欧州電気通信事業者協会(ETN)およびUNI欧州ICTS部会に代表される欧州テレコム部門の社会パートナーは、職場におけるあらゆる暴力とハラスメントを非難する。
我々は、職場における暴力とハラスメントが、労働者と組織の双方に影響を及ぼす深刻な問題であることを認識し、ジェンダーに基づく暴力やハラスメントを含む職場におけるあらゆる形態の暴力やハラスメントを排除し、すべての人にとって健康で安全な職場環境を促進するため、共に尽力する。
脅迫と差別は、良好な精神衛生に対する大きな脅威である(OECD, 2019年)。欧州生活労働条件改善財団による欧州労働条件電話調査によると、特にサービス業と販売業の労働者は、さまざまな種類の脅迫の標的になっている(12%)。同調査によると、「女性のサービス業・販売業の労働者のうち約4%が、望まない性的注目を受けたと報告し、7%が、暴力、いじめ、嫌がらせを経験したと報告している[1]」
我々は、職場における暴力やハラスメントの問題が、労働組合と使用者の間の社会対話と団体交渉を通じて対処され、職場の安全衛生に関する労働者の適切な共同決定権が尊重されるよう、望むものである。
我々はこうした状況において、従業員の職場での暴力の経験には、男女差があることを認識している。この全体的な取組みの一環として、我々は、ジェンダーに配慮したアプローチに対する認識を高め、労働条件におけるジェンダー不平等に取り組み、セクハラを含む職場における女性に対するあらゆる形態の暴力を排除していく。我々は、家庭内暴力が職場環境に影響を与えることを認識し、また使用者はパートナーである労働組合と協力し、家庭内暴力の被害者に対する適切な支援と安全対策を、団体交渉を通じて政策に組み込むことができるようにしていくことができるのである。COVID-19パンデミック、そしてリモートワークや新しい形態のハイブリッドワークの大規模な導入によって、家庭内暴力の問題が増大しており、仕事に関わる問題として、取組んでいかなければならない[2]。
また我々は、すべての労働者が第三者からの暴力やハラスメント、セクシャルハラスメント、差別を受けることがないようにすることを決意する。第三者からの暴力やハラスメントとは、スタッフが職場で受ける可能性のある、同僚によるものではない虐待を指す。これは、技術者が一般市民から攻撃を受けたり、コンタクトセンターの従業員が顧客から嫌がらせを受けたり、従業員がオンラインでの嫌がらせの標的になったりするようなケースを指す。
我々は、すべての労働者がいかなる暴力やハラスメントも存在しない安全な環境で職務を遂行できるよう協力し、すべての個人にとって安全な場所としての「仕事」を促進していく。より具体的には、我々は、「仕事に関する第三者による暴力・ハラスメントに取組み、これを防止するためのEU多部門社会パートナー指針(2010年)」の行動計画における関連する成果と勧告、およびEU部門横断社会対話プロジェクトの「仕事の世界における暴力とハラスメントの排除」における勧告を、統合していくこと想定している。
これらの目標の実現に向けて、我々は包括的な戦略を構築するために社会対話と団体交渉を促進し、実施と監視のメカニズムを確立または強化していく。また、救済措置の利用、被害者への支援、ツール、トレーニングに関する成功事例を共有する。
我々は必要に応じ、利用しやすい形で意識啓発を行っていく。可能な限り、仕事の世界における暴力とハラスメントが防止されるよう、使用者が適切な措置をとることを支援していく。
職場の暴力やハラスメントの予防に向けた包括的アプローチは、確固たる政策から始まる。労働安全衛生の管理に関する、包括的なアプローチにおいては、個人、グループ、組織への影響を含め、暴力とハラスメントの心理社会的リスクが考慮される。
次の段階では、危険を特定し、リスクの評価がなされる。ここに含まれるのは、職場において何が暴力やハラスメントの引き金になりうるか、また、それをいかにして防ぐことができるかを、認識することである。
危険が特定された場合、それについて労働者は知らされなければならず、また労働者は職場で暴力やハラスメントを引き起こす可能性のあるものは何か、またそれをどのように防ぐことができるのかについて、情報が必要である。労働者が職場で直面する可能性のある危険について認識できるようにするためには、トレーニングも重要である。
また、効果的で安全かつ信頼できる苦情処理メカニズムを確保するためのトレーニングも必要であり、これには、事件が発生した際の報告方法に関する従業員への研修も含まれる。従業員は、職場が暴力問題を提起する上で安全な環境であり、従業員の懸念が慎重かつ専門的で機密性の高い形で扱われるよう、保証されなければならない。目撃者や内部告発者の扱いも同様である。
また管理職にある者は、職場のハラスメントや性的暴行に関する苦情をどのように処理するのが最善であるかについて訓練を受けなければならず、また被害を受けた従業員が利用できる支援や救済措置について、熟知していなければならない。また、自組織内におけるいかなる種類の差別的な行動にも加担してはならないことを認識する必要がある。
また社会パートナーは、他の形態の暴力とは異なり、しばしば匿名の加害者によって行われる、あらゆる形態のサイバー暴力を非難する。また、社会パートナーは、 ETNOによる児童保護タスクフォースの取組みについても評価する。これは、ETNOメンバーが既存および潜在的リスク、新たな傾向を特定・理解し、新たな対策を導入し、既存の枠組みを改善できるよう、共通理解を構築し認識を深めること目指すものである。その上で、ICTサービスとその使用が子どもにとってより安全なものであるよう、貢献していく。
電気通信部門の社会パートナーは、暴力やハラスメントに抗する過程において、あらゆる組織が異なる段階にあるとを認識するが、各組織の特性と能力に応じ、模倣から学び、共通の認識を促進し、その他の適切な措置を構築できるよう、尽力する。
リセ・フールETNO事務局長は、「職場に暴力はあってはならず、いかなるハラスメントも最大限に強い言葉で非難されなければならない。オープンかつ包摂的な対話を通じてこそ、革新的な潜在能力を十分に引き出し、社会的な関わりを強化し、創造的思考を育むことができる。人々が職場で安全であるようにすることは、事業を成功させる上で核となる」と語った。
オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「仕事の世界における暴力やハラスメントに、我々が共に取組んでいくことが重要だ。ICT部門の使用者を、この重要な取組みのパートナーにすることができ、喜ばしい。暴力やハラスメントの防止、苦情処理、効果的な救済には、トレーニング、実施、そしてモニタリングが必要だ。この強力な声明は、これらの目標を共に実現するという我々の決意を示している」と、述べた。
[1] EUROFOUND (2022), WORKING CONDITIONS IN THE TIME OF COVID-19: IMPLICATIONS FOR THE FUTURE, EUROPEAN WORKING CONDITIONS TELEPHONE SURVEY 2021 SERIES(WORKING CONDITIONS IN THE TIME OF COVID-19: IMPLICATIONS FOR THE (EUROPA.EU))
[2] ユーロバロメータの調査(2022年3月)によると、EUの女性の77%が、COVID-19パンデミックによって自国の女性に対する身体的・精神的暴力が増加していると考えている。(HTTPS://WWW.EUROPARL.EUROPA.EU/NEWS/EN/PRESS-ROOM/20220223IPR23904/NEW-EUROBAROMETER-SURVEY-HIGHLIGHTS-SEVERE-IMPACT-OF-COVID-19-PANDEMIC-ON-WOMEN)