2022年4月20~21日、標記会議が開催され、12か国の組合指導者が地域全体の動向を共有し、組織化や団体交渉の拡大、また民主主義や人権、連帯の強化に向けた取組みを再確認した。
会議の冒頭、松浦昭彦UNI Apro会長は、COVID-19の犠牲になったすべての人々、組合員、労働者、ミャンマーの軍事クーデターと最近のロシアのウクライナ侵攻によるすべての民間犠牲者に追悼の意を表した。また、3月に64歳で亡くなったヤン・ビョンミン韓国金融労組(KFIU)前委員長を偲んだ。
会議のハイライト
松浦UNI Apro会長、クリスティ・ホフマンUNI書記長、ゲストスピーカーの吉田昌哉ITUC-AP書記長は、過去1年間にアジア太平洋地域で起きた民主主義と労働者の権利に対する攻撃に関して、最近の情勢に触れた。
香港、アフガニスタン、ミャンマー、フィリピンでは、労働組合と組合員は依然として厳しい圧力下にあり、またインドやインドネシアなどの国では、労働者の権利が損なわれる危険性がある。
世界的に見ると、新たな危機が人々の関心をパンデミックから遠ざけている。ロシアのウクライナ侵攻によって世界秩序に混乱と再編がもたらされ、世界経済に影響を与えるだろう。これらの新しい地政学的・経済的課題に加え、労働組合運動は、組織化と組合強化という既存の優先課題に引き続き取組みつつ、パンデミックによる現在進行中の問題に対処する具体的な措置を講じ続ける必要がある。
UNI Aproの組織化・組合強化計画
会議では、今後数年間の新たな組織化計画が承認された。この中には、他地域のUNIの組織化センターをモデルとして、南アジアと東南アジアに2つの組織化センターの設立が含まれている。また、地域の加盟組織のオンラインでの組織化活動を補完・支援するために、デジタルオルグ担当が配置される。
UNI Aproは引き続き、安全で持続可能な雇用の創出に向けて、建設的な社会パートナーシップと労使関係を追求し、グローバル協定の効果的な実施と、多国間ガイドラインを組織化ツールとして活用することによって、これらの取組みを強化していく。
またUNI Aproは、パンデミックの沈静化に伴い、UNIと連携して、地政学や気候変動の観点からの正義や、その他の現代的課題に関する政策提言活動に再び力を入れていく。加盟組織が集中的に関わりながら、アジア太平洋の文脈に適した政策の方向性を打ち出していく予定だ。
加盟組織からの報告
会議の中で加盟組織は、直面する課題と獲得した成果について報告した。
ネパール唯一の金融労組であるFIEUNは、組織化イニシアティブを通じたUNI/UNI Aproの支援により、2021年にはUNI加盟人員を400%近く増やすことに成功した。台湾のテレコム労組であるCTWUは、中華テレコムの再編計画について組合と対話するよう圧力をかけるべく、ストライキを開始したにもかかわらず、賃上げと複数の手当を獲得したと報告した。
また、自国の労働者の権利にかかわる法律について、前向きな動きを報告した加盟組織もあった。
インドネシアの憲法裁判所は2021年末に、雇用創出に関するオムニバス法は違憲であり、2年以内に是正する必要があるとの判決を下した。ASPEKインドネシアは、この展開を注意深く見ており、労働者の権利を害する法律の条文が削除されるよう、関係する全ての社会パートナーと対話している。
ベトナム情報通信労組(VNUICW)は、最近の労働法改正により、どの産別交渉単位でもカバーされていない労働者への福祉給付の適用が拡大されたことを紹介した。残業時間の上限は、ほとんどの産業で年間200~300時間となっている。また、同国は2023年にILO第87号条約(結社の自由及び団結権の保護)を批准予定だ。
同様に、韓国の金融産業労組(KFIU)は、2022年4月20日にILO第29号条約(強制労働の禁止)、87号条約(上記)、98号条約(団結権及び団体交渉権)が発効したと報告した。これらの条約は、韓国の組合が国内法や政策について改善を要求していく力をさらに強化するものとなる。
オーストラリアの店舗流通関連労組(SDA)は、商業労働者に対する第三者からの暴力に対する罰則を強化する法案が成立したと報告した。同様に、多くの加盟組織が、ILO第190号条約の批准に向けて、自国政府への働きかけを行っている。
民主主義、人権、労働組合の情勢について
ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長がミャンマーの最新情勢を報告し、同国に関する新たな声明が全会一致で採択された。声明は、2021年2月1日の軍事クーデターに対する非難を改めて表明し、国際的・地域的な努力にもかかわらず、1700人以上が殺害され、数万人が恣意的に拘束され、40万人以上が避難している状況が改善していないことを指摘した。また、アジア太平洋地域のすべての指導者に対し、民主的に選出された文民指導者に政権を返還するようミャンマー軍事政権への圧力を強化すること、またグローバル及び地域の企業に対しては、ミャンマー国民の人権に対する軍事政権の攻撃に資金提供するような事業を一切行わないよう求めている。そして最後に、ミャンマーのすべての人々に対する連帯を再び強調した。
この声明を地域の全加盟組織に配布し、自国内でのロビー活動のツールとして活用するよう、奨励することが合意された。クリスティ・ホフマンUNI書記長は、報告と声明文に謝意を表し、この声明を次回のUNI世界運営委員会に提出し、さらなる支持を得る予定だと述べるとともに、UNIは対話中の多国籍銀行に対し、ミャンマーでの金融事業を停止または縮小するよう、引き続き圧力をかけていくと約束した。
会議ではさらに、韓国とフィリピンの加盟組織が最新状況を報告した。韓国では最近の大統領選で保守派の候補者が当選したが、この候補者は反組合的な公約を掲げてきた。一方、フィリピンでは、大統領選の有力候補として独裁者フェルディナンド・マルコス元大統領の息子が、副大統領には麻薬撲滅のため血みどろの戦争を展開した前大統領の娘であるサラ・ドゥテルテ氏があがっている。また、会議は、2020年に成立した国家安全維持法によって、加盟組織が安全かつ積極的に国際会議に参加することが妨げられている香港の困難な状況に留意した。
第6回UNI Apro地域大会の準備について
第6回UNI Apro地域大会に向けた準備を開始すること、パンデミックによる混乱を考慮し、2023年ではなく2024年に地域大会を開催することに合意し、会議を終了した。