12月 2022のお知らせ

スロベニアの商業労働者、ディーセントな賃金を求めて立ち上がる

スロベニアの新しいUNI加盟組織SDTSは、11万人以上の小売労働者の部門別最低基本賃金を36%引き上げ、給付金を改善し、企業レベルの団体協約で追加の賃上げを勝ち取った。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「SDTSとTUS労組の両組織が強力なキャンペーンを展開し、労働者を組織化、動員することで団体協約を成功させたことを祝福したい」と述べ、「スロベニアの多国籍小売企業で団体協約を締結するため、今後もSDTSと連携していく」と語った。

勝利への道のりは、商業部門の労連であるSDTSがキャンペーンを成功させ、商業労働者に勤務のない日曜日を実現する新法を導入させた、2020年に遡る。

このキャンペーンに基づき、SDTSは2022年の商業部門団体協約の再交渉時に、数千人の商業労働者を動員した。主な要求に関するオンライン請願には7,100人以上の労働者が署名し、記者会見や複数のアクションも実施して世間に周知するとともに、公正な賃上げを勝ち取るという労働者の決意を示してきた。

数か月に及ぶ幾度もの交渉の末、11月下旬に商業労働者の最低総基本賃金を697.6ユーロから950ユーロに36%引き上げる合意が成立した。この基本給も、小売業を含むすべての労働者にすでに支払われているスロベニアの公式最低賃金(1,074ユーロ)を下回るものだ。

だが、小売業の最低基本給の引き上げは、部門別最低賃金に基づくいくつかの金銭手当にも反映され、部門賃金をも押し上げることになる。新たな部門別協約では、昼食手当も4.63ユーロから6.15ユーロに引き上げられ、休日手当と交通費についても改訂された。

SDTSに加盟する労組は、スロベニア最大の食品小売チェーンであるTUSの労働者を代表するTUS労組を含め、企業別の団体協約も交渉している。TUS労組は、会社との協約再交渉を利用して労働者を組織化・動員し、またSDTSおよび労働者教育センターであるCEDRAと連携して100以上のTUS店舗訪問を実施した。労働者に働きかけるべく署名運動を実施し、店舗で 370人の新規組合員を組織化した。また、倉庫で初めて組合員を勧誘し、労働者代表も参画する団体協約委員会を設置、さらには数百人の労働者による大規模な抗議行動を展開した。

130店舗以上の約1,500人の労働者が署名したストライキ支持の署名をもって、組合が2022年12月23日にスト決行の準備をしている間に、約2,800人のTUS労働者のために合意が成立した。会社の最低賃金は950ユーロから1,060ユーロに引き上げられ、労働者の店舗異動は労働者の居住地から50KM以内に制限された。また、職場で費やした時間(スタッフ会議、研修、準備、シフト後の作業など)は1分ごとにすべて労働時間にカウントされ、それに応じて報酬が支払われることとなった。


マレーシアのゲーム労組、労働法改正に備える

2022年12月13~14日、UNI世界ゲーム部会加盟組織であるゲンティン・マレーシア労組(GMBWU)およびリゾートワールド管理職労組(RWBEU)の組合員は、クアラルンプールで開催されたワークショップで、2023年1月 1日に施行されるマレーシアの改正雇用法について、詳しく学んだ。

今回の労働法改正の主なポイントは、以下の通り。
・週あたりの労働時間が48時間から45時間に短縮
・産休が60日から98日に拡大
・妊娠中の従業員の解雇を制限
・男性に対し、初めて7日間の出産休を付与(既婚男性のみ)
・労働者はフレックスタイム制度を申請可能に
・セクハラの意識啓発にむけた通知表示を企業に義務化

また、月収4,000リンギット(905米ドル)未満の労働者に対する時間外労働の規定も新たに設けられた。

ベン・ローランス・サイマンGMBWU書記長は、「ワークショップを通じてゲンティン・マレーシア労組役員は、1955年の改正雇用法、労働組合法、社会保障制度について学ぶことができた。今後も組合員にサービスを提供し、パンデミック後に組合を再建するためには、訓練と教育が不可欠だ」と述べた。

ワークショップの冒頭、組織化と能力開発について講演したモハメド・シャフィー・BP・ママルUNIマレーシア協議会議長は、COVID-19パンデミック後に2つのゲンティン労組が結集して連携することの重要性を強調した。

またワークショップでは、ゲンティン・ハイランドの組合員・労働者に影響を与える重要な問題、特に労働安全衛生についても議論が交わされた。参加者は、政府のさまざまな部署(労働力、労使関係、労働組合、社会保障)の代表から話を聞き、グループに分かれて議論した。ワークショップでは、労働者が新しい規範やデジタル化、テクノロジーを受け入れ、雇用の安定が損なわれないようにすることに警戒心を持つようになる中で、パンデミックの影響で労働者の考え方がどのように変化したかが明らかにされた。

ニド・ヌアムRWBEU委員長は、「この2日間のプログラムは、非常に有益なものとなった。効果的な組合運営について優れた講演者から明確なインプットを得ることができ、また仕事の世界における最新の動向を共有し、パンデミック後の新たな課題を克服する方法を特定し議論することができた」と語った。

ギエドラ・レリテUNI世界ゲーム部会担当局長は、ワークショップの参加者に向けて、「アジア太平洋地域は、賭博産業の主要地域としての地位を確立しており、世界のギャンブル収益の大部分を生み出している。多くのゲーム企業がこの地域に投資し、ビジネスを展開する構えを整えている。この産業の成長には、ディーセントな雇用を伴うことが重要だ。労働者の権利を守る強力な労働組合の存在が重要であり、UNIゲーム部会はマレーシアのゲンティン両労組と協力し、権利を確保することに注力している」と語った。

ゲンティン・マレーシアは、米国、バハマ、英国、エジプトでもカジノを展開するリゾート・ワールド・ゲンティン・コンプレックスを通じ、自国のカジノ市場を独占している。また、ゲンティン・グループは、シンガポールでもカジノリゾートを展開している。


このホリデーシーズン、小売労働者に思いやりのギフトを

ホリデーシーズンを迎え、小売労働者は、膨大な仕事量と、職場でのさらなる虐待や暴力、ハラスメントのリスクにさらされている ―商業労働者のこうした傾向は、食品小売と非食品小売の両方にあてはまる。家族団らんのための食事だけでなく、衣類や贈答品などの食品以外の商品を人々が買い込む季節だからだ。

UNIは、労働者の尊重を求める各国の商業部会加盟組織の取組みを支持する。

米国のUNI加盟組織である小売・卸売・百貨店労組(RWDSU)は、「小売店の従業員は、家族のために完璧な贈り物を見つける手助けをするためにいるのであって、あなたのサンドバッグになるために働いているのではない。ホリデーシーズンは誰にとってもストレスが多い。だが、小売店従業員に最大限の敬意をもって接する他に、道はない」としている。

オーストラリアの店舗流通関連労組(SDA)は、小売業者に対し、次の「SDA安全対策5か条」を実施し、悪質な顧客からの労働者保護を求めている。
1)適切な人員配置:接客に十分な人員を配置することで、顧客による乱暴な行為を防止する。
2) 悪質な顧客の出入り禁止:使用者は、虐待的な態度や暴力行為を繰り返す顧客を出入り禁止にできるようにする。
3)警備の強化:乱暴な客や、暴力的な客の行動を阻止あるいはこれらに対処し、店員保護を強化するため、より多くの警備員を配置する。
4) トレーニングの改善:虐待・暴力行為をなす顧客の対応についてトレーニングを強化し、事件の拡大、報告、管理に関する方針を改善する。
5)店舗におけるゼロ・トレランスの明確な表示:スタッフに敬意をもって接するよう、顧客に呼びかける店内での視覚的な注意喚起を行う。

アイルランドの加盟組織マンデートのゲリー・ライト書記長は、 「今年のクリスマスは、苦境にある小売労働者に思いやりを持とう」と呼びかけ、「我々は、この極めて重要な問題に関して、顧客の意識を高めるよう使用者に要請している。我々の組合員は、この明確なメッセージを伝える店頭表示を歓迎するだろう」と語った。

スペインのCCOOが発表した『商業における黒い現実』と題する新しい研究論文では、11月中旬から1月初旬までの50日間、商業従事者、特にファストファッション企業の労働者の仕事量は非常に多く、長時間労働、強いストレス、職場での虐待につながっており、ほとんどの場合、適切な休息や金銭補償もないことが明らかになった。CCOOは、ホリデーシーズンにおける商業従事者の労働条件、賃金、保護の改善に向けたキャンペーンを開始した。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、 「我々は加盟組織とともに、商業労働者の尊厳とディーセントな労働条件を求めていく」と述べ、「小売業者に対して行動を起こすよう促し、すべての顧客が労働者に相応の敬意をもって接するよう、求めている」と、コメントした。


パキスタンの銀行労組、非正規化の流れを阻止

2022年12月2日、パキスタン国家労使関係委員会(NIRC)は、農民への農業信用・融資サービスを専門とする公共部門最大の銀行であるザライ・タラキアティ銀行(ZTBL、旧農業開発銀行)で働く契約労働者を正社員として認めるべきとする判決を下し、ZTBL労組は大きな勝利を収めた。

UNI加盟組織のPBIFEF傘下であるZTBL労組は、8月初めにNIRCに対して申立てを行った。同労組は、10年以上にわたってZTBLで運転手として働いてきた3名の当該労働者に代わり、銀行に正規雇用を要請したが、繰り返し拒否されてきた。

ZTBL経営側の主張では、3名の運転手はKSSLを通じて契約・配備されており、直接の雇用関係は存在しないというものであった。他方のZTBL労組は、KSSLはZTBLによって完全 に所有・管理されており、ZTBLに労働者を派遣しているだけである実態から、ドライバーは正規雇用の社員として扱われるべきだと主張した。

NIRCは11月23日にこの申立てを審理し、 パキスタンの高等裁判所における同様の訴訟の判例に裏打ちされた主張を展開した労組側が、勝利した。

マリ・ムハマド・イスマイルZTBL労組書記長は、「我々が支援する3人の申立人は、KSSLを通じて派遣された48人の労働者グループの一部だ。今回の労使委員会の決定は、そうした他の労働者にも適用されるため、非常に重要である。彼らは今、正規の従業員として認められることを期待できるのであり、もはや銀行は、彼らの法定の福利厚生を否定することはできない」と述べた。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、ZBTL労組の率先した取組みを称賛し、「銀行のような規制の厳しい業界で、非典型労働者の権利のために闘うZTBL労組の姿勢に敬意を表したい。パキスタンの労働組合は、不当な労働慣行によって正規部門が弱体化するのを防ぐため、結集していく必要がある。従業員の側に立ってディーセントワークの確保を支えるPBIFEFとZTBL労組を祝福したい」とコメントした。

ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長も、「2014年に金融労連として再出発したPBIFEFは、この事案においてZTBL労組を支える上で、非常に重要な役割を担った。両組織を祝福するとともに、PBIFEFとその構成組織と協力し、非典型的な労働条件に苦しむ労働者の組織化を強化し、彼らが自身の権利のために交渉できるようにしていきたい」と述べた。


自動車販売員のためにギアを入れよう

UNI世界商業部会が委託した新しい調査は、自動車小売部門の動向の変化と、メーカーによる一般消費者への直接販売の増加によって、自動車販売員が直面している課題を浮き彫りにした。この調査結果は、自動車販売員の公正な移行を確保するためには、労働組合による代表と団体交渉がこれまで以上に重要であることを示している。

「自動車販売業界の変革」と題された調査論文の主な調査結果は以下の通り:
●大規模な労働力:自動車小売業には大規模な労働力が存在し、現在、自動車産業全体の雇用に占める割合は高まっている。例えば、日本やEUでは、自動車販売・整備に従事する労働者数は、自動車製造業の従業員数を上回っている。日本では、89万人が製造業に従事しているのに対し、100万人が自動車販売・サービス業に従事しており、そのうち57万1千人が小売業で直接雇用されている。

●COVID-19パンデミックの影響:2020年の軽自動車の世界販売台数は、2019年比で13.4%減少し、世界レベルで完全な回復が予測されるのは、2024年とされている。また、米国、西欧・中欧、日本など、多くの北半球の先進国の市場は、2020年代半ばになってもパンデミック前と比較して販売台数が落ち込む一方、中国、インド、ASEAN諸国では販売台数が安定的に増加し、世界の回復をリードすると予測される。

●電気自動車への移行:2021年にはバッテリー式電気自動車が480万台、プラグインハイブリッド車が180万台となり、フル電動化が予想をはるかに上回るスピードで進行している。 2028年には新車の3台に1台が、準電気自動車または完全な電気自動車になると予想される。

●整備・中古車市場:電気自動車は部品点数が少ないため、修理などのアフターサービスが少なくて済む。自動車所有者がアフターセールスにおける部品にかける支出は40%減少すると推定され、関連する整備・小売サービスに悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、中古車市場の大幅な成長により、短中期的には電気自動車への移行の悪影響が補われると見込まれる。

●オンライン販売のさらなる拡大:自動車メーカーは、2030年までに(試乗車を除く)新車購入の約80%がオンラインで完了すると推定している。また、中古車市場におけるオンライン販売のシェアは、米国で18%、欧州で10%近くに達すると見込まれる。

●新たな自動車販売モデル: テスラは、サードパーティの自動車販売業者を持たない直販網をベースに、実店舗での販売網をオンライン販売に大きくシフトさせた、新しい自動車販売モデルを開拓している。フォルクスワーゲン、アウディ、メルセデス、BMW、ステランティス、トヨタ、ボルボ、フォードなど他の多くの大手企業も、サードパーティの独立系自動車販売業者を自社の販売網に置き換えることで、同様の戦略をとっている。ある試算によると、2030年までに新車の40%がメーカーによる直販になるという。

●雇用総数は減るが、直接雇用は増える:この新モデルにより、自動車小売業全体の雇用は3〜7%減少し、雇用面で大きな転換が生じると見込まれる。 直販モデルの拡大により、自動車小売業の雇用に占める自動車メーカーの割合は10%から25%に増加が予想される。自動車小売業における雇用総数の減少よりも、自動車販売業者と自動車メーカー間の雇用の大幅な入れ替えの方が大きな問題となる可能性がある。

●M&A、そしてメガ自動車販売業者の登場:中小企業にとって環境が厳しくなっており、M&Aが加速していく可能性が高い。自動車メーカーからの圧力が強まり、従来の自動車販売店が生き残りをかけてより良い戦略を打ち出さなければならない中で、独立系の自動車販売業者間の合併による、メガ自動車販売業者の出現が目前に迫ってきている。

●スキルセットの変化:この部門の変革は、自動車小売業の労働者の職務内容や必要なスキルセットも再定義し、自動車販売員の公正な移行を確保するため、労働組合による代表と団体交渉がこれまで以上に重要になるだろう。

UNI世界商業部会自動車販売労組ネットワークは、UNIの日本加盟組織である自動車総連の提案を受け、2年前に設立された。2020年と2022年にオンライン会議を開催し、当部門の動向について議論し、国際的な意見交換と連帯を通じ、自動車販売に携わる労働者の組合の力を高めるため、さらなる機会を探ってきた。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、「電気自動車への移行やオンライン販売による自動車部門の変革は、サプライチェーンのあらゆる段階で、労働者に影響を及ぼしている。今こそ自動車販売員のためにギアを上げ、こうした労働者にとって公正な移行を現実のものとするため、より強力なグローバル労働組合運動を構築する時だ」と締めくくった。


バングラデシュで実績ある国際アコード、パキスタンに拡大

過去9年間にわたり、バングラデシュで縫製に携わる数百万人の労働者の雇用をより安全なものにしてきた国際アコードが今回、パキスタンにも拡大されることになった。

画期的なバングラデシュ・アコードを主導してきたUNIとインダストリオールは、繊維・衣料産業における安全衛生のための国際アコードを、パキスタンへと拡大することを発表した。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「バングラデシュで確立された成功モデルを他の国にも拡大することは、我々の長年の目標であった。今回のパキスタン・アコードで、我々は安全性を向上させて労働者の命を救い、また衣料品部門から家庭用繊維製品、アクセサリーへと、範囲を拡大することができる。安全性の課題に取組もうとするパキスタンから製品を調達している国際的な小売業者やブランドは、このアコードに署名してサプライチェーンの労働者に責任を持つべきだ」と述べた。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は、「パキスタンの縫製労働者は、職場でより安全な未来を手にすることができる。このプログラムが実施されれば、予防可能な死亡や事故は急速に減少するだろう。労働者は労働安全衛生に関するトレーニングを受けて力をつけ、また願わくは労働組合に加入し、自らの権利のために集団で闘うことの利点を感じるようになるだろう」と語った。

繊維・衣料品産業の安全衛生に関する国際アコードの署名企業は、企業の衣料品・繊維サプライヤーを対象としたパキスタンの包括的な職場安全衛生プログラムを構築している。繊維・衣料品産業の安全衛生に関するパキスタンの新しいアコードは、UNIとインダストリオールのGUF、アパレル企業および小売業者との間で、2023年からの暫定3年間、法的拘束力のある協定として締結された。

バングラデシュで広範に安全性が向上した成果に基づき、パキスタン・アコードには国際アコードの以下の主要な特徴がすべて含まれている:火災、電気系統、構造面、またボイラーの危険に対応するための独立した安全検査、是正の監視と支援、安全委員会の訓練と労働者の安全意識向上プログラム、独立した苦情処理メカニズム、幅広い透明性への取組み、産業における安全衛生の風土を強化するための現地での能力開発など。

ジョリス・オルデンツィール国際アコード財団事務局長は、「国際アコードの署名企業が、それぞれの衣料・繊維サプライヤーを対象とした職場安全プログラムを確立することに合意し、嬉しく思う。我々はパキスタンの関係者と緊密に協力し、我々の共同の取組みが業界と労働者にとって有益なものとなるよう尽力していく」と述べた。

バングラデシュでの実績を踏まえ、アコード署名企業は少なくとも他もう一か国の繊維・衣料生産地へ、労働安全衛生プログラムを拡大するよう求められている。署名企業の調査、広範な研究、現地関係者との協議を通じ、アコー ド事務局は主要素に基づき拡大の実現可能性を評価し、パキスタンが優先国として浮上した。同国がアコードブランドの衣料品や繊維製品の調達先として重要であることも、その理由の一つだ。

国際アコードは、パキスタンで連邦省庁や州政府、業界団体、サプライヤー、労働組合、市民社会組織と広範囲に関わってきた。パキスタン・アコードのプログラムは、これら主要関係者と緊密に協力し、国内に運営機関を設立して段階的に実施される予定だ。

このプログラムは、同国の年間200億ドル規模の衣料品および繊維製品の輸出の大部分を製造する、シンド州とパンジャブ州の500以上の工場(アコード署名企業100社以上に製品を提供)を、段階的にカバーしていくことを目指す。

パキスタンから製品を調達している国際アコードの全ての署名ブランド企業は、パキスタン・アコードへの署名も見込まれている。現在、国際アコードに参加しておらず、パキスタンから製品を調達している他のブランド企業も、この画期的な安全衛生に関する協定への参加が呼びかけられている。

協定の全文は、こちらからダウンロード。

過去の参考記事:

「縫製工場の安全性- パキスタンの優先課題」

「ラナ・プラザ事故から9年目、UNIがブランド企業各社に合意書への署名を要請」

70社以上のブランドが署名する衣料品産業労働者の安全衛生に関する国際協定が発効


UNI世界商業部会、野心的な行動計画の実現に向けてリーダーを選出

「立ち上がれ!商業労働者、今こそグローバルな運動を」をテーマとして米国・アトランタで開催されたUNI世界商業部会大会は、最終日の12月9日、組合の力を高める大胆で新しい行動計画を実行する、今後4年間のリーダーを選出した。

約30か国から結集したUNI世界商業部会の数百名の代議員は、スチュワート・アッペルバウム小売・卸売・百貨店労組(RWDSU)委員長を、UNI世界商業部会議長に再選した。

2017年からの前任期間中にアッペルバウム議長は、UNIのアマゾン・グローバル労組アライアンスを推進する等、この分野におけるUNI世界商業部会の地位強化に貢献してきた。

全会一致の採決後、アッペルバウム議長は、「我々の前に立ちはだかっている課題は非常に大きいが、我々は何をすべきかを知っている。我々には行動計画があり、この機会を生かすべきだ」と述べ、「パンデミックにより、使用者や仕事に対する労働者の見方は変わった。今、労働者はもっと多くのことを要求しているのであり、尊厳と敬意をもって扱われ、公正な賃金を受け、職場の安全が確保されなければならない。それは、組合を通じてしか得られないものだ。我々は、変化を起こそうとしている労働者を支援するため、できる限りのことをしなければならない。団結して共にこれらの課題に立ち向かっていこう」と決意を語った。

マタイアス・ボルトンUNI世界商業部会担当局長は、議長に賛意を示し、「我々の大会は、この時代の労働組合運動となるためにあり、そのためには、時代にふさわしいリーダーシップが必要だ。スチュワート議長の経験とビジョンは、いま我々が必要としているものであり、今後4年間、商業労働者のためのより強力な労働運動に必要だ」と述べた。

各地域を代表するUNI世界商業部会副議長には、永島智子(日本、UAゼンセン)、ダニエル・ロヴェイラ(アルゼンチン、FAECYS)、リンダ・パルメツホーファー(スウェーデン、HANDELS)の各氏が選出された。アフリカ選出の副議長は後日、決定予定。


責任投資原則:投資家と多国籍企業には労働者の権利を尊重する責任と機会がある

2022年11月下旬、責任投資に関する世界有数の独立機関「PRI」(Principles for Responsible Investment=責任投資原則)の年次総会が、スペイン・バルセロナで開催された。この中で、リサ・ネイザンUNIシニア投資家活動アドバイザーは、人権と財務の両面から、株式を保有する企業において労働者の権利を強化するよう、投資家に訴えた。

パネルディスカッション『人権と社会問題に対する投資家行動の強化』の中で、同氏は、リスクの特定、防止、軽減のために、国連のビジネスと人権に関する指導原則を活用すること、人権デューデリジェンスに対する投資家の支持を得ること、人権と社会問題に体系的に取組むことなどの主要トピックを取り上げた。また、労働者の権利侵害は9年ぶりの高水準を示して世界的に危機的状況にあり、結社の自由と団体交渉の確保に向けた投資家の行動が緊急に求められていると主張した。また、労働者の権利侵害は、労働条件を低下させるだけでなく、アマゾンのような企業においては規制、業務、風評上のリスクをも生じさせる。組織率の低下は、不平等や政治的・経済的不安定の増大と関連しており、経済全体にシステミックなリスクをもたらしている。

さらに同氏は、「労働基本権に関して我々が直面している危機は、特に重大だ。結社の自由と団体交渉は、力を与える権利。労働者が組合に加入することでエンパワーされれば、安全衛生やジェンダー、人種間の平等など、他の人権を守ることができる」と述べ、「投資家は自らの責任において、労働者が自らの人権を守れるよう環境を整えることができ、その結果、人権など多くの重大なリスクを軽減することができる。 これを実現するためには、投資家や企業が、労働者や労働組合と連携して取組むことが不可欠である」と締めくくった。

今回のPRI年次総会は、労働者資本委員会(CWC)が、投資家と共に労働者の権利を向上させるためのグローバルキャンペーンを開始した数日後に開催された。CWCは、キャンペーンのキックオフの一環として、投資家向けガイド『繁栄の共有:結社の自由と団体交渉のための投資家の役割』を発表した。このガイドは、人権に関する投資家責任を概説し、労働基本権を尊重することが長期的に財務上の利益にかなうと主張するとともに、投資家の実践的な行動のロードマップを提供している。

UNIは、ネットワーク事務局のメンバーおよび報告書の共著者として、CWCの取組みに参加している。


欧州委員会に対し、議員160名が公共調達指令の是正を要求

労働者の待遇について底辺への競争を助長する公的資金の流れを阻止しようとの機運が高まっている。5つの異なる政治グループからなる160名の欧州議会議員が、ディーセントワークを実践する使用者とだけ公共調達の契約が締結されるようにするよう、求めている。UNI欧州は、欧州委員会に公開書簡を送り、この呼びかけを伝え、欧州全体の労働者を失望させている公共調達指令の是正を要求している。

公的機関は、 民間企業が提供する商品やサービスのために、毎年2兆ユーロ以上を支出している。これはEUのGDPの14%に相当する。このうち半数の契約は、価格だけを基準に締結されており、これによって底辺への競争が煽られ、企業が労働者の賃金や条件について互いに切り下げ、職場の民主主義を抑圧する誘因となっている。

欧州中の労働組合は、EUの法律が団体交渉に与える壊滅的な影響に警鐘を鳴らしている。確立された交渉文化と適正な労働条件を持つ多くの企業が、公契約への参入を阻まれている。劣悪な賃金、長時間労働、組合忌避をビジネスモデルとしている企業を相手に、競争できないのだ。

欧州議会議員の広範な連合は、シンプルで効果的な解決策を求め、労働者と労働組合を支援している。価格を最優先とするのではなく、すべての公契約は労働者と団体協約を結んでいる企業に委ねなければならない。そのためには、EUの公共調達指令は是正が必要である。

労働組合や議員だけでなく、専門家もこの指令の変更を求めている。最近、欧州議会で開催された公共調達に関する専門家の聴聞会では、「現行の法律は破綻しており、是正すべき」との明確なメッセージが示された。

公的資金がディーセントワークを確保する企業に流れるようにするキャンペーンを支援したい方は、 こちらから。


UNI欧州ケア部会:介護部門における暴力とハラスメントに取組む

2022年11月下旬、ポーランド・ワルシャワでUNI欧州ケア部会大会が開催され、介護施設や在宅介護の労働者が直面している暴力やハラスメントへの対処が主な議題の一つとして議論された。

介護労働者に対する暴力やハラスメントの増加の要因のひとつに、労働力不足と離職率の高さがある。これは UNI欧州ケア部会の「RETAINプロジェクト」でも明らかになっている。 人手不足はサービス提供の低下につながり、最終的には介護利用者と介護労働者の双方にストレスを与えることになる。そのため、「RETAINプロジェクト」では、UNIケア部会の加盟組織が各国政府にILO第190号条約を批准するよう働きかけることを、提案してきた。

介護労働者の95%が女性であり、その多くが移民や有色人種であるため、組合は労働者の問題に取組む具体的な措置を策定する必要がある。そのため、UNI欧州ケア部会は、EUが資金提供するプロジェクト (VS/2021/0041)の一環として、UNI機会均等局と連携して今大会に臨んだ。

大会の中でアメル・ジェメイルUNI欧州機会均等部長は、EU加盟国全体でのILO第190号条約の批准に向けたUNI欧州のキャンペーンと、EUレベルで指針を策定する必要性について、説明した。

討議の中で、ポーランドの介護施設職員は、施設利用者の間でアルコール依存症が蔓延していることに触れ、酒に酔うと、職員に唾を吐きかけ、侮辱し、身体的に攻撃することさえあると言及した。また、ポーランドのケア部会加盟組織OPZZ-KPのバーバラ・ドール氏は、虐待は身体的・心理的なものであると述べた。

また、欧州各地から集まったケア部会の代表者は、在宅介護労働者が利用者宅でどのような暴力やハラスメントにさらされ、何の保護も受けられないまま放置されているかについて議論し、ある参加者は、移住してきた住み込みの介護士が、夜中に利用者が部屋に入ってくるので、モップでドアを塞がなければならなかった状況を紹介した。

ベルギーのUNIケア部会加盟組織であるSETCA-BBTKは、使用者団体と共同で、介護部門における暴力とハラスメントのモニタリングに特化したICOBAという組織を立ち上げた。SETCA-BTKは、UNIケア部会が使用者、高齢者団体、障がい者団体、その他の利用者団体と協力し、利用者宅での暴力やハラスメントに対処する指針を策定する必要性について強調する動議を提出し、採択された。

エイドリアン・ドゥルチUNI世界ケア部会担当局長は「近年、フェミニスト運動と労働組合が結びつき、女性や移民労働者の暮らしをいかに変えてきたか、我々は見てきた。だが依然として、欧州の数百万人の在宅介護労働者は、労働者として十分な保護を得ていない。UNIケア部会はこの状況を変えるべく、組合の力を使って、介護施設や在宅介護の労働者が恐怖におびえながら働く必要がないよう尽力していく」と強調した。


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