3月 2023のお知らせ

日本のUNI加盟組織、賃上げを要求し歴史的な動きを牽引

日本のUNI加盟組織が、4月の新年度を前に、予想を上回る賃上げ要求で国内のアナリストや観測筋を驚かせている。

毎年2月~3月にかけて行われる年次賃金交渉(「春闘」と呼ばれる)では、これまで日本の労働組合は控えめな賃金要求を選択していたため、今回の要求は波紋を広げている。

これまでの春闘は、1990年代後半の日本のデフレ経済に端を発したものである。2022年の世界的なインフレによって日本の消費者と家計がコスト増に見舞われるようになり、ここ最近の数か月まで、その傾向は続いていた。

日本では、コアインフレ率(食費を除く)は4%を超え、中央銀行の目標値を超え、41年ぶりの高水準に達している。この状況は多くの日本の労働者にとって、給与がインフレに追いつかない場合、実質賃金が目減りする危険性があることを意味する。

政府は、インフレに連動した賃上げを企業側に公然と求めており、国民感情も、家計が生活費の上昇を乗り切れるような措置を望んでいる。日本の労働組合、特に主要なサービス産業部門を抱えるUNI加盟組織は、30年近く続いた賃金の横ばいサイクルを断ち切るための機会と捉えている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、2月に開催された日本UNI加盟組織連絡協議会の年次総会で日本の加盟組織と会談し、春闘交渉を前にした前向きな姿勢に感銘を受け、次のように語った。「日本の加盟組織が力を示し、労働者の賃金・労働条件の歴史的な改善を実現するためのこの好機を捉えていることは非常に素晴らしい。特に、ここ数十年で日本が経験したことのない高い賃上げを率先して求めて闘った加盟組織を誇りに思う。」

日本の加盟組織はすでに成果を上げており、例えばUAゼンセンは過去10年で最大となる4.56%の賃上げを獲得した(3月16日時点)。多くの流通・サービス加盟組合の交渉が集中回答日に先行して要求のほぼ満額で妥結しており、全体の賃金闘争を牽引している。とりわけ短時間(パートタイム)組合員の処遇については、UNIがGFAを結んでいる髙島屋労組で5.64%、イオンリテールワーカーズユニオンでは7%、と高い水準での賃上げを達成し、雇用形態間格差是正の流れが加速している。

自動車総連も、組織化する製造部門において例年にない高水準での妥結が進んでおり、続いて販売部門も魅力向上と人材確保に向けて交渉を続けている。

JP労組は、正社員に関し、定期昇給と社員一人当たり4,800円のベースアップを勝ち取った。なお、ベースアップは新卒初任賃金・若年層の賃金改善に傾斜配分し、これにより初任賃金は1万円以上改善となる。一時金年間は4.3月。また、全社員に、特別一時金70,000円の回答を引き出した。


インフレ時の団体交渉:労働組合の対応

UNI欧州の新たな調査報告、『すべてが上がる – 欧州の団体協約における自動賃上げ』は、高いインフレ率の時代に、労働組合がどのように交渉するかについて、焦点を当てるものだ。

欧州では2021年以降、生活費の急激な高騰に見舞われている。COVID-19パンデミックによるサプライチェーンの混乱、ウクライナ紛争後のエネルギー価格の上昇、企業収益の増加などが原因となり、インフレ率は多くの地域で2桁に達した。こうした状況が労働者の購買力に大きな影響を及ぼしているため、団体交渉の主要なテーマとなっている。

従来、労働組合は定率の賃上げを交渉の対象としている。しかし、予測不可能な高インフレの時代には、このアプローチは困難に直面する。解決策の1つとして、インフレ率に連動した(半)自動賃上げの実施が考えられる。このような方式は、「賃金の物価スライド」または「生活費調整(COLA)」と呼ばれる。

団体協約にこうした条項を盛り込むことで、将来のインフレ率に合わせて賃金が調整され、実質的な賃金保障と名目的な柔軟性がもたらされる。高インフレ下でも、労働者の購買力は保証される。同時に、交渉当事者は、交渉期間中に賃金がどれだけ上昇するか正確に知ることはできない。インフレ率が高い時期には、概して賃金の物価スライドやCOLA条項が好まれる。

報告書ではまず、多くの国で現在、労働組合がこうした条項を導入していることを紹介している。同時に、賃金をインフレに連動させる範囲と方法の両方において、かなりの多様性がみられる。だが、賃金連動方式は以前考えられていたよりも広範囲に普及している一方で、社会パートナーが団体協約にこのような条項を盛り込むことに反対している多くの国々では、依然としてこの方式は存在しない。

本報告書は、高インフレの影響と闘う上で、団体交渉がどのように貢献しうるのか、具体な事例を示すことで労働組合を支援することを目的としている。
報告書(英文)は、こちらから


UNI、反ファシズムの労働組合ネットワークに参加

UNIとUNI欧州が、反ファシズム労働組合の国際ネットワークのマニフェストに署名した。マニフェストは、集団的な行動を通じて、社会正義の推進、人権の擁護、民主主義の強化に取組むものだ。

近年、世界各地で、強権化、反対派の弾圧、民主主義制度の弱体化を目論む指導者を擁する、危険な権威主義体制の台頭が憂慮されている。また欧州では、極右グループややファシスト組織の脅威が高まっており、暴力やヘイトスピーチを用いて過激な主張を推進するグループもある。

ネットワークは、イタリア労働総同盟(CGIL)が、ファシストによるローマ本部への襲撃事件から1年を機に発足させたものだ。民主主義の擁護、人権の促進、あらゆる形態の人種主義、性差別、差別との闘いに取組んでいく。ネットワークの参加組織は、極右イデオロギーの拡散に対する連携した対応と、民主的価値を保護する必要性を強調している。

ローマでネットワークの結成に参加したオリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「労働組合は民主主義の拠り所だ。ファシストが組合運動を嫌うのは、そのためだ。排除を説き、最も弱い立場の者を責め立てようとする者は、働く人々の間に分断の種をまこうとするものであり、我々の友人ではない。彼らは、排除と不平等を生み出している真の責任者から、人々の注意をそらそうとしている。我々の答えは、常に民主主義を支持し強化するということだ。職場における民主主義と社会における民主主義は、同じコインの表裏の関係にある。団体交渉はポピュリズムに対する解毒剤だ」と訴えた。

UNI 欧州は昨年、「民主主義の支持と強化」をテーマに、欧州の組合が一堂に会する会議を開催し、職場やそれ以外の場所でこの目標に向かってどのように取組んでいるか、意見交換を行った。


クレディ・スイスの従業員に救済措置を

スイス政府が積極仲介したUBSによるクレディ・スイスの買収により、クレディ・スイスとUBSの従業員は、大きな不安を抱えることになった。UNI加盟組織のスイス銀行従業員協会(SBEA)は、両行の幹部やスイス政府と連絡を取り合っている。SBEAは、従業員の救済策を取りまとめるため、銀行、社会パートナー、当局を含むタスクフォースの設立を要求している。

従業員が買収に伴う影響によって取り残されないよう支援するため、SBEAは以下の優先目標を発表した:

  1. 雇用喪失は、必要最小限に抑えなければならない。
    SBEAは、2023年末まで解雇を凍結し、その後にソーシャルプランの一環として回避不能な解雇の実施を求める。再就職が特に困難な55歳以上の従業員に対しては、解雇に対する特別かつ強力な保護が必要である。可能であれば、金銭的な補償のある早期退職を最初の選択肢とすべきである。
  2. 人員削減の影響は、可能な限り軽減されなければならない。
    早期退職などによる人員削減が不可避な場合や実施される場合には、UBSとクレディ・スイスは、影響を受ける従業員に対し、徹底した再教育などを通じて、新しい職への移行を容易にするための取組みをする必要がある。金融部門では熟練労働者が不足しているが、買収によって、銀行部門の労働市場が吸収できないような規模の人員削減が行われる恐れがある。
  3. 十分な試行を重ねた社会保障制度を、さらに拡充しなければならない。
    クレディ・スイスとUBSの全従業員に追加措置を適用することが必要である。UBSとクレディ・スイスの現行のソーシャルプランは、通常のリストラにおいては良い手段であるが、今回の買収はそれをはるかに超える規模のものであり、社会パートナーであるSBEAと追加措置について交渉する必要がある。

さらに、国が将来の雇用を保証しなければならない。企業が税金で保護されて、従業員は手ぶらで出て行くという状況は、容認できない。銀行の救済は、雇用の救済を意味するものでなければならない。スイス政府による10億フランの保証は、従業員に利益をもたらす条件とリンクさせるべきであり、政府はその費用を直接負担すべきである。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「我々は、クレディ・スイスの従業員と労働組合SBEAを全面的に支援する。他がすでに対処を受けているのに、従業員にツケを回させるわけにはいかない。労働者の税金が投入されるのであれば、労働者の利益を第一に考える必要がある」と強調した。


テレコム労働者を暴力・ハラスメントから守る:欧州社会パートナーの共同声明

欧州電気通信事業者協会(ETN)およびUNI欧州ICTS部会に代表される欧州テレコム部門の社会パートナーは、職場におけるあらゆる暴力とハラスメントを非難する。

我々は、職場における暴力とハラスメントが、労働者と組織の双方に影響を及ぼす深刻な問題であることを認識し、ジェンダーに基づく暴力やハラスメントを含む職場におけるあらゆる形態の暴力やハラスメントを排除し、すべての人にとって健康で安全な職場環境を促進するため、共に尽力する。

脅迫と差別は、良好な精神衛生に対する大きな脅威である(OECD, 2019年)。欧州生活労働条件改善財団による欧州労働条件電話調査によると、特にサービス業と販売業の労働者は、さまざまな種類の脅迫の標的になっている(12%)。同調査によると、「女性のサービス業・販売業の労働者のうち約4%が、望まない性的注目を受けたと報告し、7%が、暴力、いじめ、嫌がらせを経験したと報告している[1]」

我々は、職場における暴力やハラスメントの問題が、労働組合と使用者の間の社会対話と団体交渉を通じて対処され、職場の安全衛生に関する労働者の適切な共同決定権が尊重されるよう、望むものである。

我々はこうした状況において、従業員の職場での暴力の経験には、男女差があることを認識している。この全体的な取組みの一環として、我々は、ジェンダーに配慮したアプローチに対する認識を高め、労働条件におけるジェンダー不平等に取り組み、セクハラを含む職場における女性に対するあらゆる形態の暴力を排除していく。我々は、家庭内暴力が職場環境に影響を与えることを認識し、また使用者はパートナーである労働組合と協力し、家庭内暴力の被害者に対する適切な支援と安全対策を、団体交渉を通じて政策に組み込むことができるようにしていくことができるのである。COVID-19パンデミック、そしてリモートワークや新しい形態のハイブリッドワークの大規模な導入によって、家庭内暴力の問題が増大しており、仕事に関わる問題として、取組んでいかなければならない[2]。

また我々は、すべての労働者が第三者からの暴力やハラスメント、セクシャルハラスメント、差別を受けることがないようにすることを決意する。第三者からの暴力やハラスメントとは、スタッフが職場で受ける可能性のある、同僚によるものではない虐待を指す。これは、技術者が一般市民から攻撃を受けたり、コンタクトセンターの従業員が顧客から嫌がらせを受けたり、従業員がオンラインでの嫌がらせの標的になったりするようなケースを指す。

我々は、すべての労働者がいかなる暴力やハラスメントも存在しない安全な環境で職務を遂行できるよう協力し、すべての個人にとって安全な場所としての「仕事」を促進していく。より具体的には、我々は、「仕事に関する第三者による暴力・ハラスメントに取組み、これを防止するためのEU多部門社会パートナー指針(2010年)」の行動計画における関連する成果と勧告、およびEU部門横断社会対話プロジェクトの「仕事の世界における暴力とハラスメントの排除」における勧告を、統合していくこと想定している。

これらの目標の実現に向けて、我々は包括的な戦略を構築するために社会対話と団体交渉を促進し、実施と監視のメカニズムを確立または強化していく。また、救済措置の利用、被害者への支援、ツール、トレーニングに関する成功事例を共有する。

我々は必要に応じ、利用しやすい形で意識啓発を行っていく。可能な限り、仕事の世界における暴力とハラスメントが防止されるよう、使用者が適切な措置をとることを支援していく。

職場の暴力やハラスメントの予防に向けた包括的アプローチは、確固たる政策から始まる。労働安全衛生の管理に関する、包括的なアプローチにおいては、個人、グループ、組織への影響を含め、暴力とハラスメントの心理社会的リスクが考慮される。

次の段階では、危険を特定し、リスクの評価がなされる。ここに含まれるのは、職場において何が暴力やハラスメントの引き金になりうるか、また、それをいかにして防ぐことができるかを、認識することである。

危険が特定された場合、それについて労働者は知らされなければならず、また労働者は職場で暴力やハラスメントを引き起こす可能性のあるものは何か、またそれをどのように防ぐことができるのかについて、情報が必要である。労働者が職場で直面する可能性のある危険について認識できるようにするためには、トレーニングも重要である。

また、効果的で安全かつ信頼できる苦情処理メカニズムを確保するためのトレーニングも必要であり、これには、事件が発生した際の報告方法に関する従業員への研修も含まれる。従業員は、職場が暴力問題を提起する上で安全な環境であり、従業員の懸念が慎重かつ専門的で機密性の高い形で扱われるよう、保証されなければならない。目撃者や内部告発者の扱いも同様である。

また管理職にある者は、職場のハラスメントや性的暴行に関する苦情をどのように処理するのが最善であるかについて訓練を受けなければならず、また被害を受けた従業員が利用できる支援や救済措置について、熟知していなければならない。また、自組織内におけるいかなる種類の差別的な行動にも加担してはならないことを認識する必要がある。

また社会パートナーは、他の形態の暴力とは異なり、しばしば匿名の加害者によって行われる、あらゆる形態のサイバー暴力を非難する。また、社会パートナーは、 ETNOによる児童保護タスクフォースの取組みについても評価する。これは、ETNOメンバーが既存および潜在的リスク、新たな傾向を特定・理解し、新たな対策を導入し、既存の枠組みを改善できるよう、共通理解を構築し認識を深めること目指すものである。その上で、ICTサービスとその使用が子どもにとってより安全なものであるよう、貢献していく。

電気通信部門の社会パートナーは、暴力やハラスメントに抗する過程において、あらゆる組織が異なる段階にあるとを認識するが、各組織の特性と能力に応じ、模倣から学び、共通の認識を促進し、その他の適切な措置を構築できるよう、尽力する。

リセ・フールETNO事務局長は、「職場に暴力はあってはならず、いかなるハラスメントも最大限に強い言葉で非難されなければならない。オープンかつ包摂的な対話を通じてこそ、革新的な潜在能力を十分に引き出し、社会的な関わりを強化し、創造的思考を育むことができる。人々が職場で安全であるようにすることは、事業を成功させる上で核となる」と語った。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「仕事の世界における暴力やハラスメントに、我々が共に取組んでいくことが重要だ。ICT部門の使用者を、この重要な取組みのパートナーにすることができ、喜ばしい。暴力やハラスメントの防止、苦情処理、効果的な救済には、トレーニング、実施、そしてモニタリングが必要だ。この強力な声明は、これらの目標を共に実現するという我々の決意を示している」と、述べた。

[1] EUROFOUND (2022), WORKING CONDITIONS IN THE TIME OF COVID-19: IMPLICATIONS FOR THE FUTURE, EUROPEAN WORKING CONDITIONS TELEPHONE SURVEY 2021 SERIES(WORKING CONDITIONS IN THE TIME OF COVID-19: IMPLICATIONS FOR THE (EUROPA.EU))

[2] ユーロバロメータの調査(2022年3月)によると、EUの女性の77%が、COVID-19パンデミックによって自国の女性に対する身体的・精神的暴力が増加していると考えている。(HTTPS://WWW.EUROPARL.EUROPA.EU/NEWS/EN/PRESS-ROOM/20220223IPR23904/NEW-EUROBAROMETER-SURVEY-HIGHLIGHTS-SEVERE-IMPACT-OF-COVID-19-PANDEMIC-ON-WOMEN)


スーパーマーケットをフランチャイズ化するデレーズに、ベルギーの労働者が反撃

最近、ベルギー最大のスーパーマーケット・チェーンの一つであるデレーズが、同国内の全店舗をフランチャイズ化する意向を発表した。この動きを自らの労働条件に対する直接的な攻撃であると解した労働者たちは憤慨し、労働組合Setca-BBTK、CNE、ACV-Puls、CGSLB-ACLBの下で、経営陣の権限強化に反発すべく、団結して行動している。

店舗のフランチャイズ化は、デレーズが、スーパーマーケットで働く9,000人を直接雇用しなくなるということを意味する。代わりに、数百の個々のスーパーマーケット・フランチャイズが、賃金、労働時間、福利厚生を含む労働者の雇用に責任を持つことになる。国全体のブロックとしてではなく、経営に余裕のない多くの単一の使用者との交渉は、労働者の団体交渉力を大幅に弱体化することになる。

さらに、フランチャイズ店の労働者は、直営店の労働者よりも条件が悪い別の部門協約の下に置かれることになる。フランチャイズ店部門の労働者は、賃金が低く、労働時間が不安定で、解雇が頻繁に行われ、日曜日に働かされることもある。デレーズは、管理サービス部門でも247名の解雇を発表した。

労働組合は政府に対し、中小企業向けの部門に労働者を移動させないよう、要請した。組合は、労使協議会の会議にも動員したが、会議はわずか15分で終了した。その後の会議においても、経営陣は労働者代表に民間警備員による身体検査を課したが、労働者代表はこれを拒否したため、交渉は中断している。

同社はオランダに本社を置くアホールド・デレーズ・グループの傘下で、欧州、米国、インドネシアで毎週6千万人にサービスを提供しているとされる。デレーズのフランチャイズ化の動きは、企業がブランドや商品を管理する一方で、労働者に対する責任を回避するという、より広範な流れの一部である。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「デレーズの労働者と組合は、人々が尊厳を持って働ける労働条件、職場の民主主義、そして繁栄の共有のために立ち上がっており、我々は彼らに連帯する。ベルギーのモデルは、近隣諸国の中でも最も低いレベルの不平等をもたらしている。その強力な団体交渉の仕組みは、労働者が同様の攻撃に直面している欧州全域を刺激するはずだ。パンデミックの間、大きな個人リスクと犠牲を払いながら棚に商品を補充し続けたスーパーマーケット労働者は、尊厳ある労働に値する。政治家は、バルコニーで拍手している場合ではない。今こそパンデミック時の英雄を支援するため、行動する時だ」と述べた。


チェコの労働組合、国内最大の介護施設事業者と団体協約を締結

UNIの支援を受けたチェコの介護施設労働者が、アルツハイマー患者の入居ホームを運営する同国最大の民間看護施設事業者との間で、初の全社的団体協約を締結した。

チェコのUNI加盟組織UZO傘下で福祉関係の労働者を組織する組合ALICEが、2022年3月21日、プラハで2年間の団体協約を締結した。

チェコの民間介護労働者のための協約として、史上最も強力な今回の協約は、チェコ国内32か所の同社介護施設で働く約1,500人の従業員に適用される。

平均6~8%の大幅な賃上げを実現し、最も低い賃金水準の労働者に最大の賃上げをもたらすだけでなく、安全衛生政策において労働者に強い発言力を与え、まだ組織化されていない介護施設では経営側に干渉されることなく組合が労働者と関われるようになった。

イフラヴァにある介護施設の労働者でもあるダナ・ブリコヴァALICE委員長は、「チェコの民間介護部門における画期的な協約であり、大きな成果だと認識している。今回の協約は、何百人もの介護士、看護師、洗濯係、受付係、その他スタッフの勇気と団結した取組みなしには不可能だった」と感慨深く語る。

3月21日、団体協約に署名するダナ・ブリコヴァALICE委員長(左)とペンタ病院グループのバルボラ・ヴァキュリコヴァCEO

協約の実現に向けたキャンペーンには、何百人もの労働者が参加し、動員や請願活動が行われ、一般市民からも幅広い支持を得た。

アルツハイマー患者の入居ホームを所有するペンタ病院グループのアリス・シュヴェロヴァ人事部長は、「交渉は複雑だったが、公正なものとなった。エネルギー価格その他の高騰の影響によって、施設が大きな打撃を受けた時期に交渉が開始したが、我々は相互合意に達することができた」と振り返り、「交渉に参加した方々の建設的な取組みに感謝したい」と語った。

今回の組合の勝利は、UNIの中欧組織化センター(COZZ)が支援する、迅速な組織化キャンペーンによる成果でもある。ALICEは約1年前の2022年4月に、アルツハイマー患者の入居ホームで締結した最初の団体協約に署名した。10月には、組織化の取組みが功を奏し、さらに4つのアルツハイマー患者の入居施設の労働者が組合に加入し、現在では10施設に拡大し ている。

新しい団体協約はすべての労働者に利益をもたらすが、今後、さらに残りの約20のアルツハイマー患者の入居施設で働く労働者を組織化する道も開かれている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「より良い労働条件と賃金を求めて組織化し、キャンペーンを展開し、そして立ち上がる決意を持って取組んできた施設労働者とALICEに協力できることを、誇りに思う。この成果はチェコ全土の民間介護施設で働いている人たちを勇気づけている。この地域の組織化に対するUNIの支援が実を結び、労働者の生活に真の変化をもたらしていることは、素晴らしい」と称えた。


UNI、マスマートに南アでの組合潰しを止めるよう要求

UNIとUNIアフリカ・マスマート労組アライアンスが、小売業のマスマートに対し、南アフリカのマクロ(マスマートが展開する大型量販店)店舗での組合潰しを止め、不当解雇された約400人の労働者を直ちに復職させるよう求めている。

マスマートは、マクロ労働者379人を解雇、さらに70人を停職にした。UNI加盟組織の南アフリカ商業飲食関連労働組合(SACCAWU)が、ブラックフライデーの週末を含む2022年11月26日と27日に、マクロ食料品店で組織した一連の「違法スト」や「違法ピケ行為」に参加したとの理由をつけている。

マスマート経営陣は、解雇や懲戒処分を実施するたけでなく、ストを中断させ、労働者の団結を弱めるために、スト労働者の代わりに派遣社員を配置したり、労働者を脅迫したり、組合を脱退する代わりに金銭的インセンティブを供与するなど、さまざまな戦術を駆使してきた。

SACCAWUは、労働者の復職を要求するため、この問題を調停・仲介・仲裁委員会に持ち込んでいる。

キース・ジェイコブズUNIアフリカ地域書記長は、「組合を弱体化させるために、組合潰しのあらゆる汚い手を使ってきたマクロを、断じて許すことはできない。我々はマクロ労働者とSACCAWUに連帯し、マクロ経営陣が解雇された労働者を直ちに復職させ、誠実にSACCAWUとの公正な協約を交渉するよう、強く求める」と語気を強めた。

米小売大手ウォルマートが所有する同社と、組合との間の交渉は、SACCAWUの12%の賃上げと最低月給8000ランド(435米ドル)の要求に対し、マスマートがわずか4.5%の賃上げを提示したため、決裂した。

7か国の労働組合が加盟するUNIアフリカ・マスマート労組アライアンスのメンバーは、マクロ経営陣に対し、解雇された労働者を復帰させ、SACCAWUの公正な要求を受け入れるよう、求める文書を提出した。

労働組合の要求の全文は以下の通り:
・ 全面的な賃上げ、900ランドまたは12%のいずれか大きい方
・最低賃金8000ランド
・販売員の手数料マージンを10%から20%に上げる
・カテゴリー3の労働時間を月160時間から195時間に増やす。
・13か月目の賃金を12月の賃金から分離
・制服手当100ランド
・協約期間中の人員削減の停止

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「南アの兄弟姉妹は一人ではない。UNI世界商業部会は、世界中で160以上の労働組合と400万人の商業労働者を代表し、SACCAWUとマクロ労働者に全面的な連帯を表明する。マクロは組合潰しをやめ、労働者に仕事を戻さなければならない」と強調した。


戦火の中で組織化するウクライナの医療従事者を支援

ウクライナの医療従事者が、戒厳令の制約、砲撃の絶え間ない脅威、戦中に医療専門職として働くことの重圧に負けず、自らの権利を求めて立ち上がり、不正と闘い、労働組合を結成している。

2023年2月下旬、ポーランドにあるUNIの組織化センターCOZZが設立した「ユニオン・ヘルプ・レフュジーズ(UHR)」が、 Be Like Nina のリーダーやメンバー20人を対象に、会議を開催した。 Be Like Ninaは、戦争が始まる前に草の根の動員を開始し、その後、医療従事者の労働運動/労働組合へと成長した。

3日間にわたる会議では、労働組合の戦略に関するトレーニングが行わ、また心理学を専門とする2名のUHRスタッフによるワークショップでは、戦時下での生活や仕事による精神的負担に対処するための方策が共有された。

UHRにとっては、戦争によって看護師や医師が日々経験している苦難を直接聞く機会となった。多くの参加者が、2022年2月にロシアが侵攻して以来、今回ポーランドで開催された会議で初めてぐっすり眠れたと語った。ウクライナでは、今も毎日空襲警報が発令される地域があり、いつロケット攻撃があるかも分からない厳しい状況だ。

医療従事者からは、戦争や過重労働による緊張からくる不安、疲労、集中力の低下といった共通の症状が報告された。戦争のトラウマで感情が「凍りついている」と語った参加者もいた。ある看護師は、ストレスレベルが高すぎて手が震え、集中力が低下し、30年来行ってきたレントゲン撮影を正確に行うことが難しくなってしまったと言う。さらに、使用者から叱責されるのではないかという恐怖も、彼女の不安を増幅させている。

雇用の安定は、医療部門の労働者にとって大きな不安となっている。なぜなら、離職して仕事を失った他の医療従事者に、簡単に取って代わられる可能性があるからだ。労働者は、陰湿な賃金政策や看護師と医師の間の不平等な地位を報告し、看護師は医療ミスのスケープゴートとして濡れ衣を着せられたりする等の状況を語った。さらに、この部門の賃金はもともと非常に低かったが、戦争による物価の上昇で、生活が一層困難になった。

医療従事者が直面する困難にさらに拍車をかけるように、昨年7月には、ゼロ時間契約の合法化が議決され、国の労働法による保護から労働者の7割を除外する法案が可決された。また戒厳令によって、一週間の労働時間が40時間から最長60時間に引き上げられ、最低休息時間は24時間に短縮された。

しかし、Be Like Ninaの活動家たちは、恐れることなく反撃している。この運動は、2019年11月にUNIの会合に出席していたニナ・コズロフスカ氏が、医療部門の劣悪な労働条件と低賃金を是正するという政府の空約束に対する不満をFaceBookに綴り、他の医師や看護師たちにも自らの困難な経験を共有するよう、促したことから始まった。

Be Like Ninaの共同設立者であるオクサナ・スロボディアナ氏は、「以前は、医療従事者には何の影響力もなく、使用者と政府だけが政策を議論し、我々に多くの心理的圧力をかけてきていた。しかし、この状況が変わりつつある。使用者や政府は、我々が医療従事者の大きな運動であることを認識し、我々の要求に耳を傾け始めている」と振り返る。

戦争によって、多くの医療従事者が国内外に避難し、ウクライナからの脱出を余儀なくされた人もいれば、国内で数ヶ月間働いた後に再び海外で働く人もいる。ポーランドに難民として逃れてきた医療従事者だけでなく、UHRはトレーニングを通じて、国境の両側で働く人々の支援も始めている。

ラファル・トマシャクCOZZ事務局長は、「このトレーニングが、勇気ある(主に)女性たちにとって、どれほど価値のあるものであったかを、見聞きすることができ、感慨深く、やりがいのあるまたとない経験となった。逆境にもかかわらず、組合を結成しようという強い意欲を持って、会議を終えてくれたことを知り、とても嬉しい。現在ポーランドや欧州の他の国々で活動しているBe Like Nina運動のメンバーがおり、今回のトレーニングは、この12ヶ月間、UHRのプログラムがポーランドで行ってきた支援との間に明確なつながりがある。UHRがこうした素晴らしい労働者と組合を支援する新たな方法を構築したことは、誇らしい」と述べた。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「UNIは、戦争の試練やトラウマにもかかわらず、自らの権利を求めて闘い続けているウクライナの勇気ある医療従事者を支援することができ、誇りに思う。UNIの加盟組織による難民支援プログラムが、国外脱出を余儀なくされた労働者や、ウクライナで組織化する医療従事者を支援することができて、喜ばしい」と語った。


UNI、国際家事労働者連盟のエリザベス・タン書記長に全面的に連帯

UNIは、国際家事労働者連盟(IDWF)および世界の労働組合運動の仲間とともに、優れた組合指導者であるエリザベス・タンIDWF書記長の状況を、憂慮しつつ注視している。同書記長は、2023年3月9日、「国家の安全を脅かす」との嫌疑で香港の警察当局に逮捕され、現在は保釈中で進展を待っている。

UNIと同書記長の協力関係は、彼女が香港労働組合連盟を率い、そのエネルギッシュで若いチームが、警備員や清掃員の労働基準を引き上げる世界的なキャンペーンを積極的に支持していた20年近く前まで遡る。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、タン書記長について、「献身的な労働組合活動家であり、極めて誠実な人柄。幸運にも2000年代にタン書記長と密接に仕事をすることができたが、彼女は常に、取り残されて『見えなくされている』弱い立場の労働者に、とりわけ焦点をあててきた。彼女のアプローチは一貫して、より恵まれた環境にいる労働者だけでなく、すべての労働者の賃金と条件を引き上げなければならないというものであり、UNIの全幅の信頼を得てきた」と語った。

UNIは、世界で最も強い信念を持つ優れた労働組合活動家の女性の一人であるタン書記長に、全面的に連帯を表明する。

タン書記長は、UNIと世界中の2000万人の組合員の全面的な支持を受けている。我々は、この状況の前向きな解決と、世界中の労働者の権利促進に向けて、共に取組みを続けていく機会を待ち望んでいる。


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