10月 2020のお知らせ

セキュリティ印刷部門の労働組合、情報共有を通じ変化に備える

2020年10月19日、UNIに加盟するセキュリティ印刷部門の労組が参加し、国際ウェビナーが開催された。EUから資金援助を得たプロジェクトとして、UNI欧州印刷・パッケージング部会は、セキュリティ印刷部門における変化の動向を予測して組合としての対応を協議するため、2020年度、欧州レベルでのセミナーを3回予定していた。第1回目は2月に対面で実施されたが、第2回目(6月実施予定)はコロナ禍のため延期となり、今回オンラインでの開催となった。

オンライン開催のメリットを活かし、参加が世界に呼びかけられ、欧州(ベルギー、クロアチア、フィンランド、フランス、ドイツ、ポーランド、スペイン)、アジア太平洋(日本、インド、ネパール)、米州(ブラジル、コロンビア、ペルー、ウルグアイ)、アフリカ・中東(バーレーン、トルコ)等から約50人が参加した。

第1部では、まずシンデックス社から「セキュリティ印刷部門のグローバルな動向」について調査結果の報告を受けた。続いて、世界の主要なセキュリティ印刷部門の労組代表より、①コロナ危機の影響と課題について、②セキュリティ印刷部門の課題と組合の戦略・対応について、報告を受けた。UNI Aproからは、全印刷・梅原委員長(UNI Apro印刷・パッケージング部会副議長)及びインド・セキュリティ印刷労組のジャグディシュ書記長がそれぞれ日本とインドの状況を報告した。

梅原全印刷委員長は次の通り報告した。「コロナにより銀行券の製造は影響を受けてはおらず、2024年度に日本では改刷の予定である。一方、パスポートは渡航規制により大幅減少した。キャッシュレス決済比率は約20%(2017年)であり、政府は今後10年で倍増(40%)を目指している。コロナの影響で、現金より非接触型決済を選ぶという消費者の行動様式の変化も考えられる。キャッシュレス決済サービスが増加する一方、不正利用が発覚する等、セキュリティの確保も必要である。日本で現金志向が強い理由は、いつでも引き出せる利便性、手に触れないお金への警戒心、紙幣の信用の高さ等があげられる。各国が積極的に中央銀行デジタル通貨(CBDC)を検討しており、日銀も実証実験の取組み等、検討スピードが加速する兆候がある。」

この他、インド、英国、ドイツ、ブラジル、コロンビア、ケニアの組合代表から報告を受けた。

第1部の最後に、二コラ・コンスタンティノウUNI世界印刷・パッケージング部会担当局長は、欧州だけでなく、他地域の最新状況を共有することにより、それぞれの状況に応じて先を見据えた対応を検討する際の参考にしてほしい、と期待を述べ、各国の発表者に感謝した。今後もこのような情報交換の場を検討していきたいとまとめた。

第2部は欧州の労組代表が、コロナ危機及びデジタル化による銀行券製造への影響と、欧州中央銀行「銀行券」部門の社会対話について最新状況を報告し、2月のセミナーで確認したまとめを最新化した。


AI、リモートワーク等の課題解決をけん引するICTS部会

2020年10月13日、UNI世界ICTS部会委員会がオンライン開催された。開会挨拶の中で、アンディ・カー部会議長は、オンライン開催の利点として多くの傍聴者を歓迎した。日本からは、野田UNI Apro ICTS部会議長に加え、情報労連から多くのオブが参加した。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、コロナ禍に見舞われた2020年を振り返り、労働者・労働組合への影響と回復への道のりについて語った。「我々が家族や同僚を失い、孤立し、記録的な失業や経済の悪化、貧困の拡大に直面する一方、大手テック企業をはじめとする億万長者はパンデミックによって巨万の富を手にした」と述べた。そのような中、UNIの取組みは、コロナ危機の当初は職場の安全衛生に重点を置き、安全な職場復帰を確保する交渉へと続き、今は大打撃を受けた経済・社会の公正な回復を訴えている。「ICTS部会は、安全衛生に関してここ何ヶ月もの間、劣悪な環境で働くコールセンター労働者の声を代弁し、世界が注目するよう中心的な役割を果たしてきた」とその成果を称えた。特に各国で事業を展開する大手コールセンター企業テレパフォーマンスは、36万人の労働者の殆どが組合に組織されておらず、多くの国で問題が指摘されている。一方、ICTS部会はテレフォニカと、職場復帰に関する手続きが各国で徹底されるよう、交渉に深く関わった。ホフマン書記長は、パンデミックによって組合の有無、すなわち団体交渉ができるかどうかが、労働者にとって大きな違いをもたらすことが実証されたと述べ、組織化の重要性をあらためて強調した。そして、リモートワーク、AI導入、アルゴリズム管理、外部委託、Eコマースの成長といった動向が加速しており、これらにも備えていかなければならないと訴えた。ICTS部会は、これらの動向に最も影響を受ける部会の1つであるとし、ICTS部会のリーダーシップに期待を寄せた。

ICTS部会が重点的に取組んできた、テレフォニカ、オレンジ、エリクソン等の多国籍企業の労働組合による国際的な連携によって、コロナ危機の間に生じた課題にも対処できていることが報告された。例えば、テレフォニカとの間では既存のグローバル協定に、安全な職場復帰に関する条項や、「つながらない権利」条項を付加することができた。各国のオレンジ事業所では、パンデミックの発生当初に安全衛生委員会が設置され、安全な労働条件を交渉することができた。エリクソンでは、インドネシア、マレーシア、イスラエル等において組織化を進めると共に、スウェーデン本社の経営陣とグローバルな対話の仕組みを構築しつつ、グローバル協定の交渉を目指している。

委員会ではこの他、テック企業・IT企業の組織化の経緯と今後の計画、コールセンター組織化のパンデミックによる進展状況、AI及びリモートワークに関する新たな取組み計画等が報告された。

UNI欧州ICTS部会が昨年末に発表したAIに関する政策文書(ポジションペーパー)の中では、AI導入が想定以上の速さで進む中、労働者や雇用への影響は議論されておらず、影響を調査すること、メリット・デメリットを認識し、労組がAI議論にもっと参画し、備える必要性が強調されている。政策文書の主なポイントは、①AIを人間がコマンドするアプローチの重要性、②人権という価値観を尊重すること、③雇用可能性を高めるために使われること、④持続可能で包摂的な社会を構築するための手段として使われること、⑤社会的パートナーが役割を果たさなければこれらは実現できないことである。これらを踏まえ、UNI欧州ICTS部会としては、データ収集・管理・解析における偏見の回避、既存の労働者のスキル開発、公正で公平な移行政策の3点を訴えている。この政策文書をもって、他の労働組織とも協力し、欧州議会、経済社会委員会のAI特別研究会をはじめとするEU諸機関へ意見提起とロビー活動を強化している。合わせて、欧州加盟組織への意識喚起の研修を実施している。ETNO(使用者団体)との共同宣言採択を目指して交渉を行っている。


国は違っても目標は同じ #食品小売労働者のために不可欠な権利

食品小売労働者はもともとエッセンシャルワーカーだった。だが、新型コロナウィルスのために、彼らの仕事の重要性が一躍注目を浴びるようになった。

2020年10月27日、UNI世界商業部会は、「食品小売部門とCOVID-19の影響」に関するウェビナーを開催した。およそ40か国の食品小売労働者を代表する組合が参加し、危機の間の経験や優良取組み事例を共有し、スーパーマーケットで働く労働者に不可欠な権利の重要性を訴えた。

「世界中のスーパーマーケットチェーンでは、売上が急増したが、そこで働く労働者はまだ、相応の賃金や待遇を受けていない」と、クリスティ・ホフマンUNI書記長は指摘する。「一時的に危険手当を支給された労働者もいたが、その後無情にもその手当はなくなった。どの組合も、今こそ、エッセンシャルワーカーの仕事を再評価する時だと認識し、長期的な待遇改善と不可欠な権利を求めて闘っている。」

食品小売労働者は変化を求めている。会議では、UNIの各地域の加盟組織が、いかにこの重要な権利を求める闘いの先頭に立っているかが強調された。

日本:UAゼンセンは、店員に対する暴力を撲滅するための強力で長期的な「悪質クレームを、許さない」キャンペーンを展開している。ウェビナーでUAゼンセンの取組みを報告した流通部門の安藤副事務局長は、コロナ危機の間、この取組みがどれだけ重要であったかを説明した。職場や業界全体、そして政府のあらゆるレベルで、労働者保護の強化を求めて組織化を進めている。UAゼンセンは小売産業の職場を組織化しており、労働者を守るため政府や自治体への働きかけも強化している。

南アフリカ:商業労組のダーリントン・ンドロフは、店員に個人用防護具を確保する取組みや、安全対策の実施を徹底するための交渉継続について報告し、「スーパーマーケット労働者はようやく、社会の重要な構成員だと考えられるようになった。だから、彼らはより良い権利を得るに値する」と述べた。

英国:パディー・リリスUSDAW(店舗流通関連労組)書記長は、英国でも店員に対する暴力が増加していると懸念し、組合は暴言や暴力から労働者を保護するため新法の制定を国会に求めていると述べた。更にUSDAWは、最低賃金を引き上げ、組合の権利を強化する「労働者のためのニューディール」キャンペーンを展開している。

米国及びカナダ:UFCW(全米食品商業労組)のファロン・エイガーは、「COVID-19の間、エッセンシャルワーカーは危険手当を受けるに値する」というキャンペーンについて紹介した。既に56,000人を超える米国の店舗労働者が遡及払いを獲得した。

更にUNIは、「不可欠な賃上げ」を求めるオーストラリアSDA(店舗流通労組)のキャンペーン、オランダFNVの流通部門全体で5%の賃上げ要求、カナダUNIFORの「ずっと公平な賃金を」求める取組み、スペインCCOOの「私達は必要とされている」キャンペーン等を紹介した。

ダニエル・ロベラUNI世界商業部会副議長(アルゼンチン商業サービス労連)は、不可欠な権利を求めるキャンペーンの目標を更に高めるために団体交渉の重要性を訴えた。「小売労働者のより良い権利を確保するためには、グローバル枠組協約がこれまで以上に重要になっている」と指摘した。

「スーパーマーケット労働者は最前線で働いている。多くが感染し亡くなった。彼らは、仕事に行って仕事をしただけで亡くなった。数ヶ月が過ぎた今、余りにも多くの労働者が再び酷使され、悲鳴をあげ、自分達は使い捨てのように感じている。彼らには安全対策が足らず、無防備だと感じている」と、スチュワート・アッペルバウムUNI世界商業部会議長(米UFCW/RWDSU)は訴えた。そして「我々は、一歩踏み出し、世界中の小売労働者、商業労働者、エッセンシャルワーカーために変化を起こそう」と呼びかけた。

この変革へのコミットメントは、会議参加者によって採択された宣言に示されている。


デジタルネイティブ世代を組合活動に!UNI Apro青年委員会、オンライン活動の経験を共有

第16回UNI Apro青年委員会が、2020年10月10日に開催された。

本年9月にフィリピン・マニラで、UNIフィリピン加盟協(UNI-PLC)青年委員会がUNI Apro青年委員会と共に取組むパヤタス(栄養失調児童への児童給食・奨学金)プロジェクト15周年記念を兼ねて開催する予定だったが、コロナのため今般、オンラインでの開催となった。

主な議題は、コロナ危機と各国の若年労働者の状況や組合の取組みについての報告、UNI及びUNI Apro青年委員会の活動報告、パヤタスプロジェクトへの支援要請、今後の活動等であった。

日本からは、齋藤委員(情報労連)、藤原委員(UAゼンセン)、松波委員(日放労)、他オブザーバーが出席し、小野委員(JP労組)はビデオで報告を行った。今次委員会で、UAゼンセンは寺嶋前委員から藤原委員への変更、東アジアを代表する副議長に日放労の釘本氏から松波中央執行委員への変更がそれぞれ確認された。UNI Apro青年委員会を代表しレイズ議長から、新メンバーへの歓迎と、退任した釘本前副議長、寺嶋前委員への感謝の言葉が述べられた。

コロナと若年労働者(各国報告要約)

  • 松波副議長(日本 日放労):日本の若年労働者へのコロナの影響及びメディア・放送業界における若年労働者への影響、日放労及び経営の取組みについて報告。グレードや勤務年数で縛りのあった在宅勤務の拡大、子どもの休校措置等に対応するための有給休暇の条件緩和等を行った。一方、若年層から家計への影響を訴える声等があり、組合員の不安解消に努めたいと述べた。
  • 藤原委員(日本 UAゼンセン):青年委員会(ヤングリーブス)の活動を紹介。流通サービス産業では、コロナ禍のため研修ができず、業務知識や同期のネットワークが得られないまま店舗配属となった新入社員の不安を解消するため労働組合がオンラインを活用した研修や交流を実施している。また、UAゼンセンではコロナ禍における雇用需要のギャップを埋め、雇用・労働条件の維持につなげるため、スーパーマーケット等の人手不足の業界に、外食業界等の休業や時短等で十分な収入を得られない業界の労働者の就労を時限的に紹介するなどしている。
  • 齋藤委員(日本 情報労連):ICT産業はテレワークを推進する側。デメリットばかりではなく、オンライン化によって、これまで組合活動に参加しづらかった人の声を拾い上げる機会にもなる。デジタルネイティブと呼ばれる若年世代はオンライン上のコミュニケーションに長けている。新たなやり方で、新しい労働組合の運動スタイルを切り開いていきたいと述べた。
  • 小野委員(日本 JP労組):郵便局及び配達業務における感染防止対策について報告。コロナ危機により、在宅勤務対応やキャッシュレス化等デジタル化の遅れが浮き彫りになった。ユースネットワーク活動も制限されたが、オンライン開催等で遅れを取り戻している。
  • カイ・フック・タン委員(シンガポール):若年層を新卒、キャリア志望者、若い親に分け、それぞれの関心事(就業機会、キャリアアップと適正、家庭のニーズ)を分析。組合が働きかけて実現した政府の訓練プログラム(企業及び新卒への研修費給付、仮想就職フェア)、若年労働者の仮想キャリア情報交換会、政府からのスキルアップ給付金の増額に加え、コロナ危機で影響を受けた労働者への支援や、スーパーでの品出しの手伝いといった組合員によるボランティアを紹介した。
  • ベルナデット・レイズ議長(フィリピン):東南アジアで最も感染者数が多く、コミュニティ隔離措置や移動制限が長く続き、政府の支援が困窮者に届いていない。若年層、若年労働者への影響(失業、インターネット環境が悪く遠隔学習や在宅勤務が困難、鬱や不安等のメンタルヘルス悪化、DVの増加)と、組合の対応(経営側及び労働省に労働者支援策を交渉、オンラインでの団交、組合員へのマスク、フェイスシールド、ビタミン等の配布)を報告。UNI-PLC青年委員会は、UNI/UNI Apro等のウェビナーに積極参加し、パヤタスへの支援を継続し、独り親家庭に牛乳配給等のボランティア活動を行っている。
  • スシ・ノビアンティ委員(インドネシア):若年労働者への影響(就職難、解雇、将来不安)と、組合/青年委員会の対応(企業に労働者の安全確保を交渉、組合員への個人用防護具の配布、ソーシャルメディアによる感染予防啓発)を報告し、青年委員会の活動計画を紹介した。政府が労働組合の反対を押し切って可決した雇用創出オムニバス法は、解雇手当を削減し、無制限にアウトソースを可能とし、労働者の権利が剥奪される等、「雇用創出」の名の下に労働者を騙そうとする法律であり、組合は巻き返しを図ろうとしている。
  • アブ・ハサン委員(バングラデシュ):失業者が増大し(その多くが社会保障の対象外)、貧困及び格差が拡大する中、UNIバングラデシュ加盟協青年委員会は、困難を乗り切るため、生活困窮者への食糧配給、マスク配布等のボランティア、義援金カンパ、ソーシャルメディアでの大学生や若年層への啓発活動、労働問題に関するオンライン討論等の活動を実施している。
  • ジョティ・シュレスタ副議長(ネパール):政府の封じ込め失策により、雇用の不安定化、無給休暇の横行、DV・レイプの増加、メンタルヘルスの悪化、家計の悪化、自殺の増加、メディア上の誤情報といった問題が起きている。UNIネパール加盟協青年委員会は、組合員へのマスク配布、NGOと連携した食糧・水・支援物資の配給等のボランティア活動を実施。ロックダウン後、首相官邸前に100人の青年が集結し、復興計画(PCR検査の拡充他)を求めて平和的デモを実施。女性への暴力や犯罪が増える中、組合は若年層を教育・啓発し、自主隔離期間の女性の安全、女性の尊重を訴えていくべきだ。
  • キマヤ・ウキダブ委員(インド):UNIインド加盟協青年委員会は、年明けから孤児院での菓子配布、献血、高齢者施設でのサプリ配給を実施。コロナ危機が始まってからは、食事もとれない医療従事者に1か月に渡り軽食・茶を配給。組合の対策として、バローダ銀行労組の取組み事例(1か月分の給与前倒し払い、妊婦・障がい者の業務免除、感染による死亡に500万ルピー、都市部の病院のベッド不足に備え、感染した行員のための隔離部屋をホテルに確保、隔日出勤、公共交通機関がストップしたため交通費手当の確保、無料の医師相談、支店における各種感染防止対策)を紹介。
  • ミヒリ・ハプアラチャチ(スリランカ):感染は比較的抑えられている。若年労働者への影響(最前線で働き感染リスクが高い、失業、収入減少、メンタルヘルスの悪化、DVの増加等)、組合の対応(防護具・危険手当の要求、情報提供、賃金補償、雇用保障、社会保障の確保)、UNIスリランカ加盟協青年委員会の活動(スーパーの若年労働者の組織化、カンパ、青年リーダーシッププログラム、社会貢献)を報告。

この他、UNI世界青年委員会がまとめた「コロナ禍の青年ガイドライン」、UNI Apro女性委員会の声明をそれぞれ確認した。また、マルタ・オチョアUNI世界青年委員会担当局長から、SNSを活用したUNI yeah!キャンペーン、コロナ禍の間のウェビナーシリーズ、ウェビナーを通じて得られた意見からまとめた2020~2024年度UNI世界青年委員会行動計画案の策定等、UNI世界青年委員会の活動報告を受けた。更に、UNI Apro/UNIフィリピン加盟協(UNI-PLC)青年委員会が共同で推進してきたパヤタス(栄養失調児童への給食・奨学金)プロジェクトの15周年を迎えるにあたり、経過がビデオで紹介された。コロナ禍で、支援が行き届かないパヤタス地区は深刻な影響を受けていることが報告され、過去の努力を無駄にしないためにも、現在、米の配給等を続けているが、UNI-PLCからあらためて支援の要請を受けた。


アチャリャUNI Apro地域書記長、就任後初のUNI Apro運営委員会を開催

2020年10月12日、第34回UNI Apro運営委員会がようやく開催された。4月にシンガポールで開催する予定だったが、コロナのため延期となり、このほどオンライン開催することとなった。ラジェンドラ・アチャリャUNI Apro地域書記長にとっては、昨年の第5回UNI Apro地域大会で選出されて以来、初めての運営委員会である。

野田UNI Apro会長は開会にあたり、「今この時も拡大を続ける“新型コロナウィルス感染症”により世界の経済・社会は、試練の時期を迎え、“私たちの日常”は劇的に変化している」と述べた。「アジア地域のサプライチェーンは、まさに分断の危機にある。企業活動の停止や停滞によって、地域経済は深刻な打撃を受け、その規模は、かつての“アジア経済危機”や“世界金融危機”を上回ることは明らかである。ILOからは、アジア太平洋地域においては、とりわけ青年の雇用への影響が深刻であるとの報告も示されている」と述べ、人口分布において若年層の割合が多いUNI Apro地域の重要な課題であると指摘した。“仕事の世界”においても、ニューノーマルの下での働き方が定着しつつあり、オンラインを活用したビジネスモデルも一般的になってきた。リモートワークが進む中、労働組合・労働運動のBCPも必須である。「これまでの対面を前提とした活動スタイルの抜本的見直しが必要だ。こうした中で、各国の状況や取組みは参考になる事例も多く、UNI Aproのネットワークを有効活用し先進的事例を水平展開したい」と述べた。

続いて、クリスティ・ホフマンUNI書記長が挨拶し、「厳しい状況の中でも最善を尽くそう」と呼びかけた。対面会議はできなくても、活動は進めなければならないと訴え、コロナ禍の間も、職場の安全衛生確保に重点的に取組み、加盟組織が安全な職場復帰に向けた交渉ができるよう支援してきたことを紹介した。リモートワーク、AI使用、アルゴリズム管理、Eコマースの拡大が加速しており、この動向に遅れることなく備えていかなければならないと強調した。一方、「危機によって、組合こそ違いをもたらせることが世間に知らしめられた。エッセンシャルワーカーが社会に果たす貢献が明らかになった」と、暗雲立ち込める中にも希望はあると述べた。

主な議題は、コロナの影響と各国の対応に関する情報交換、地域大会後のフォローアップ、2019年度会計報告確認、2020年度予算、2021年度暫定予算の承認、スタッフ人事及び就業規則改定案の承認、加盟申請の確認等であった。

アチャリャUNI Apro地域書記長は、昨年11月の地域大会以降、コロナ禍に見舞われた今日までの活動を次のように報告した。「対面の組織化ができない中、多くの組合がテクノロジーを活用してデジタル/リモート組織化という新たな手法を検討し、実施している。コロナ禍においてパートナーシップによる労使の連携は非常に重要になっている。安全衛生の確保、移民労働者の保護、女性・若年労働者の問題等にも力を入れている。コロナ禍における明るい兆しは、若年層が組合の意義に関心を持ち始めたことだ。どの業界で働いていても組合は大切だとの認識が深まった。」その上で、姉妹組織や他のGUFと連携しつつ、小地域(南アジア、東南アジア、東アジア、オセアニア)毎の戦略を立て、取組んでいくと述べた。

日本からは、野田UNI Apro会長、松浦UNI Apro副会長、金子UNI Apro副会長、増田UNI世界副会長、景中UNI Apro女性委員会副議長他、オブザーバーが出席した。日本のコロナの状況・影響、UAゼンセンの取組み等については、松浦UNI Apro副会長がUNI-LCJを代表して報告した。


ドイツのアマゾン労働者、反労組戦術の懸念が高まる中、プライムデーにスト

アマゾンが、組合活動家へのスパイ活動を巡って、欧州議会議員、労働組合、市民からの厳しい調査に直面する中、ドイツの労働者(ver.di組合員)がライプチヒ、バートヘルスフェルト、ラインベルク、ウェルネ、グラーベン、コブレンツ等の都市で、プライムデー(10月13~14日)のストを決行している。ver.di組合員は、アマゾンのドイツの倉庫で働く労働者がウィルスに感染したことを受け、 夏の間、長期に渡り、より良い賃金、労働条件、そして尊厳を求めて闘っていた。

「アマゾン労働者は、ドイツでもどこでも、より良い賃金と人間らしいまともな労働条件を求めて闘っているが、憲法上の権利が損なわれないことを期待している。オンラインで結束するための私的な会話をビッグブラザーに監視されないよう望んでいる」と、クリスティUNI書記長は語る。「アマゾンは労働者の安全を確保してこなかった。プライムデーにオーダーが殺到し疲弊すれば、既に酷い状況が更に悪化する」と懸念を示した。

賃金、職場の安全性、組合代表を求める現場の要求に加え、ver.diは最近暴露されたアマゾン労働者へのスパイ活動についても批判した。シークレットサービスの手法を使って工場から組合を排除しようと試みたのだ。「会社が法律を無視するとは許されない」と、ver.di本部の流通・通販部門専門家、オルハン・アクマンは憤る。

VICE(デジタルメディア)がアマゾンの内部メモを暴露して間もなく、ver.diを含む欧州15か国の労組は欧州委員会に、アマゾンの欧州で働く労働者に対する違法性ある行為を調査するよう要求した。欧州議会議員37人もその行動に加わると共に、ジェフ・ベゾスCEOに早急な対応を要求する書簡を送った。欧州の労組は、アマゾンの行為を、欧州の労働法、データ及びプライバシーに関する法の違反に当たると考えている。


UNI世界青年委員会、メンタルヘルス危機への対応キャンペーンを開始

10月10日の世界メンタルヘルスデーに、UNI世界青年委員会は、世界中で懸念が高まっているメンタルヘルスの問題に組合が取組むよう、新しい啓発キャンペーンを開始した。新型コロナウィルスの感染が拡大する中で、インドからブラジル、フランスから米国まで、世界各地の労働者の間に、ストレス、燃え尽き、不安、薬物乱用、憂鬱といった心の健康上の問題が生じている。

団体交渉を通じて、組合は、心の健康を保つための支援に関する適切な枠組みや方針を実施することができる。UNI世界青年委員会が推進するUNI Yeah! キャンペーンは、メンタルヘルスを重点課題として取組む加盟組織を支援するものだ。

メンタルヘルスの問題を啓発するため、ポスター、インフォグラフィックス、アニメーション等、ソーシャルメディア用キットが作成されたので活用してほしい。

新型コロナウィルスが若年労働者のメンタルヘルスへ及ぼした影響は、とりわけ深刻である。若年層の間に失業が高まり、不安定雇用や不確実性が増し、ILOが実施した世界の若年層を対象とした調査では、18~29歳の若年層の2人に1人に不安神経症や鬱病の可能性があることが示された。大規模に教育機関や職場の閉鎖が行われたことが一因だろう。世界中で若い労働者は失業したり、労働時間が短縮されたりし、かつてないほどに将来への不安を感じるようになった。

若い女性の場合、状況は更に深刻だ。ロックダウン期間中、家庭内の責任が過度に増し、家庭内暴力件数も増大した。UNI機会均等局が最近行った調査では、労働者の10%が、家事が100%増加したと答えている。子供がいる場合、44%が、勉強の手伝いをする時間を作らなければならなかったと答えている。

世界保健機関(WHO)によれば、メンタルヘルスとは精神的に満たされた状態のことであり、精神的に健康であれば個人は自身の能力を発揮し、生活上の通常のストレスに対処し、生産的に働き、コミュニティに貢献することができるという。健康にとって非常に重要で、ますます組合が取組むべき課題となっている。

何百万もの人々が在宅で働くようになり、在宅勤務が続く中、メンタルヘルスの問題も増え続けている。テレワーク、長時間労働、つながらない権利の不徹底等と相まって、不健康な働き方が恒常化し、労働者には更なる負担となっている。 UNI世界青年委員会は、若年労働者に、「彼らをサポートする強力な組合があること、職場におけるメンタルヘルス問題は組合を通じて撲滅していかなければならない」というメッセージを発信している。


スペインUNI加盟組織、金融労働者のテレワークとつながらない権利に大きな成果

スペインのUNI加盟組織CCOOとUGTは、テレワークとつながらない権利に関する金融労働者への重要な手当を含む団体協約を交渉した。

貯蓄銀行で働く約6万人の労働者全てに適用される産別協約が2020年10月1日に締結された。本協約は2023年12月31日まで有効となる。

協約は、30%以上テレワークをしている労働者に、使用者からのパソコン、携帯電話、人口工学的に設計された椅子の支給を保障する。

また、会社から提供されていない場合、新たにスクリーン、キーボード、マウスを購入するために1人130ユーロまで受け取ることができる。更に、労働者は、その他の経費をカバーするために日割り計算でひと月当たり55ユーロを受け取る。

テレワークが30%以下の労働者は、パソコンと携帯電話を支給され、好きな場所からテレワークをすることができる。

更に、本協定は、業務終了後の「つながらない権利」についても含まれており、これは、全国レベルの産別協約としては、初めてである。また、任意且つ午後7時以降の平日の業務時間外の会議についても制限し、平日の午後7時から午前8時までを「つながらない時間」と義務づけている。

賃上げや年間労働時間の削減と同様に、本団体協約にはジェンダーに基づく暴力に対する3か月以内の有休休暇も含まれる。

アンジェロ・デクリストUNI金融部会担当局長は、「今回の団体協約締結を実現したスペイン加盟組織のCCOOとUGTにお祝い申し上げたい。在宅勤務を行う労働者の数がコロナ禍の中で増えており、テレワークにより稼働日と休日の境界線が曖昧になっている。この協定は、団体交渉の偉大なる証しであり、労働者にとって極めて重要な支援となる。テレワークに必要な備品、つながらない権利を担保し、在宅勤務のコストを労働者が負担する必要はないということを明確にしたからだ。また、家庭内暴力がパンデミックの最中に増加しており、有休休暇はこうしたジェンダーに基づく暴力に苦しんでいる人々にとって大きな助けとなる」と述べた。

貯蓄銀行部門におけるCCOOとUGTの協定は、スペインの法律に準じるものである。スペインでは、使用者にテレワークを行う労働者に必要な備品を支給するよう義務付けている。しかしながら、その詳細については、団体交渉を通じて決めることが組合側に任せられている。

 


UNI世界郵便・ロジスティクス部会、「危機における組合の役割」ガイドラインをリリース

10月9日の世界郵便デーに合わせ、UNI世界郵便・ロジスティクス部会は、郵便労組向けに新しいガイドライン「危機における組合の役割 COVID-19からの教訓」を発表した。

このガイドラインは、コロナ危機の間の優良事例を紹介し、社会の中でユニバーサルサービスを提供するという重要な役割を維持すると共に、郵便労働者の雇用を守る方法を明示するものである。

災害が発生した時、組合が、郵便サービスや労働者の健康に対する脅威を予測し軽減するための参考にしてほしい。目的は、危機の時こそ、そして危機の収束後も、不可欠なサービスとしての郵便を強化し、郵便労組を更に強化することである。


10月9日「世界郵便デー」記念オンラインイベント

今年の世界郵便デー(10月9日)に、UNIは、コロナ禍の間も人々の絆を保つために奮闘した郵便労働者に敬意を表するオンラインイベントを開催する。

UNI世界郵便・ロジスティクス部会が主催する記念イベントには、世界各国の組合役員が参加し、エッセンシャルサービス(不可欠なサービス)としての郵便と、危機の際の組合の役割について語る。中央ヨーロッパ夏時間午後2時から4時まで(日本時間午後9時から11時)、Facebookでライブ配信される。

UNI世界郵便・ロジスティクス部会は合わせて、「COVID-19から学んだ教訓」と題する新たな報告書をリリースする。その報告書の中では、パンデミックの間に組合が取組んだ優良事例が紹介されている。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は次のように述べた。「今年の世界郵便デーには極めて重要な意味がある。郵便労働者はパンデミックの間も多くの人々にとってライフラインの役割を果たしてきたからだ。食料品、医薬品、マスク等を届ける新しいサービスを始めたり、弱者や高齢者を見守り続けたりした。今こそ、労働組合として、このようなエッセンシャルサービス、あらゆる人々が手頃な価格で利用できる郵便サービスを守らなければならない。今年の世界郵便デーは、困難な時にもずっとサービスを提供し続けた世界中の郵便労働者に敬意を表し、感謝する機会としたい。」

デイブ・ウォードUNI世界郵便・ロジスティクス部会議長(英国通信労組書記長)は、「今年は今まで以上に、世界中で郵便労働者の献身さが評価された。国々をつなぎ続けるだけでなく、あらゆるコミュニティを助けるという任務をはるかに超える貢献をしてきた。今日は、皆さんの努力に心から敬意を表したい。郵便局で働く一人ひとりに“ありがとう”と伝えたい」とメッセージを寄せた。

コーネリア・ベルガーUNI世界郵便・ロジスティクス部会担当局長は、「今日は、郵便労働者がもっと評価され、それにふさわしい賃金とディーセントな労働条件が担保されるよう要求する。コロナ禍の間、郵便サービスが不可欠なものであったように、労働組合も不可欠であることが認知されるようになった。組合が強ければ、労働者はより守られる。UNI世界郵便・ロジスティクス部会は、世界中の郵便労働者の状況を改善するため、世界中の郵便労組が協力し合い、知見や最良の経験を交換できるよう、サポートしている」と述べた。

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