2月 2023のお知らせ

ブラジルのUNI加盟組織、看護師最低賃金を求めて動員

2023年2月14日、ブラジル全土で数千人の医療労働者が動員され、2022年に政府が法律で承認・認可したものの、連邦最高裁長官の措置により停止された看護師の全国最低賃金の実施を要求した。ブラジルのUNI加盟組織は、ミナスジェライス、バイーア、サンパウロ、パラナ、リオデジャネイロなど、いくつかの州で行動を起こした。

看護師の全国最低賃金を求める闘いは30年以上続いており、今回の勝利は全州の医療看護労働者の連盟・総連合の働きのおかげである。この成果により、労働者は看護師に4,750レアル、看護技師に3,325レアル、看護助手・助産師に2,375レアルの最低賃金が設定されることとなった。

サンパウロ州医療労連とブラジル一般労組(UGT)に加盟するカンピーナス医療労組のソフィア・ロドリゲス・ド・ナシメント委員長は、「これ以上、労働者は待てない。この法律は施行されなければならない。病院や民間医療施設は、昨年からすでに新しい最低賃金を支払えたはずだ」と訴えた。

CSPコンルータス(労働組合と民衆運動の連合体)に加盟するベロ・ホリゾンテ及び地域医療サービス施設従業員労組(SINDEESS)のホセ・マリア・ペレイラ委員長は、 「命がけで患者のケアに尽力している何千人もの看護師の福利のために、すでに承認されているこの法律の施行は、不可欠だ」と説明し、「最低賃金を守るために闘うだけでなく、看護師のみならず、すべての医療従事者の賃金を引き上げることが非常に重要だ」と述べた。

一方、アレッサンドラ・ガデルハ・デメーロ・バイーア看護師労組(SEEB)委員長と、サラ・ノヴェス・マスカレンハスSEEB広報部長は、2023年2月14日にサルバドールで行われたデモとストライキは、バイーア看護フォーラムが全国看護フォーラムと連携して企画したと表明し、「この集会の目的は、ルーラ大統領が一刻も早く暫定措置に署名するようにすることだ。その草案は、すでに厚生省のメンバーや国会議員によって作成されている。 それによって、暫定措置は法的効力、つまり『賃金フロア』をもつことになる」と説明した。

看護師の全国最低賃金は、2022年8月に議会で承認された。使用者団体が推進した違憲訴訟は、連邦最高裁判所で支持された。

ルイス・ロベルト・バローゾ最高裁判事は、公的医療従事者の最低賃金を賄う計画を提示できるよう、この法律の効力を60日間停止する差し止め命令を出し、それから150日以上が経過した。ニシア・トリンダーデ保健大臣は最近、事態の打開と全国看護師最低賃金の実施を約束した。

昨日の行動に参加した労働組合やその他の組織は、最低賃金が現場の全労働者にとって実現するまで、闘争を維持すべく、今後も尽力する。マルシオ・モンザネUNI米州地域書記長は、「加盟組織の団結と、全国の看護師最低賃金の実施という目標を必ず実現するであろうこの闘争を称賛する」と述べた。


ロシアのウクライナ侵攻から一年、UNIは難民支援を継続

ウクライナでの戦争開始から1年、UNIは、ユニオン・ヘルプ・レフュジーズ(UHR)プログラムを通じ、ポーランドに到着したウクライナ難民への支援を行ってきた。ワルシャワのUNI COZZ組織化センターが2022年3月に開始したこのプログラムは、はじめにヘルプラインを設置し、これまでに数千件の相談を受け、200件以上の労働者に対する搾取事案に対応してきした。

このチームは、労働者が怪我の補償や未払い賃金を獲得し、不当解雇と闘い、書面による雇用契約を確保するのを支援するだけでなく、難民が住む場所を見つけ、滞在を合法化し、権利を有する給付を受け取ることも、サポートしてきた。

UHRを通じて、難民はポーランドで活動する他の政府機関やNGOが提供する340以上の様々な種類の支援の窓口にアクセスすることができ、またすべての資料は母国語に翻訳されてきた。またUHRは、難民支援に携わる主なNGOと提携し、救済と法的支援を提供してきた。

UHRの教育プログラムは、難民として、また労働者としての権利を行使する方法について、特定の問題に関する実践的なアドバイスや、より高度な法的情報を人々に提供している。またUHRは、難民や労働者としての権利、労働組合加入によるメリットについて、短い動画や情報画像を定期的に作成し、UHRのFacebookやInstagramといったソーシャルメディアで共有している。

UHRは、難民をポーランドの労働組合に繋ぐだけでなく、今なおウクライナで働く組合員を対象に、オンラインおよび対面での組織化訓練も実施している。

ラファル・トマシアクCOZZ事務局長は、「国際連帯のおかげで、UHRのUNIチームは、何百人もの難民(そのほとんどが女性)が仕事を見つけ、搾取と戦い、不透明な状況にあっても生活を営むために自身の権利を学べるよう、支援することができている。我々は、この血なまぐさい戦争の罪なき犠牲者である難民のために最善を尽くし続け、また一年が過ぎてしまう前に、平和が訪れることを願っている」と語った。


UNI、南・東南アジアのジェンダー平等を支援するガイドを作成

UNI機会均等局は、南アジア、東南アジアの労働組合におけるジェンダー平等を支援するため、2つの新しいツールを公開した。

現在、英語、スペイン語、バハサ語、タイ語、ベトナム語で読むことができる 『ジェンダー平等:労働組合員のための実践ガイド』と『仕事の世界における暴力とハラスメント:ILO190号条約に関する労働組合のための研修ガイド』は、暴力とハラスメントだけでなく、ジェンダー平等に関する概念の理解に役立つ情報が盛り込まれ、研修やワークショップのためのアイデアが示されている。

ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長は、「労働組合や仕事の世界におけるジェンダー平等の推進には、スキル、トレーニング、能力開発が不可欠」とした上で、「多言語で提供されるこの実用的でわかりやすいガイドは、この地域における我々のメンタリング・プログラムを後押しし、加盟組織にとって有用なツールとなることを期待している」と語った。

このガイドは、UNI Apro、UNI機会均等局、ドイツ労働総同盟教育支部(DGB-BW)の連携の下で昨年開始した南アジア/東南アジアのメンタリング・プログラムの一環として作成された。プログラムには、地域の9か国、28組合の120人以上の女性が参加しており、今後3年間で拡大し、加盟組織のさらに多くの女性に対するエンパワーメントを目指している。

プログラムの一環として、女性は交渉、コミュニケーション、リーダーシップ、計画、ジェンダー主流化などの労働組合の基本的なスキルについて訓練を受け、プロジェクトサイクルを通じて互いを指導・支援するメンター/メンティーのタンデムを組むこと活動が支えられている。


職場におけるLGBTI+労働者の権利強化と保護を!

労働組合は、LGTBI+労働者の権利を向上させるため、学習、トレーニング、キャンペーンに焦点を当てていかなければならない―UNIのLGBTI+ネットワークにオンラインで集った加盟組織の約100が受け取ったメッセージだ。

アンティオキア大学のギジェルモ・コレア・モントーヤ教授は、労働組合はLGBTI+コミュニティにとって重要な味方であり、またそのような存在になり得るが、性自認や性の多様性の問題について理解を深めること、そしてステレオタイプを避け、例えば労働者が人種や能力などの他の要因によって影響を受ける場合には、差別が複合的に交差している状況を考慮することが重要である、と述べた。

このことは最近、アルファベット労組が実施したグーグルの下請け労働者に対する調査で浮き彫りになったもので、年収に関して、LGBTQの下請け労働者は異性愛者の同僚より平均15%、黒人やヒスパニックの労働者は白人の同僚より20%、障がいを持つ下請け労働者は健常者の同僚より平均18%、それぞれ低いという結果が出ている。

国によっては、労働法においてLGBTI+の権利が認められていなかったり、同性愛が違法となっていたりするところもあり、また違法でない場合でも、組合を含めて差別は蔓延している。

レズビアンであることを理由に最初の仕事を失ったことを明かした、ジェンダー正義の活動家であるジェーン・ピリンジャー氏は、以来、LGBTI+の人々の権利擁護のために尽力してきた。権利はもろいものであり、職場においてLGBTI+に対するハラスメントやヘイトスピーチが増加していることは、多くの報告で明らかになっていると指摘した。

また、社会対話と団体交渉は、すべての労働者にとってより良い結果をもたらすのであり、組合は使用者との団体協約にLGBTI+の権利を組み込むことで、強力な役割を果たすことができると強調した。そして、暴力やハラスメントに対するILO第190号条約の文言を、組合がLGTI+の権利を擁護するためにどのように利用できるかを解説した。

ジェイムズ・カバルーゾ氏は、GUFsのLGBTI+ 労働者のプロジェクトのコーディネータを務めており、世界中で行動を起こし、多言語で利用可能な様々なリソースを提供している。

米国・北米食品商業労組(UFCW)のミシェル・ケスラー氏は、「LGBTI+労働者の半数しか、職場が安全な場であると感じていない」と指摘しつつ、組合によるLGBTI+についてのトレーニングによって実際に変化が生じており、「訓練を受けた労働者は、経営陣に訴え、苦情を申し立て、同僚のために立ち上がる傾向がある」と述べた。 UFCWの「OUTreach」プログラムは、LGBTI+労働者を保護する方法について、何千人ものリーダーや職場代表を訓練してきた。これは、Z世代の21~27%がLGBTI+を自認していることからも、特に重要である。

 また、オランダのFNV労組のマリスカ・エグザルト氏は、オランダ郵便におけるトランスジェンダー労働者に関する団体交渉の成果を紹介し、その結果、性転換を行う労働者に対し、10年間で24週間の有給休暇を与えることができたと発言した。

その他の発言者としては、アルゼンチン国立銀行のセレステ・ペレシノ氏とアレハンドラ・エストゥープ氏が、同行におけるトランスジェンダー労働者の割当に関する優良事例を共有した。

ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長は、「平等と多様性は我々の強みであり、LGBTI+労働者の権利が攻撃にさらされる中、労働組合として、彼らの権利強化に取組み続ける必要がある。すべての労働者が安心して働けるよう、利用可能な研修資料やリソースを、ぜひ活用していただきたい」と締めくくった。


UNI、マイクロソフトとアクティビジョンの合併が労働者に与える影響を考慮するよう、EUに要請

2023年2月下旬、欧州委員会は、懸案となっているマイクロソフトとアクティビジョン・ブリザード(ABK)の合併が競争に与える影響について、公聴会を開く予定だ。UNIは規制当局に対し、この合併が消費者だけでなく労働市場に与える影響についても考慮するよう、要請している。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「欧州委員会が、この合併による消費者への影響について注目していることは承知しているが、労働者にとってより公正なビデオゲーム労働市場を実現する上で、合併が及ぼしうる影響についても無視するわけにはいかない」と指摘し、「この業界では、労働者は長時間労働と低賃金によって押しつぶされ、セクハラや差別にさらされている。労働者保護の強化が必要な業界であり、労働者の権利に対するマイクロソフトのコミットメントは、労働者保護の強化を実現する上で、役立つだろう」と述べた。

マイクロソフトとABKの合併は、労働者に対する市場支配力を増大させ、労働独占を悪化させる可能性がある一方で、団体交渉を促進する画期的な合意は、合併後に労働者がより良い条件を獲得しうる、強い救済措置でもある。合併計画を発表して以来、マイクロソフトはABKの数千人の従業員を対象とする中立保持協定を、米国のUNI加盟組織である米国通信労組(CWA)と締結している。この協定は、テックおよびビデオゲーム業界では唯一のものであり、合併後の会社において、マイクロソフトが進んで組合を承認し、嫌がらせや脅迫のない結社の自由を尊重することを約束するものだ。マイクロソフトは、CWAとの合意以外にも、全従業員の組合加入の権利を尊重することを約束している。

2022年にUNIがビデオゲーム開発に携わる29か国の労働者を対象に行った調査では、同部門における深刻な問題が明らかになった。職場問題を報告した回答の中で、最も多く挙げられたのは低賃金(66%)であり、欧州の労働者に限ると、その割合はさらに高くなる(77%)。職場で問題があるとした女性回答者の半数近く(46%)とノンバイナリーの回答者の43%が、ジェンダーによる差別があると回答した。

ホフマンUNI書記長は、「団体交渉は、合併が労働市場に及ぼしうる悪影響を是正するための手段であり、業界に存在する問題を解決するためにも必要なもの」とその意義を強調し、「組合がもたらしうる変化は、より民主的な職場、より高い賃金、より高い平等性だ」と加えた。

米国など多くの国では、中立保持協定のない状況で組合を結成することは、ほぼ不可能である。ABKのような企業では、強力な反組合キャンペーンが行われており、経営陣が反組合のプロパガンダを広める会議に、労働者を強制的に参加させている。組合活動家や代表者は日常的に平然と解雇されており、労働者が組合加入の権利を正当に行使する選択は、困難になっている。欧州では労働者が組合を結成する際の法的保護が強化されているが、ビデオゲーム産業における深刻な職場問題にもかかわらず、労働者は今も組織化に苦労している。この地域で、ビデオゲームの会社が承認している組合は、ほんの一握りだ。

ABKでの組織化の取組みに対し、最近、経営陣は反組合キャンペーンを展開している。組合は、経営側の違法行為について、米国連邦政府に複数の告発をしている。

一方で今年に入ってから、マイクロソフトの子会社であるゼニマックス・スタジオで品質管理テスターとして働く労働者が組合を結成し、中立保持協定に基づき、組合は承認された。米国では他に組織化されたゲーム労働者はほとんど存在しない。

ホフマンUNI書記長は、「UNIは一貫して、労働者の犠牲の上に成り立つ独占と企業権力の強化に反対してきた。だが今回のケースでは、我々は労働者と労働市場に及ぶ、より大きな社会的影響を重視しており、委員会にも同様の考慮を求めている」と述べた。


フィンランドで20万人の商業労働者が大幅な賃上げを獲得

フィンランドでは、UNI加盟組織PAMが交渉した新しい産別協定によって、約 20 万人の商業労働者が正当な賃上げを獲得した。賃上げは今後2年間で段階的に実施され、商業労働者は、少なくとも月165ユーロの賃上げと400ユーロの一時金を受け取ることになる。この動きは、小売・サービス部門全体の労働者に恩恵をもたらすことが期待されている。

今回の協定は、この部門で第2波となるストが実施される前夜に、PAMとフィンランド商業連盟の間で成立した。アニカ・ロニサリネンPAM委員長は、「このような良い成果を得るには、ストの実施とストの計画が大きく影響した。すべての商業部門の組合員が、称賛に値する」と述べた。

賃金水準は6%以上引き上げられ、そのうち初年度の引き上げ率は3.88%、2年目は2.14%となっている。昇給は2023年6月1日から適用される。この協定では、有給家族休暇も改善されることになっており、出産しない親(父親、里親、養親、近親者等)は、現行の6日ではなく、36日の有給家族休暇を取得できるようになる。

グローバルな刺激を得て

PAMは、過去にドイツの商業労組ver.diが、インフレに見合った賃上げを勝ち取った事例に刺激を受けた。この勝利は、欧州だけでなく世界中の組合がインフレに直面した賃上げを要求する中で生まれたものだ。

「これは欧州中の商業労働者の勝利だ」と祝福したオリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「今回の例が示すのは、一国の労働者の勝利が、他の場所で組合が団体協約を獲得するために、どのように活かされているかということだ。相互依存がますます進む世界では、国境を越えた展望を持つことが、労働者の力を構築する上で極めて重要だ。我々は共に、組合を強化し、労働条件を向上させるための国際的な戦略を構築している」と述べた。


KB金融グループ労組、従業員持株会に参加し、コーポレートガバナンスの改善に向け動員

KB国民銀行のコーポレートガバナンスを強化し、不採算の海外投資による損失を改善するため、UNI加盟組織である韓国金融産業労組(KFIU)傘下のKB国民銀行労組は、2023年3月24日に開催される韓国最大の金融グループの株主総会で株主権を行使する。

同組合は、最近提出した株主提案により、同行の取締役会に対し、経験豊富な銀行家を独立した社外取締役に選任するよう求めている。組合はまた、グループの定款を改正し、政府または行政機関の上級職員が「退任」後、直ちに金融グループの上級幹部のポストに就くことを制限するよう、求めている。組合は、会社に対して韓国の「公務員倫理法」の適用を望んでおり、提案では、グループ内の取締役レベルへの任命を検討するには、少なくとも3年間の空白期間を設けることを求めている。

KB金融グループ労組は、2万人の従業員と管理職を代表する従業員持株会(ESOP)会員を代表し、グループの海外投資による継続的な損失に深刻な懸念を抱いていると表明した。

特に、2兆ウォンを投資したインドネシア・ブコピン銀行では、現在までに7000億ウォンの損失を計上し、黒字化の兆しはない。こうした理由から組合は、リム・キョンジョン氏を取締役に任命することを提案した。同氏は、韓国輸出入銀行に33年間勤務し、そのうち6年以上、インドネシアのマンディリ銀行でCEOを務めた経歴を持つ。

リュ・ジェガンKB銀行労組会長は、「我々が正当な株主として提案を出していることについて、国民の理解と支持を求めたい。2017年にルールが改正され、株主が社外候補者を提案できるようになってから、今回で6回目の挑戦だ。しかし、株主が提案した有能な人材を取締役会が承認し選任した例は、いまだかつてない。だが、KB金融グループの海外事業部門の課題を是正し、株主と金融消費者のために機能する会社にすべく、決して諦めることはない」と決意を語った。

また、パク・ホンベKFIU委員長は、「今回、経営陣が我々の提案を受け入れても、社外取締役の中立性・独立性は維持される。ESOP株主権が資本市場における株価や価値評価にマイナスの影響を与える懸念はない」と付け加えた。


H&M、スウェーデンでゼロ時間契約の導入を計画

ファストファッション大手のH&Mは、スウェーデンで大規模なリストラ計画を発表し、同社の労働者に厳しい影響が及ぶことになる。経営陣は、スウェーデンの69店舗で働く最大1,500人の従業員の労働時間を大幅に削減し、新規採用者にはゼロ時間契約を導入する意向だ。この計画は、H&Mを組織化しているHandelsから、激しい批判を受けている。

これまでフルタイムで契約していたスタッフが、週5時間に減らされるケースもある。リンダ・パルメッツホーファーHandels委員長は、「30年間この会社で働いてきた人が、こうした仕打ちにあっている例も複数ある」と厳しく批判した。

2022年10月に、H&Mは同国の従業員400人を削減すると発表したが、同時に解雇は行わないと主張した。この計画は、同社が、従業員がオファーを断って自主退職することを期待していたことを示すものだ。

同委員長は、「しばらくしてから、経営陣はこのようなやり方で400人を削減できると期待していたのだということを理解した。結局のところ、断る人はたくさんいる。週に5時間しか働けないような契約で、どうやって生活していけますか?そんなものは全く通用しない」と続けた。

国際的な期待に反して

H&Mは、労働者に公正な生活賃金を確保するため、長期的な取組みを続けてきた。また、スウェーデン政府が立ち上げを主導した社会対話強化に向けたILOの主要なイニシアティブ「グローバル・ディール」にも署名している。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は 、「同社が本社を置くスウェーデンで、こうした発表が行われたことは、憂慮すべきことだ。世界中の労働条件を向上させるための長年の良好な取組みとは、真逆の方向に進んでいる。労働時間が削減されれば、この困難な時期に人々の賃金が大幅に減額することになる。H&Mの労働者を貧困に陥れるプログラムよりも、良いものを期待している」と述べた。


テック労働者、大量解雇にストライキや組織化で対抗

広範囲に及ぶ解雇や労働条件の低さに抗して、世界中でテック労働者がストライキや抗議行動、組合結成の取組みを行っている。

米国テキサス州オースティンでは、2023年2月上旬、グーグルの持株会社アルファベットで、労働者グループが下請け従業員としては初となるストライキを決行し、新たな歴史を刻んだ。グーグルが運営するYouTube Musicの下請けであるコグニザントでストを打った労働者は最近、組合結成について投票も行った。アルファベット労組(AWU)によると、労働者の「時給はわずか19ドル」だという。

フランスでは、ユービーアイソフトの開発に携わる技術者が、同社では初となるストを決行した。経営陣が経営の見通し悪化を理由に3本のゲームの中止を発表し、同社のCEOがこれを労働者の責に帰したためだ。

スウェーデンでも、テック労働者の組合加入が大幅に増加しており、スポティファイではUnionenが中心となってキャンペーンを展開している。ドイツの組合ver.diも、スポティファイ、SAP、TikTokで労使協議会を設置するキャンペーンを行い、テック業界での存在感を高めている。 スペインでは、ツイッターのイーロン・マスクCEOが、スペイン人スタッフの8割以上を解雇する計画を発表後、労働者総同盟(UGT)と労働者委員会(CCOO)が、同社に対してスペインの労働法を尊重するよう要求した。

ペペ・アルバレスUGT書記長は、「同社は26人のスペイン人労働者をメールでの通知で解雇しようとしている。わが国では、集団解雇には協議期間を設け、15日間交渉し、労働当局に伝えることが必要だ。そうでなければ、解雇は無効だ」とツイートし、組合が傍観することはないと明言した。

こうした行動が浮き彫りにしているのは、雇用の安定、解雇が労働者の暮らしに与える影響、そして職場の多様性やテック企業が労働者を支援する責任など、より幅広い問題に対する、テック労働者の懸念の高まりだ。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「この非人道的な大量解雇の波の中で、テック労働者が世界に示しているのは、職場の公平性を促進する上で、組合は必須のツールだということ」と指摘し、「組合は、使用者の恣意的で不当な行為に対する防御壁の役割を果たし、すべての従業員に対する公正な賃金と福利厚生の確保に役立っている。労働者の権利を擁護するために団結することで、テック労働者は、すべての人にとって、より公正で公平な未来を作るために不可欠な役割を果たすことができる」と組合のもとで団結する意義を強調した。

ビデオゲームの開発に携わる労働者も近年、低賃金や不十分な福利厚生、強制残業や「クランチ」文化の蔓延、ハラスメントや差別が横行する職場風土など、業界の労働条件に対して声を上げている。また、韓国のネクソンやスマイルゲート、スウェーデンのパラドックスインタラクティブ、フランスのユービーアイソフト・スタジオ、そして最近では米国のアクティビジョン・ブリザード傘下のレイブン・ソフトウェア等で、労働者が組合を結成、加入し始めている。UNIの呼びかけにより、世界20か国のゲーム開発に関連する労働組合の代表が2022年の夏にドイツ・ベルリンに結集した。会議では、世界中で労働基準を引き上げ、安全な労働時間・労働条件を確保するグローバル・キャンペーンの展開に向け、国際的な取組みについて活発に議論がなされた。

UNIが29か国のビデオゲーム開発にかかわる労働者を対象に行った調査によると、低賃金(66%)、過剰な長時間労働(43%)、不十分な福利厚生(43%)、職場での差別やセクハラ(35%)などの仕事に関する問題が、従業員の不満や職場における組合結成を望む原動力になっていることが明らかになった。回答者の多数(79%)が、職場での組合結成について、支持または強い支持を表明している。


米国アウトドア用品店の労働者が組合潰しに抗してスト、組合結成へ向けて投票権を獲得

2023年2月初旬、米国の大手アウトドア用品店REI の労働者が、オハイオ州クリーブランドの店舗で、集団行動の力を見せつけた。

組合潰しが激しくなる中、労働者は2月3日(金)にUNI加盟組織である 小売・卸売・百貨店労組(RWDSU)と共にストライキを実施、公正な組合選挙を要求した。

RWDSUはストに先立って 、同社が違法な組合潰しを行い、労働者を監視しているとの申立てを、全米労働関係委員会に行っていた。

労働者がストを決行してからわずか数時間後に、REI経営陣は立場を一変した。これにより、資格を有する全従業員が、3月3日に実施予定の組合結成に関する選挙で、投票権を得られることになった。

クリーブランドの店舗販売員ジョン・ギンター氏は、地元のラジオ番組で「我々は基本的に、生活できる賃金、REIの経営理念にあるようにアウトドアで過ごせるようになることを要求している…(中略)…つまりワークライフバランスを改善し、自分自身を大切にできること、パートタイムにせよフルタイムにせよ、その雇用形態がどうであれ、あらゆる従業員の手当を拡充することを要求している」と語った。

オハイオ州の店舗は、REIの中で3番目に組織化された場所となる。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「ほんの数か月前まで組合がなかった場所や企業にも、組織化の波が広がっているというのは、非常に刺激的であり、REIの労働者は、1店舗づつ、業界を変えようとしている」と喜び、「恐怖を感じたり脅迫を受けたりすることなく組合を結成できるよう、この労働者、そして我々の部会全体の労働者とともに、立ち上がっていく」と締めくくった。


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