3月 2022のお知らせ

アルゼンチンの金融労組、フィンテックのオープンバンクと協約締結

アルゼンチンでは3月下旬、UNI加盟組織のラ・バンカリアが、100%デジタルのオープンバンクとの間で、画期的な協約の締結に至った。この協約により、オープンバンクの労働者は銀行の従業員として認められ、今後は銀行部門の産別労働協約18/75の適用を受けることになる。この協約は、完全なデジタル企業の従業員の職業能力を促進するため、トレーニングの継続的な実施に重点を置いている。

UNI米州金融部会議長を務める、ラ・バンカリアのセルジオ・パラッツォ書記長は、「今回の協約は、銀行事業の成長や、デジタル社会における新しい働き方に向けた労使のコミットメント、そして労働者の職業能力の向上と生活の改善に対する共通の関心を反映したものだ」と語った。

加えて、ギジェルモ・マフェオUNI米州金融部会担当部長は、「オープンバンクのような100%デジタルの銀行とラ・バンカリアの間で結ばれた協約は、フィンテック企業で働く銀行員の地位を認める大きな一歩であり、当地域における我々の取組みの中でも最も重要なものだ」と祝福した。

この協約により、アルゼンチンの全銀行に適用される産別労働協約が、オープンバンクの労働者に適用されることになる。また協約には、養子縁組のための休暇、父親休暇、性的暴力や家庭内暴力の被害者のための休暇の権利が含まれている。また、育児費用、アルゼンチン金融システムの銀行が上げた利益の分配、長期休暇のために労働者に追加の支給を行うことが規定されている。

マフェオUNI米州金融部会担当部長は、「今回締結したのは、持続可能で安定した雇用を目指す今日的な意義を持つ協約であり、将来を見据え、包摂、ジェンダーの多様性、環境への配慮に重点を置いている」と強調し、「すべてのフィンテック労働者が協約でカバーされることになり、銀行従業員としての権利が尊重されるようになると確信している」と締めくくった。


韓国の宅配労組、過労死にNO

3月上旬、UNI加盟組織の韓国サービス労連(KFSU)傘下のCJ大韓通運宅配労組が、団体協約を締結した。韓国の物流分野で過労死を引き起こしている労働条件について、一歩前進である。

同労組は2021年12月28日、韓国最大の物流企業であるCJ大韓通運に対し、労働者への不当な扱いに抗議し、ストライキを開始していた。CJ大韓通運の代理店連合が、さらなる事業損失を抑制するために、最終的に組合に和解交渉を持ちかけたことで、2か月余りに及ぶストは2022年3月3日に終了した。組合員の9割以上が、今回の協約を承認した。

協約の主な条項は以下の通り。
1.組合員は「標準雇用契約書」に署名後、職場に復帰する。
2.CJ大韓通運を代表する代理店連合は、週6日勤務と当日配達保証という有害な条項に対処する補完的な協約について、組合と協議を行う。
3.すべての組合員は、組合員に対するいかなる法的請求についても責任を負わない。

組合声明の中で、ジン・キョンホ同労組委員長は、「我々は、過労死に至るような奴隷的な条件には戻らない。協約の締結を機に、社会の全面的な後押しを得て、過労死防止に向けた取組みを強化したい」と決意を述べている。また、カン・ギュヒョクKFSU委員長は、「配達員が尊厳のある人間らしい暮らしを営み、過労死の不安を抱えなくてすむよう、我々はこの闘いに加わる」と語った。

過労死の問題が再燃したのは、多くの企業がパンデミック時にEコマースに目を向け、当日または翌日の配達を顧客に約束したためだ。配送需要は、2021年に1983億ウォン(1億6210万米ドル)という記録的な営業利益を懐に入れたCJ大韓通運のような一部の企業を潤した。だが同時に、何千人もの物流労働者の仕事量は、指数関数的に増加した。物流企業は配達員に対し、実際の配達が行われる前に、商品の仕分けや分類といった労働を無給で行うよう、圧力をかけている。

こうした労力を要する作業は4~5時間にも及び、配達業務と合わせると、多くの配送員が法律で定められた週60時間労働(うち残業12時間)を大幅に超えて働いている。大きなプレッシャーがかかり、休息時間もほとんど取れない中、パンデミック1年目の2020年には22人の配達員が過労死に至った。

このような悲劇的で回避可能な死を防ぐために、2021年に三者構成による社会的合意が結ばれた。配達前の品目分類作業を改善する指針や、週あたり労働時間の上限を60時間とすること、配送料を1個あたり170ウォン(0.14米ドル)引き上げることなどが盛り込まれている。

だが、現場での実施は遅々として進まず、問題は続いていた。

配達員に無給で品目分類を行うよう要求し続けているターミナルもある。CJ大韓通運などの企業は、配送料を242.5ウォン(0.20米ドル)引き上げたが、同社が雇用する配達員は、1個あたり40.2ウォン(0.03米ドル)しか受け取れず、社会協定で推奨されている1個当たり170ウォン(0.14米ドル)とは、かけ離れた金額となっている。

会社が組合との対話を拒否したため、同労組は、中央労働委員会に申し立てを行った。委員会は、CJ大韓通運は元請として、組合と交渉する義務があるとの裁定を下した。しかし、同社はこの裁定を不服として行政訴訟で対抗した。配達員は下請業者として雇用され、当日配達の保証や週6日労働などの有害な条項を含むサービス基準契約を伴う個別契約を結ばされている。

ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長は、「組合の取組みに全面的に連帯する。パンデミックから2年が経過するが、この状況は我々が望むニューノーマルではない。エッセンシャルワーカーである配達員をタダ働きで搾取し、過労死させるようなことがあってはならない。CJ大韓通運のような大手企業は、雇用のあり方を見直し、配達員を下請業者ではなく、労働者として扱わなければならない」と述べた。


ジェニングス前UNI書記長、スイスの地方紙ラ・コートの「パーソナリティ・オブ・ザ・ディケード」賞を受賞

2018年まで、18年間にわたりUNI書記長を務めたフィリップ・ジェニングス氏は、UNIを労働者の権利のための強力な組織に育て上げ、人生をかけて平和と世界の労働者のために闘っている。

ジェニングス氏は、労働組合の強化に尽力してきた長年にわたる優れた経歴の中で、労働者の権利、平和、正義の世界的な闘士として知られるようになった。

ジェニングス前書記長は、「この賞を受賞することができて、本当に光栄だ」と喜びを語り、「ここで生まれたわけではないが、ラ・コートを故郷と呼べることを大変嬉しく、誇りに思う」と述べた。また、UNI本部のあるニヨンを含むラ・コートについて「このような活気に満ちた、国際的で心地よいコミュニティに根ざしていなければ、これほどグローバルなインパクトを与えることはできなかったと思う」と触れた。

国際平和ビューローの共同代表として、ジェニングス氏は受賞の機に、ウクライナの和平推進を全ての関係者に呼びかけた。

ジェニングス氏は、2018年のリバプール世界大会でUNI書記長を退任後、国際平和ビューローの共同代表として強力に平和を擁護し、スポーツ人権センターの理事としてスポーツにおける人権を推進し、ILOの仕事の未来世界委員会の委員として労働者の声を代弁するなど、多忙を極めている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「フィリップの受賞を誇りに思う。彼は常にUNIとラ・コートのコミュニティの間に強い根を張ることに尽力しており、今回の受賞は、その取組みが大きな成果を収めていることが認められたものだ」と語った。


中南米のメディア・舞台芸術関連の労働者、約9割が暴力やハラスメントの被害に

UNIメディア部会と国際俳優連合(FIA)が3月18日に発表した調査報告書が、中南米の視聴覚・舞台芸術部門において労働者に悪影響を及ぼしている根深い性差別、差別、暴力、ハラスメントの文化に、スポットライトを当てた。この産業における暴力とハラスメントに関して、初めて組合が行った調査であり、最も被害を受けているトランスジェンダーおよびノンバイナリーの労働者を含めたものとして、初の地域レベルの取組みとなった。

調査は、中南米16か国を対象とし、1,423人から回答を得た。ただし、回答の大半は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー、ウルグアイの7か国から寄せられたものであり、その他の国からの回答は36件である。

調査によると、回答者の89.4%が、職場で暴力やハラスメントの状況を経験したことがあると答えている。その内訳は、トランスジェンダーまたはノンバイナリーの労働者が95%、女性が87%、男性が70%であった。

回答者の37.4%が、職場でセクシャルハラスメントの被害を受けたことがあると答えた。また42%が、職場のハラスメントやセクハラ、ジェンダーに基づく暴力の事例を拒絶し、または報告するために介入したことがあると答えた。メキシコでは、半数以上の54%が、職場でセクシャルハラスメントを受けたことがあると回答した。

回答者の半数以上となる55.4%が、職場環境におけるセクシャルハラスメントの状況を認識したことがあると回答し、最も多いのはメキシコの68.5%であった。

ペルーでは、回答者の65.4%が、自分または同僚の誰かが暴力やハラスメントの被害を受けたために、仕事に行くのが怖い、または行きたくないと思ったことがあると回答した。その割合が最も低いウルグアイでも、半数以上の52%が同様に回答した。地域全体では、その割合はトランスジェンダーおよびノンバイナリーの人で86.5%、女性で61.7%に上った。

女性の81%、トランスジェンダーおよびノンバイナリーの労働者の76%が、職場環境で「マイクロマチズモ」(男性優位社会の日常生活に埋め込まれた、言葉使い、思考、意識、ふるまいや習慣的行動のこと)を経験したことがあると答えたのに対し、男性で同様の回答をしたのは、26%であった。これは、男性優位の思考やマッチョな行動が常態化しており、女性やトランスジェンダー、ノンバイナリーの回答者が、萎縮、抑圧させられ、追いやられた立場に置かれている状況を示すものだ。

トランスジェンダーおよびノンバイナリーの労働者の73%が、「上司や同僚の誰かに無視されたり、過小評価されたりしたことがある」と回答しており、女性の61%、男性の41%に比べ、その割合は高い。

また、トランスジェンダーおよびノンバイナリーの労働者の75.7%が、ジェンダーに基づく暴力によってキャリア形成が制限されたことがあると答え、女性の55%に比べて高い割合となっている。同じ理由でキャリア形成を制限されたと感じたことがあると答えた男性は27.5%であり、ちょうど女性の半数である。

暴力やハラスメントに対する苦情を言うことについて、回答者の70%が「内部告発は悪い結果につながる可能性がある」と考えている。さらに、使用者はこうした事例に対して取るべき措置を心得ていて信頼できる、と答えた回答者は、わずか26%であった。この2つの傾向は、調査で確認されたすべての国、部門で見られた。

UNI世界メディア部会副議長を務めるブラジルのソニア・サンタナSindcine委員長は、「今回の取組みは、中南米の各国に対する非常に重要な調査であり、職場の暴力やハラスメントを理解し、それに立ち向かっていくための知識を与えてくれる。中南米には全体的にマッチョな文化があり、立ち向かっていかなければならない。ハラスメントの形態を明らかにすることは、そのための方法の1つだ」と、調査の意義について語った。

アリシア・ドリオッティFIA副会長は、「職場環境における女性やトランスジェンダー、ノンバイナリーの労働者に対する暴力は、嫌がらせ、セクハラ、差別待遇、賃金差別、雇用制限、ガラスの天井など、さまざまな形で現れている。我々は、具体的な政策を推進していくために、明確で正確な分析を緊急に必要としていた。この調査は、より公平で望ましい労働条件を生み出し、安全で尊厳のある、平等で多様性を尊重する職場づくりをしていくために、分析を行い、必要なネットワークを構築していく上で、素晴らしいツールだ」と述べた。

また、この報告書には、こうした問題に関する教育・訓練・広報活動、プロトコル、団体交渉、地域間の労組ネットワークなど、組合に対する重要な提言も盛り込まれている。

調査で集まった匿名の証言:

―妊娠を理由に、2つのコメディーから、リハーサル途中で「引退勧告」を受けた。

―ある面接で部長からキスを求められ、断ると「本当にこの仕事がしたかったら、どんなことでもするはずだ」と言われた。

―役に起用する代わりに、飲みに誘ってくるプロデューサー

―監督の挨拶時に「社交上の義務」としてハグをする際、適切な時間よりも長かったり、合意のないまま接触する等の不適切な行為があった。

―舞台上での不当な扱い、冗談や軽蔑を含んだ口調での嘲笑や侮辱

―部下は全員男性で、私が上司になるのを嫌がっている。私の指示には疑問を持つが、男性が同じ指示を出せばそれに従う。

関連資料:UNIおよびFIAによる中南米における暴力とハラスメントについての調査(英文)


英コンサル企業の報告書、テレパフォーマンスの役員報酬指標に一石

欧州最大級の独立系コーポレートガバナンス・コンサルティング会社PIRCの調査は、『Grate Place to Work』(働きがいのある会社、略称:GP2W)の認定は、離職率や、CEO:従業員の給与比率といった、厳密で検証可能な指標の代わりにはならないことを明らかにした。

コーポレートガバナンスの分野で優れた実績をもつPIRCは今週、テレパフォーマンス等の企業が巨額の役員報酬を正当化し、企業イメージを「ソーシャルウォッシング」するために用いている疑わしい指標について、調査を発表した。

この調査は、FTSE EuroFirst指数に含まれる大手上場企業12社の報告書と報酬に関する方針を調査したものである。PIRCが明らかにしたのは、役員報酬を設定したり、不適切な慣行や規制リスクから注意をそらしたりするために、多くの場合これらの企業が、不透明で検証不可能な「ブラックボックス」のデータが横行する、規制の整備されていない巨大な認定業界に依存しているという実態だ。

労働分野の専門家であるPIRCのアリス・マーティン氏は、「雇用基準を評価する場合、企業側の主張や、企業に雇われた営利目的のプロバイダーの評価を、文字通り受け取ってはならない」とし、「世界的な巨大使用者であるテレパフォーマンスは、従業員の使用する画面を監視・記録していると非難されているが、この事例は、企業が行った従業員意識調査が、従業員の実際の処遇について意味あることを何も教えてくれない理由を示している」と鋭く指摘し、「このような欺瞞的な尺度に基づいて役員報酬を支給することは、ソーシャルウォッシングに等しい」と批判した。

ビジネスサービス大手のテレパフォーマンスが、『GP2W』認定を利用しているのは、まさにその典型的なケースだ。40万人近い従業員を抱えるこのフランス企業は、事業を行う80か国以上で定期的に『GP2W』の認定を公表している。テレパフォーマンスは、こうした認定に関連し、手数料を支払っている。

同社は、前年度の認定件数と、子会社を対象とした従業員意識調査「E.sat」を用いて、役員報酬を決定している。ダニエル・ジュリアン会長兼CEOは、これらの指標を基にした非財務的指標に関する業績に対し、2021年に262万5千米ドルを受け取った。

しかしPIRCは、Grate Place to Work Instituteが採用しているE.sat等の従業員意識調査は、透明性に欠け検証不可能であり、価値の低い情報を提供していることが多いと指摘している。また、テレパフォーマンスのように監視の厳しい職場の従業員は、こうした調査は機密性に欠けていると感じている可能性がある。

国際的なメディアで取り上げられ、OECDのフランス連絡窓口に提出された、労働者に対する数々の虐待的な待遇の記録に照らせば、テレパフォーマンスが従業員意識調査データを使用することには限界があるのは明らかだろう。

『働きがいのある会社』認定は、労働慣行に関する2つの重要な指標である、従業員離職率および、CEO対従業員の給与比率とも矛盾しているようだ。テレパフォーマンスの2021年の離職率は90.55%と極端に高く、世界中の事業所でほぼすべての労働力が毎年入れ替わっている。4分の3以上の労働者が、1年以内に辞めているのだ。フランスの週刊誌Politisは、同社のCEOと従業員の給与比率が1255:1と、他のCAC40企業(ユーロネクスト・パリに上場する銘柄の中から、時価総額上位で出来高の大きい40銘柄で構成される)の10倍以上であることを明らかにした。 ジュリアンCEOの給与は2019年に195%跳ね上がり、今年も上昇する予定であることを考えると、この巨大格差が縮まったとは考えにくい。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「PIRCの調査が我々に気付かせてくれるのは、『働きがいのある会社』と呼ばれているからと言って、まっとうな職場であるとは限らないということだ」と述べ、「この調査が示しているのは、ESG(環境・社会・ガバナンスを考慮した)投資家は、企業慣行を真に理解するためには、売買される従業員満足度調査ではなく、労働組合など現場のステークホルダーと連携しなければならないということだ」と強調した。


アマゾン労働者、一般データ保護規則に基づきデータの透明性を要求

3月14日、ドイツ、英国、イタリア、ポーランド、スロバキアのアマゾン倉庫で働く労働者が、EUの一般データ保護規則(GDPR)に基づき、巨大テック企業が労働者の個人データをどのように扱っているかを知るため、GDPR第15条に基づいてアクセス要求を提出した。UNIおよびプライバシー権について取組むNGOの「noyb.eu」が、労働者を支援してきた。

「アマゾンは世界最大級の企業かもしれないが、我々のデータをアルゴリズムに利用し、データを使って片っ端から解雇したりと、勝手なことをすることはできない。我々には労働者としてプライバシー権があり、知る権利もある」こう力説するのは、ドイツの労働組合ver.diの労働者代表を務め、今回要求を提出した一人、アンドレアス・ガングル氏だ。

アマゾンは高度なシステムを使ってワークフローを監視しているが、労働者は自身のデータがどのように使用されているのか、何も知らないままだ。アマゾンは1か月以内に回答し、労働者の個人情報の取扱いについて、完全に開示しなければならない。

「アマゾンでは、データに対する貪欲さと反組合的な行動が組み合わさり、非常に厄介だ」と述べるクリスティ・ホフマンUNI書記長は、「会社は従業員に対する監視を行っている。労働者には、ビデオや音声の記録、ソーシャルネットワークの情報や労働組合への加入状況、その他アマゾンが収集した諸データが、EUプライバシー法に違反して使用されているかどうかを、知る権利がある」と指摘した。

労働者に対する監視行為-アマゾンが労働者に対して一定の監視活動を行っていることは、各国の労働組合の内部文書で確認されている。例えば、同社が労働者の身元調査を行い、プライバシーを侵害する様々なツールによって、労働者の仕事ぶりを常に監視していることは明らかだ。

労働者は闇の中に取り残されている-アマゾンが収集したデータはその後どうなるのか?労働者は、アマゾン倉庫内での自らの労働を形作る、自身に対する集中的な追跡について、ほとんど何も情報を受け取っていない。どのような情報が、どのような目的で収集され、誰と共有されているのか、知らされていないのだ。労働者は、個人情報保護方針が存在するかどうか、ましてや、追跡データに基づいて倉庫での自らの未来について何らかの自動的な決定がなされているかどうかなど、知る由もない。

データ処理を明らかにするGDPR- GDPR第13条および第14条に基づき、EU市民は誰でも、自分の個人データの処理について知らされる権利を有する。今回、欧州5か国のアマゾン倉庫で働く労働者は団結し、同社が労働者のデータを利用して過酷な労働条件や危険なレベルの生産効率を助長しているかどうかを明らかにするべく、アクセス要求を提出した。

データ保護を専門とするnoyb.euのステファノ・ロゼッティ弁護士は、「情報と管理の非対称性を示す典型的な事例だ。一方には、大量の個人データを収集する民間企業があり、他方には、時流に巻き込まれ、経済的にこうした企業の雇用に依存している個人がいる。我々が試みているのは、組織的なアクセス要求を通じた、このアンバランスの解消だ」と説明した。

アマゾンには、労働者の権利をないがしろにしてきた経緯がある。アマゾン労働者のプライバシーに侵入してくる、包括的な監視システムについて報告したUNIの報告書『アマゾン・パノプティコン』によると、労働者のプライバシーを大きく侵害する、同社の超高速の配送プロセスは、130万人の労働者に対する有害な影響を隠している。従業員は執拗に監視され、評価され、プレッシャーの高い過酷な環境に置かれている。このモデルはあまりに非人道的であり、最近ニューヨークタイムズが報じたように、「アマゾンはあまりに早く労働者を使い捨てるので、幹部らは人材が不足するのではないかと心配している」のである。ブルームバーグニュースも、アマゾンのドライバーは、実在の管理者ならば無視するような、些細な不運な出来事が原因で「アプリによって解雇された」と報じている。

UNIは以前から、倫理的なデータ収集とアルゴリズム管理を提唱してきた。2017年には、職場のデータを管理するための原則を発表し、団体交渉を通じてアルゴリズムによる管理の乱用を抑制するための取組みを開始した。150か国で2000万人以上の労働者を代表するUNIは、サービス産業におけるディーセントワークを確保し、組合が代表する権や団体交渉権等、労働者の権利を擁護することをミッションとしている。 

♦noyb.eu:デジタル権のための欧州センター。欧州データ保護規則に関連した取組みを行う非営利団体noyb.euは、これまでに、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン等の企業を含む、多数の意図的なプライバシー侵害に対して600件以上の訴訟を提起してきた。4,600人以上の賛助会員がnoyb.euの活動に資金を提供している。


UNI、ウクライナ難民の支援に向けたプログラムを構築

photo@Shutterstock(2022年3月9日、ポーランド・ワルシャワの鉄道駅で
ウクライナ難民を支援するボランティア)

ポーランドに到着したウクライナ難民を支援するプログラムについて、UNIが準備を進めている。

このプロジェクトは、ポーランドにあるUNIの中欧組織化センター(COZZ)を通じて実施され、ポーランドに滞在するウクライナ人が自らの権利を知り、仕事を見つける手助けを受けられるよう、支援やアドバイスを提供する予定だ。

国連によると、ウクライナの戦火から逃れてきた難民はこれまでに300万人に上り、そのうち180万人がポーランドに避難している。ワルシャワや首都近郊には、女性や子ども等23万人が仮設住宅に滞在しているが、プログラムはまず、この地域を対象とする。UNI関係者によると、難民はすでに仕事を探すため列をなしており、さらに数十万人以上のウクライナ難民がワルシャワを通過している。

10~15人程度が直接関わる予定のこのプロジェクトは、国内のUNI加盟組織と協力し、難民やウクライナ人コミュニティとすでに交流のある3つの支援団体と連携していく。

また、UNIはヘルプラインを設置し、必要とされる実用的な情報を提供する予定だ。

最初の取組みの1つとして、難民の権利や手当、適正な給与を含むポーランドのさまざまな種類の雇用契約に関する、ウクライナ語およびロシア語のリーフレットを作成する。

ラファル・トマシアクCOZZ事務局長は、「このプロジェクトは、必要なアドバイスと支援を提供し、難民が仕事を見つけるのを手助けし、搾取の危険にさらされないようにするものだ」とその意義を説明し、「人々ができるだけ早く現場にいけるようにしたい」と意気込んだ。

より長期的な戦略としてUNIは、ポーランド、チェコ、ハンガリーにおいて難民のケア分野への就職を支援する3か年計画を開始する予定だ。このプログラムでは労働者の職探しを支援すると同時に、語学研修も行い、労働者を優良な使用者につないでいく。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「UNIは、ロシア軍によるウクライナ民間人への容赦ない爆撃に慄然としており、一致して即時停戦を要求している。この戦争によって、多くのウクライナ人の住まいや生計が破壊されており、職を得ることは優先課題だ。このプログラムは、ポーランド、チェコ、ハンガリーに逃れた難民に実用的な支援を提供するものだ」と述べた。


米国郵政公社改革法案が可決-郵便労組が貢献

2022年3月8日、20年近くにわたり法改正にむけて組織化を進めてきた全米郵便外勤労組(NALC)および全米郵便内勤労組(APWU)は、郵政公社改革法案の上院可決を祝福した。APWUとNALCは、ともにUNI加盟組織である。

ジョー・バイデン大統領が署名して発効する予定のこの法案は、21世紀における公的な郵便事業の支持者にとって最も重要な法制上の勝利の一つだ。この法案は、米国郵政公社(USPS)に対する厳しい財政要求を解除し、将来の退職者のための公的医療保険への加入を義務付け、週6日の配達を法律で成文化するものである。

マーク・ディモンドシュタインAPWU委員長は、「本法案の可決は、郵便労働者、より広い郵便業界、そして我々が誇りをもって働く地域社会にとって、記念すべき勝利だ」と述べ、「この法律は、250年以上にわたって我々をつないできた国の宝である公的な郵便サービスを強化するものだ」と力を込めた。

フレッド・ローランドNALC委員長は、「この取組みに協力してくれた仲間の郵便労組、郵便業界、郵政経営陣に感謝したい。2006年に施行された退職者医療給付のための不当な積立義務を廃止し、6日間配達の継続を保証するこの法案は、USPSを米国の家庭や企業の進化するニーズに合わせて成長、適応させることができるようにするものだ」と説明した。

この法案改正は、公社にとって毎年何十億ドルもの節約になるだけではなく、USPSが従業員のための質の高い雇用や、ほぼ毎日USPSを利用している何億もの米国人のために高品質のサービスに投資できるようにするものである。

「過去2年間、我々を互いに結びつけ、小切手や医薬品などの必需品を届ける上で、郵便がいかに重要であるかを実感してきた」と語るコーネリア・ベルガーUNI世界郵便・ロジスティクス部会担当局長は、「この法案で、我々は郵便事業と郵便労働者の明るい未来を確かなものにする好機を得た」と述べ、勝利を祝福した。


UNI世界選手会声明:ロシアのウクライナ侵攻に対する世界のスポーツ界の対応について

2022年2月28日、スイス・ニヨン

UNI世界選手会は、ウクライナの国民や選手、各選手会、市民社会、平和を求める世界中の人々と連帯し、ロシアのウクライナ侵攻を明確に非難する。ロシアの行動は、主権国家に対する攻撃であるのみならず、人権、民主主義、法の支配を含む国際社会の基本的価値に対する攻撃でもある。

世界のスポーツ界は、あまりにも長きにわたり、人権と国際的な行動規範を平然と損なうロシアの「スポーツウォッシング」を容認してきた。世界のスポーツ界は今、その大きな影響力を行使し、各国政府や世界の関係機関とともに、制裁を含め可能な限り強力な対応を取らなければならない。世界のスポーツ界が効果のない対応をとれば、世界的な取組みの有効性や連帯が損なわれる恐れがある。

ロシアがオリンピック休戦協定に繰り返し違反している状況を鑑み、特に国際オリンピック委員会(IOC)および国際パラリンピック委員会(IPC)は、即刻、以下の項を実施しなければならない。

・国際的なスポーツ競技会におけるロシアの即時出場停止(特にロシアオリンピック・パラリンピック委員会)。この侵略戦争が終わるまで、遺憾ながら、ロシアのナショナルチームおよび選手を国際的なトーナメントやイベントから排除せざるを得ない。
・ロシアが主催するイベントの即時中止、即時停止。
・制裁の対象となったロシア人、またはそれに近い人物が、国際スポーツ連盟の理事会において指導的地位に就くことを禁じる。

さらに我々は、各スポーツ競技団体に対し、ビジネスの取引関係を見直し、制裁対象となった企業やロシア国家の指導部とつながりのある個人との関係を断つことを求める。

こうした措置は、これ以上スポーツに対する評価が悪者によって損なわれぬよう、世界のスポーツ界のあらゆる関係者が深く熟考し、真摯に責任を果たし、求められている体系的な変化をもたらすものでなければならない。

世界の選手会運動は長年、世界の競技団体が人権に関する拘束力ある取組みを行い、人権デューデリジェンスを引き受け、競技者や影響を受ける人々と有意義に関わり、人権に関わる被害を特定し緩和することを提唱してきたが、これらは、遅すぎた変革への道筋に向けて不可欠な改革だ。

我々は、この恐ろしい戦争を終わらせるためのあらゆる取組みを支援、後押しし、結束し続ける。

UNI世界選手会は、プロスポーツ選手や競技者を組織し、意見を代弁する唯一の国際組織で、60か国以上、100を超える選手会の85,000人もの選手が結集している。その役割は、組織化された選手の意見が、国際スポーツの意思決定機関の最高レベルに届くようにすることである。


オーストラリア金融労組、豪コモンウェルス銀行における男女間賃金格差を非難

UNI加盟組織のオーストラリア金融労組(FSU)が、オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)に対し、賃金体系の秘密主義をやめ、男女間賃金格差を是正するよう、求めている。男女間の賃金格差により、同行は年間5億オーストラリアドル(3億7000万米ドル)も人件費を節減していると推定される。

「沈黙の代償」と題する報告書のためにFSUが国内で実施した調査によると、CBA従業員の95%が自分の賃金について話してはいけないと考えており、90%が話すと懲戒処分、あるいは解雇のリスクがあると答えている。

この調査は、2021年にCBA従業員が自らの賃金について同僚と話し合ったことを理由に解雇されたことを受けて実施された。同行は現在、職員が賃金について話し合うことを禁止している唯一の大手銀行であり、これによって、同じ業務を担う一部の労働者に、他の労働者よりはるかに低い賃金を支払うことが可能になっている。

また報告書では、CBA従業員の大多数を占める女性は、自らの賃金が低いと感じているものの、賃金や賞与について話し合うことが許されていないため、不満を口にしたり賃金の見直しを求めたりできない状況にあることが分かった。

ジュリア・アングリサノFSU書記長は、「CBAの従業員は、賃金や賞与について互いに話しただけで、いじめや、脅迫、嫌がらせを受け、解雇されると脅されている。銀行によるこのような禁止措置は、男女間の賃金格差を強化しようとするものだ。CBAが問題に気づけない以上、今こそ連邦政府が行動を起こし、これらの機密条項を違法化する時だ」と力説した。

多国籍銀行であるCBAは、約48,000人の労働者を雇用し、世界中に支店を構えている。

アンジェロ・デクリストUNI世界金融部会担当局長は、「CBAの賃金の秘密主義によって恐怖心が植え付けられ、労働者の大半を女性が占める中で男女の賃金格差が助長されている状況は、到底容認できない。労働者には賃金について話し合う権利があり、同一賃金を得る権利もある。国際女性デーのこの日、我々はCBAが女性のために行動し、賃金について透明性を確保するとともに、男女間の賃金格差をきっぱりと是正するよう求める」と語気を強めた。


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