UNIがアマゾン労働者を対象に行った、この種のものとしては初となる国際的な調査によると、同社のパフォーマンス監視システムは、労働者に「ストレス、プレッシャー、不安感、奴隷やロボットであるような気分、信頼されていない感覚」を与えていることが明らかになった。
調査対象となったアマゾン労働者の半数以上が、同社の監視システムが自身の身体的健康(51%)と精神的健康(57%)に悪影響を与えていると回答した。
UNIの委託を受け、ジャロー・インサイト(英国の労働者協同組合)が実施したこの調査では、米国、英国、イタリア、フランス、ドイツ、ポーランド、スペイン、オーストラリアの8か国で、アマゾン労働者を自認する倉庫労働者、ドライバー、事務員から2,000件の回答を得た。
クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「世界中の労働者が、出勤すると気分が悪くなる、不安になると言っているのに、アマゾンは見て見ぬふりをするわけにはいかない」と述べ、「アマゾンは、職場をより安全にするためのデータと資源を持っている。ただアマゾンは、自らの仕事を改善するために声を上げ、組合の安全衛生委員会のような実績ある解決策を求める労働者を無視しているだけ」と鋭く批判した。
主な調査結果は以下の通り:
●57%以上の回答者が、アマゾンの監視が精神衛生に悪影響を与えたと回答。
●51%以上の回答者が、アマゾンの監視システムは、彼らの健康状態全般に悪影響を及ぼしていると回答。
●59%の労働者がアマゾンの監視は過剰だと感じている。
●53%の回答者が、アマゾンの監視技術により職を失うことを恐れている。
●78%の配送ドライバーが、アマゾンのノルマ達成は難しい、もしくは非常に難しいと感じている。
●58%の回答者が、アマゾンは労働者について収集したデータをどのように利用するか明確に説明していないと回答。
●特に65.7%のドライバーは、生産性に関する監視から生じる身体的健康への悪影響を報告。
調査回答全体として、国や職務を超えた明確な図式が浮かび上がってくる。調査対象となった労働者の大多数は、アマゾンの業務遂行状況の監視は過剰かつ不透明であること、アマゾンの期待は非現実的であること、この非現実的な期待に応えるための努力は身体の健康、そして精神衛生に対してはさらに深刻な悪影響を及ぼすとの考えを表明している。
アマゾンは最先端の技術と設備を導入しているにもかかわらず、アマゾン倉庫での負傷率は業界平均よりも、かなり高いことが調査で分かっている。今回の調査結果は、この明らかな矛盾に光を当てている。労働者の証言によると、労働者が肉体的・精神的な健康を犠牲にして、よりハードに、より速く働くことを強いられるのは、まさにこの最先端技術が原因となっていることが多い。
過敏性腸症候群(IBS)などを患い、トイレに行く時間が長くなる複数の労働者が、休憩時間を記録している同社の悪名高い「タイム・オフ・タスク」制度との葛藤や、会社からの配慮がなかったことを報告している。
●「一日中、溺れているような感じ。理不尽な期待に応えるために危険な運転をしている」米国・ドライバー
●「今日、過敏性腸症候群のためにアイドリングストップ違反の警告を受けた。病気のために仕事を休んだり、トイレ休憩を取ったりすることで、常に嫌がらせを受けている」 米国・倉庫作業員
●「高速道路で喘息の発作が起き、吸入器を取るためにバッグに手を入れる必要があったため、違反となった。漫然運転として記録された」米国・配送ドライバー
●「手首の手術を2回受けたが、仕事復帰後、目標に達しないことで嫌がらせを受けた。毎日、否定的な評価を受け、医師から手首に過度の負担をかけないようにとの忠告があっても、なぜ目標に到達できないのか説明しなければならなかった。手根管症が再発し、肘の神経絞扼まで広がったため、現在は再び仕事を休んでいる」英国・倉庫作業員
●「出荷処理工程の担当としてノルマを達成することは、物理的に不可能に近かった。最低ノルマを達成するためにシフトの間ずっと早歩きをする必要があり、腱炎を発症した。そのため出社できなくなり、結果的に職務放棄で解雇された」米国・倉庫作業員
●「背中に多くの問題を抱えていたが、非常に悪化してしまった。痛みについて訴えたが、一度も深刻に受け止めてくれなかった」フランス・倉庫労働者
●「みんなが休憩の規則を守るようにさせたいのはわかるが、健康上の問題で長めのトイレ休憩が必要な私の休憩時間の大半は、トイレの空きを待つ時間」米国・倉庫作業員
アマゾンで働くことの精神的代償について、労働者が数字や言葉で明確に表現したのを見てきたが、特に倉庫においては、マネージャーからの積極的な働きかけがないことが、こうした状況についての、一定の要因となっているだろう。労働者が語っているのは、基本的な共感を欠いた経営文化、つまりその基盤となる、容赦のない、基本的に非人間的なアルゴリズムを反映した企業風土だ。
●「息子を亡くし、復帰した日に人事にクレームを入れられた」 米国・倉庫作業員
●「時給が上がっても誰も喜びに来てくれないが、疲れていて成績がトップでない日は、真っ先に理由を聞きに来る」 フランス・倉庫作業員
●「アマゾンで働くのは体力的に疲労するので、期待値を少し下回ることもある。リーダーにその日の作業ペースが遅い理由を話すと、理由には全く気にかけてくれず、もっと頑張れとだけ言われる」ポーランド・倉庫作業員
● 「口頭での注意や指導もなく、人事に報告を入れられた。一日、出来の悪い日があっただけで。」米国・ 倉庫作業員
●「いつもより作業が遅いと、理由を聞きに来る。些細なことでも食ってかかる」スペイン・倉庫作業員
監視装置によって、アマゾンは労働者の生産性を数値化し、測定可能な目標値(倉庫では一般的に「レート」と呼ばれる)を設定している。今回の調査結果が示すのは、労働者の間で、アマゾンの設定目標は不合理であるとの思いが広がっているということだ。調査した従業員の54.2%が、アマゾンの生産性目標を達成するのは難しい、または非常に難しいと回答している。
●「休憩時間は非常に厳格で、2分以上超過するとマネージャーに報告がいく。休憩時間は最後の商品をスキャンした時点から開始し、休憩後の最初の商品をスキャンした時点で終了する。実際に外で腰を下ろした時に始まるのではないので、休憩時間で数分を損していることになる」オーストラリア・倉庫作業員
●「コンピューターソフトウェアは出荷された荷物の数を数えるだけなので、機器の故障や箱のサイズの間違い、返品の戻し入れなど想定されていない」 米国・倉庫作業員
●「電子システムによるエラーの監視は、技術的条件や機械の不具合を考慮しない」 ポーランド・倉庫作業員
●「一日中カメラの直接の監視下にある理由など全くない。私のプライバシー権の完全かつ明確な侵害だ」米国・配送ドライバー
●「倉庫で発生する多くのタスクは計測されていない。だからマネージャーは、労働者が働いているにもかかわらず、何もしていないと思い込んでいる時もある」フランス・倉庫作業員
回答者は一貫して、アマゾンでは生産性が最重要であり、安全性は二の次であると指摘している。
「アマゾンは安全性よりも生産性を優先する。ひどい怪我人が出ない限り、安全面の改善を図ることはないだろう。そうでなければ、何度も同じことが起きてから、変更を加えるだろう。そしてまずは、怪我人を責めようとするだろう」米国・倉庫作業員
UNIはこれまでも、報告書『アマゾン・パノプティコン』で、プライバシーを侵害してくるアマゾンの包括的な監視システムの範囲について詳しく説明してきた。