1月 2023のお知らせ

英国のストライキ制限法案を破棄せよ!

EUおよび欧州域内のあらゆる国・部門の数千万人の労働者を代表する欧州労働組合連合 (ETUFs)は、最低限の業務実施を義務付ける英国政府の法案を強く非難する。この法案は撤回されなければならない。

英国保守党政権は、労働者との交渉を拒否することで、混乱を引き起こしてきた。労働者は、社会的な承認とまっとうな賃金・労働条件、生活費危機への対応を要めている。 保守党政権は、公共サービス労働者の賃金と人員配置に関する現在の争議について、真摯な交渉を行って解決を目指すかわりに、公共交通、医療、教育、消防・救助、国境警備、原発廃止措置機関の労働者に最低限の業務水準の維持を義務付ける新法案を押し通そうとしているのである。この法案では、ストライキ参加者が就労通告に従わない場合、解雇される可能性がある。

英国はすでに、投票権や投票数の基準値について非常に厳しい規則を設けており、このことは、英国が他の欧州各国に足並みを揃えているという議論とは矛盾する。例えば、鉄道労組は、賃金、雇用削減、 労働条件の変更について労働争議を行っている。数十年にわたる鉄道民営化により、労働条件だけでなく、英国全土の鉄道サービスの質や安全性、運行本数も脅かしているのだ。英国市民が、相次ぐストライキを広く支持しているのは、こうした理由からだ。英国政府は、この大規模な抗議の根本原因の解決に取組み、鉄道システムの再国有化を進める代わりに、基本的な労働組合の権利を妨げることを決めこんだ。これは民主主義のための闘いであり、欧州の労働組合は、英国労組を全面的に支持する。

欧州の他の国々と比べて、英国のスト権は最も厳しくなっている。英国政府は、労働組合の権利をこれ以上制限するのではなく、権利拡大に向けて動くべきだ。英国政府は最近、ストライキに対抗するための派遣会社の利用を解禁した。これは、労働者や組合と建設的な交渉プロセスを開始するやり方とは、到底言えない。

全てのETUFsは、 英国全土の加盟組織と連帯する。 英国の労働組合は、最低限度の業務維持を義務化されることで影響を被る部門の労働について、正当な評価を当局に要求しているのだ。我々は英国政府に対し、団体交渉こそが紛争解決の手段であるとの認識を求める。

欧州芸術エンターテイメント連盟(EAEA)、欧州建設林業労連(EFBWW)、欧州食品・農業・観光関係労連(EFFAT)、欧州ジャーナリスト連盟(EFJ)、欧州公務労連(EPSU)、欧州運輸労連(ETF)、教育インターナショナル欧州地域(ETUCE)、欧州警察連盟(EURO-COP)、インダストリオール・ヨーロッパ、そしてUNI欧州は、各組織における英国の加盟組織を強く支持し、イギリス労働組合会議(TUC)が呼びかけた2月1日の行動日に連帯を表明する。この行動日には、国内各地で多くの抗議行動と部門間で組織されたストライキが実施される予定である。


ネパールのマンモハン記念医大・教育病院で団体協約

300の病床と約500人の労働者を擁する教育機関であるマンモハン記念医科大学・教育病院が、最近、組合結成に向けた取組みで重要な節目を迎えた。労働者は過去10年、労組結成に向けて活動してきたが、反組合主義者の経営陣の抵抗に直面してきた。こうした状況の中でも取組みを続け、また医療労組UNIPHINからの絶え間ない支援の下、2022年についに組合登録を果たした。

重要な合意事項の1つは、労働者の昇給に関するものだ。労働者は、レベル0~6では3000ルピー、レベル6~8では2000ルピー、レベル9以上では1000ルピーの昇給を受ける。さらに労働者には正式な辞令が交付され、5年以上勤務した労働者は、自動的に昇格する。通勤手段も団体協約の主要な論点であり、経営陣は労働者の自宅から職場までの往復の交通手段を提供することに同意した。夜勤者には夜勤手当として150ルピーが支給される。また必要な場合には、前払い賃金の受け取りも可能となる。

団体協約のもう一つの重要な点は、男女の労働者の出産休暇について合意したことだ。女性労働者には60日間、男性労働者には9日間の出産休暇が与えられる。また、家族が死亡した場合、葬儀のための休暇が必要となるため、労働者は経済的支援を受けられるようになる。また、団体協約には、労働者がSSF(ストライキ解決フォーラム)に訴える前に経営陣とあらゆる問題について話し合うことができる条項も含まれており、組織の成長に応じて2年ごとに昇給が行われる。経営陣はまた、差別のないより安全な労働環境づくりに取組み、研究室と放射線管理部門の労働者には危険手当として500ルピーが追加支給となる。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「これはUNIPHINとマンモハン記念医科大学・教育病院の労働者にとって大きな勝利だ。ネパールの労働者の権利強化に向けた勝利の一歩となる、この団体協約を歓迎したい」と述べた。

シヴァ・KC委員長は、「組合が団体交渉で合意したことの多くは、我々の10年にわたる努力の成果だ。当院の労働者の権利のために闘い続け、他労組にも支援と連帯を示していく」と決意を語った。


女子プロサッカー選手、妊娠中の賃金で画期的な勝利

2023年1月中旬、アイスランド出身のサラ・ビョーク・グンナルスドッティル選手が、妊娠中の賃金が全額支払われなかったとして、所属していたフランスのオリンピック・リヨンと争っていた裁判で、画期的な勝訴を獲得した。

この判決により、リヨンでチャンピオンズリーグを2度制した同選手は、FIFROからの圧力により導入されたFIFAの出産規定を通じ、クラブに賠償請求を行った初の選手となった。判決は、リヨンに対して82,000ユーロ以上の未払い賃金の支払いを求めている。

2021年1月以降、FIFAの出産に関する規定では、女性選手は妊娠してから産休(最低でも14週間、給与の三分の2をが支払われる)開始まで賃金の全額を受け取る権利がある。しかし、グンナルスドッティル選手がリヨンに在籍中、クラブは同選手が産休に入る前の賃金を支払っていなかった。

32歳のグンナルスドッティル選手は、判決が下った後、スポーツメディアの『プレイヤーズ・トリビューン』に「これは 『単なるビジネス』ではない」と記した。

「これは、労働者として、女性として、人間としての私の権利の問題」と語る、今はイタリア強豪ユベントスでプレーするミッドフィルダーは、「この勝利は自分のことよりも大きなもの。現役中に子どもを持ちたいと願うすべての選手にとって、経済的な保証になるということ。多分とか、不確かなものではない」と語り、FIFPROがクラブに適切な対応をとらせるために素早く介入してくれたことについても触れた。

ヨナス・バエル・ホフマン国際プロサッカー選手協会連盟(FIFPRO)事務局長は、「これは、サラ・ビョーク・グンナルスドッティル選手とその家族だけの問題でなく、世界中のサッカー選手にとっての勝利。選手が個人として、また集団として、変化を起こしたことを示す歴史的な好例となった」と祝した。

世界中の選手協会のリーダーが、母親である選手や母親になることを望む選手への支援を強化する必要性を、女性スポーツの成長にむけた重要な課題であり機会の一つであるとして、強調している。UNI世界選手会は、グンナルスドッティル選手を祝福する声明の中で、「効果的なプロトコルの導入と選手の取組みがあれば、万人のためにスポーツを発展させることができるのだということが示された。競技者は人間第一であり、産休は差別を防ぎ、女性の働く権利を守るために絶対に必要なもの」 と指摘している。


新たな調査結果:人権侵害の監視システムで、8か国のアマゾン労働者が体調不良や不安感

UNIがアマゾン労働者を対象に行った、この種のものとしては初となる国際的な調査によると、同社のパフォーマンス監視システムは、労働者に「ストレス、プレッシャー、不安感、奴隷やロボットであるような気分、信頼されていない感覚」を与えていることが明らかになった。

調査対象となったアマゾン労働者の半数以上が、同社の監視システムが自身の身体的健康(51%)と精神的健康(57%)に悪影響を与えていると回答した。


UNIの委託を受け、ジャロー・インサイト(英国の労働者協同組合)が実施したこの調査では、米国、英国、イタリア、フランス、ドイツ、ポーランド、スペイン、オーストラリアの8か国で、アマゾン労働者を自認する倉庫労働者、ドライバー、事務員から2,000件の回答を得た。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「世界中の労働者が、出勤すると気分が悪くなる、不安になると言っているのに、アマゾンは見て見ぬふりをするわけにはいかない」と述べ、「アマゾンは、職場をより安全にするためのデータと資源を持っている。ただアマゾンは、自らの仕事を改善するために声を上げ、組合の安全衛生委員会のような実績ある解決策を求める労働者を無視しているだけ」と鋭く批判した。

主な調査結果は以下の通り:
●57%以上の回答者が、アマゾンの監視が精神衛生に悪影響を与えたと回答。
●51%以上の回答者が、アマゾンの監視システムは、彼らの健康状態全般に悪影響を及ぼしていると回答。
●59%の労働者がアマゾンの監視は過剰だと感じている。
●53%の回答者が、アマゾンの監視技術により職を失うことを恐れている。
●78%の配送ドライバーが、アマゾンのノルマ達成は難しい、もしくは非常に難しいと感じている。
●58%の回答者が、アマゾンは労働者について収集したデータをどのように利用するか明確に説明していないと回答。
●特に65.7%のドライバーは、生産性に関する監視から生じる身体的健康への悪影響を報告。

調査回答全体として、国や職務を超えた明確な図式が浮かび上がってくる。調査対象となった労働者の大多数は、アマゾンの業務遂行状況の監視は過剰かつ不透明であること、アマゾンの期待は非現実的であること、この非現実的な期待に応えるための努力は身体の健康、そして精神衛生に対してはさらに深刻な悪影響を及ぼすとの考えを表明している。

アマゾンは最先端の技術と設備を導入しているにもかかわらず、アマゾン倉庫での負傷率は業界平均よりも、かなり高いことが調査で分かっている。今回の調査結果は、この明らかな矛盾に光を当てている。労働者の証言によると、労働者が肉体的・精神的な健康を犠牲にして、よりハードに、より速く働くことを強いられるのは、まさにこの最先端技術が原因となっていることが多い。

過敏性腸症候群(IBS)などを患い、トイレに行く時間が長くなる複数の労働者が、休憩時間を記録している同社の悪名高い「タイム・オフ・タスク」制度との葛藤や、会社からの配慮がなかったことを報告している。

「一日中、溺れているような感じ。理不尽な期待に応えるために危険な運転をしている」米国・ドライバー
「今日、過敏性腸症候群のためにアイドリングストップ違反の警告を受けた。病気のために仕事を休んだり、トイレ休憩を取ったりすることで、常に嫌がらせを受けている」 米国・倉庫作業員
「高速道路で喘息の発作が起き、吸入器を取るためにバッグに手を入れる必要があったため、違反となった。漫然運転として記録された」米国・配送ドライバー
「手首の手術を2回受けたが、仕事復帰後、目標に達しないことで嫌がらせを受けた。毎日、否定的な評価を受け、医師から手首に過度の負担をかけないようにとの忠告があっても、なぜ目標に到達できないのか説明しなければならなかった。手根管症が再発し、肘の神経絞扼まで広がったため、現在は再び仕事を休んでいる」英国・倉庫作業員
「出荷処理工程の担当としてノルマを達成することは、物理的に不可能に近かった。最低ノルマを達成するためにシフトの間ずっと早歩きをする必要があり、腱炎を発症した。そのため出社できなくなり、結果的に職務放棄で解雇された」米国・倉庫作業員
「背中に多くの問題を抱えていたが、非常に悪化してしまった。痛みについて訴えたが、一度も深刻に受け止めてくれなかった」フランス・倉庫労働者
「みんなが休憩の規則を守るようにさせたいのはわかるが、健康上の問題で長めのトイレ休憩が必要な私の休憩時間の大半は、トイレの空きを待つ時間」米国・倉庫作業員

アマゾンで働くことの精神的代償について、労働者が数字や言葉で明確に表現したのを見てきたが、特に倉庫においては、マネージャーからの積極的な働きかけがないことが、こうした状況についての、一定の要因となっているだろう。労働者が語っているのは、基本的な共感を欠いた経営文化、つまりその基盤となる、容赦のない、基本的に非人間的なアルゴリズムを反映した企業風土だ。
「息子を亡くし、復帰した日に人事にクレームを入れられた」 米国・倉庫作業員
「時給が上がっても誰も喜びに来てくれないが、疲れていて成績がトップでない日は、真っ先に理由を聞きに来る」 フランス・倉庫作業員
「アマゾンで働くのは体力的に疲労するので、期待値を少し下回ることもある。リーダーにその日の作業ペースが遅い理由を話すと、理由には全く気にかけてくれず、もっと頑張れとだけ言われる」ポーランド・倉庫作業員
● 「口頭での注意や指導もなく、人事に報告を入れられた。一日、出来の悪い日があっただけで。」米国・ 倉庫作業員
「いつもより作業が遅いと、理由を聞きに来る。些細なことでも食ってかかる」スペイン・倉庫作業員

監視装置によって、アマゾンは労働者の生産性を数値化し、測定可能な目標値(倉庫では一般的に「レート」と呼ばれる)を設定している。今回の調査結果が示すのは、労働者の間で、アマゾンの設定目標は不合理であるとの思いが広がっているということだ。調査した従業員の54.2%が、アマゾンの生産性目標を達成するのは難しい、または非常に難しいと回答している。
「休憩時間は非常に厳格で、2分以上超過するとマネージャーに報告がいく。休憩時間は最後の商品をスキャンした時点から開始し、休憩後の最初の商品をスキャンした時点で終了する。実際に外で腰を下ろした時に始まるのではないので、休憩時間で数分を損していることになる」オーストラリア・倉庫作業員
●「コンピューターソフトウェアは出荷された荷物の数を数えるだけなので、機器の故障や箱のサイズの間違い、返品の戻し入れなど想定されていない」 米国・倉庫作業員
「電子システムによるエラーの監視は、技術的条件や機械の不具合を考慮しない」 ポーランド・倉庫作業員
「一日中カメラの直接の監視下にある理由など全くない。私のプライバシー権の完全かつ明確な侵害だ」米国・配送ドライバー
「倉庫で発生する多くのタスクは計測されていない。だからマネージャーは、労働者が働いているにもかかわらず、何もしていないと思い込んでいる時もある」フランス・倉庫作業員

回答者は一貫して、アマゾンでは生産性が最重要であり、安全性は二の次であると指摘している。
「アマゾンは安全性よりも生産性を優先する。ひどい怪我人が出ない限り、安全面の改善を図ることはないだろう。そうでなければ、何度も同じことが起きてから、変更を加えるだろう。そしてまずは、怪我人を責めようとするだろう」米国・倉庫作業員

UNIはこれまでも、報告書『アマゾン・パノプティコン』で、プライバシーを侵害してくるアマゾンの包括的な監視システムの範囲について詳しく説明してきた。


UNI書記長、ダボス会議で労働者エンパワーメントの重要性を発信

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、ダボスで開催された今年の世界経済フォーラムで、「分断された世界の再建には、労働組合が不可欠」との緊急メッセージを発信した。

2023年1月16日、世界経済フォーラムが 1週間におよぶ 年次会合を開幕する中、反貧困を掲げる国際NGOオックスファムが、新たな報告書を発表した。その中では、UNI書記長の指摘が強調されている。オックスファムによれば、世界の上位1%の超富裕層は2020年以降に新たに創出された富のほぼ3分の2を占め、世界人口の残りの99%の人々の約2倍に相当する資産を獲得している。

ホフマン書記長は、「労働組合は、不平等の拡大という分断の根本原因に対する、欠くことのできない解決策だ。労働者の声を抑圧し、労働者が交渉の席に着くことを否定しているビジネスエリートには、世界の分断は解決できない」と指摘し、「今年のダボス会議では、ドイツの労働大臣や米国のマーティン・ウォルシュ労働長官など、団体交渉の果たす重要な役割を認識する声が多く聞かれた。企業がこうしたメッセージを聞き届けたと願いたい」と語った。

パネル討議『万人のための生活賃金』の中で、ホフマンUNI書記長は、数十年にわたる団体交渉への持続的な攻撃が、いかに富と権力の不均衡をさらに拡大させてきたかについて、論じた。だが、世界中の労働者は、前例のない反撃を開始している。また週4日労働制に関するパネルでは、同書記長は、どのような勤務形態が最も効果的であるかを決める上で、組合と交渉することの重要性を強調し、「万能薬の解決策」は存在しないとコメントした。

「今、集団行動や労働組合に対する人々の熱意は、私がこれまで経験してきた中で、最も高まっている。世界中の労働者が、仕事で致命的なウイルスに直面し、彼らの家族は世代を超えた生活費危機のただ中を乗り切ろうとしている。人々は正当な反応として、公平な分け前を要求している」と指摘した。

人々のこうした要求に反して、各国の中央銀行は金利の引き上げによって物価上昇に対応しており、経済を不況に陥れ、何百万人もの労働者を失業の危機にさらしている。例えば、欧州中央銀行総裁はダボス会議で、利上げ「継続」の方針を言明した。

ホフマン書記長は、「多くの労働者にとって、金利上昇の影響は、以前より賃金が目減りするのではなく、賃金がなくなるということ。一時的とみられるインフレに対抗するために不況のリスクを冒すのは、病気より悪い治療法だ」と述べ、「世界各国の政府は、企業の利潤追求や価格破壊を阻止するために規制の力を行使すべきであり、賃金に関する団体交渉を支援すべきだ」と語った。だが、もし不況に陥れば「不況の力は、尊厳と経済的正義を求めるこの願いを消滅させることはないだろう。むしろ、労働者は保護の強化を求めるだろう」と述べ、「つまり労働組合は、労働者の期待に応えるため、取組みを一層強化しなければならない。組織化を支援し、団体交渉を拡大しなければならない。ストライキを闘う労働者に国際的な連帯を示す必要がある。インフレを煽る企業が暴利を貪るのを止めるよう、声を大にしなければならない。投資家に対し、結社の自由や団体交渉の権利といった基本的人権を守る責任を果たさせる必要がある。我々は、企業がサプライチェーン全体を通して労働者に対して責任を負うよう、法制化を推進していかなければならない」と力説した。


「公的資金による公共調達の底辺へ向かう競争を止めよ」 欧州議会議員が欧州委員会に意見書

欧州議会議員が、公共調達の是正に関する公式質問書を、欧州委員会に提出した。どのようにして「労働条件における、公的資金を投入した底辺に向かう競争を止める」つもりなのか、明確にするよう同委員会に求めている。

5つの政治グループからなる60名の欧州議会議員が、公共調達とディーセントワークに関する欧州委員会への質問書に共同署名を行った。議員が提出した要請書は、欧州委員会が正式な回答を行う公式な機関プロセスである。

毎年、EU域内の各国政府や公的機関は、民間企業が提供する商品やサービスに2兆ユーロを支出している。この支出は本来、労働条件を改善する決定的な役割を果たしうるが、実際には多くの場合、底辺への競争に拍車をかけている。

現在、公共調達規則は、他のすべての考慮事項よりも価格を優先させる形で作られている。UNI欧州の調査では、EUにおける入札の半数は、EU公共調達指令にのっとり、最低価格であるという事実のみに基づいて発注されていることが明らかになった。このような状況下において企業は、労働者の基本的な団体交渉権を抑圧することで、労働条件を相互に切り崩す動機が与えられているのである。

質問書の中で議員は、UNI欧州が欧州委員会とEU議長へ送った公開書簡を参照し、欧州委員会に対応を求めている。この公開書簡は、160を超える欧州議会議員が、いかに労働者のための改善を求めているか(労働協約を結んでいない企業に公契約を与えない迅速な立法措置)を伝えるものである。

社会民主進歩同盟の雇用・社会問題委員会コーディネーターを務めるオランダのヨンゲリウス議員は、「公契約を発注する際、政府にとって最も価格の低いことのみが優先されるならば、企業は契約獲得のために労働条件を引き下げ、職場の民主主義を弱体化させるだろう。EU全体で、公契約の半分が何よりも価格を優先しており、このことが底辺への競争を助長している。こうした事態が生じないよう、欧州委員会は責任をもって公共調達指令を是正しなければならない」と述べた。

オリバー・レティクUNI欧州書記長は、「我々には、EUが労働者に対する責任を果たすよう、積極的に重要な働きかけをしている議員集団がいる。欧州議会議員が、その組織的な声を活用して公共調達の是正を推し進めているという事実は、この差し迫った問題の解決に向けた議員の取組みを示している。公的資金がソーシャル・ダンピングを助長している状況は、制度が労働者を失望させているということ。今こそ公共調達指令を是正する時だ」と、強調した。


韓国労組への強制捜査は、労働運動と民主主義に対する攻撃

2023年1月18日、韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)と韓国保健医療労組(KHMU)の事務所が、情報機関によって大々的な抜打ち強制捜査を受けた。韓国労働運動に対する恥ずべき攻撃であり、基本的な民主主義の原則に対する冒涜である。

UNIは、今回の強制捜査を非難し、韓国の労働運動への支持と連帯を改めて表明する。

組合は民主主義の柱であり、韓国の労働組合運動は、同国の経済正義を一貫して推し進めてきた。今回の強制捜査における国家情報院の不当な実力行使は、労働運動を抑圧し、威嚇しようとする試みでしかない。

KHMUは、組合の声を封じ込めようとする権力側の動きに抗戦することを表明している。韓国の労働運動は孤立していない。UNIと世界中の加盟組織は、KHMUやKCTUとともに、働く人々に対するこの攻撃に立ち向かっていく。

KHMUの声明は以下―

1月18日の朝、国家情報局が我々の事務所に踏み込み、強制捜索を行った。 我々は、労働運動に対する公安警察の弾圧を強く非難し、徹底的に闘う。
●労働運動に対する公安警察の弾圧を強く非難する。
●国家情報院は18台もの警察バスと数十人の警察官を動員して保健医療労組の事務所に押し入り、午前9時から12時半まで3時間以上にわたり、家宅捜査と差し押さえを行った。
●保健医療労組が弁護士の立会いのもと、捜索・差し押さえに協力する意思を表明したにもかかわらず、数十人の捜査官と警察官を動員して威圧感を与えるような捜査が行われた。
●てのひらで空は隠せないのであり、我々は標的を定めた治安維持策動に決して屈しない。公安警察による労働運動への弾圧を強く糾弾し、断固としてこれに立ち向かう。


欧州労使協議会をめぐり、重要な投票

欧州議会では、欧州労使協議会(EWC)指令の改正に関する立法イニシアチブ報告書の採択を行う。UNI欧州は他の姉妹組織とともに、欧州議会議員に対し、この報告書の支持と採択を呼びかけている。

欧州労使協議会は極めて重要な存在であり、多国籍企業の戦略的意思決定プロセスに労働者を関与させることが、その目的である。こうした機構が適切に実施されれば、労働者の権利を保護し、企業や公共サービスの長期的な持続可能性を確保し、変化を公正に予測・管理する上で重要な役割を果たすことができる。デジタル化、脱炭素化、ウクライナ戦争やエネルギー価格危機の産業への影響など、事実上国境を越える性質の課題に取組むには、欧州労使協議会レベルでの対話が不可欠である。職場の民主主義は、社会における民主主義の道を拓くものでもあり、ポピュリズムや極右政治思想が台頭する今般、その必要性はますます高まっている。

だが実際には、労働者の情報、協議、参加に関する欧州法の文言と精神が常に遵守されているわけではなく、経営陣による不遵守を阻止する上で十分に効果的かつ強力な制裁措置がとられているわけでもない。現在、数十億規模の収益をあげる多国籍企業がEWCの権利を侵害した場合、労働者1人当たり23ユーロ(マルタ)または30ユーロ(リトアニア)といった低額の罰金が設けられている。EWCの基本的な権利の行使は、法廷でEWCの権利を守ることが多くの場合ほぼ不可能なままとなっており、課題である。

デニス・ラトケ議員の報告書は、法的枠組みの実施強化を求めており、情報と協議の要件が無視された場合の経営判断の一時停止を含む適切な制裁措置などの基本的要件と、国境を越える事項の明確な定義、そしてEWCや特別交渉機関(SNBs)が効果的に司法にアクセスできるようにすることを求めている。この報告書は、労働組合の支援がEWCの運営にプラスとなっていることを示す複数の調査結果を基に、労働組合専門家によるEWCに対する支援も奨励している。

欧州議会での投票は2023年1月19日に実施予定であったが、延期されている。UNI欧州は、この投票と重要法案の成立を確信している。


ブラジルの民主主義に対する攻撃を糾弾する

世界2000万人以上の労働者を代表し、UNIおよび加盟組織は、2023年1月8日に、テロリストとボルソナロ前大統領の極右支持者によって行われた、ブラジルの首都ブラジリアでの政治的暴力行為と公共財の破壊行為を激しく糾弾する。これはブラジルの民主主義に対するあからさまな攻撃であり、近年世界中で頻繁に見られる選挙結果の拒否と民主主義制度の弱体化という傾向に、またひとつ不名誉な事態が加わることとなった。

我々は、連邦直轄区政府、その治安部隊および軍警察司令官の責任を問うという要求を全面的に支持する。また、このような反民主主義的なテロ行為を許容し続けている国内権力者の共謀関係を非難し、ルーラ氏を大統領に選出した6000万人のブラジル人の民意を無視したこれらの行為に参加、指導、資金提供したすべての者に対し、法の完全適用と適切な処罰および制裁を要求する。

我々は、ブラジルの加盟組織を引き続き支援するとともに、社会の最貧困層への支援、労働権の尊重強化、環境保護に向けてルーラ政権が推進するすべての取組みに対する支援を強化する。

ブラジルの人々、特に貧困層および労働者は、2016年のクーデター以降、大きな被害を受けてきたのであり、ブラジルが国家再建とその対外的イメージを再構築していくプロセスにおいて、公然と混乱を生み出すような行動をとる余地などないのである。

UNIはすべての当局に対し、民主主義と民主的に選出された政府を尊重するよう求め、ブラジルと世界における我々の権利と自由を守るために行動を続けていく。

クーデターは二度と許さない!


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