8月 2022のお知らせ

金融労組の画期的なパートナーシップ・プロジェクト、フィリピンとネパールで開始

2022年8月24日に開催されたオンライン調印式で、UNI Aproと韓国金融産業財団(KFIF)による画期的なコラボレーションが幕を開けた。

KFIFとUNI Apro、そしてUNIに加盟するフィリピンとネパールの金融労組(フィリピン銀行・保険・金融機関労組=NUBE-IFO、ネパール金融労組=FIEUN)は、この調印式の中で、プロジェクトの概要を記した覚書に署名した。

今回の合意により、KFIFはUNI Aproと連携し、フィリピンのパヤタス地域に職業訓練センターを設立するNUBE-IFOと、ネパールのルンビニ地域に男女別の公衆トイレを建設・運営するFIEUNを、それぞれ支援することになる。

KFIFからはキム・チャンヒ事務局長、韓国金融産業労組(KFIU)委員長を務めるパク・ホンベ理事、イ・ジユン・プロジェクト・マネジャーが出席した。UNI Aproからは、ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長が出席し、NUBE-IFOからはレイニア・クルス委員長、FIEUNからはパダム・ラジ・レグミ委員長が参加した。

KFIFは、UNI加盟組織であるKFIUと、韓国銀行使用者協会が2012年に締結した歴史的な産別協定から生まれたユニークな二者構成組織である。この協定により、金融部門の労働者と金融機関が持続可能な社会に貢献するための慈善財団が設立された。この財団は、33の金融機関に勤務する10万人の労働者の総力を結集し、2,000億韓国ウォン(約1億4,800万米ドル)という目を見張る資金を調達し、2018年に正式に発足した。当初は国内の取組みに重点が置かれていたが、徐々に拡大し、国際的な連帯支援を展開している。

キム・チャンヒKFIF事務局長は、「ISO26000社会的責任および国連持続可能開発目標を追求すべく、我々は2021年8月から、アジア各国のUNI加盟の金融労組との国際連帯プロジェクトを検討してきた。UNI Aproと協議した結果、貧困・差別・不平等の克服に焦点を当てた、2つのプロジェクトを進めることになった。COVID-19パンデミックの長期化や、極端な物価変動によるプロジェクト実施のリスクは残るものの、UNI Aproの指導と協力、ネパールのFIEUNとフィリピンのNUBE-IFOの仲間の献身的な連帯により、プロジェクト成果が得られるだろう」と期待を語った。

KFIF理事を務めるパク・ホンベKFIU委員長は、「KFIFは、国連の持続可能な開発目標に基づき、グローバル社会貢献事業の多様化に取組んでおり、差別や不平等をなくし、より安全で健康的、持続可能な社会を作ることが我々の目標だ。朝鮮戦争後の1950年代、世界最貧国の1つであった韓国は、アジアの近隣諸国の協力を得て、OECD加盟国として発展してきた。その成長過程で我々は、多くの闘いを通じて貧困、差別、不平等を克服している。当財団は、韓国の労働組合や市民社会が蓄積した貴重な資産をアジア地域の仲間と共有していく上で、各国の金融部門の労働組合が主導的な役割を果たすべきだと判断した」と語った。

フィリピンのレイニア・クルスNUBE-IFO委員長は、「17年前にパヤタス・プログラムを始めた時、児童労働と貧困の撲滅を支援することで、労働組合のイメージを向上させることが我々の目標だった。パヤタスを選んだのは、フィリピンの都市部の貧困を象徴しているからだ。人々は日々、ゴミ山の光景と臭いに囲まれて生活しており、ゴミをあさるか餓死するかの2択しかない。子どもたちが食べ物やリサイクル品をあさる姿は、非常に悲しい光景だ。我々は、深刻な栄養失調の子どもたちへの配食やリハビリテーション、学校給食、奨学金プログラムなどの支援活動を行ってきた。財団が支援するこの生活支援、訓練プログラムにより、我々が地域社会に描いてきたサイクルが実現し、パヤタスの人々、特に女性たちは、よりまっとうで人道的な、新たな生計手段を得ることができるようになるだろう」と期待した。

ネパールのパダム・ラジ・レグミFIEUN委員長は、「ルンビニでの男女別公衆トイレ建設という、この国際連帯プロジェクトに加われることに感謝したい。労働組合によるこの社会事業が成功することで、人々にポジティブなメッセージを与え、労働組合のイメージを高めることができるだろう。これは我々にとって実験的な取組みであり、今後数年のうちにネパールの銀行部門で模範を示していきたい。ブッダの生誕地ルンビニで、このプロジェクトの実施を計画した。このプロジェクトが、ネパールと韓国の労働組合の団結と共同作業の象徴となることを願っている」と語った。

ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長は、「これはUNI Apro金融部会が韓国の社会パートナーに委託する初の地域開発プログラムであり、我々はパートナーシップ労使関係の理念に基づき、地域の加盟組織に最大限の協力と支援を行う予定だ。韓国を飛び出し、SDGsに貢献し、ネパールやフィリピンなどアジアの途上国に手を差し伸べるKFIFの取組みは、称賛に値する。労働組合などの市民社会と各国の市民がしっかりとコミットしていく、企業の社会的責任(CSR)プロジェクトであり、すばらしい。2030年までに国連のSDGsを実現するため、市民と市民社会が加わるこのCSRを誇りに思う」と述べた。


英国で17万人以上のCWU組合員がストに突入

英国のUNI加盟組織である通信労組(CWU)が、「ものすごい1週間」になると宣言する2022年8月末、英国全土で17万人以上の労働者がストライキに入る。

大手通信事業者BTとその子会社オープンリーチ、そして郵便局およびロイヤルメール・グループに雇用される労働者は、争議行動への圧倒的支持を示し、高騰するインフレの中でまっとうな生活の質を維持できる賃金を求め、「英国のあらゆる町や都市」でピケットラインに立つ。

BTとオープンリーチでは、生活費の高騰を補うに足る賃上げ交渉が決裂し、CWU組合員は7月29日と8月1日に35年ぶりに最初のストに入った。会社側は組合と協議することなく、年間1,500ポンドの賃上げを示してきたが、これは国内のインフレ率11%以上(年末には18.6%に達する可能性もあるとされる)と比較すれば、実質的に大幅な賃下げである。

この実質的な賃金カットは、BTが年間13億ポンドの利益を上げ、同社のフィリップ・ヤンセンCEOが350万ポンド(32%の報酬引上)という高額報酬を得ている一方、BTの営業所では従業員を支援するためにフードバンクを設立したと伝えられる中で行われた。

BTの次のストライキは8月30日に開始する。米国、スペイン、スイス、ドイツ、ポルト ガル、イタリアなど、各国の組合が連帯と支援を表明する書簡を英国の労働者に送っている。

CWU副書記長を務めるアンディ・カーUNI世界ICTS部会議長は、「我々は今もBTが誠実な交渉の席につくことを望んでいる。だが、悲しいかな現状では、我々がさらなる行動を起こさない限り、それは実現しないということが明らかになってしまった。…ゆえに今、我々は立ち上がる」と述べた。

BTによる賃上げは、現在のインフレ率に遠く及ばず、到底容認できるものではない。

過去3回のストライキと、8月26~27日のさらなるストライキで、郵便局が提示した賃上げ率は3%から5%に引き上がったが、組合はさらなる引上げが必要であるとの考えを明確にした。アンディ・フューリーCWU書記次長は、「しかるべき方向に一歩進んだが、まだインフレ率の半分以下だ」と述べ、「この賃金提示の改善に勇気づけられた。次週の協議で、2022~2023年度分のみならず、2021~2022年度分についても、公正で妥当な賃金協定に向けてさらに前進していきたい」と意欲を見せた。

ロイヤルメール・グループでも、使用者が労働者の貢献を認めず、「以前の賃金を現在の価格で」支払い、実質的に労働条件を悪化させる賃金提示を行ったという類似の事例がある。

CWU書記長を務めるデーブ・ウォードUNI世界郵便・ロジスティクス部会議長は、「経営陣の戦略は『近代化』などではなく、水準の引下げだ。だが、労働者を最下層に置いては、事業は成り立たない。組合は決して、変化を避けてはいない。ロイヤルメール取締役会は、ロイヤルメールの未来を築きたいのであれば、労働者を支える必要があるのだと認識しなければならない」と語気を強めた。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「この生活費危機を引き起こしたのは労働者ではなく、その責任を負うのも労働者ではない。パンデミック時にもBTやオープンリーチ、ロイヤルメール、郵便局の業務運営を維持してきたのはCWU組合員であり、経営トップや株主ではない。現在は、物価上昇と実質賃金の下落という別の緊急事態を克服するために、皆が団結している。まっとうな賃金を求める彼らの闘いは、世界中の多くの労働者の闘いでもあり、我々は彼らに連帯する」と力を込めた。


UNI Apro女性委員会を開催

2022年8月10日、オンラインで標記会議が開催され、UNI Apro女性委員、オブザーバー、事務局等含め50人以上が参加した。日本からは、須齋弥緒副議長(損保労連)、福田千秋委員(JP労組)、寺嶋雪乃委員(UAゼンセン)、三﨑友香里委員(大日本印刷労組)が発言した。

はじめに、ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長、ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長、ミラ・スミラットUNI Apro女性委員会議長が、開会および連帯の挨拶を述べた。また、昨年10月より新たに委員となった須齋副議長と三﨑委員の参加を歓迎した。

UNI Apro女性委員会の活動報告

アンジャリ・ベデカーUNI Apro機会均等部長が、南アジアで開始したメンタリング・プログラムや、国際女性デーの取組み、16日間の行動、南アジアやUNI-LCJの女性ネットワーク会議などについて報告した。また、ビヌタ・パニヤディ委員が、5月に開催されたメンタリング・プログラムについて報告し、様々な暴力の形態やチームビルディングの大切について学ぶことができたと成果を述べると共に、より多くの女性が組合活動に参加するための取組みについて説明した。

UNI世界女性委員会の報告

須齋副議長が、5月にスイス・ニヨンのUNI本部で開催されたUNI世界女性委員会について報告した。ILO第190号条約の批准に向けた各国の取組みや批准状況、労働安全衛生の取組み、コロナ後の女性の未来についてのセッション等について共有するとともに、「アメリカ合衆国における女性の自己決定権と選択の自由に関するUNI世界女性委員会声明」を全会一致で採択したことを報告した。

各組織より活動報告

テーマ1「働く女性の安全衛生問題と労働組合の対応」

始めに、ベロニカUNI機会均等局長が、3月8日の国際女性デーの取組みについて概要を述べ、ジェンダーの視点を女性の労働安全衛生の取組みに入れていく必要性について訴えた。

●オーストラリアのビドルストン委員は、安全衛生を組織化の枠組みに組み込んできたと述べ、特に顧客からの暴力に関する「誰も叱責されるいわれはない」キャンペーンでは、安全衛生についての調査実施、労働者や一般の人々を対象にした意識啓発、広告キャンペーンや業界声明、ロビイング活動など、各方面に幅広くアプローチしたと、その成果を報告した。
●寺嶋委員は、「女性の健康と働き方に関する取組み」をテーマに、更年期障害や生理など女性特有の問題、そして加盟組合の取組みについて報告し、UAゼンセンとして、「女性の健康について理解促進、配慮がある職場環境の整備、女性検診の実施、相談しやすい体制づくり、柔軟な働き方の実現」に向けて、取り組んでいきたいと述べた。
●須齋副議長は、日本のテレワーク状況や、テレワーク環境や柔軟な働き方等の整備に向けた組合の取組みについて報告するとともに、男性の育休取得や女性の活躍推進に向けたワークライフバランス改善に向けた動きについて共有した。

テーマ2「ともに力を構築しよう:ジェンダーの課題に関する組合の取組み」

●福田委員は、組合運動におけるジェンダー平等の視点の重要性について訴えるとともに、組織内の機関である「女性フォーラム」による、政策提言の取組み等について共有した。現状では女性役員も少なく十分に女性の声が反映されていないことを踏まえ、女性の視点で現場の声を元に、誰もが働きやすい職場を作るべく、提言していきたいと発言した。
●三﨑委員は、女性が組合役員を務める上でのハードルが依然として存在すると指摘した上で、多様な働き方に応じた組合活動の在り方を検討していく必要があると発言した。また、組合が企画して好評を博したパパママ向け子育てセミナーについて共有した。
● ネパールのニューパン委員は、DV増加やメンタルヘルス悪化などパンデミックの影響について報告し、女性が組合活動に参加する際の障壁についても共有した。またネパール加盟協女性委員会による、気候変動やジェンダーに基づく暴力への取組み等、女性志向の活動を紹介した。
●シンガポールのタン・ポーレイ委員は、女性の職場復帰支援や、女性が特技によって生計を立てられるよう支援するP to Pイニシアティブ、メンタリング・プログラム、柔軟な勤務形態や職場における授乳スペースの確保など、女性のためのより良い職場の確保に向けた、シンガポールの労働運動による多様な取組みを紹介した。

特別報告

ベルナデットUNI Apro青年委員会議長が、7月にUNI Apro青年委員会および交渉に関する研修がバンコクで対面開催されたことを共有した。ベロニカUNI機会均等局長は、UNIの40 for 40キャンペーンやその成果、メンタリング・プログラムの実施状況やその意義、暴力に反対するキャンペーン、ILO第190号条約批准に向けた取組み等について報告した。また、スリランカのガガリニ委員は、生活費の高騰や食料・燃料不足でかつてない危機が続く同国の現状と女性労働者への影響、組合による抗議活動について報告した。

最後に、ミラ議長が参加者に謝意を表しつつ、次回は対面での開催を祈念し、閉会した。


2050年までに循環型経済とカーボンニュートラルな未来を目指す―環境に配慮した道筋

気候危機:集団的な挑戦

2021年に、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(いわゆるCOP26)にて、約200か国がグラスゴー気候合意を採択した。COP26では、2015年の歴史的なパリ協定で行われた当初の気候に関する公約を大幅に修正し、各国政府は世界の気温上昇を1.5℃に抑え、産業革命前の水準からプラス2.0℃を「はるかに下回る」水準で保つことに同意した。しかし、世界の平均気温はすでに約1.1℃上昇しており、世界が異常気象や海面上昇の危険な影響を回避したいのであれば、断固とした行動を取らなければならない。

世界における科学的コンセンサスは、温室効果ガスの排出を2050年までに可能な限りゼロに近づける、すなわちネットゼロにする必要があるということである。そのためには、現在の社会のあらゆる側面において、急速かつ広範囲で、前例のない変化が必要である。

アジア太平洋地域は、温室効果ガス排出量で上位10か国中4か国(2020年データ)を抱えており、ネットゼロ目標の達成において極めて重要な地域である。しかし、この地域の多くの国々は、環境を犠牲にしながらも成長を最大化する「大量生産・大量消費・大量廃棄」の直線型経済モデルから速やかに脱却することはできない。また、過剰な国際債務を返済するために十分な収入を得るため、直線型モデルに縛られている国もある。  

進むべき道としての循環型経済

排出量を年々増加させている既存の直線的経済モデルから脱却することが急務である。

COP2015以降の世界的な取組みにもかかわらず、世界の温室効果ガスは、2020年のパンデミック時のロックダウンによって生じた低水準の後、さらに高く跳ね返り、2021年に過去最高を記録している。解決策としては、9Rの概念(Refuse=不要なものを断る、 Reuse=再利用する、 Reduce=環境負荷を減らす、Redesign=再設計する、Repurpose=別用途に使う、 Re-manufacture=別の製品にする、Repair=修理しながら長く使う、Refurbish=改装する、 Recycle=リサイクルする)で特徴づけられる、循環型経済モデルの採用が挙げられる。

このモデルは、環境と社会の面でさらなる成果を求めつつ、経済的機会を組み合わせる体系的アプローチを提起するものだ。各国政府は、競争力を高め、より強靭なサプライチェーンを構築すべく、循環型経済の枠組みの可能性に着目している。同時に企業は、二酸化炭素排出量を削減しつつ、コスト削減、収益増加、気候関連リスクの管理などの業務改革を行うことができるようになるだろう。また、循環型経済モデルの利点は、近年のデジタル経済の成長によって拡大した「シェアリングエコノミー」によって、さらに強化される可能性がある。

環境に優しい道を歩むための連携

COP26では、世界のネットゼロ目標を実現するため、緩和、適応、資金、協力の4つの戦略目標が掲げられた。緩和と適応の柱では、各国政府は、脱石炭の加速、森林破壊の抑制、電気自動車への切替の促進、再生可能エネルギーへの投資の増加など、国別公約の改訂を求められている。

スリランカのクラシンゲ貯水池モラガハカンダは、雨水を使ってエネルギーを生み出す、水力発電と灌漑の多目的プロジェクト

これらの野心的な計画には、具体的な資金調達が欠かせないが、少なくとも年間1,000億ドルの資金が必要と推定されている。世界中の最も脆弱なコミュニティが、気候危機の緩和に向けた行動を起こすための資金を確保するためには、民間金融機関と公的金融機関の協力が不可欠である。国際金融機関は、パンデミックから経済を再建するための刺激策をとる際、人々と気候のニーズが考慮されるようにする上で、重要な役割を担っている。

アジア太平洋地域にとって不可欠な国際金融機関は、アジア開発銀行(ADB)である。

ADBストラテジー2030」では、気候変動への取組み、気候危機・災害に対する回復力の構築、環境の持続可能性の強化、農村開発と食料安全保障の促進に対するADBのコミットメントが強調されている。さらに重要なことは、ADBが支援するプロジェクトの策定・実施において、労働組合を含む市民社会との連携強化にも取組む点だ。同時に、労働組合は、労働者が誰一人として取り残されない脱炭素経済への公正な移行を支援、促進、要求するなど、気候危機に対応する政策を政府に要求していく上で、不可欠である。

UNI Aproは、15年にわたる取組みにより、ADBとパートナーシップを結び、マルチステークホルダー社会対話を通じて、循環型経済における融資機会に関する議論を活性化し、地域の議論を推進しうる立場にある。そして、このパートナーシップを通じ、ネットゼロ目標や、豊かで包摂的、レジリエントで持続可能なアジア太平洋地域の構築というビジョンを具体的に実現するチャンスが増えていくことだろう。

注)本記事は、アジア開発銀行第55回年次総会の市民社会フォーラムのためにUNI Apro金融部会が作成したコンセプトペーパーから引用。


韓国保健医療労組、医療従事者のための画期的な産別協約を締結

UNI加盟組織の韓国保健医療労組(KHMU)は、2022年8月、同国100万人以上の医療従事者の労働条件を改善させる大規模な勝利を収めた。

ナ・スンジャKHMU委員長は、「共同合意に至ったことを嬉しく思う。医療機関の体質と医療サービスの質を向上させるため、我々は政府、すべての関連機関、市民社会団体と協力し、全国的な運動として共同の取組みを実施していくことを楽しみにしている」と述べた。

KHMUは、全国約80の医療機関を代表する使用者側との、第7回目となる10時間にわたる長丁場の交渉を経て、8月3日に画期的な産別協約に達した。協約は、長年にわたって医療業界を悩ませてきた、以下のような重要な問題を取り上げ、改善するものだ。

●本来医師免許を持つ者のみが行うべき処置を、診療補助要員が行うという違  法行為をなくし、医療従事者の業務範囲についてより正確な定義を吟味することで、政府ガイドラインへのコンプライアンス課題に対処する。
●夜勤が重なることによる疲労回復のための睡眠時間、健康診断の時間、献血のための有給休暇を保障する。
●役職や職階に関係なく、職場における暴力やハラスメントについては、加害者を懲戒処分の対象となるようにすることで、これらを撲滅する。

またこの協定は、以下に取組むことで、雇用条件と職場の安全性を向上させる。
●非正規契約の労働者を、雇用を中断することなく正規契約に転換する。また、団体協約の適用範囲をこうした労働者にも拡大する。
●危険を伴う業務を行う場合、最低2人の労働者を確保する。
●生活賃金制度を導入する。
●2021 年9月2日に政府との間で達した合意を尊重し、その実施を支援するために協力する。

今回の合意で最も重要な成果は、パンデミックの最前線で犠牲を払い、献身的に尽くしてきた医療従事者に対し、正当な補償を行うべきであるという認識で一致した点である。ただしKHMUは、医療機関ごとの様々な特徴を考慮し、賃上げについては、中央レベルの交渉で設定するのではなく、地方レベルで交渉できるという点に合意した。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「KHMUは、医療従事者の生活だけでなく、韓国の保健医療部門全体を変えるような合意を勝ち取った」と祝福し、「我々はパンデミックや交渉の中で、医療や介護に関わる労働者たちとともに歩んできた。これからも、前進を続ける彼らと共に歩み続ける」と連帯を示した。


オーストラリアの加盟組合、マクドナルドを提訴-労働者の休憩取得拒否をめぐって

オーストラリアのUNI加盟組織である店舗流通関連労組(SDA)は、義務付けられている休憩時間の取得を拒否されたとして、マクドナルドの現役および退職した従業員25万人を代表し、2億5000万豪ドルの巨額訴訟を提起することになった。

同国のマクドナルド323店舗と巨大ファストフード企業そのものを相手取った、今回の連邦裁判所への申し立ては、この種の提訴としては同国史上最大級のものであり、オーストラリアの労働者の1.8%以上に影響を及ぼす。

SDAによると、マクドナルド経営陣は、4時間の労働後に必要な、連続した10分間の休憩を従業員に与えなかったという。組合の広報担当者によると、この問題について現役および元従業員から1万件以上の報告が上がっている。

SDAは、有給休憩の拒否と搾取は組織的かつ意図的なものであり、マクドナルド・オーストラリアはフランチャイズ加盟店に対し、こうした慣行を補助し、けしかけてきたと見ている。

マクドナルド経営陣は、労働者は許可を得ずにトイレを使用したり、ドリンクを一口飲んだりすることができるので、休憩時間を取る資格はないとしていた。しかし、アデレードにあるマクドナルド元従業員であるイサベル氏は、ABCニュースに対し、こうした小休憩は会社が言うほど自由ではなかったと語っている。

「トイレに行ったり、飲み物を飲んだりすると、怒るマネージャーがたくさんいました。そうした行動は、怠けている、やるべきことをやっていない、と見なされるのです…(中略)…当時、『より必要なのはどっち?』と考えたものです。もっと飲み物が必要なのか、もっとトイレに行く必要があるのか、と。そして、その2つの中から選ぶのです」

SDAはこれまでにも、オーストラリア全土のマクドナルド経営者に対して10件の訴訟を起こしており、過去2回の企業別協約の交渉では、休憩時間に関する懸念を表明してきた。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「我々はマクドナルドと経営者の責任を追及するSDAの行動を全面的に支持する。騙し取られた休憩時間について、労働者は補償を受けるべき時だ」と述べ、「残念ながら、これはマクドナルドだけの問題ではない。サービス産業全体で、労働者の休憩時間を奪ったり、休憩時間について賃金を支払わない使用者がいる。労働組合と団体交渉は、労働者が自らの権利を確実に得られるようにするための、防衛の最前線となる」と指摘した。


UNIとITF、ドイツポストDHLとの協定強化:サプライチェーンのデューディリジェンスと人権を盛り込む

UNI と国際運輸労連(ITF)、そして ドイツポストDHL(DPDHL)グループと は、2019年に締結した経済協力開発機構(OECD)共同プロトコルを見直し、強化した。

7月25日にドイツのOECD連絡窓口によって署名された新たな協定では、UNIとITF、DPDHLは雇用や労使関係に関して継続的かつ建設的に対話を行う。DPDHLはさらに、サプライチェーンにおける労働者の権利および人権の侵害を特定、防止、緩和、救済するための手続きを強化する方法について、UNIおよびITFと有意義な関わりを継続することに合意した。

共同作業計画
対話の範囲を拡げるため、今回3者は初めて、共同作業計画に合意した。この計画では、共通の関心テーマや今後の課題に焦点が当てられている。テーマに関しては、「DPDHL人権に関するポリシーステートメント」に記載された7分野(児童労働、多様性と包摂、労働条件、データプライバシー、強制労働、結社の自由と団体交渉、環境)について、定例会議で掘り下げた議論が行われる予定だ。

UNI、ITF、DPDHLによるOECDプロトコルは、2016年に初めて締結され、2019年に改定された。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「我々は、DPDHLのデューデリジェンス・プロセスにUNIとITFが関わり、問題解決から予防へと協力を前進させていくこの新たなプロトコルを歓迎したい。結社の自由を支持するDPDHLとのこれまでの協定は、世界中で組合結成を促し、特にアフリカの国々では、多くの新しい組合員が団体協約の対象となってきた。この最新のプロトコルが、DHLのサプライチェーン全体における労働条件のさらなる改善につながることを期待する」と述べた。

また、ステファン・コットンITF書記長は、「労働者は、敬意を払われ、尊厳に満ちた生活を送るべきであり、自らが生み出した富について公正な分配を受けるのは、当然のことだ。DPDHLとITFおよびUNIとの長年にわたる関係は今、新たな段階へと歩を進めた。ともに労働者の声を支持し、労働者の仕事に意味ある影響を及ぼすよう、協力しなければならない。我々のパートナーシップの改訂は、サプライチェーンの説明責任の基準を進展させるものであり、我々は力を合わせ、世界経済の脱炭素化など、輸送業界が取組むべき問題や将来の課題の解決に向けて、協力し続けることを期待している」と語った。

DHLギニアで働く組合代表は、「グローバル・プロトコルのおかげで、我々の要求が経営トップに届き、労働者の直面する問題を正すことができるということを実感している」と述べており、その成果は確実に表れている。

3者は建設的な協議を維持し、年に3回、実務レベルの定例会議を開催することに合意した。また、ITFとUNIの書記長は、今後も少なくとも年に1回、DPDHLグループの人事担当取締役と会合を持ち、合意された主要テーマについて対話を行う予定だ。


UNI機会均等局、南アジア・東南アジアの女性リーダー育成に向けた新プログラム

UNI機会均等局が、南アジアと東南アジアの女性活動家を対象に、新たなメンタリング・プログラムを開始した。

ドイツ労働総同盟(ドイツのナショナルセンター)の連邦教育機関であるDGB Bildungswerkと提携し、UNI Apro地域で、スリランカ、インド、バングラデシュ、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、パキスタンの9か国の指導者とともに、4回シリーズの国内・地域ワークショップを開催した。

このプログラムでは、活動家が組合への関わりを深め、リーダーシップに関するスキルの習得を後押しすることを目指している。

一連のワークショップの最終回が、タイのバンコクで開催され、ジェンダー主流化、コミュニケーションの改善、業務上の暴力やハラスメントの解消、リーダーシップ強化のための行動計画策定に関するトレーニングセッションが行われた。

東南アジアのワークショップに参加した102人の女性活動家は、1対1のメンタリングを通じて学んだスキルを強化する、51のタンデムを組んだ。

メンターを務めるスリランカのセイロン銀行従業員労組のシャニカ・シルバ氏は、「メンタリング・プログラムは、人生を変える経験だった。他の人を支えるリーダーとして成長することができた。さらに、人脈を広げることができたことも、このプログラムから全ての参加者が得た大きなメリット」と、その成果を強調した。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「我々が実施しているメンタリング・プログラムは、国連の持続可能な開発目標、特にジェンダー平等に関する目標5に向けて役立つものだ。平等を実現することは、開発の他の成果においても不可欠だ。近年、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが持続可能な開発にとって極めて重要であることが認識されるようになった。その結果、職場全体でジェンダー主流化のアプローチを制度化する取組みが高まっている」と指摘した。

UNIメンタリング・プログラムは、UNI機会均等局が、THAT’S WHY キャンペーンの一環として、より多くの女性に労働組合運動への参加を促し、エンパワーするために創設したプログラムである。この新たなワークショップにより、メンタリングに参加した女性は、世界56か国で1,200人以上に達した。

ベロニカ・フェルナンデス・メンデスUNI機会均等局長は、「自らのストーリーを共有することでエンパワーされたと感じる、強くて一所懸命な女性たちとともに取組んでいくことほど、やりがいのあることはない」と語り、「ともに笑い、泣くことを恐れない女性。強く、疲れを知らず、進しいことに取組んでいく気概にあふれた女性。同じ障壁に直面し、解決策を見つけるために協力する女性たちこそ、我々の社会をより公正で平等なものにしていく」と力説した。


国際青少年デー:世界中の若年労働者は、より良い条件を求めて組合とともに立ち上がる

国際青少年デーにあたり、UNIグローバルユニオンは、より良い尊厳ある条件、職場の声、生活賃金、意義ある仕事を求めて組織化を進め、世界中で増え続ける若い労働者たちとともに立ち上がる。

UNIユースは、世界各地で研修やメンタリング・プログラムを通じて、こうした取り組みを支援している。

「労働者であることは、自分の仕事に誇りを持つことであると同時に、私たちが組合に入れば、労働条件を改善し、より良い賃金を求めて戦うことができるということを認識することだ」と、フランスのFOのポール・ブライエは述べた。

Covid-19は特に若い労働者に大きな打撃を与えた。

OECDによれば、危機は若者の失業率を押し上げ、若年労働者は一般の2倍以上となった。

しかし、労働条件の悪化に伴い、組合への支持は高まっている。

「組合に加入していれば、バックアップや支援が必要なときに組合に頼ることができる」と、SSFアイスランドのヨハンナ・ジョンスドッティルは言う。

国際青少年デーの今日、私たちは世界中の若年労働者のために、より良い労働条件、組合による代表、強い組合を求める声に賛同する。

今こそ、すべての労働者のために組合の力と団体交渉力を高め、強化する時だ。

UNIユース動画 「若者にとって、労働者である意味、組合員である意味、とは?」


世界の労働組合、労働者の権利に関する資産運用会社への期待事項を発表

2022年7月中旬、グローバルユニオンの労働者資本委員会(CWC)が、基本的労働権についての資産運用会社への基本的期待事項(以下、「CWC基本的期待事項」と表記)を発表した。資産運用会社の説明責任イニシアティブの一環として、労働組合と年金基金理事会が策定したCWC基本的期待事項は、アセットオーナーが、契約している資産運用会社に基本的労働権に関する説明責任を持たせる上で有用だ。

グローバルな資産運用会社は、労働者の退職基金の資金を運用している。CWCネットワークに参加しているこうした基金の役員は、資産運用会社が、投資先において労働者の権利への悪影響を緩和する責任を果たすことを期待している。同様に、財団や宗教系投資家などの他のアセットオーナーも、資産運用会社に対する期待を高めている。

国際運輸労連(ITF)会長を務めるパディ・クラムリンCWC副議長は、「グローバルな資産運用会社は、結社の自由や団体交渉の権利など、労働者の基本的権利が侵害されている公共・民間市場の投資に大きな出資をしている場合がある」と指摘し、「アセットオーナーは、基本的期待事項を用いて資産運用会社が影響力を行使した行動をとるよう、促すことができるようになった。そして最終的には、権利を侵害された現場の労働者に良い結果がもたらすことができる 」と述べ、その意義を説明した。

「CWC基本的期待事項」は、「基本的事項」から「優れた実践」へと進み、資産運用会社による労働者の基本的権利の尊重と支持に関する取組みレベルを評価するための、以下4つのカテゴリーに分けられる。

1.受託者責任の枠組み
2.上場株式における受託者責任の実践(委任状による議決権行使と株主参画)。
3.民間市場での受託者責任の実践
4.政策提言

この枠組みは、国連ビジネスと人権に関する指導原則およびOECD多国籍企業行動指針に基づくもので、デューディリジェンスを実施し、環境および社会への悪影響を防止または軽減するための投資家責任を定めている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「資産運用会社は、結社の自由や団体交渉のような労働者の基本的権利を、自社の受託者責任の枠組みや実務慣行に組み込むため妥協のない行動を取る必要があり、これらの期待事項は、今取るべき措置の指針となる」と述べ、「組合の退職基金は、労働者の基本的権利の侵害を存続させるために使われてはならない」と強調した。

スウェーデンのFOLKSAM-LO年金基金のCEOであるクリストファー・ジョンソンCWC議長は「環境、社会、ガバナンスを考慮したESG投資のマーケティングは、人権や労働者の権利に関する受託者責任について、有言実行する資産運用会社とそうでない会社を区別するよう、アセットオーナーに求めている」と指摘し、「このツールを使って外部の資産運用会社に質問を投げかけ、トップへの競争を促したい」と語った。

CWC基本的期待事項は、組合役員および以下の組織に属する年金基金受託者が共同で策定したものである:オーストラリア労働組合評議会、米国AFL-CIO、スペイン労働者委員会、オランダFNV、国際労働組合総連合(ITUC)、UNI、国際運輸労連(ITF)、OECD労働組合諮問委員会(TUAC)

労働者資本委員会(CWC)とは、労働者資本の責任ある投資に関して対話し行動を起こす国際労働組合ネットワークである。国際労働組合総連合(ITUC)、グローバルユニオン(GUF)、OECD労働組合諮問委員会(TUAC)の共同イニシアチブであり、UNIは事務局に参加している。


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