7月 2022のお知らせ

オスロ印刷労組の未来志向戦略

結成150周年を迎えるノルウェーの印刷・グラフィック部門の労働組合は、労働者の力を高め続けるため、未来に目を向けている。ノルウェーで最も歴史あるオスロ印刷労組(Fellesforbundet傘下)における、労働条件の改善に向けた野心的な動きを見ていきたい。

動き出した部門
クリスチャン・ミュレン・セザー・オスロ印刷労組委員長は、「伝統的な印刷部門の労使関係は、確立されたものであり、労働者は組合を通じて良質な労働条件を獲得してきた。だが、時代の変化にあわせて、組合も変わらなければならない。印刷部門の進化に伴い、大規模な印刷機ではなく、オフィスでコンピュータを使って働く印刷労働者が生まれた。従来の印刷業は今も中核的なサービスであるが、今日の印刷産業には、こうした新しい労働者の働くデザイン事務所も含まれる。我々は組合の豊富な経験を生かし、こうした進化の途上にある部門において、良好な労働条件を確立しようとしている」と語る。

デザイン事務所や広告代理店で働く人々の仕事は人々の目に触れやすいが、労働条件はそうではない。この成長中のグラフィックデザイン部門の労働者は、従来の印刷部門の労働者と同じレベルでは組織化されておらず、彼らの労働条件は、決して恵まれているとは言い難い。

未払いの残業代や、管理しきれない仕事量、労働時間が予測できない等の問題が頻繁に生じている。こうした状況に対応すべく、労働者は組合を通じて、こうした部門における組織化支援を強化していくことを決めた。

公共調達を活用し、最初の突破口を開く
ノルウェーでは、多くの労働者が団体交渉によって保護されているが、デザイン事務所や広告代理店で働く多くの人々は、これにあてはまらない。この状況を変えるには、このような代理店で最初の団体協約を締結し、組合にできることを示す必要があった。

こうした中、オスロを拠点にするデザイン会社BØKの労働者は、積極的なアプローチを取った。職場の一体感を醸成するため、組合の職場委員が同僚同士の交流を促した。従業員の中で共通の懸念が確認され、その結果、新たな組合員の加入にも繋がった。

最初の団体協約を締結するため、組合はノルウェーの公共調達法を利用する戦略を立てた。この法律は、公共機関が公共契約を発注する際に、労働者と団体協約を結んでいる企業を優先させることを義務づけている。ほとんどのグラフィックデザイン会社が対象外であるため、BØKは、この部門の重要な顧客基盤である公共機関のプロジェクトにアクセスする上で、大きな足掛かりを獲得することになる。

組合は、団体協約を締結することで公共契約の獲得につながるという点を強調し、経営陣に働きかけを行った。会社は公共契約を取り付けられるだけでなく、団体協約は適正な労働条件の証明にもなるので、他の社会的責任ある顧客向けのプロジェクトに応募する際にも活用できる。

会社トップと接触する機会において、こうした主張は効果的であり、また肯定的な反応を得ることができた。組織化の取組みを開始して10か月後、BØKの労働者は、2022年2月に使用者と団体協約を締結した。

部門全体の戦略
カーステン・オストビー・ホーコンセン・オスロ印刷労組副委員長は、「BØKでの最初の躍進が方向性を打ち出したが、ここで終わりではない。部門全体でディーセント・ワークを確立することが我々の狙いであり、そのためには、団体交渉を例外的なものではなく、原則にしていきたい」と意欲を語った。

劣悪な労働条件は、印刷デザイン業界でますます一般的になっている。 そこで組合の代表者らは、この部門で働く自身の経験をもとに、労働やデザインの専門サイトに意見を掲載したのである。 こうした的を絞ったメディアへの働きかけが功を奏し、労働者は組織化を自身の解決策とみなすようになった。

デザイン事務所は中小企業の数が多く、大企業の数は限られている。BØKの経験は前例を作るものとなったが、企業ごとの組織化は、効果が落ちる可能性があり、また膨大なリソースも必要となる。団体協約を早期に締結することの利点を享受できるうちに、一部の大企業に働きかけていくことが、流れを変える鍵になるだろう。

組合のもう一つの戦略は、学生に変化の種を蒔くことだ。組合は、大学や職業訓練校、中等教育機関を回り、組織化が職場の問題に取組むための解決策であることを教えている。学生たちに、自身の将来の労働条件を改善するためのツールを提供しているのである。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「150年の歴史を持ちながら、オスロ印刷労組は今なお健在であり、戦略的思考は組合運動の宝だ。我々は共に、蓄積された財産を活用し、現在も、そして次の150年も、労働者の力を構築していこう」と述べた。


韓国の労働組合、外国人投資法の改正を要求

韓国の労働組合が、不均衡で外国企業に有利な投資環境を是正するため、現行の外国人投資法の改正を求めている。

韓国の主要なナショナルセンターである韓国労働組合総連盟(FKTU)と韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)、そしてUNI韓国加盟組織連絡協議会(UNI-KLC)が、7月12日に国会図書館セミナールームで開催された、外国企業の労使関係に関する第3回合同フォーラムで、法改正の要求を表明した。

2019年末の政府統計によると、韓国における外資系企業は14,341社、その総売上高は韓国経済の13.2%にまで上昇したが、雇用および研究開発(R&D)における貢献は、それぞれ6.0%と5.2%と停滞している。

組合によると、1999年の金融危機以降、地方自治体は外国直接投資(FDI)を誘致するため、特別待遇や特権を与えてきた。しかし、この間、無責任な事業撤退、技術盗用、大量解雇を伴う一方的なリストラ計画や、組合活動に対する弾圧など、多くの負の問題が生じてきた。これらの問題は、製造業、金融業、小売業といった部門を横断して生じている。

20年近く負担を強いられてきた外資系企業の労働者は、国内の最低労働基準が遵守されるよう、外資法の改正を一致して求めるとともに、政府が外資系企業に対して新たな立場をとることも要求している。

フォーラムでは主に、地方政府が提供する投資便益や条件を規制するために法改正すること、使用者が団体交渉の義務を意図的に回避したり遅らせたりした場合の監督と罰則を強化すること、未公開株式投資ファンドの買収に対する規制を強化すること、海外送金の自由を保証しつつ、外国投資の流出に対する規制を強化すること、などの提言がなされた。

この分野の専門家であるホン・ソクマン氏は、フォーラムの中で、現在の枠組みにおいては、外国人投資家が不当な労働慣行を行っても、法的責任を容易に逃れることができるため、労働者の権利が損なわれてしまうと指摘した。そしてこの事は、外国資本に支えられた未公開株式投資ファンドによる買収や売却が容易にできてしまう状況によって、促進されているのである。

韓国事務金融労連(KFCLU)傘下キャピタル労組のキム・サンス氏は、「我々は長年、組合弾圧、技術盗難、やみくもな資産売却、本社への高額の移転価格を見てきた。だが政府は、労働市場の規制緩和は、韓国への外国投資水準を維持するために必要であると、同じ理屈を繰り返している」と述べた。

外資系企業の労働組合を率いるファン・ボクヨンKFCLU副委員長は、「法改正には時間がかかる。すべての外資系企業労組と連帯していくため、コミュニケーションを拡大する必要がある」と付け加えた。


UNI Apro、スリランカにおける平和的デモ参加者への攻撃を非難

UNI Aproは、コロンボの大統領公邸付近の公式なデモ宣言地域で、2022年7月22日に平和的なデモ参加者が攻撃されたことを、強く非難する。

UNI Aproは、これまで100日間にわたって表現の自由という正当な権利を行使し、平和的かつ非暴力的な方法で抗議の意思を示し、市民の生きる権利のための基本的ニーズを提供しない政府を非難してきたスリランカの人々に連帯し、敬意を表する。

我々は、政府治安部隊による非武装の市民に対する圧倒的な武力の行使を全面的に非難する。

現地からの報告によると、今回の残忍な攻撃では特に、7月22日のデモを取材していたメディア関係者、ジャーナリスト、外国メディアの記者、ソーシャルメディアの活動家が標的となった。

我々は、新たに就任したラニル・ウィクラマシンハ大統領率いる政府に対し、武装治安部隊による罪のない市民に対するあらゆる暴力を直ちに停止するよう求める。

また政府に対し、スリランカで深刻な苦境にある国民の声に応えるため、あらゆる平和的な機会を早急に模索するよう、要請する。


メキシコのテレコム労働者が歴史的ストライキ

新たな団体協約の交渉が決裂し 、 STRMがストを実施

賃金、団体協約違反、そして約2000人の採用募集をしていないことをめぐって、 メキシコの大手通信会社テルメックスで働く数千人の労働者が、約40年ぶりのストライキに突入した。

約6万人のテルメックス労働者を代表するUNI加盟組織のSTRMは、2022年7月21日付で組合員向けに出した声明の中で、「今日、柔軟性に欠ける強硬な姿勢や意思の欠如は、労使関係の良好な進展にとって正しい道ではないということが明らかになった。我々は3年間、会社と労働当局に対し、この交渉を最良の条件で解決しようとする政治的意思を示してきたが、会社側は政治的な意思を示さなかった。組合にはストライキに訴える以外の選択肢は残されていない」と述べた。

ストライキの発表後、労使は労働省を通じた調停手続きに合意し、7月25日に行われる最初の会合から20日以内に解決に至ることが期待される。この問題の解決に向けて設置された専門委員会は、従業員に対する債務、新入社員の退職制度、1,942人の追加雇用についての両当事者による様々な提案に関して、財政コストおよび数理計算を分析する権限を持つ。

6月初めに一度ストライキは延期され、労使は現役労働者および退職者の4.5%の賃上げを定めた団体協約の改定に合意した。だが組合は、メキシコのインフレ率に見合った7.5%の賃上げを求めている。

組合によると、カルロス・スリム一族が所有するテルメックスは、3年前にメキシコ全土で約2000人の採用を約束したものの、実現しておらず、必要人員よりも少ない人数で運営されているという。組合はまた、運営や管理上のニーズに対応する投資拡大を求めている。

さらに組合は、予定されていた募集人員の一部が外部企業に委託され、外部企業に雇用された労働者は団体協約の対象外となるため、組合の弱体化につながっているとの非難をしている。

マルシオ・モンザネUNI米州地域書記長は、「団体協約を守り、組合員の良質な雇用をつくり、インフレ率に見合った賃上げを求めてストを実施中のテルメックス従業員と加盟組織STRMを支援する。我々は会社側に対し、早急に組合と対話を行い、組合の要求に耳を傾けるよう求める」と述べた。

テルメックスは、スリム氏が所有するアメリカ・モビルの一部であり、中南米の他地域ではクラーロのブランドが使われている。アメリカ・モビルはメキシコの会社で、中南米最大手の電気通信会社である。


2022年7月28日、豪金融労組がミャンマーの正義に向けてウェビナー開催予定

UNI加盟組織のオーストラリア金融労組(FSU)が主導する人権ネットワークが、7月28日に労働組合を対象としたウェビナーを開催する。ミャンマー現地の活動家による抵抗のストーリーを紹介するとともに、ミャンマーにおける正義の回復に向け、加盟組織がどのように貢献しうるのか、詳しく見ていく。

人権ネットワークは、労働者や地域社会の権利を守る企業義務に関するさまざまな重要課題について、オーストラリアの金融機関の責任を問うため、2021年に結成された。

本ウェビナーは、2022年4月20日に開催された第30回UNI Apro執行委員会の声明の中で、すべての国際的および地域的な企業に対して、ミャンマーの人々に対する重大な人権侵害を行うことを可能にする政権への資金提供に加担しないようビジネスおよび人権デューディリジェンスを強化するよう求めたことを反映するものだ。

ウェビナー詳細
日時:2022年7月28日(木)11:30~12:30(日本時間)
登録:こちらから
内容:ミャンマーにおける正義のための闘い、そしてオーストラリア企業や機関が人権侵害に加担しないようにするには。

2021年2月1日、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)党が圧勝した総選挙の後、ミャンマー軍は政権を掌握した。ミャンマーの労働組合員や一般市民は街頭に立ち、暴力的な政権に並々ならぬ勇気をもって反抗してきた。ミャンマー亡命政府は、オーストラリア政府系ファンド(The Future Fund)が、ミャンマー軍と取引のある武器メーカー等の企業に投資していることを批判している。ミャンマーの人々の抵抗の物語と、我々がミャンマーにおける正義をどのように支えることができるのか、ぜひご参加ください。


英国の人材派遣業界の社会パートナー、スト破りに「NO」を表明

2022年7月11日、派遣労働者を使ったストライキ打開計画が、英国議会で承認された。だが、7月上旬に人材派遣数社が、この提案への明確な反対を表明している。

英国最大手の人材派遣数社のCEOは、ビジネス・ エネルギー・産業戦略相であるクワシ・クワーテン氏への書簡の中で、数十年にわたりストライキ中の労働者の替わりに派遣労働者を使用することを禁止してきた規則を後退させることになる今回の政府案に反発を示した。

この政府案に対する反対意見は、人材派遣会社だけでなく、労働組合も含めて広く受け入れられている。世界雇用連合(WEC※)のベッティーナ・シャラー会長は、「国際的な社会パートナーである2組織(WECとUNI)は、この問題に対応するため、適切なレベルで建設的な三者間社会対話の必要性を訴えている」と述べた。世界雇用連合の企業会員とUNIの間で2008年に締結された覚書は、国および企業レベルでの部門別社会対話の重要性を強調しているが、これは現在の労働市場の課題に取組む上で不可欠である。

UNIと世界雇用連合の企業会員は、「国内の法律や慣行を損なうことなく、ストライキ中の労働者を派遣労働者に置き換えることを禁止する」など、業界の適切な規制に関する指針を定めた長期的な協定を締結している。

オリバー・レティクUNI欧州地域書記長は、「スト破りを容易にしようとする英国政府の試みは、英国内に広がる不満の火に油を注ぐだけだ」と指摘し、「人材派遣会社が、こうした組合潰しは、ビジネスにとっても労働者の権利にとっても間違ったことであると非難しているのは、まったくもって正しい。人材派遣会社が自らの価値観を守り続け、このようなひどい行為を認める法律の改悪に抵抗していくことを求める」と述べた。

※世界雇用連合(WEC)=世界各国の人材ビジネス業界の団体及び同業界トップ6社で構成される、人材ビジネス業界を代表するグローバル組織。2016年に国際人材派遣事業団体連合(CIETT)から改称した。


UNI-LCJ女性ネットワーク会議を開催

2022年7月15日、UNI-LCJ 加盟組織におけるジェンダー平等やダイバーシティ推進を担当する役員同士の交流・情報交換の場として、UNI-LCJ女性ネットワーク会議が開催された。2018年以来、4年ぶりの開催となった今回は、印刷労連、生保労連、UAゼンセン、損保労連、大日本印刷労組とUNI-LCJ事務局から計11人が参加した。

参加者自己紹介の後、5月にスイス・ニヨンで開催されたUNI世界女性委員会にUNI Apro女性委員会副議長として出席した須齋弥緒損保労連事務局次長が、同会議について報告した。日本のテレワークの状況や課題について各国の委員に共有したことや、会議を通じて女性の活躍やILO第190号条約の批准に向けた取組み等、日本が各国と比べ遅れをとっていると実感した点について述べるとともに、米国で女性の人工中絶の権利を認める法律が破棄されたことについて反対する声明が採択されたことについても、報告した。

続いて各組織の参加者が、ジェンダー平等や多様性推進の活動と課題について共有した。

はじめに須齋事務局次長が、損保労連におけるジェンダー平等推進計画の取組み状況について報告した。執行部に占める女性役員の比率は22%であるが、女性が事務局長を務める単組も出てきている等、男女関係なく役割を担っていくという点では着実に前進していること、一方、課題として、限られた人数で業務を行っているために長時間労働の傾向がある点を挙げた。また男性の育休取得については、法改正などの趣旨や背景を皆が理解できるよう周知することで、男性が取得しやすい職場づくりに向けて取組んでいると述べた。

続いて、印刷労連より古賀初代副書記長が報告した。印刷労連の役員における女性比率は依然として低いものの、各地域の地方協議会レベルで活躍している女性は増加傾向にあると報告した。2017年より男女平等の取組みを掲げ、取組み方針を共有し意見交換をしてきたが、2020年はオンラインで会議を開催したことで、これまで参加できなかった育児世代の女性も参加できたというメリットもあった。こうした活動を経て、2021年度は、印刷労連としての現状に基づいたジェンダー平等推進計画を策定すべく取組みを進めてきた。今後は、ジェンダー平等推進委員会設置に向け、男性メンバーも含めて意見交換の場を設け、相互理解を促進しつつ取組んでいくことが重要だと述べた。

生保労連の山本由美中央副執行委員長は、同労連が進める意思決定の場への女性の参画と、組合活動におけるワークライフバランスの推進の取組みについて報告した。2025年までに本部女性役員を30%にするとの目標の下で女性役員の積極登用を進めており、2016年に初の女性専従役員が選出され、2020年には女性役員が2名になる等、少しずつ前進している。会議が長時間に及ぶ現状などから、組合運営の効率化を進め、女性が活躍しやすい環境整備を進めていく必要があると言及した。また、女性組合員同士のネットワーク構築が図れるよう工夫をしている点についても紹介した。さらに、同労連の中島麻紀子中央副執行委員長は、ワークライフバランスの実現に向けた、男性の育休取得促進の取組みについて説明した。男性の育休取得については、2025年8月までに各組合で取得率100%の目標を掲げて促進しており、すでに100%を達成している組合については平均取得日数を増やすこと、取得日数1か月以上の組合員を増やすことなどを目標として取組んでいる状況などを共有した。

続いてUNI Apro女性委員を務める寺嶋雪乃UAゼンセン男女共同参画局副部長は、UAゼンセンの約半数が短時間勤務の女性組合員である点に触れた上で、男女共同参画推進キャンペーンの取組みについて紹介した。特に、女性の活躍や定着に関する調査を実施し、その調査結果を今後の方針に反映させ、単組が労使交渉の際にデータ活用できるようにしていきたいと述べた。また、今年4月の法改正に合わせて発行された「男性の育児休業取得促進のためのガイド」では、法改正の解説やチェックリストのみならず、自身が連続育休を取得した男性や、部下が育休を取得した場合のマネジメントの仕方などについてリアルな事例を共有していると紹介した。
さらに今回の参院選にあたり、部門や都道府県支部の男女共同参画委員を対象にウェブ意見交換会を開催して組織内議員に声を届ける取組みや、公示から投票日までの連日、全組合員を対象にウェブ意見交換会を実施したこと等を報告し、成果として、横のつながりの構築、優秀な人材の発掘、新しい形の選挙運動の展開などを挙げた。また、所謂パート労働者の「収入の壁」問題について、状況改善の必要性について認識共有できたこと、更年期障害を理由に退職する女性従業員が多い状況に対する取組みが最優先課題の一つとして浮彫りになったことなどを報告した。

UNI Apro女性委員を務める大日本印刷労組の三﨑友香里書記次長は、初めに同労組の女性役員の比率とその課題について言及した。執行部のうち女性は約13%であるが、組合の機関会議で議決権を持つ中央委員を含む組合委員では女性は27.5%を占めている。2019年に初めて三﨑書記次長を含め2名の女性が初めて専従役員に選出される等、この10年間で女性比率の状況は改善しつつある。一方で、組合活動が業務時間外に実施される点など、活動参加における高いハードルについても指摘し、多様な働き方に対応した組合活動にしていく必要性があると述べた。また、組合におけるダイバーシティ推進の取組みとして、外部講師を招いて幼児を子育て中の組合員向けのセミナーを実施したこと、また会社と協力して独身層向けに婚活支援アプリの導入が検討されていることにも言及した。

最後に、森川容子UNI LCJ事務局次長よりUNI機会均等局のジェンダー平等、ダイバーシティ実現の取組みが報告された。また、2022年8月10日にオンライン開催されるUNI Apro女性委員会、2023年8月25~26日に米国・フィラデルフィアで開催される世界女性大会等、今後の予定を共有した。UNIのネットワークを活用し、今後もジェンダー平等実現のために国内外で情報交換・交流を行くことを共有し、会議は閉会した。


医療・介護部門の女性の収入は、同部門の男性より24%も少ない

男女間の賃金格差を是正する方法は、団体交渉

世界保健機関と国際労働機関による新たな共同報告書によると、医療・介護部門の女性は、他の経済部門と比べて男女間賃金格差が大きく、同部門の男性の収入より平均24%も少ないことが明らかになった。

この調査は、医療・介護部門における男女間の賃金格差について、世界で最も包括的な分析を行ったものである。女性は医療・介護部門の労働力の67%を占めており、介護部門に特化して見ると、女性の占める割合はさらに高く、約90%にのぼる。

賃金格差の多くは説明のつかないものであり、おそらくは女性に対する差別が原因であると報告書は指摘している。医療・介護部門の賃金は、他の経済部門と比較して全般的に低い傾向にあり、女性が大半を占める経済部門では賃金が低いことが多いとの調査結果と一致している。

『医療・介護部門における男女賃金格差:COVID-19時代におけるグローバル分析』では、COVID-19パンデミックが発生し、医療・介護部門の労働者が非常に重要な役割を果たしているにもかかわらず、2019~2020年の間にみられた賃金格差の改善は、ごく僅かなものであったことが分かった。

この調査について、エイドリアン・ドゥルチUNIケア部会担当局長は、「介護部門における男女間の賃金格差を是正する最も効果的な方法は、労働組合そして団体交渉だ。使用者と交渉する際、同一賃金に関する強力な条項を盛り込むことで、個人単位ではなく、集団単位で女性の賃金水準を押し上げていくことができる。UNIがブラジル、チェコ、コロンビア、インド、ネパール、ポーランドなど16か国で介護労働者を組織化しているのは、そのためだ」と強調した。


ドイツ加盟組織ver.di、 アマゾン労使協議会選挙で勝利

ドイツのUNI加盟組織ver.diは、アマゾン配送センター初の労使協議会設立に向けた数か月におよぶ奮闘を経て、 ハノーバー地区の都市ヴンストルフで過半数代表を選出し、労働者の声が確実に届くことになった。

約200人の従業員が労使協議会の代表を選出した後、ver.diの担当者ディートマー・ゲルシュドルフ氏は、「アマゾンの仕分・配送センターにも法的な共同決定の制度を持つことになり、嬉しく思う」と語った。

ここ数か月、ニーダーザクセン州のアヒムとヴィンゼンにあるアマゾンの物流センター(いわゆるフルフィルメント・センター)でも、労使協議会の選挙で成功を収めている。

ヴンストルフで新たにver.diの従業員代表を務めることになったセルダル・サルダス氏にとって、アマゾンの他拠点との接触は、特に重要であり、「厳しく険しい道のりだったが、我々は勝利した。アマゾンの他拠点にいる仲間を勇気づけたい。労使協議会を立ち上げ、仲間の従業員のために立ち上がるということ。我々がやったことは、ずっと前から皆やれていたことだ」と語った。

ver.diはこれまで長い間、ドイツにあるアマゾンの倉庫や配送センターの労働条件を批判してきた。何千人ものアマゾン労働者がver.diに加入しているが、同社は従業員との団体協約の締結を拒否している。組合に対する敵意は、過去数年にわたり、ドイツなど欧州全域で何十回ものストライキやその他の職場行動を引き起こしてきた。

アマゾンには、労働者の権利をないがしろにしてきた経緯がある。アマゾン労働者のプライバシーに侵入してくる、包括的な監視システムについて報告したUNIの報告書『アマゾン・パノプティコン』によると、労働者のプライバシーを大きく侵害する、同社の超高速の配送プロセスは、130万人の労働者に対する有害な影響を隠している。従業員は執拗に監視され、評価され、プレッシャーの高い過酷な環境に置かれている。

このモデルはあまりに非人道的であり、ニューヨークタイムズが報じたように、「アマゾンはあまりに早く労働者を使い捨てるので、幹部らは人材が不足するのではないかと心配している」のである。ブルームバーグニュースも、アマゾンのドライバーは、実在の管理者ならば無視するような、些細な不運な出来事が原因で「アプリによって解雇された」と報じている。


UNIと万国郵便連合、多角化、気候変動、ジェンダー平等に関する連携強化に向けた協定を締結

2022年7月6日、UNI と万国郵便連合 (UPU) は、事業の多角化、気候変動、ジェンダー平等の分野における国際郵便部門の持続的発展に向けた協力の強化に向け、新たな協定を調印した。

協定は、UPU加盟国の郵便事業者がサービスを拡大し、環境を保護しながら、質の高い雇用、労働者の権利、労働条件を確保する方法の推進に向けてUNIとUPUが連携していく具体的な方法を定めている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「郵便は必要不可欠な公共財であり、本協定は、その広範囲かつグローバルなインフラを利用して、環境や労働者の権利を保護しながら新たな社会サービスを提供するためのロードマップとなる。エコロジーで、ジェンダー平等を推進し、多様なサービスを提供するグローバルな郵便制度の構築に向け、UPUとの協力関係を深めていくことを期待している。今回署名された協定は、こうした目標を達成するために労働者の参加と代表制が不可欠であることを明確にしている」と語った。

両組織は、手紙や小包の集荷・仕分け・配達にとどまらず、郵便部門のインフラやネットワークを活用し、温室効果ガスを排出しない幅広い新たなサービス・活動を、地域や社会に提供する郵便のビジョンに向けて、共同で取組みを行っていく。また、郵便事業の多角化に伴い、この協定は郵便労働者の円滑な移行を支援し、労働組合代表との社会対話を呼びかけている。

目時政彦UPU国際事務局長は、「デジタル・トランスフォーメーションやサービスの多角化という新たな時代の中で、UNIとの長年のパートナーシップにより、郵便労働者の視点とニーズが考慮に入れられるようになっている。国連の持続可能な開発目標やUPU加盟国の郵便事業者の持続可能性戦略の成功にとって、包摂、多様性、開放性に基づく、あらゆる階層・職種の職員との積極的な対話は不可欠だ」と述べた。

郵便部門におけるジェンダー平等の向上と女性のエンパワーメントに関して、UNIとUPUは協力していく予定であり、UPUは、暴力及びハラスメントに関する2019年のILO第190号条約および第206号勧告にも言及する予定だ。

UPUは、加盟192か国を代表する国連の専門機関であり、郵便部門における国際協力のための主要なフォーラムでもある。UNIは、世界100か国以上の250万人の郵便労働者を代表している。


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