9月 2020のお知らせ

ノーベル経済学賞受賞スティグリッツ氏、UNIウェビナーで講演

UNIが9月28日に開催するウェビナーで、ノーベル経済学賞を受賞したエコノミスト、ジョセフ・E.スティグリッツ氏が講演を行う。ウェビナーのテーマは、「世界が必要とする公正な経済の実現に向けて - ポスト・コロナ社会における金融の役割」。

スティグリッツ氏は、米国コロンビア大学教授、ルーズベルト研究所チーフエコノミストで、ノーベル経済学賞を受賞(2001年)。世界銀行で上級副総裁・チーフエコノミストを務めた。

ウェビナーを主催するUNI金融部会は、世界の銀行、保険等、金融機関の、237加盟組織、300万人の労働者を代表する。アンジェロ・デクリストUNI世界金融部会担当局長は、「我々のウェビナーにスティグリッツ教授をお迎えできて大変光栄だ」と興奮気味に語った。「金融産業の労働組合は、新型コロナウィルスの影響で問題に直面しながらも、人々や公共サービス、コミュニティに投資する、より持続可能な経済への移行を推進しようと努力している。そのような中で、教授の見識をお聞きするのを楽しみにしている。」

スティグリッツ教授は、所得分配、リスク、コーポレートガバナンス、公共政策、マクロ経済学、グローバル化に関する研究で知られ、著書も多い。最近の著書に「People, Power, and Profits: Progressive Capitalism for an Age of Discontent」(翻訳「プログレッシブ・キャピタリズム:利益はみんなのために」)がある。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「我々は今、極めて重要な瞬間にいる。コロナ後の国際経済をリセットする機会でもあるからだ。現在の経済システムをいかに持続可能なモデルへと転換していくか、いかに格差を削減し、労働者にもっと公平・公正な社会をもたらす経済へと転換していくか、スティグリッツ教授の見解に大いに期待している」と述べた。

ウェビナーは9月28日、日本時間23時から、UNIのフェイスブックでライブ中継される。


転換期にさしかかるリモートワーク?

クリスティ・ホフマンUNI書記長とシャラン・バロウITUC書記長は共同で、2020年7月23日付『Social Europe』に次の意見を掲載した。原文はこちらから

パンデミック中にリモートワークが急増した。監視された中で孤立状態とならぬよう、個人の自主性を確保する団体協約が必要である。

数年後、我々は2020年を転換期として振り返ることだろう。大勢の労働者が職場から離れ、在宅や自宅近くで働く新たなモデルへ向けて生活を立て直し始めた、極めて重要な時期だった、と。世界的な感染拡大によって、突然、破壊的な働き方の変更を余儀なくされた。想像以上に大規模に、業務を継続することができるよう迅速に調整されたテクノロジーによって、そうした変更は後押しされてきた。多くの人々が、過去の職場には戻らないだろうと予想している。

そうしたテレワークはこの数十年で徐々に増加してきた。典型的なテレワークは、測定しやすく高度に自主的な仕事に関連し、多くの場合、ハイレベルで独立した評価が行われてきた。このような働き方が最も普及しているのは北欧や米国の、通勤時間が長く事務所賃料が高額な地域であり、労使共にこのモデルを採用する動機付けがある。

だがパンデミックによって、非熟練の自主性の低い仕事も含め、より幅広い仕事が、職場を離れても効果的に遂行できることがわかった。事実、ロックダウン期間中にOECD加盟国の全労働者の推定40%が在宅で仕事を継続できたという。

恒久的にリモート

全従業員が職場で仕事を再開したという企業はまだほとんど無く、そうする予定はないと宣言している経営者の数は増大している。最高財務責任者を対象にしたある調査では、企業の74%が一定割合の従業員を恒久的にリモートワークにする予定だと答えている。

米国のネーションワイド・インシュランスは、大規模事務所のうち5つを閉鎖する予定で、従業員に在宅勤務を要請している。世界最大手のコールセンター企業であるテレパフォーマンスは、約15万人の従業員が職場に戻らないだろうと推測している。「生産性が低下しても、事務所維持経費をなくせるので、十分におつりがくる」と、言う経営者もいる。

現下のテクノロジーは職場から脱出する利点を生かすには十分なほど発達している。ZoomやTeamsといったツールを通じて高度に進化したリモートでの連携が可能であり、マネジメントのサポートすら提供している。また、仕事を細分化することで、測定しやすく、どこからでも扱えるいくつかのタスクに分割することができる。そのため、リモートワークに適した職域が広がっている。

例えば保険産業では、多くの仕事がルーチン化されており、人工知能が保険請求の審査業務を補完している。コールセンター業務は、以前は大規模なセンターで管理者が動き回る中、行われてきたが、今や在宅で仕事ができる。そして、監視カメラやAIによって、受けた通話全ての会話内容、声のトーン、結果の一部始終がモニタリングされている。

ワークライフバランス

労働者にとってこれは何を意味するのか? 在宅勤務は望ましいはずであり、実際、特に通勤時間が長い上、家庭責任を持つ多くの人々とっては、本当に助かるはずだ。合理的な1日の勤務の終わりに「つながらない権利」が伴っているなら、ワークライフバランスを回復するのにいくらか役立つはずである。

しかし現実は、乱用されやすい状況にある。尊厳を守り、雇用関係を維持し、結社の自由が担保されるような措置が取られて、初めて「ウィンウィン(双方に利をもたらす)」となるのだ。

かなり長い間、組合は、リモートワークの条件について経営者と交渉してきた。銀行・保険産業では、1999年からリモートワーク規定が整っている。こうした団体協約によって、リモートワークの選択は任意であること、事務所勤務に「戻る」権利があること、昇進の道と均等な機会が守られること等が確保されてきた。組合は、在宅勤務時のつながらない権利の促進についても道を開いてきた。

遠隔勤務者を増やすという経営者側の需要が大きくなるにつれ、こうした協約の真価が問われ、交渉プロセスを促進する規制が必要となるだろう。

職場代表がいない

しかし残念なことに、在宅勤務を続ける可能性のある労働者の大多数に、職場代表がいない。欧州以外の多くの国の政府は、この新しい働き方の現実を規制していない。米国の民間部門では、ホワイトカラー労働者を対象とする協約が事実上存在しない。これは極端な例だが、民間サービス部門のホワイトカラー労働者には、世界の他のグループのような組合代表がいないのだ。

また、組合は、リモートワークが、こうした労働者の非正規化や「ウーバー化」につながらないよう警戒しなければならない。仕事が、「プロジェクト単位で支払われる」独立請負人契約等の営利契約や、より人件費の安いところへ外注しやすい昔ながらの出来高払いの仕事へと後退するにつれ、「リモート」ワークと「プラットフォーム」ワークの境界線が曖昧になることは想像に難くない。

そして働く場所の変化が、労働者から企業のポケットへと流れる富の移動を意味してはならない。在宅を続ける従業員の条件を悪化させてはならない。加えて、労働者が自宅の電気ガス水道、インターネットを使うことに対して、費用を補償されるべきだ。そして当然、使用者に必要機器と安全な職場を提供する責任があることは変わらない。パンデミック中に「在宅勤務」へと転換されたコールセンター労働者の中には、通勤費を節約できているという主張から、企業のWi-Fiパッケージを購入するよう要求された者もいる。

使用者は常に従業員の生産性を測ってきたが、AIによる監視は度を超す可能性があり、組合代表と交渉が行われない限り、許すべきでない。データ及びプライバシーに関する方針は、一方的に押し付けられてはならない。

労働者が地域あるいは国境を超えて分散している現状では、結社の自由を実現するのは、ほぼ不可能である。この基本的な権利を、何百万もの労働者にとって過ぎし日のスローガンではなく、現実のものにしようとするならば、結社の自由のルールと定義を見直し、例えばデジタルな会議スペース等を通じ、組合が労働者とコミュニケーションを図る有意義な機会を可能にしなければならない。

最も重い負荷

女性は、家庭の世話をする、より重い責任を担っているため、在宅勤務を選択する可能性が最も高い。女性が「忘れられ」たり孤立したりして、キャリアの機会やメンタリング(職場において熟練者が未熟者に助言や手助けをしながら人材を育成すること)から断たれないよう、積極的な措置を取る必要がある。多くの組織において、恒久的なリモートワーク状態が成功への切符にはなりそうにない。

リモートワークが生産性に及ぼす影響は議論すべきテーマであり、特に執筆プロジェクト等の、集中し個別化した作業の間は、在宅の方が生産性は高いと考える人が多い。米国のある調査では、専門職は週15時間までは在宅勤務の方が生産的だということがわかった。もちろん部門によって様々ではあるが、フルタイムの在宅勤務の長期的な影響について、じきにもっとわかるだろう。

しかし、特にフルタイムの在宅勤務には、創造性、チームや企業風土、連携という点でマイナスの影響がありそうだ。Facebookが何年か前に初期の「在宅勤務」の実験をやめたのは、それが理由だった。(その後、同社は成績優秀者のために新たなリモート方針を発表した。)また、フルタイムのリモートワークに伴い、同僚と疎遠になることも、過小評価してはならない。多くの人々にとってメンタルヘルス上の問題が生じるからである。コーヒーブレイク中のおしゃべりに代わる、どんな個人的な交流があるだろう?

また、この変革が我々のコミュニティに対して及ぼす劇的な影響を、誇張し過ぎることはない。ホワイトカラー労働者は毎日、公共交通機関を使い、街に流れ込み、ランチを外食し、ドライクリーニング店やその他のサービスを利用する。このような労働者が街に来なくなれば、どうなるか? 気候へのプラスの影響を称賛できる一方で、こうした変革へと舵取りするには、能動的な計画が必要である。 我々は真の転換期にさしかかっている。多くのプラス面があるものの、危険信号も点滅している。労働者代表は、こうした移行の条件を交渉するために、使用者や政府、国際機関との交渉テーブルにつかなければならない。過去の職場が取り残されても、労働者の利益がそうならないようにするには、それしか方法はない。


ブラジルの郵便労組へ連帯支援を

UNIは加盟組織に、9月21日(月)の重要な公判に合わせて開催される国際行動デーに参加することによって、ブラジルの郵便労組を支援するよう要請する。

ブラジルの10万人近くの郵便労働者は、1か月以上にわたりストに入っている。なぜなら、国有郵便会社コレイオスが一方的に、UNI加盟組織である郵便労組FENTECT及びFINDECTとの団体協約を打ち切ったからである。コレイオスは、団体協約から、出産休暇付与、食券付与、特別なニーズのある扶養家族への支援付与等、70の主要な条項を剥奪しようとしている。9月21日、最高労働裁判所で公判が開かれ、団体協約が維持されるかどうかの判断が下されることになっている。従って、UNIは世界中の加盟組織に、下記の方法による、ブラジル郵便労組へ連帯支援を要請する。

  • ポスターを印刷し、写真を撮って、ハシュタグ#EuApoioAGreveDosCorreiosをつけてソーシャルメディアでシェアする。
  • ブラジルの郵便労働者を支援する連帯ビデオメッセージをソーシャルメディアに投稿する。ツイッター及びフェイスブックでは、タグ付け(@uniamericas)をする。
  • 9月21日のフェイスブック生中継に参加する。

郵便労働者の権利を攻撃するのは、ボルソナロ政権が郵便事業を民営化し弱体化させようとするキャンペーンの一部である。

更に、パンデミックの最中、政府は、新型コロナウィルス感染防止対策を講じるという、最も基本的な労働者の要求とニーズにも応えようとしなかった。その怠慢の結果、職場における感染が拡大し、100人以上の郵便労働者が亡くなった。それでもWHO(世界保健機関)が勧告する対策の1つも実施されていない。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「世界的な新型コロナウィルス感染拡大によって、郵便サービスと郵便労働者は社会にとって不可欠であり、彼らを守らなければならないことが証明された。UNIと世界2000万人のメンバーは、ブラジルの加盟組織が苦労して勝ち取った権利を維持し、民営化を阻止する闘いを支援する」と述べた。

コーネリア・ベルガーUNI世界郵便・ロジスティクス部会担当局長は、「“連帯”は私達にとって単なる言葉ではない。最高労働裁判所に、“郵便労働者はより良い待遇を受けるにふさわしい”という明確なメッセージを送りたい。人々が質の高い公的郵便サービスを受ける権利を維持し、それを提供する郵便労働者が家族と共に良い生活を送ることができるよう、権利を維持するために闘っている」と訴えた。

世界90か国、250万人の郵便・ロジスティクス労働者を代表するUNI世界郵便・ロジスティクス部会は、ブラジルの郵便サービスを破壊し民営化しようとする現政権と闘う郵便労組を支援している。


雇用、民主主義、印刷メディアを守る、グローバルユニオン・キャンペーン

雇用を守り、民主主義を守り、印刷メディアを守る:グローバルユニオンが、ジャーナリズムの未来を守るキャンペーンを開始

世界中で2100万人の労働者を代表する2つのグローバルユニオン(国際産業別労働組織)が共同で今日、印刷ジャーナリズムを守るキャンペーンを開始する。

2020年9月21日、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)とUNIは、各国政府に対し、印刷メディア産業全体(ジャーナリズム、出版、印刷、流通)への緊急救済措置をとると共に、メディア情報源から広告収入を横取りしてきたアマゾン、グーグル、フェイスブック等の大手テクノロジー企業に対するデジタルサービス税を導入するよう要求することを表明する。

COVID-19危機は、長年にわたるメディア広告収入の減少を加速化させ、今年だけでも収入は20%減少した。減少した収入の大部分は、テクノロジー企業によって吸い上げられてきた。例えば2018年に、グーグルはニュースサイトから470億ドルを稼ぎ出したが、これが記事を書いたジャーナリストに分配されたことはない。

「昨今の世界的な健康危機によって、印刷メディア産業が直面している大きな困難がさらに拡大している」と、アンソニー・ベランガーIFJ書記長は警鐘を鳴らす。「各国政府は緊急に対応すべきだ。この産業は公共の利益であり、民主主義にとって極めて重要な柱だ。政府もそのことを良く理解しているはずだ。実際、COVID-19危機の最中に、政府は必要不可欠な産業であるとした。もはや船が沈むのを高みから静観している場合ではない」と訴えた。

その先にある深刻な経済危機を見据え、労働組合は、各国政府が、質、倫理、連帯、労働の権利、基本的自由のために闘う印刷メディア産業を守り、メディアの雇用を守るため介入することを期待している。

「我々の民主主義の健全性は、権力を持つ人への説明責任を問うことにかかっている。多くの場合、ジャーナリストは、社会的な信認を濫用する政治及び企業の権力にスポットライトを当てる」と、クリスティ・ホフマンUNI書記長は語る。「印刷メディアは、この情報を発信し、ジャーナリズムのオンライン部分を支える上で大きな役割を果たしている。」

行動を起こさなければ、メディア部門の統合と広告収入の減少により、何千ものメディア情報源が閉鎖されるリスクがあり、何十万もの雇用が失われるリスクがある。

IFJとUNIは、「印刷メディア産業の救済及び将来の存続に向けた救済策」と題する、各国政府に宛てた共同アピールを採択した。両組織の加盟組織は、報道メディアへの支持を求めてロビー活動を行う際に、これらの論点を活用していく。

ニコラ・コンスタンティノウUNI世界印刷・パッケージング部会担当局長は、「印刷メディアはソーシャルグッド(社会を良くする事業)である。そして、メディアのサプライチェーンは巨大で、ジャーナリスト、編集者、校正者、印刷業者、デザイナー、カメラマンだけでなく、配達員、郵便労働者、書店等、何百万人もの人々が携わっている」と述べる。

「これらの事業と、そこで働く人々は、大手ハイテク企業による、不当な租税回避から広告収入を盗まれ、不利な立場に置かれている。我々が頼りにしている、ニュースを制作し配布する人々が公正な配分を得られるようにするため、政府に介入するよう求める。」

参考

UNI世界印刷・パッケージング部会(UNI G&Pは80万人以上のメンバーを代表する国際産業別労働組織である。そのメンバーは、新聞、一般印刷、セキュリティ印刷、出版、ティッシュ、パッケージング等、様々な分野で働いている。UNI世界印刷・パッケージング部会は、UNIの一部会である。UNIは、150か国以上の、急速に成長する幅広いサービス産業で働く2000万人余のメンバーの声を代弁する国際組織である。詳細はこちらのリンクから https://www.uniglobalunion.org/

国際ジャーナリスト連盟(IFJは、ジャーナリストの世界最大の組織で、140か国以上、187組織、60万人のメディア専門職を代表する。IFJは、どの国であっても、労働者の権利及び専門職としての権利を求めて闘うジャーナリスト及びその組合を支援し、支援を必要とするジャーナリストに人道的支援を提供するための国際安全基金を設立した。詳細はこちらのリンクから https://www.ifj.org/


今日の英雄は明日にはいない:永久に公正な賃金を

本記事は、世界のあらゆる社会分野のOECD専門家やオピニオンリーダーがCOVID-19危機について議論し、今後に向けた方策を考えるシリーズの一部である。我々がこの重要な難題に立ち向かっていけるよう、分野を超えて専門的知見を交換することを目的としている。提起された意見は、必ずしもOECDの見解ではない。原文はこちらから(OECDフォーラムネットワーク、2020年7月21日掲載)

UNI書記長 クリスティ・ホフマン

世界の労働運動のリーダーとして、この数ヶ月間で私は何度も同じことを耳にしてきた。「喜ばしいことに、ついに労働者は本来受けるべき評価を得ている。多くのメディアが労働者の働きを取り上げ、人々は支援の気持ちを示している。」 実際、メディアはパンデミックの間に来る日も来る日も、「日々の英雄」は見過ごされ正当に評価されてこなかったと報じてきた。

日々の英雄とは、我々の地域社会に食料が行き届くようにしている食料品店の従業員のことであり、病人や障がい者、高齢者に不可欠な支援を行っているケアワーカーのことであり、病院やバス、公園や街頭が安全で清潔であるよう尽くしている清掃ならびに警備労働者のことだ。

そのほとんどが女性であり、人口に占める割合に比べて極端に多い人種的・民族的マイノリティの人々が、個人用防護具も支給されない中、こうした仕事に従事している。多くの場合、有給の病気休暇がないからである。仕事をするため、自分自身と家族を危険に曝しているのだ。毎年出される『OECD雇用アウトルック』も、女性やマイノリティ、低賃金労働者の働きによって、社会がコロナ危機を乗り切ろうとしていることを認識し、次のように述べている。「リモートでは提供できない必要不可欠なサービスに従事するいわゆる『最前線の労働者』は、低賃金であることが多い。」

だが、こうした労働者に対する世間の認識が高まった一方で、こうした低賃金の仕事の基準を押し上げるべく実質的な取組みがなされているのか、疑問である。実際には、パンデミック中、労働者を雇用し続けるために、わずかばかりの「ボーナス」の支払いすら使用者が撤回しているため、多くの労働者の賃金はむしろ下落しそうである。

雇用危機に直面して:『OECD雇用アウトルック』からわかる重要な点

例えば米国では、Kroger 、Whole FoodsやTrader Joe’sなどの40以上の小売チェーンが「英雄賃金」の支払を終了すると発表している。英国の大手スーパーマーケットチェーンのTescoは、国内のCOVID-19感染者が増加し続ける中、5月30日で10%の感謝手当を打ち切った。ドイツに本社を持つAldiの特別賃金は4月末で終了したが、コロナの危険は今も高まっている。

これは想像を絶する冷酷な仕打ちである。感染の危険がなくなったわけではないことは明らかであり、実際、食料品店の従業員の緊張感は高まり、彼らの受ける嫌がらせは増加しているのだ。従業員は、顧客に対してマスク着用を呼びかけることを求められているからだ。

だが、英雄賃金への注目は、もっと大きな点を見落としている。命取りのパンデミック中に業務の重要性を証明した労働者は、危機迫る間だけではなく、恒久的に公正な賃金を受け取るべきなのだ。

スーパーマーケットの一時的な「英雄手当」は、労働者と家族が安心して暮らせる賃金の代わりにはならない。世界中の労働組合がさらなる賃金を要求しているのは、このためだ。英国のUSDAW、カナダのUNIFOR、オーストラリアのSDA、米国のUFCWといった労働組合は皆、食品小売労働者の賃金引上げを求めるキャンペーンを展開している。ドイツのIG BAUは清掃労働者の賃金引上げを要求しており、米国のSEIU やペルーのSITOBURも同様である。アルゼンチンではSindicato de Salud Pública de la Provincia de Buenos Airesがケアワーカーの雇用と賃金確保を求めて闘い、勝利した。同様に、多くのケアに関わる組合がグローバルなキャンペーンに向けて準備を行っている。

こうした闘いは、エッセンシャルワーカーの必要不可欠な権利の確立に向けた一連の要求をめぐる、グローバルな動きの一環である。不可欠な権利とは、団体交渉の拡大、尊厳ある賃金、安全な仕事、そして特に米国と英国では有給の病気休暇のことである。

経済が良質な雇用をかつてなく必要としているこの時期に、必要不可欠な仕事を公正に評価することで、何百万もの人々が貧困から抜け出すことができるだろう。最前線の労働者を保護しながら、地域を守ることができるだろう。そして力と富の均衡を、一握りの者から大多数へとシフトする力になるだろう。

近年絶え間なく繰り返されてきた不平等の事実を我々は知っている。過去30年間、世界経済に占める労働者の割合は減少し、その理由の少なくとも半分は団体交渉の減少である。富の不均衡は、現代社会がかつて経験したことのないレベルにまで達している。世界で最も裕福な国、米国における「ワーキングプア」の数は爆発的に増加し、10世帯に1世帯以上が該当する。そして不安定雇用の増加により、その数は世界中でいっそう悪化している。

そうして我々の社会は、実質賃金が何十年も横ばいで、ラリー・サマーズのような著名な経済学者も、公正な条件を作り出すためにはもっと多くの労働組合が必要だと主張するに至った。改訂版「OECD雇用戦略」では、弾力的な労働市場を作り出し、不平等と闘う上での団体交渉の中心的役割が認識されている。昨年OECDは、強力な組合と調整された団体交渉は、ソーシャル・グッド(社会を良くするもの)であり、民主主義と社会の結束のために必要であるとの認識を明確にした。またコロナ危機の最中にOECDは、パンデミックにより露呈した問題の長期的解決策として、長期介護部門でのさらなる団体交渉を求めている。「雇用アウトルック2020」においても、社会パートナー、つまり労働組合と使用者団体が危機の間に果たす中心的役割を評価している。

我々は今、歴史的に類い稀な瞬間を生きている。未来を変える真の選択と不平等に関する取組みを行うには、良い機会だ。エッセンシャルワーカーの多くが、社会で最低の賃金しか得ていない。多くの場合は有給で病気休暇を取れず、国によっては適切な医療さえ受けられない状況だ。我々はこれまでの道を歩み続けたいのか?

スイスで保健庁を管轄するアラン・ベルセ内務大臣も最近、次のように問いかけている。「我々は、今回コロナ危機を経て明らかになったエッセンシャルワーカーへの酷い扱いを是正していく政治的意思を持つのか?それとも、『システム上、重要な』職業の人々に対する敬意を、安っぽい美辞麗句へとこっそり転じてしまうのか?」

エッセンシャルワーカーは、もっと多くを得て良いはずだ。彼らに必要なのは、感謝のしるし以上に、彼らの仕事を評価し、何が必要不可欠であるかを見極める我々の経済が変化していくことだ。グローバルに今、このことを考える時だ。

仕事をどのように評価するのか、リセットボタンを押すのは今だ。


世界選手会、イランのレスリング選手の死刑執行に深い悲しみと怒り

世界選手会は、9月13日、イランのレスリング選手、ナビド・アフカリ氏の死刑が執行されたとの報に大きな衝撃を受け、哀悼の意を表する。

ナビド選手は、拷問により、2018年の反政府デモの際、警備員を刺殺したとの虚偽の自白をさせられた末に死刑宣告を受けていた。

イラン政権からすれば、彼は平和的な反政府デモに参加しただけの罪だった。

世界選手会のブレンダン・シュワブ部長は、「ナビド選手への衝撃的な不正義に対し、世界中のスポーツ界の、勇気ある人権擁護者から大きな支援が次々と寄せられた。にもかかわらず、イラン政権によって彼の命は奪われてしまった」と悲痛な面持ちで述べた。

「ナビド選手は、アスリートとして成功を収め、人気があったために標的にされた。このような残忍な行為は、民衆を恐怖に陥れ、反対意見を持つ者を黙らせるための見せしめとして行われた。我々は彼のことを決して忘れずに、今こそ、他の人が二度とこのような運命に苦しむことのないよう結束していかなければならない」と決意をあらたにした。

そして、ナビド選手の正義を訴え続けた全ての人々、とりわけ、サリー・ロバーツをはじめとするレスリング界や世界中の人権団体に心から感謝した。 シュワブ部長は、「ナビド選手の死を無駄にしないようにしなければならない。これからもアスリートの権利のために闘い続ける。世界のスポーツ界は、人権を濫用する者に最高基準の説明責任を取らせるようにしていく」と力を込め、「ナビド選手の名において、しなければならないことはたくさんあるが、今日は、取り戻すことのできない彼の死に打ちひしがれる遺族や友人の心に寄り添いたい」と語った。


UNI Apro印刷・パッケージング部会、コロナ後の戦略を議論

UNI Apro印刷・パッケージング部会は、5月28日の第1回オンライン会議に続き、9月7日に第2回オンライン会議を開催した。

ロレイン・キャシン議長(オーストラリア)をはじめ、日本、インド、タイ、ネパール、インドネシア、マレーシア、UNI本部、UNI Aproから18人が参加した。日本からは、梅原副議長(全印刷)、佐藤委員(印刷労連)、オブ等が出席した。

前回は主に、コロナ禍における事業・労働者への影響と労使の対応について共有したが、今回は最新情報に加え、コロナ後を見据えた戦略についても触れられた。

オーストラリアでは、労働時間が短縮され政府補助金に依存する労働者がいる。超過勤務をしても手当を支払われない非正規労働者もいる。組合として、コロナ禍を理由に既存の協約や労働条件を改悪しようとする使用者に反対したり、補助金給付の延長やゼロ金利融資等を政府に要求したりしている。

日本の民間印刷産業では、オリ・パラをはじめ各種イベント等の中止や自粛が続き、生産・収益面で影響を受けた。印刷物の需要増が見込めないことから厳しい状況が続くと予想され、会社業績悪化や雇用への影響が懸念される。在宅勤務ができない工場勤務者からは不公平だという声も聞かれ、エッセンシャルワーカーとして社会基盤を支える役割を丁寧に説明すると共に、感謝の言葉を伝える等、精神的なフォローを行った。一方、ホワイトカラー労働者の働き方は、テレワークやオンライン会議が一層浸透することが予想され、上司・部下、同僚との意思疎通や精神面のケア等、ニューノーマルな働き方に伴う課題に労使で対応していく。印刷局は、日本銀行券、旅券、官報等の製造・納入に支障のない範囲で、在宅勤務等により出勤率7割削減を目標に対応し、組合活動の多くは中止や延期となった。コロナ禍でデジタル化が加速し、各国通貨もデジタル化に向けた研究が盛んになっており、第4次産業革命による社会の変貌に印刷局が的確に順応していくことを課題と捉えている。

インドでは、コロナ禍で新聞発行部数及び広告収入の減少傾向が加速した。多くの経営者がコロナ禍を口実に、従業員削減、賃金削減、無給自宅待機を強要し、労働者は失業を恐れている。組合は問題が発生したら法的措置を取るよう指導している。政労使三者委員会の設置を進めており、労働者に不利にならないよう監視し、経営側に改善を求めていく。

ネパールでは、2度のロックダウンで、印刷業界の9割が一部営業または休業状態である。今後印刷産業の35~50%が減少すると予想され、既に組合員200人を失った。組合として感染予防啓発に努め、労使で個人用防護具を配布した他、仕事がなく生活が苦しい人への救済品支給、ストレス管理のオンライン研修等を実施した。政府に対して、前線で働く労働者への奨励金支給、強制医療保険の導入を要求している。ネパールでは、雇用、賃金が優先され、設置が義務付けられている安全衛生委員会が殆ど設置されていないことも課題である。

タイの印刷大手、アムコール、キンバリークラーク、SIGの労使は、コロナ危機の間も、出勤前検温、マスク着用義務、手洗い励行を徹底し、感染者を出さずうまく対応している。

インドネシアでも、印刷・パッケージング産業は不可欠産業とされ、工場は時短または通常稼働を継続している。アムコールでは労使でしっかり対応しており、感染者は出ておらず、雇用、賃金は守られている。しかし国全体としては感染者19万人とまだ増えており、ロックダウンは解除されていない。

マレーシアでは、移動制限令の間も、オンラインでオルグや組合の能力構築活動を継続しており、7月に移動制限令が解除されてから、8月には労働協約の対面研修を行った。印刷・パッケージング各社労組がUNIパックマレーシアという労連を結成し、UNIへ加盟する。労働慣行や組合活動がコロナ禍で大きく変わった。ニューノーマルを受入れるのは容易ではないが、政労使が協力して受入れていかねばならない。労働者へはどうリスク対処すべきか啓発していく。

また、タイ、インドネシア、マレーシア、インドでは、印刷・パッケージング部門の組織化及び労組の能力強化のプロジェクトを計画していた。コロナ禍を受けての計画変更と、今後の見通しについて共有した。


世界選手会、イランに、著名なレスリング選手の命を救うよう要求

世界選手会は、イラン司法当局に、同国の著名なレスリング選手ナビド・アフカリ氏の明日の死刑執行を直ちに停止するよう要求する。

ナビド選手(27歳)は、2018年の反政府抗議デモの間に起きた治安部隊の殺害に関して、拷問を受け、虚偽の自白をさせられた末、2度死刑宣告を受けた。

ナビド選手は、その年、イランの景気悪化と政治的弾圧に反対して自然発生したデモに参加した何千人ものイラン市民の1人に過ぎなかった。

しかし彼は、人気がある著名なアスリートを見せしめとして、平和的な抗議に参加する人権を敢えて行使しようとする他の人々を脅迫することを意図したイラン当局によって不当に標的とされた。

アスリートは決して、政府によって、市民を怖がらせ操るための政治的人質として使われてはならない。スポーツ界全体で、イランにナビド選手の死刑判決を覆し、起訴を取り下げ、警察及び司法当局に身柄を拘束されている間に受けた虐待を調査するよう、団結して要求しなければならない。

世界選手会のブレンダン・シュワブ部長は次のように訴えた。「ナビド選手は、スポーツ選手で成功を収めたから、選び抜かれ、拷問され、死刑を宣告されたのだ。アスリートを処刑するという恐ろしい行為は、スポーツの基盤である人道的価値を否定することに他ならない。普遍的なスポーツコミュニティの一員としての権利を、イランは失うことになるはずだ。」

ナビド選手の死刑執行は9月9日とされ、国際オリンピック委員会(IOC)理事会は、その日に召集されることになっている。「国際スポーツの最高権威として、IOCはその影響力を利用して、イランに人権と人道的価値観に関するIOCの国際基準を守るよう要求することが不可欠だ。さもなくば、オリンピック運動の一員から除外されるリスクを負うかもしれない、と。世界レスリング連合や、FIFA(国際サッカー連盟)等、他のスポーツ連盟も同様にイランに影響力を持っている。だからナビド選手を守る義務がある」と強調した。

元プロサッカー選手で、アムネスティの大使を務めるクレイグ・フォスターは、バーレーン出身で亡命を希望したサッカー選手ハキーム・アルアライビが虚偽の刑事責任によりバーレーンに送還されないよう、命を救う国際キャンペーンを2019年に展開した時の中心人物だ。「国際スポーツコミュニティの一員には基本的な義務がある。人権を行使したアスリートを拷問にかけ処刑することは、人間性の原則と一致すると言われるスポーツの原則を甚だしく違反することに等しい。イランに対し直ちに、“アスリートの社会的地位とコミュニティの信頼は政治的手段として使われてはならない、いかなる状況の下でも乱用されてはならない、国際スポーツ界に参加するための基本的要件は関係者全員の人権を擁護することだ”という明確なメッセージを送り、国際スポーツ界からの除外を脅すべきだ」と語気を強めた。

#SaveNavidAfkari(#ナビドアフカリを救え)キャンペーンを支持しよう。オンライン署名はこちらのリンクから http://chng.it/szj5zyfPj9 


アルゴリズム管理ツールを倫理的に使うよう団体交渉で要求すべきだ

世界150か国、2000万人のサービス産業労働者を代表するUNIは9月1日、アルゴリズム管理がどのように仕事に使われるべきか、労働者の意見を聞くよう要求するキャンペーンを開始した。

UNI専門職・監督職委員会(P&M)は、世界中の職場において使用が増えつつあるこれらのツールが、倫理的に使われるよう要求する加盟組織の団体交渉を支援していく。

アルゴリズム管理は、単純なソフトウェアで従業員の労働時間を追跡したり履歴書をキーワード解析したりすることから、機械学習やその他の人工知能を活用した、店内の顧客の足取り予測や、シフトパターンの割り振り、労働者への任務の割り振り、誰を採用し昇進させ配転すべきかを決める、もっと複雑なツールに至るまで幅広く使われる。これらは集積された莫大なデータに基づいている。

「アルゴリズムを利用したツールで効率性を改善することはできるが、甚大なリスクも課されることになる。特に、監視が強化され、データが収集され、仕事から人間性が奪われ、 職場の差別が悪化する恐れがある」と、クリスティ・ホフマンUNI書記長は述べた。「COVID-19のパンデミックの間、遠隔勤務が急増し、使用者はスタッフを監視するためこれらのツールの使用を加速した。組合は、アルゴリズムが使われる際には、労働者との交渉を経て、透明性をもって、差別することなく使われるように働きかけなければならない。」

アルゴリズム管理は、採用、業績管理、様々な状況における日々の職場の意思決定等に、最もよく使われている。例えば、アマゾンの倉庫労働者が装着する触感フィードバックデバイスは、品物をより効率的に取れるよう、振動で腕を正しい棚へ導くものだが、この種の過剰な効率性は労働者に極度のストレスを与える。常にプレッシャーを感じ、人間の自主性が奪われる。自分の手足の動きや、どの大きさの箱を選ぶか、封をするのにどのくらいの長さのテープを切ればいいかを決めることすら信用されていないと感じ、自分が単なる機械のように思えてくる。

コールセンター経営者は、アルゴリズムツールを使って、従業員が顧客に積極的な態度を取り続けるよう、言葉遣いや声の調子を監視する。例えば、CogitoやVoci等のプログラムは、音声分析AIを使い、労働者に、早口でしゃべり過ぎるとか、疲れたような声をしているとか、共感力が足りないとか、リアルタイムでフィードバックを与える。労働者は、各々について収集された大量のデータに加え、これらのプログラムによって仕事上のストレスが倍加すると不満を述べている。あたかもアルゴリズムツールに、労働者はどのような感情を持つべきかまで命令されているようだ。

更に悪いことに、この種のプログラムは、女性、地方訛りのある従業員、少数派の人種・民族の言葉や表現を誤解する傾向が強いと、労働者は報告している。アルゴリズムに組み込まれた偏見によって、彼らの成績は不正に評価されることが多く、人間の管理者によって修正されることができない。

「アルゴリズムによって決定がなされたからといって、使用者は結果への責任と関係がなくなるというわけではない」と、アレックス・ホグバックUNI専門職・監督職委員会担当局長は主張する。「どのような新しい技術であっても、我々はこれらのツールができるだけ公平に使われるようにしようとしている。そうすれば、労使双方に利があるからだ。」

UNIは、アルゴリズムが適切に設計され実行されれば、人的資源における偏見を減らすのに役立つだろうと指摘する。例えば、採用担当マネジャーの偏見は意思決定に情報を提供すると研究では示されている。その一例が、ある米国の実験で、黒人らしい名前の求職者は、アングロサクソンの名前を持つ似たような履歴書の求職者に比べ、50%少ない面接の申し出を受けたと示されたことだ。よく考慮されたアルゴリズムのアプローチなら、面接プロセス全体の偏見を減らし、差別を受けるかもしれない候補者に、より公平な機会を与えるのに役立つはずだ。 UNIは、組合が使用者との「アルゴリズム使用協定」交渉に目標設定すべきだと確信している。その協定とは、アルゴリズム管理の倫理的な使用に関する主要な要求を含むものである。例えば、どのようなツールが使われているかを知る権利、どのようなデータがなぜ収集されているかの情報、これらのツールを通じて労働者に関して集められたデータにアクセスする権利等である。更にUNIは、これらのツールを人間が指揮するアプローチと、差別のない結果を確保するための監査を主張する。要求のリストと、交渉のガイドライン(英語)を参考にしてほしい。


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