2021年5月19-20日、第34回UNI世界運営委員会がオンライン開催され、日本から野田三七生UNI Apro会長(情報労連)、増田光儀UNI副会長(JP労組)が正委員として出席した。運営委員会では、UNI加盟組織が直面している様々な課題(組織化、グローバルキャンペーン、ビジネスと人権、リモートワークとアルゴリズム管理、民主主義と人権、職場の労働安全衛生)について議論された。その他、2022年11月にオーストラリア・ブリスベンで予定されていたUNI世界大会・世界女性大会開催に関し、豪政府の渡航・入国制限の状況から、開催延期や開催方法・開催地の変更等を検討中する旨が提案・確認された。更に世界的な民主主義と人権の危機に強い懸念が表明され、ミャンマー問題、イスラエルによるガザ攻撃に関する2つの声明が採択された。野田UNI Apro会長は、ミャンマー、香港、アジア人ヘイトクライムに関し、アジア太平洋地域を代表し、世界の加盟組織の連帯に感謝すると共に引き続きの支援を要請した。
1日目(5月19日 日本時間19:00~21:30)
書記長報告:クリスティ・ホフマンUNI書記長
新型コロナウィルス・ワクチン普及に向けたグローバルなイニチアチブにUNIも積極的に貢献している。各地域で高まる民主主義への脅威に強い懸念と連帯を示したい。2021年前半はオンラインで多くの活動が行われ、デジタル組織化の進展、リモートワーク原則の確立、新型コロナウィルス感染症の労災認定を求める労働安全衛生の取組みなど多くの成果があった。今後はポストコロナを見据えて、店舗閉鎖などによる失業や非正規雇用の増加、アルゴリズムによる労働者監視強化などの課題に取り組むため、強い労働組合が必要だ。
組織化報告:アンディ・スノッディUNI SCORE(組織化)局長
デジタルツールを利用した組織化が各国で行われ成果を上げている。経験共有のためのウェビナーも開催し、多くの参加があった。東欧の組織化センターで開発されたオンライン加入システムが他地域の組織化にも活用されるなど、グローバルに連携して組織化を進めている。各部会でもコロナ禍で変化に対応した組織化の取組みやGFAの見直しなどが進められている。
グローバルキャンペーン:ニック・ルディコフUNIキャンペーン局長
アマゾンに対する世界各国で加盟組織と連携した取組みが続いている。スペイン、イタリアでストが行われ、ドイツ、英国、スウェーデンでもキャンペーンが開始された。欧州ではアマゾンが管理するデータの取扱いについて議論が行われており、インドではデジタル決済の認可申請を阻止する取組みを進めている。法人税の不払い、労働者の監視等、各国のアマゾンで共通の問題を解決するには、NGOや政府とも連携した国際的な取組みが重要である。
ビジネスと人権:クリスティ・ホフマンUNI書記長、アルケ・ベシガーUNI副書記長
人権デューデリジェンスの義務化に関する法制化が特に欧州を中心に進んでいる。今般、ケア部会は、多数の投資家と連携し、介護施設の株式保有者に労働安全衛生基準や労働権確保を求める声明を発表した。また、OECD多国籍企業ガイドライン更新への積極的な関与を目指している。5月末に期限を迎えるバングラデシュ・アコードの移行協定として設置されたブランド、工場オーナー、組合で構成される三者機関「持続可能な既製服評議会(RSC)」において、ブランド側は、組合側と法的拘束力のない協定の締結を求めており、ブランド側の説明責任が果たされない恐れが高まっていることから、UNIはこの提案を拒否し、信頼できる選択肢が提示されない限り、RSCからの離脱も辞さない姿勢で臨んでいる。
リモートワークとアルゴリズム管理:クリスティ・ホフマンUNI書記長
デジタル化が国際的に加速する傾向があり、リモートワークをめぐる使用者による労働者監視、特にアルゴリズム等のAIを使った管理が強化されていることに強く警戒すべきである。これらがニューノーマル時代の「当たり前」となる前に行動を起こし、各国における今後の労使交渉課題に盛込むべきである。
民主主義と人権:クリスティ・ホフマンUNI書記長
特に現在問題となっている3つの危機(イスラエル軍によるガザ攻撃、コロンビア政府による労働運動弾圧、ミャンマー軍事政権による民主主義と労働運動の危機)について強い懸念と連帯が示された。また、香港、フィリピン、ベラルーシ等をはじめ、今なお世界各地で民主主義が危機に陥っている地域があることを憂慮する旨、述べた。
野田UNI Apro会長は、ミャンマー、香港、アジア人ヘイトクライムの3点について発言した。ミャンマーについては世界の加盟組織の連帯とストライキ基金へのカンパに感謝し、ILOやITUCと連携して働きかけを続けていく。ICTS部会としても、軍事政権が導入しようとしている「サイバーセキュリティ法」を非難し、通信事業者の権利と安全を守るための声明を発表した。香港については、新国家安全法の下で民主主義と人権に対する危機が益々高まっているが、国際的な連帯や支援がかえって労働組合活動家を危険に晒すことにもなる。更に世界的にアジア人ヘイトクラムが多発している状況に強く懸念を示したい。UNI Apro執行委員会でも声明を採択する予定であると述べた。
その他、各地域の運営委員からコロンビアにおける労働運動弾圧の解決に向けた取組み報告や、イスラエルのガザ攻撃に抗議する追加声明要請、政治的紛争に伴って発生する移民問題への対応、米国から野田UNI Apro会長の発言に対する支持表明など多くの発言があった。
以上を踏まえ、世界運営委員会として、①ミャンマー軍事政権を非難し同国における民主主義回復のための連帯と行動を加盟組織に呼びかける声明、②イスラエルによるガザ攻撃を非難する声明を採択した。
2日目(5月20日 日本時間19:00~21:30)
職場の安全衛生:クリスティ・ホフマンUNI書記長
職場の労働安全衛生については、ILOの100周年記念宣言にも労働者の基本権として盛り込まれた重要な活動であり、2022年のILO総会においては、政労使合意を目指していく。更に、新型コロナウィルス感染症に関しては、職場で感染する例が多く、感染症罹患を労働災害として認めさせる活動が重要である。また、コロナ禍の中、職場の安全衛生において組合が果たすべき役割も重要な分野である。各国において組合以外にどのような機関が労働安全衛生部門を担っているか把握するための実態調査を実施予定である。
UNI世界大会、UNI世界女性大会:クリスティ・ホフマンUNI書記長
大会スローガンやロゴなどの準備は順調に進んでいるものの、開催国オーストラリアの渡航・入国制限解除の時期や世界のワクチン接種状況を考慮する中、2022年11月のUNI世界大会及び女性大会の開催に関し、今後いくつかの選択肢を検討していく旨が示された。野田UNI Apro会長もホスト地域として支持を表明しつつ、2010年、長崎世界大会をホストした経験から、世界大会は、ホスト地域のUNI労働運動を盛り上げるという意味において大きな意義があるとして、対面開催の重要性を強調し、慎重に検討するよう求めた。
世界大会動議案のひとつである2023~2026年UNI加盟費については、各地域代表2名、UNI書記長、副書記長、財政局長で構成される財政委員会に対し、原案を策定するよう求める勧告が提案され、確認された。
地域報告:各地域書記長
アフリカ:ワクチン接種に関して各国の格差(ワクチン・アパルトヘイト)が生じている。地域大会を2021年3月に開催予定だったが、12月にオンライン開催することになった。
米州:昨年地域大会をオンライン開催し多くの参加を得た。コロンビアの組織化センターでオルグ担当者を配置し、清掃部門を中心に組織化を進めている。労働法の改悪が各国で進んでおり、コロナの状況も悪化しているが、米国やチリでは労働組合に好意的な政権が発足する明るいニュースもあった。
アジア太平洋:ワクチン接種の不平等が生じており、雇用や労働時間が減少している。人権状況はミャンマーだけでなくフィリピンでも悪化している。新たな地域経済統合RCEPはインドが入っていないことが残念だが、労働分野への影響について注視していく。ASEANの政労使社会対話会合に関しては、今年ブルネイで開催されるが、労働組合が認められていない国でどのように関わっていくかが課題である。今年後半は6部会大会のオンライン開催を予定している。
欧州:3週間前に地域大会をオンライン開催し、多くの参加があった。今後は、団体交渉を強化するため、組合の交渉力をいかに高めるかがテーマである。組織化等のボトムアップとEUにおけるロビー活動や法改正等のトップダウンの両方のアプローチを取っていく。加えて既にGFAを締結している多国籍企業へのデューデリジェンス強化の取組みも進めていく。
その他、2020年度会計報告、2021年度予算、財政委員会報告、スタッフ人事及びUNI加盟に関する報告・提案が行われ、それぞれ承認され、次回2020年9月、同委員会を開催することを確認し、閉会した。