といった女性の健康に関する声が多く聞かれた。生理休暇中であることが出勤モニターに表示されてしまう状態であることを会社側に伝え、これを変えていくことができたのは今回の春闘の成果の一つであり、女性組合員へのアピールにもなった。

会議後の交流会では、世界大会で使用するユースビデオの撮影や、本年10月に開催予定の東アジア労組フォーラム懇親会での出し物について相談・練習をしながら、各組織の青年・女性活動の担当者が交流を深め、充実した会議となった。


KFSUマート産業労組、韓国コストコ従業員死亡事件の調査を要求

2023年7月11日に、韓国サービス労連(KFSU)マート部門労組と民主党の国民生活運動委員会が共催した記者会見で、韓国コストコでの業務中に死亡した青年の遺族が、同社に対して、責任を取り謝罪するよう求めた。

死亡した29歳の青年は、2019年にコストコの河南シティ店に入社し、レジ係として働き始めた。2023年6月19日に死亡した当時、故人はカートと駐車場管理を担当していた。

従業員の死は、6月18日と19日に河南市に発令されていた高温注意報と関連がある。故人の働いていた現場には、個別の空調設備や温度計がなかったことが分かっている。コストコのレジ係、カート係、駐車場係は、立ち仕事を強いられるだけでなく、営業時間中は座って休む場所もないのである。

死亡日に、家族に送った最後のメールには、「胸が苦しくて、うまく息ができない」とつづられていた。

故人の父親であるキム・ギルソン氏は、記者会見で発表された声明の中で、「会社は労災として対処するのは難しいという立場を堅持している。だが、持病のない息子が会社で働いていて亡くなったのに、なぜ業務と無関係なのか?」と怒りをあらわにしている。

カン・ギュヒョクKFSU委員長も、「韓国コストコが必要な人員を雇用せず、コスト削減のために従業員を搾取し、労働者の生命と安全のために必要なものを適切に提供しなかったことを、強く非難する。コストコは責任を果たし、再発防止策を講じなければならない」と語気を強めた。

チョン・ミンジョンKFSUマート部門労組委員長は、「我々は、労働者が晒されている労働条件の課題に取組みたいと強く望んでいるが、韓国コストコ経営陣はこの3年間、団体交渉に向けたあらゆる動きに抵抗してきた。経営陣は、制度や労働環境は整っていると主張している。だがこの悲劇は、なぜ労働者がこのような形で亡くなったのか、我々に反省を要求している」と批判した。

KFSUマート部門労組とKFSUは、事故調査への着手を、要求している。


南アジア組織化会議:労働者の権利と組織化の拡大

Apro地域の組織化活動を前進させ、南アジア組織化センター設立の土台を築くため、スリランカ・コロンボで会議が開催され、南アジア地域のオルグが結集した。

会議では、特にインフォーマルセクター、エッセンシャルワーカー、コミュニティワーカー、介護部門の労働者などのニーズに対応することに主眼が置かれた。参加者は、GDPに対するインフォーマルワーカーの貢献についての認識、ギグ・エコノミーにおける労働者が直面する課題への対処、南アジア組織化センターを通じて組合を強化し、社会対話を強化する戦略の考案など、様々なテーマを掘り下げた。

会議では、南アジア地域全体で労働者の組織化が大きく進展していることが強調された。特筆すべきは、スリランカではショッピング・コンプレックス従業員組合が成長し、インドではインフォーマルセクター労働者より多くなったことである。ネパールでは、ギグワーカーやライドシェア・サービス労働者の組織化が、また多くの南アジア諸国で、介護部門のコミュニティワーカーの組織化に向けた取組みが進行中である。

地域における組織化の取組みを促進するため、議論は南アジア組織化センターの設立に焦点が当てられた。このセンターは、組織化キャンペ ーンを促進し、労働者の権利について教育し、労働条件を改善するために必要な資源と支援を提供する上で重要な役割を果たす。オルグを育成し、地域特有の制度的知識を深めることで、プロジェクトが円滑に実施されるようにし、加盟組織による効果的で継続的な組織化の取組みを確保していく。

会議では参加者にビジョンが共有され、南アジア組織化センターは、労働者が組織化と社会対話の推進を通じ、力と連帯を構築できるようにし、正義と尊厳と平等を促進していくことが合意された。

最後に、南アジアの組織化について、オルグの人数、新規組合員の獲得目標、部門別組織化目標などに関する各国の具体的な目標が設定された。また、ギグ・エコノミーとプラットフォームワーカーは、政策活動にとって極めて重要な分野であり、組合が注視を強めていく必要性が認識された。


UNIがポーランドのUNHCRと連携、労働者の権利に関する知識を普及 

ウクライナの戦禍から逃れた労働者を支援するためにUNIが設立したユニオンズ・ヘルプ・リフュージーズ(UHR)は、ポーランドの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のコンサルタントとケースワーカーを対象に、労働組合の権利と労働法に関する研修を実施した。

この研修プログラムは、ポーランドの主要3都市(ワルシャワ、ルジェズフ、ポズナン)で実施され、約60人が参加した。ワルシャワでの研修には、コンサルタント、ウクライナ・ハウスの代表、ウクライナ領事館職員が参加した。

研修で焦点が当てられたのは、ポーランドの労働法の実践的な活用方法と、良好な労働条件を求めて闘う労働者を支援する方法である。特に、初回の労働裁判の開廷までゆうに2~3年かかるポーランドでは、労働関連の問題に対処する効果的な解決策として、労働組合との連携が重視された。

ラファル・トマシャクUNI中欧組織化センター所長は、「UNHCRとの研修提携は、労働争議におけるウクライナ難民支援における我々の専門性が、世界最大かつ最も知識の豊富な難民組織である国連機関に認められたことを示すものであり、UHRにとって重要な一歩だ。UNHCRのコンサルタントに対する研修は、難民支援の合理化に役立つだけでなく、迅速な支援と労働者の生活向上のための重要なメカニズムとしての労働組合について、視野を広げるものになった」と、その意義を語った。

UNHCR向けの研修に関する合意の一環として、またその専門知識を活用するため、UHRはコンサルタントが業務で使用できるよう、 手続き上のガイドラインを盛り込んだ包括的なマニュアルも作成しており、得られた知識を集約した実践的ガイドとして活用されることになる。


ネパールの金融労組が社会対話を開催―金融部門の課題、解決策、将来戦略に取組む

ネパール金融労組(FIEUN)が、同国の緊迫した経済情勢を受け、ネパール金融部門に特化した社会対話の取組みを開催した。

このイベントには、金融部門の企業別労組の代表者、経営陣、CEO、財務大臣、ネパール中央銀行総裁代理など、90人が参加した。関係者が一堂に会して課題に取組み、実現可能な解決策を明らかにし、ネパールの今後の金融政策に貴重な見識を提供することが主な目的である。

プラカシュ・シャラン・マハト財務大臣は、金融危機は投資家や銀行のみならず、全ネパール国民に影響を及ぼすことを強調した。金融部門のすべての関係者がそれぞれの役割と責任を理解することが不可欠である。そのため、社会対話では、金融部門におけるこれらの責任に効果的に対処することが重視された。

ナーバハドゥル・タッパ・ネパール中央銀行(NRB)前理事は、ネパールの金融部門の課題、解決策、将来戦略について論じたワーキングペーパーを発表した。ニラム・ドゥンガナ・ティミルシナ・NRB総裁代行は、インフレ抑制、対外収支の維持、金融部門の安定確保におけるNRBの役割を強調した。

パダム・ラジ・レグミFIEUN委員長は、政策決定プロセスにおいて労働組合を軽視しないよう強調しつつ、特に危機の際には、透明性、説明責任、包摂性を最優先にする統治システムの強化が必要であるとの重要なメッセージを発信した。

シャンカール・ラミッチャン UNIネパール加盟協議長は、ネパール銀行協会、NRB、政府機関、組合間の協力的パートナーシップの重要性を強調した。金融業には10万人以上の労働者が従事しており、職場と生計を守る上で、労働者は極めて重要な役割を担っている。


イケアが中立性と組合アクセスに関するグローバル原則に合意

2023年7月6日、 OECD多国籍企業行動指針のオランダ連絡窓口(NCP)が、2018年にUNIが申し立てた苦情に関する最終声明を発表した。オランダNCPは、UNIの申し立てに理があると判断し、イケアの親会社であるIngkaグループとUNIの間で調停プロセスを行った。

スウェーデンに本社を持つ小売業者イケアは、労働組合に加入する労働者の権利を尊重せず、組合代表と建設的な交渉を行わなかったとして非難されていた。

NCPは最終声明の中で、IngkaグループとUNIがオランダNCPの支援の下、調停を経て、2021年のグローバル原則の合意に達したことを明らかにした。この合意の下でIngkaグループは、イケア労働者が労組結成を選択した場合、中立の立場を維持することを約束したことになる。さらにイケアは、組合代表に対し店舗における合理的なアクセス権を付与し、実施上の問題が生じた場合に対処するプロセスを確立することも約束した。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「イケアは、組合による従業員へのアクセスと組織化キャンペーンにおる中立性について、グローバル原則に関する合意で有意義な歩みを進めた。これらの明確な約束に合致する形で、米国、アイルランド、ポルトガルにおいて、このアクセス文言の実施に関する現実的な解決に向けて、労使による取組みの継続を求めるNCP勧告を歓迎する。 また、NCPの委員が献身的に本件を解決してくれたことに感謝したい」

この合意では、各国の労働組合とイケア経営陣が協力し、各国レベルで合意実施の方法を決定することも求めている。調停プロセスの期限内に各国に関する合意については至らなかったものの、NCPは労使に合意の実施に向けて引き続き取組むよう、強く勧告している。

デビッド・ヤング 北米食品商業労組 (UFCW)インターナショナル副会長兼組織化担当部長は、「UFCWはオランダNCPの勧告を尊重し、米国において世界レベルでの合意を実施する方法について取り決めるべく、米国イケアと協議を続けていく。今後もUFCWは、店舗での組合結成を目指す米国とカナダのイケアの仲間たちと連携していく」と力強くコメントした。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「Ingkaグループおよび加盟組織とともに、この合意の実施に向けて取組んでいくことを楽しみにしている。来年、オランダNCPで最終評価を行う際に、力強い進展を報告できることを期待している」と述べた。


台湾の公共メディア部門で労働者が力を獲得

UNI加盟組織である台湾公共テレビ労組(TPTSEU)が、2023年6月29日、台湾公共テレビ(PTS)理事会の役員を務める組合代表の指名・選出を規定する新付則について、圧倒的多数で承認した。

この新しい規約は、PTS理事会に選出された労働者代表を登用し、台湾の公共メディアの良好なガバナンスと独立性を確保することを求めてきた同労組の17年にわたるキャンペーンにおいて、極めて重要な節目となる。

今回のTPTSEUの成果は、2023年5月26日に立法院で、公的資金で運営される公共テレビ事業基金の役割、機能、組織について定めた公共テレビ法(PTA)が改正されたことで実現した。PTAはまた、公共テレビ事業財団(PTS)の理事会構成についても規定している。

2023年5月26日に行われた重要な変更は、PTA第2条第13項において、11~15人の理事会のうち、1人は労働者代表でなければならないと規定されている点だ。改正された規定では、労働者代表を指名するTPTSEUの権限についても認めている。

改正前の2007年にTPTSEUは政府と協定を結び、11~15人で構成される理事会の代表を指名できるようになっていたが、この取決めは善意に基づくものであり、TPTSEUの候補者は、理事として承認される前に、立法院の審査委員会の承認を得る必要があった。

だが、今回のPTA改正によって、労働者代表を理事に指名する権利が法で認められ、制度化されることになったのである。

UNI Aproメディア部会副議長を務めるTPTSEUのハミルトン・チェン氏は、「この勝利は我々にとって画期的であり、組合の独立した公正な選考プロセスが尊重され、労働者とその代表が、メディア産業のガバナンスに積極的に貢献できるようになる」と喜んだ。

台湾PTSは、Apro地域でABCオーストラリアに次いで2番目に、労働組合の推薦による従業員が理事に就任した公共メディア機関となった。


OECD報告書、介護部門の変革を求める

2023年6月下旬にOECDが発表した新しい報告書は、介護労働者の低賃金と劣悪な労働条件を浮き彫りにし、介護部門における人員不足と離職率の高さを改善するため、多くの提言が示されている。

『拍手喝采のその先へ』と題された報告書によれば、OECD加盟国において、

  • 介護労働者の賃金は、全国平均時給の70%に過ぎない。介護労働者の4分の1は、平均賃金の54%以下しか得ていない。エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、英国では、2018年の介護労働者の賃金は平均賃金の60%以下であった。
  • 低賃金につながる可能性のある背景要素(学歴、勤続年数、労働時間、性別など)を考慮すると、介護労働者の賃金は同様の要素を持つ他の労働者より12~16%低い。
  • 介護部門の女性労働者の賃金は、同様の要素を持つ男性介護労働者よりも7〜8%低い。
  • 介護労働者の4分の3が、身体的リスク(重い負荷、疲労、疲れや苦痛を生じる姿勢)を訴えているが、労働者全体ではこの値は59%である。介護労働者の3分の2が、精神的リスク(業務量、時間的プレッシャー、困難な利用者)を訴えているのに対し、全労働者では、この値は43%である。
  • 日本、ポーランド、スペイン、スウェーデンでは、介護労働者の4分の1以上が、有期雇用契約の労働者である。

報告書では、以下のような有益な提言が示されている:

  • 最低賃金の引上げ(最賃制度がある場合)及び/又は、部門別最低賃金の引上げを含む、賃金の引上げ(OECDは最近、オーストラリア、ドイツ、ラトビアが最低賃金を引き上げたとしている)。
  • 業務量の削減(例えば、フィンランドが今年行ったように、利用者:職員の比率を、利用者1人当たり職員0.5人から0.7人に引き上げるなど)。
  • 職員が団体交渉の適用対象となることを条件に、介護部門に公的資金を提供する(OECDはこの例としてドイツを挙げている)。
  • 問題を議論し共通の解決策を見出すために、政府が国レベルで社会対話フォーラムを設置する。
  • 税制を通じて組合加入を奨励し(OECD はフィンランド、ノルウェー、スウェーデンをこの例として挙げている)、団体交渉をすべての介護労働者に拡大することによって(OECD はオーストラリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリアの例を挙げている)、 団体交渉と社会対話を支援する。

エイドリアン・ドゥルチUNI世界ケア部会担当局長は、この報告書について、「労働組合として、我々は介護部門が深刻な労働力不足と高水準の離職率に悩まされていることを知っている。これらの問題は、介護労働者に悪循環をもたらし、組織化、団体交渉、社会対話を弱体化させている。OECDの報告書は、単に重要な統計を提供しているだけでなく、前進する道を提示している。すべての OECD 加盟国の労働組合は、介護労働者を尊重するよう主張する上で、この報告書を参照できるようになった。そして OECD 加盟国自身も、社会パートナーと連携し、これらの提言を現実のものとしていく必要がある」と述べた。

ベロニカ・ニールソンOECD-TUAC書記長代行は、「OECDは介護部門の問題点を浮き彫りにし、この部門で働く魅力を向上させるための提言を行うことで、すべての人々に貢献している。OECDの報告書は、ほぼすべてのOECD加盟国において、労働者の交渉力を均衡させるため、注目を受け、対策を講ずるに値するものだ。大切な人のケアは、決して安上がりに行われてはならない。COVIDパンデミックの際に拍手喝采を受けたにもかかわらず、介護部門は低賃金、劣悪な労働条件、高い離職率とスタッフ不足という危機的状況にある」と訴えた。


uni logo
最近のコメント
    アーカイブ