10月 2022のお知らせ

Tik Tok 投稿内容のフィルタリングを行うテレパフォーマンス従業員の精神的苦痛が明らかに

世界的な大手コンタクトセンターであるテレパフォーマンスで、Tik Tok動画のモデレーター(投稿内容をフィルタリングする業務)を務めるコロンビアの労働者たちの悲惨な経験と憂慮すべき待遇が、米国のニュース雑誌『タイム』の報道で明らかになった。

労働者が証言したのは、子どもへの性的虐待、殺人、人喰い、極度の動物虐待などの動画にさらされている実態だ。

コロンビアのテレパフォーマンス労働者を組織化するUNI加盟組織UTRACLAROは、今回の調査で判明したような同社の労働条件の改善に向けて取組んでいる。しかしテレパフォーマンスは、反組合的な戦術を繰り返し用いており、組合に対する根拠なき法的異議申し立ても行っている。

ユーリ・ヒグエラUTRACLARO委員長は、「コンテンツ・モデレーターの多くは在宅勤務で孤立した状態にあり、1日に最大で1,000本の動画をチェックしているが、不穏で生々しいコンテンツの動画にさらされることが非常に多い。こうした労働者に対する精神的なサポートは十分でなく、会社に助けを求めても応じてもらえないことがあまりにも多い。テレパフォーマンスは、労働者が必要とする精神的ケアと休息を得られるよう、一層の取組みが必要だ。組合を妨害するために時間や資金、リソースを使うのではなく、組合と対抗するのをやめ、労働者の懸念を解決するため、我々との協力を始めるべきだ」と訴えた。

今月、コロンビアを訪問した米下院歳入委員会の代表は、労働組合員が組織化に際して深刻な脅威に直面しており、「テレパフォーマンスのコールセンターの労働者は、懸念すべき労働条件と、雇用保障がない状況に苦しんでいる」と指摘した。

昨年、OECD多国籍企業行動指針に関するフランス連絡窓口(NCP)は、テレパフォーマンスに対し、グローバルな事業展開における同社の慣行についての是正を求める強い勧告を行った。NCPは、コロンビアでパンデミック時の劣悪な労働環境に抗議してストライキを行った組合指導者が解雇された事案等を指摘した。その結果、NCPは、コロンビアにおけるテレパフォーマンスの行為が「OECDガイドラインが勧告する労働者の結社の自由に反し、反組合行為に相当する」との判断を下した。

テレパフォーマンスのコンテンツ・モデレーターの状況が問題になったのは、今回が初めてではない。『ビジネスインサイダー』は、テレパフォーマンスのメタアカウント向けの担当者が直面するストレスと過酷な状況について、報じたばかりだ。また、今年初めに『フォーブス』のレポートでは、米国のテレパフォーマンスで働くTik Tokのモデレーターが、生々しい性的虐待の動画を使ってトレーニングを受けていることが判明した。2019年には、ギリシャの新聞『カティメリニ』による調査で、FACEBOOKのコンテンツをモデリングするテレパフォーマンス従業員が、暴力的で過激なコンテンツに何度も何度もさらされていることが明らかになっている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「コロンビアをはじめ世界中で、テレパフォーマンスはコンテンツ・モデレーターを精神的にも肉体的にも限界まで追い詰めている。定期的に恐ろしいコンテンツを見なければならないだけでなく、会社の監視システムによって、勤務内にできるだけ多くのコンテンツを見るという強いプレッシャーもかけられている。テレパフォーマンスはもっと努力しなければならないが、同社は従業員の待遇に関する根深い過ちを修正するために、国内およびグローバルレベルで組合と協力することを拒否している。労働者は人間であり、業務で目撃したものに対して、免疫があるわけではない」と語気を強めた。

コンサルティング企業PIRCによる今年3月のレポートによると、テレパフォーマンスは2021年には90.55%という驚異的な離職率を記録し、世界のほぼ全労働力が毎年入れ替わっていることが判明した。4分の3以上の従業員が、1年以内に退職している。


UNI、公正でディーセントな労働条件を求めるアップル・オーストラリアの労働者を支援

公正な協約の締結を求めるオーストラリアのアップル労働者の継続的な取組みを受け、UNIは以下の声明を発表した。

アップル・オーストラリアは、店舗流通関連労組(SDA)とオーストラリアサービス労組(ASU)が強く主張してきた、ディーセント・ワークの取り決めを求める労働者の要求を拒否した。オーストラリアのUNI加盟組織であるSDAとASUは、アップルが早急に締結しようとしている劣悪な協定(インフレ率を下回る賃上げを行い、ディーセントなワークライフ・バランスを認めない人員配置を内容とする)に対し、反対票を投じるよう、労働者に呼びかけている。

世界中のテックおよび商業労働者を代表するUNIは、この標準以下の協定に反対票を投じるという労働者の決断を、全面的に支持する。

投票結果にかかわらず、両労組はアップルの労働者が低賃金契約を結ばされないよう働きかけ、必要であれば公正労働委員会に提訴する構えである。

労働者のディーセントな労働条件を求めて闘うASUとSDAは、UNIの全面的な支援を受けている。

この闘争の詳細については、こちらの記事を参照。


ネパールでUNIメンタリング・プログラムのワークショップを開催

2022年10月10~11日、ネパール・カトマンズで、FESネパール財団が支援するUNIメンタリング・プログラムのワークショップが開催された。ICTS部会、金融部会、商業部会、美容理容部会、ICTS部会、ケア部会から、13組のメンターとメンティーが参加した。

このプログラムでは、組合での経験豊富な女性が、組合活動への参加を希望する若い女性に対し、自らの経験を共有しながら指導を行っている。タンデム(メンタリングを行うぺア)は、互いのコミュニケーションを取りやすくするため、同じ都市の組合から選ばれており、女性組合員の精力的で活発な組合参加を促している。プログラムでは、団体交渉の中で女性が直面する課題を盛り込んでいくため、女性のリーダーシップを高めて積極的な参加を促すことで、女性と労働組合を支援している。

ワークショップでは、(1)リソースへのアクセスが困難、(2)無償の介護労働と家事、(3)職場でのジェンダーに基づく暴力、(4)家庭、社会、職場における差別、(5)月経、出産、更年期という3つの問題、(6)女性の身体を商品として扱うメディア表象、(7)男女間の賃金格差といった、女性の直面する問題に焦点が当てられた。

またプログラムの中では、参加者から以下のような課題が挙げられた-女性の能力に対する信頼の欠如、男女間の賃金格差、時間の融通がきかない、家父長的な思考、安全が確保されていないために女性が通勤できない、労働組合に対するネガティブなイメージ、労働組合で男性の同僚を説得する難しさ、自営業の女性やインフォーマルセクターの労働者に対する尊厳の欠如、インフォーマルセクターの労働者を保護する労働法の欠如など。

カマラ・ニューパンUNIネパール加盟協女性委員会議長は、「UNIのメンタリング・プログラムは我々だけのものではなく、組合を拡大・強化し、組織化を進め、成長させていくための機会だ」 と述べた。

メンタリング・プログラムを通じて参加者は、協力に向けた新しいアイデアや、自信を得ることができ、また女性の代表性が大幅に改善し、団体交渉に参加できるようになった。さらに参加者は、ILO第190号条約の批准に向けたキャンペーンやワークショップを展開し、多くの場所で職場におけるセクハラに関する委員会が設立された。

アンジャリ・ベデカーUNI Apro機会均等担当部長は、「女性同士の連帯支援や姉妹関係の絆を築いていくことは、非常に重要だ。これは決して男性に対抗して行われるプログラムではなく、差別を助長し、差別が当然だと思わせている、制度そのものに対抗していくためのプログラムだ。プログラムの目標は、組合で精力的に活躍する力強い女性たちによって加盟組織を強化していくことだ」と、メンタリング・プログラムの意義を改めて示した。

UNIのメンタリング・プログラムは、より多くの女性が労働組合運動に参加できるようにするため、UNI機会均等局が「THAT’S WHY」キャンペーンの一環として創設した。今回ネパールでワークショップが開催されたことで、UNIメンタリング・プログラムに参加した女性の数は、世界56か国で1,200人以上に達した。


フィリピンのUNIケア部会の労組、変革に向けて団結

2022年10月13日、ケア分野の20労組が集まり、UNIフィリピン加盟協のもとにケア協議会が設立された。労働者の権利のために闘い、組合を強化し、介護部門における活動を調整し、連携して取組んでいく。

ケア協議会は、ケア部門におけるより良い労働条件を得るため、労働組合の集団としての力を活用していく。協議会の設立メンバーには、フィリピンサービス労組(UFSW)、フィリピン農工商労組(PACIWU)、独立組織会議(CIO)、全国労働組合連合(NFL)などが含まれる。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「フィリピン全土の何千人もの病院労働者、透析クリニック看護師、医療関係者を代表し、強力な組合を通じてより良い雇用を獲得するという共通の目標に向け、一丸となって声を上げていくこの協議会は、フィリピンのケア部門に変革をもたらすものとなるだろう」と述べ、「ケア協議会の設立メンバーに連帯し、より良いケア部門を構築するために大切な一歩を踏み出したことを祝いたい」と語った。また、「今回の設立は、ケアの分野におけるUNIフィリピン加盟協の新たなマイルストーンであり、アジア太平洋地域でケアに関わる労働者を組織化し、ディーセントな雇用を求めて闘う我々の取組みを強化するものだ」とその意義を強調した。


UFSWは、同国の12の主要な民間病院ほぼ全てを組織化している。PACIWUとCIOは、バコロドの民間病院に組合員がおり、フレゼニウスの組織化プロジェクトも進行中だ。NFLは、セブおよびダバオの民間病院を組織化している。

UFSWのジーザス・S・オビエナ議長が1年の任期で 協議会を 率い、UNIフィリピン加盟協が協議会の活動を監督する。

UNIとケア部会は、フィリピンをはじめ世界各地でケアに従事する労働者の組織化に取組んでいる。


UNI Apro印刷・パッケージング部会委員会開催

2022年10月11日、ベルギー・ブリュッセルにて、UNI Apro印刷・パッケージング部会委員会がハイブリッド開催され、スタッフ・役員変更、前回委員会以降の活動報告、今後の活動計画について確認した。

委員会には、オーストラリア(オンライン)、インド、インドネシア(オンライン)、日本(オンライン)、マレーシア(オンライン)、ネパール、パキスタン、タイから、議長、副議長、委員、オブザーバー、スタッフ等約30人が出席した。日本からは、宍戸良太 印刷労連中央執行委員長(副議長)、梅原貴司 全印刷中央執行委員長(委員)、石川昌義 新聞労連中央執行委員長(オブザーバー)が参加した。

ロレイン・キャシンUNI Apro印刷・パッケージング部会議長は開会挨拶で、長く担当していたニコラ・コンスタンディノ前UNI世界印刷・パッケージング部会担当局長のこれまでの貢献に感謝した。前局長は、今後もコンサルタントとして新局長を支援していく。役員変更では、アムニュイ・イェムラクサ委員(タイ・キンバリークラーク労組)の退任とウィナイ・メーラスリ委員(タイ・アムコール労組)への交代が確認された。

20212022年度活動報告についてラジェンドラ・アチャリャ地域書記長より説明を受けた。コロナ禍も収束し、組織化活動が再始動した年となった。パキスタンPCLWUが新たにUNIに加盟し、2022年5月にはインド・ムンバイで、UNI本部や連帯支援組織関係者も参加してセキュリティ・印刷労組会議や多国籍企業の組織化会議等が開催され、今後の活動方針が確認された。その他この間の各国の活動のハイライトは以下の通り。

  • インド:2022年5月、ムンバイにてセキュリティ印刷労組会議を開催し、9つ全てのセキュリティ印刷事業所の労組から代表者が出席した。テトラパックの組織化イニシアチブでは、オルグがプネの現地代表者と計画と戦略を決定し、マッピングも今年中に完了予定である。
  • インドネシア:セキュリティ印刷部門、パッケージング部門において組織化を強化している。前者は、Balai Pustaka、PNRI、PERURIの3社で、後者は、大日本印刷とソフテックス(キンバリークラーク子会社工場)の2社に焦点を当て、労組役員同士のネットワーク強化を図り、情報交換を行っている。
  • 日本:2022年4月に春闘情報交換会を開催し、全印刷、印刷労連、大日本印刷労組、UAゼンセンが参加した。UNIの活動についても確認した。
  • マレーシア:UNIPACKマレーシアの強化および拡大が焦点。現在各企業において、組織化の取組みが進行中。
  • ネパール: IMPRESSIONと UNIPressの2労組がUNI印刷・パッケージング部会の支援の下、民間印刷・パッケージング労働者の組織化、能力向上等に取り組んでいる。
  • ニュージーランド:Etuはキャンペーンを実施し、チャルタパッケージング、オパールキウィ・パッケージング、ヴィジボード(段ボール包装)をターゲットに抗議行動を開始した。8月にピケを張り、適正な賃金と労働条件の改善を求めて立ち上がった。
  • パキスタン:PCLWUが2022年よりUNIに正式加盟。他の企業別労組を全国規模のパッケージング労連に加入させる計画。
  • タイ:パッケージング部門では、キンバリークラーク、アムコール、SIGにおける3つの企業別労組がUNIに加盟している。今年、アムコールが売却した別企業の組合がPPNT(タイ印刷パッケージング労組ネットワーク)に加わり、労連結成に向けて一歩前進した。テトラパックについても、PPNTを中心に組織化を進めている。8月に労連結成に焦点を当てた全国ワークショップを開催し、全加盟組合が連盟結成に合意。

組織化及び組合強化計画について、まず本部のコンスタンディノ前局長より、アムコール労組アライアンス会議等、多国籍企業における労組ネットワークや組織化を引き続き強化していくことが強調された。次にダニエル・フェルナンデス新局長より、各国の労働条件や社会対話の状況等についてまとめた構築中のシステムについての紹介があり、今後は携帯アプリ等デジタル・ツールも活用し、情報共有を密に図りながら組織化を進めていくとの説明を受けた。

この他、参加した各国委員から各国の最新状況と課題、活動の報告を受けた。

全印刷 梅原 委員長

全印刷の梅原委員長は、日本の印刷局を取巻く状況について報告した。キャッシュレス化、ペーパレス化が進んでおり、紙媒体の製品の受注量が減少することが想定されており、今後は、海外で多くの中央銀行が検討しているデジタル通貨(CBDC)や、製品の高機能化、公的部分からの業務委託、情報資産の活用など、新たな事業が検討されていることを報告した。

印刷労連 宍戸 委員長

印刷労連の宍戸委員長は、印刷産業の新たな価値を生み出すために立ち上げられた「アフター・コロナプロジェクト」等の印刷産業の取組みを報告した。また、労働組合として、ニューノーマルに対応した組織コミュニケーションを中心に日々組合活動を展開し、変化に対応した新たな労働運動のスタイルを確立すること、印刷産業に集う仲間にとって「必ずそばにいる存在」となるべく、組合の存在価値を一層高めていきたいと報告した。

新聞労連 石川 委員長

新聞労連の石川委員長は、新聞のネット購読が普及し、1世帯1紙を紙で購読する時代が過ぎ去り、収益構造が新聞販売に依るところが大きく苦境に陥っている新聞印刷部門の現状と、2022年初頭から始めた「新聞の未来」プロジェクトについて報告した。編集などの部門と並行して印刷部門を設け、新聞産業の社会的意義や持続可能性について議論を進めている。

その他の国の報告は以下の通り。

  • オーストラリア:コロナ禍でパッケージング部門は伸びている。2022-2023年は、ラベル、軽包装、ワイドフォーマット印刷の需要が高く、印刷業界はより好調になると予測される。
  • インド:デジタル化が進んでおり、E電子パスポート導入が予定されている。
  • マレーシア:BEMISアジアパシフィック労組が2月4日に登記された。(BEMISは現在、M&Aにより、アムコール傘下の企業)
  • インドネシア:アムコールの組織化は非常に順調。大日本印刷インドネシア労組はASPEKに加盟を希望している。
  • ネパール:デジタルプラットフォームを使って組織化を進めている。今年は800人を新たに組織化予定。
  • パキスタン:UNIに2022年に加盟したので、会社概要と組合の歴史について説明。1957年にパキスタンのアリ財閥とスウェーデン等の海外資本により設立された民間合弁会社で、組合は1967年に民間印刷会社で初めての組合として結成された。2009年以降現体制となり、7つの協約を締結。2022年夏の洪水においては、義援金を集めて被災地住民に届けた。
  • タイ:アムコールは全国で19の工場があり、タイには4つある。労連を作ろうとしているが、大会で同意が得られないと結成できない法律になっており、来年になる見込み。

20222023年度活動計画について、アチャリャUNI Apro地域書記長より、組織化と組合強化について、キンバリークラーク、アムコール、テトラパック等の多国籍企業において、引き続き各国労組と連携して組織化を進めていく旨、説明があった。また、トレーニングや能力開発プログラム、労働安全衛生や団体交渉に特化したワークショップなども各国で予定されている。

来年の主な行事:

UNI世界印刷・パッケージング部会大会(2023年11月6~9日、フランス)

UNI Apro印刷・パッケージング部会委員会は、2023年上半期にアジア地域で開催予定。


「労働者の声に耳を傾けよ」:ローマから呼びかけ

2022年10月上旬、イタリア労働総同盟(CGIL)本部へのファシストによる襲撃から1年を迎え、何千人ものデモ隊がローマの街頭に結集した。デモ参加者は、イタリアや欧州各国の政策決定者に対し、労働者のニーズに耳を傾けるよう求めた。

労働者が提示した10項目の要求の中でも、生活費危機に対処するための団体交渉の強化と公正な税制、そしてイタリアにおける不安定な状況に対処し、社会保障と公共サービスを強化することは、特に優先課題だ。ここには、公共契約や民間企業への補助金に対する社会的条件の導入も含まれている。

UNI欧州は、デモ行進に加わるとともに、集会「労働者の権利と民主主義のための反ファシスト国際ネットワーク」にも参加した。オリバー・レティクUNI欧州地域書記長が講演を行い、極右グループによる分裂を煽る企てを阻止するための、欧州各地の労組の戦略・戦術について、洞察を語った。

マリア・グラツィア・ガブリエリFILCAMS書記長は、「改めて仕事を中心に据えたプロジェクトが必要だ。不安定な状況との闘い、そしてより良い労働条件や尊厳ある賃金も必要だ。この国に別の未来を切り開くということは、若者、女性、そしてすべての働く人々に展望と未来を与えるということだ」と訴えた。

レティク地域書記長は、「ローマの街頭から、欧州全体に向けて、働く人々は警鐘を鳴らし、尊厳を要求している。生活費の危機は、多くの人々を深刻な経済難に陥れている。労働者を主役に据えることで、この問題に取り組まなければならない。団体交渉はその解決策だ。今こそ、職場の民主主義を強化するための行動を起こすべき時だ」と力強く呼びかけた。


チリのドラッグストア労働者、団体交渉で成果

2022年10月8日、チリのCONATRACOPSに加盟する全国薬局労連(FENATRAFAR)は、国内最大規模のドラッグストアの1つ、サルコブランドとの団体交渉で勝利し、重要な協約に達した。

同労連は、この協約でサルコブランド全労働者の賃上げを勝ち取り、また休業手当として各労働者に100万ペソを交渉した。ジョルジナ・カラスコFENATRAFAR事務局長は、「労働者の尊厳と権利が守られた団体交渉の過程で、多大な支援を受けたことに感謝したい」と述べた。

また同労連は、通勤費手当の再調整、白エプロン使用の復活、その他の改善を実現するための対話継続の意思を両者が持つことなどについても協議、確認を行った。

「この組合を構成する73%の女性は、今回の勝利とUNIの支援に値する労働者であり、我々は誇りに思う」とカラスコ同事務局長は締めくくった。

10月6日に労働者による平和的デモ行進が実施された際、会社側が労働者にガスを放射する事件が起きた。これを受けたストライキを経て、今回の協約が締結された。UNI米州はこの事件を公に非難しており、労働省は責任の所在を明らかにするために調査を開始する予定だ。

今回のキャンペーンと交渉の担い手となり、ディーセントワークと公正な労働条件のために闘ってきたすべての労働者に祝福を贈る。


第9回UNI Apro東アジア労組フォーラム (2022年10月13~14日、台湾(ハイブリッド開催))

第9回UNI Apro東アジア労組フォーラムは、2022年10月13~14日、台湾においてハイブリッド開催された。日本、韓国、台湾、香港、モンゴルより述べ約200人が参加した。日本からは14組織73人(うち女性26人、女性参加率38%)が参加した。前回(2019年)、デモの影響で参加できなかった香港が参加し、モンゴルも前回に続き2回目の参加となった。

「東アジアにおけるポストコロナ時代の新たな課題と労働組合の対応」というスローガンの下、「ポストコロナの労働安全衛生と組合の対応」、「ポストコロナで加速するデジタル化に対応した人材育成と組合の対応」、「ポストコロナの職場におけるハラスメントと組合の対応」というテーマで、各国が取組みを共有した。

 開会冒頭、ホスト国を代表し、ウー・ウェンフォン中華郵政労組(CPWU)委員長および、来賓としてワン・アンバン台湾労働省副大臣より歓迎挨拶を受けた。石川 幸德UNI-LCJ議長は、ウー委員長をはじめ、台湾の準備ともてなしに感謝した。そしてラジェンドラ・アチャリャUNI Apro書記長就任後、初めての開催となること、また、香港およびモンゴルから再び参加を得ることができた。3年ぶり開催となる今フォーラムの成功を祈念すると述べた。また松浦 昭彦UNI Apro会長は、特に「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関するILO190号条約」に関するテーマが本フォーラムで初めて取り上げられることを強調し、東アジアでは同条約の批准に至った国はなく、批准に向けた各国の取組みなどを共有したい旨述べた。この他、クリスティ・ホフマンUNI書記長、ユン・チャンヒョンUNI-KLC議長(韓国)、チェン・ライハUNI-HKLC議長(香港)、オユンバヤール・チェルテムドルチUNI-LCM議長(モンゴル)から連帯挨拶があった。

 アチャリャUNI Apro地域書記長は「アジア太平洋地域におけるポストコロナ時代の新たな課題と労働組合の対応」と題した基調講演において、ポストコロナ時代は対面接触の仕事やリモートワークと出勤との複合的な仕事形態、Eコマースの需要増加がある。雇用形態は複雑化することが予測され、労働組合の関与が不可欠である。新たな課題に対応するため、労働組合は有識者とも連携して組合の影響力を強化すべきだ」と述べ、日本のロビー活動や政策提案などの事例を挙げて強調した。また各国と連携して、青年や女性の地位を高める取組みも継続して行っていく旨述べた。

 続いて、「ポストコロナの労働安全衛生と組合の対応(サブテーマ1)」の冒頭、ホフマンUNI書記長より「労働安全衛生を「人権」に:新たな働き方に伴う新たな労働安全衛生課題に対するUNIの取組み」と題する特別報告を受けた。ILO労働安全衛生の基準の説明やサービス部門での安全衛生、ケア部門のメンタルケアの重要性など事例を挙げて説明し、「労働安全衛生は世界中どの国でも課題になっておりUNIは重要視している。来年開催するUNI世界大会でもテーマに取り上げる。我々が結束することにより、新たな問題解決方法を見つけていきたい」と述べた。

★討論のポイント

サブテーマ1:「ポストコロナの労働安全衛生と組合の対応」

(1)リモートワークにおける労働安全衛生の課題と組合の対応

  • 日本(辻 耕平 情報労連中央執行委員): 2点の課題、①「つながらない権利」は、日本において働き方をめぐる大きなテーマであり、海外での事例も参考にしながら当該企業労使の対応を強化していくことが必要である。②「AIによる労働監視の課題」は、日本でのAI活用は積極的な社会実装を進めようとしているが、データに関するルール制約などがAI利活用を阻む要因となっており、法的拘束力のある横断的な規制は不要との政府の考え方がある。労働分野におけるAI導入については、「事前の労使協議の徹底」や「従業員への同意確認」などを担保することが重要であり、論理的側面からの法整備について政策アクションを行っていきたいと報告した。
  • 韓国(キム・ジョンウ 韓国事務金融労連(KFCLU)オラクル韓国労組委員長):在宅および遠距離勤務、アルコリズム、災害保険などポストコロナの労働組合の対応を報告し、組織化や対面相談など在宅勤務での労組対応の難しさを説明した。
  • 台湾(チャン・フーチ 台湾金融労連(TFFU)委員長):コロナ禍における職場の安全や長時間労働、交代勤務などの労働安全衛生の状況を説明し、メーデーを活用した組合の対応など報告した。

(2)エッセンシャルワーカーの労働安全衛生の課題と組合の対応

  • 日本(坂根 元彦 JP労組中央執行委員):安全衛生の取組み、長時間労働および時間外労働の取組み、感染症対策について報告した。また無人搬送車・搬送ロボットAGV(Automatic Guided Vehicle)の導入を紹介し、郵便・物流の自動化進展の影響を報告した。
  • 韓国(ソン・クミ 全国保健医療産業労働組合(KHMU)書記長):感染対策、長時間労働などのストレス、交代勤務などの保険医療産業の現状と、政府や産業別交渉などの労組の対応報告をした。
  • 韓国(チュン・ハナ 韓国サービス労連(KFSU)政策局長):小売店の休業義務の現状と制度を説明し、休業義務の制度は変更せず、現行を維持しながら多様な意見をとりまとめる方針の政府に対して、政府HPや抗議の公文書などで意見表明をしている報告をした。
  • 台湾(ジャオ・リンユ 嘉義医療財団法人関連企業組合(CYCHCU)委員長):医療現場の現状を説明し、感染リスクの低減や適切な報酬など必要であり、組合は医療スタッフの感染リスクの低減を主張していると報告した。

サブテーマ2:「ポストコロナで加速するデジタル化に対応した人材育成と組合の対応

(1)各国・各産業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と課題

  • 日本(村上 瑞紀 自動車総連国際局部長):オンラインによる販売および商談、顧客がHPやSNSから情報を入手し購入の意思を固めてから来店する形態のマーケティング、電子制御車両や電気自動車増加による点検・整備のデジタル化の現状を紹介し、それぞれの課題を報告した。
  • 韓国(パク・ホンベ 韓国金融労組(KFIU)委員長):非対面金融サービスの拡張による店舗閉鎖の加速化などで発生した雇用縮小、業務負担の増加、金融消費者保護の弱体化等の問題点を挙げ、労働組合の取組みを説明した。
  • 台湾(リン・イーフン 中華郵政労組(CPWU)国際局長:DXの課題を業界別に挙げ、労働組合は、新たなテクノロジーは、より価値の高い生産的で創造的な仕事に集中できる職場環境になることを望んでいると説明した。また建設中のポスタル・スマートロジスティクス・パーク(物流オペレーションセンター)の紹介とその特長を説明した。
  • 香港(チェン・ライハUNI-HKLC議長):デジタル技術が全面に押し出され社会機能が維持することが可能になった反面、課題も多い。限られた資金の中小企業やデジタル技術を持たない労働者など。教育の在り方、技術分野に進出するのはまだ困難な女性など、デジタル技術の関心を高めていく必要性を説明した。

(2)DXに求められる人材育成と組合の役割(雇用の安定、リスキリングなど)

  • 日本(須齋 弥緒 損保労連事務局次長):技術革新が進む現状で、「人」ならではの付加価値を生み出す環境整備(雇用の安定)および「人への投資」の重要性やリスキリングの更なる拡充(人材育成)が重要であるとし、その取組みを報告した。
  • 韓国(キム・オクラン 医療産業労組(FKMTU)教育担当部長):非対面診療を充実させるため、デジタル医療の技術開発を進めており、労働組合として、デジタル技術に対応する人材育成を行っている旨述べた。
  • 台湾(ハミルトン・チェン 公共テレビ労組(PRTSFEU)執行委員:公共テレビ放送の現状を説明し、労働組合としては非デジタル業務をDXの方針に合わせて従業員の教育・研修を行い、働き方改革をする。また人材開発への転換や賃金体制の構築に取組みたいと述べた。

サブテーマ3:「ポストコロナの職場におけるハラスメントと組合の対応」

(1)職場における暴力の実態とILO第190号条約批准に向けた各国の取組みについて

  • 日本(桐田 真弓 全労金書記次長):法律を上回る「禁止」を盛り込んだ「労働金庫業態におけるあらゆるハラスメントの禁止ガイドライン」の策定と取組みを報告した。ILO第190号条約をどう具現化するか、①ハラスメントは人権問題である、②業務に関わる全ての人を対象とする、③全ての場所・ツールを対象とすることを盛り込んだものである旨報告した。
  • 台湾(リー・ハンチー 中華電信労組(CTWU)国際局長):反職場暴力・ハラスメント機構の構築や男女雇用平等法、ジェンダー平等教育法、セクハラ防止法など、CTWUと中華電信の連携した取組みを報告した。
  • 香港(キャロル・チャン 小売商業被服一般労組(RCCIGU)委員長):ILO190号条約について、中国返還前はイギリス政府によりILO条約を批准していたが、現在は中国の一部であり、国連人権報告書によると中国は条約に批准しないと思うと説明した。

(2)ハラスメントや暴力の撲滅に向けた組合の取組み

  • 日本(中島 麻紀子 生保労連中央副執行委員長):「職場におけるジェンダー平等」および「ワーク・ライフ・バランスの実現」を中期取組み方針とし、ハラスメント対策の強化は、双方の取組みの柱として位置付けている。組織としての取組み紹介や、法改正の動きを踏まえたハラスメント防止に向けた対応を強化する必要性がある旨述べた。
  • 日本(佐藤 宏太 UAゼンセン流通部門執行委員):厚生労働省に働きかけた結果、2022年度に厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が完成した。秋田県での事例やUAゼンセンの活動を紹介し、産別を超えた取組みが推進されるよう連合とも連携しながら進めたい旨報告した。
  • 韓国(オ・スジョン 韓国郵政労組(KPWU)委員長):職場内のパワハラやいじめ根絶に向けて、2022年2月、「労使合同パワハラ根絶宣言式」を開催し、毎月11日を相互尊重の日として、パワハラ改善に努力することを説明した。
  • 台湾(パトリシア・フン 公共テレビ労組(PTSFEU)):セクハラ、パワハラの事例をそれぞれ挙げ、前者は『ジェンダー平等委員会』を立ち上げて会議を行い、申立て後2か月で解決するよう対応しており、後者は現状明確なルールがないので今後は策定していきたいと説明した。

閉会では、ハン・シーフェン 台湾金融労組(TFFU)書記長より統括があり、フォーラムのまとめとして共同宣言を採択した 。次回、第10回フォーラムは、2023年、日本で開催する予定。

【司会者】

  • 開会/基調講演:(台湾)ロー・フェジュ 中華郵政労組(CPWU)書記長
  • サブテーマ1:(日本)古賀 初代 印刷労連 副中央書記長
  • サブテーマ2:(台湾)チア・パオリン 中華電信労組(CTWU)委員長
  • サブテーマ3:(韓国)カン・ヨンベ 保険医療労働組合(KHMU)情宣部長
  • 閉会:(台湾)ウー・ウェンフォン 中華郵政労組(CPWU)委員長

南アSASBO、金融機関オールド・ミューチュアルと協定を締結

長期にわたる闘争の末、南アフリカのUNI加盟組織SASBOが、保険大手オールド・ミューチュアルと協定を締結し、SASBO組合員が交渉のテーブルに直接立つことになった。協定は、SASBO組合員であるオールド・ミューチュアル社の3793人の労働者を対象とし、協約期間は今後5年間である。

2017年に組合に限定的な権利を与える協定が締結されたものの、同社におけるすべての団体交渉からSASBOは排除されていた。

今回、中央協議会や事業別協議会に参加する上で必要な組合員数に達したことで、この新協定によって、ついにオールド・ミューチュアルのSASBO組合員は、会社で労働条件を交渉するための集団的発言権を持つことができるということだ。

ジョー・コケラSASBO書記長は、「長い間待ち望まれていた。ようやく交渉のテーブルにつくことができ、オールド・ミューチュアルの組合員のディーセントな労働条件を求めて闘うことができるようになり、感激している」と喜んだ。

この新しい承認協定により、SASBOはオールド・ミューチュアルで働くSASBO組合員の権利を効果的に保護し、利益を代表し、団体交渉を開始することができるようになった。

しかし、団体交渉に必要となる組織率25%の基準に達するまで、賃上げ交渉からは除外されたままだ。

キース・ジェイコブスUNIアフリカ地域書記は「これは非常に大きなブレイクスルーだ。交渉の席につけるということは、SASBOが南アフリカの何千人もの労働者のために、ディーセントワークと職場の尊厳を求めて効果的に闘えるということだ」と述べ、「UNIアフリカは、オールド・ミューチュアルの労働者が承認され、当然の権利と利益を得られるようにするためのSASBOの闘いを全面的に支持する」と後押しした。

オールド・ミューチュアルは、南アフリカ・ケープタウンに本社を置く投資・預貯金・保険を扱う総合金融機関であり、アフリカ・アジアの14か国で事業を展開し、3万人以上の従業員を擁している。


コロンビア:ILO第190号条約批准を求め、労働者が議会に集結

仕事の世界における暴力およびハラスメントの根絶を目指すILO第190号条約(C190)の批准が、コロンビアにおける公的アジェンダの中で、重要な課題として浮上している。10月7日のディーセント・ワーク世界行動デーに合わせ、労働組合と政治家のグループが共和国議会に集まり、C190批准に向けた公聴会に参加した。

公聴会は、UNI米州や加盟組織を含むC190の批准を目指すグループの呼びかけに応え、フェルナンダ・カラスカル下院議員が主催したものであり、条約や、ジェンダー不平等に対処するその他の措置を推進すべく開催された。

公聴会では、労連であるCGT、CTC、CUT、そして市民社会団体、UNIを含むグローバルユニオンが、条約批准に対する労働組合運動の取組みについて、改めて国会議員らに説明した。また女性たちは、自身や同僚が職場で受けたハラスメントや暴力の経験を共有した。

様々なセクターの女性が証言を行う中、ある清掃員の女性は、ハラスメントの状況がひどく、公の場で自らをさらけ出して証言することは身の危険につながるため、顔を覆って証言した。恐怖を感じつつも、この女性は深い決意を示し、支援ネットワークを通じて同僚とともに組織化を続けると表明した。

マグダ・アルベルト労働省ジェンダー平等・女性の権利担当アドバイザーは、C190の批准に向けた政府の取組みを強調するとともに、「女性や労働組合による証言は、職場での暴力やハラスメントに苦しむ労働者に償いを求めるものだ」と述べた。また、ジェンダーに基づく暴力に対抗する16日間の活動の一環として、ジェンダーの視点に関する訓練を受けた一級査察団が、11 月下旬に国内の各職場を監査することを発表した。

マリア・ラウラ・フィノILO国際労働基準専門家は、公聴会について「職場における暴力やハラスメントを根絶するための新たな国際労働規則を評価する適切な機会」であり、「身体的、精神的、性的、経済的被害を避けるためのプロトコル、つまり回復や啓発に向けた手段が保証された場」であるとして、その重要性を訴えた。

カラスカル議員は、労働組合組織の基本的な役割を確認し、「労働組合や組合員がC190の批准に向けた取組みを主導することは、非常に重要なことだ。困難なプロセスではあるが、我々は社会を変えていくことができる。我々にはやり遂げる意志があり、人権を守る必要性を理解しているからだ」と締めくくった。

今回の公聴会は、職場における暴力やハラスメント、差別によって、特に女性や移民、アフリカ系住民、LGBT+の人々が際立って大きな影響を受けていることを考慮し、これらの撲滅を目指すC190の批准に向けて、初めて開催されたものである。

UNIはこの条約の批准を長年にわたって支援し、加盟組織と協力してコロンビアをはじめ世界各地でこの条約の批准にむけて取組んでいる。


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