UNI世界金融部会は、2019年10月にスペイン・トレモリーノスで第5回世界金融部会大会を開催し、「強力な労働組合」をスローガンに、4年間の活動方針を議論した。しかし、その後に起きた新型コロナウィルス(以下COVID-19 )の世界的感染拡大により、金融労働者を取り巻く環境は一変し、方針を改めて精査する必要が生じた。パンデミック収束の見通しが立たない中、8月25日にシンガポールで予定されていた大会後初めてのUNI世界金融部会委員会がオンラインで開催された。世界金融部会議長、担当局長、4地域から選出された副議長に加え、前回大会で指名された各地域委員ら約40人が出席し、未曾有のCOVID-19危機において金融労働者が果たした社会的役割を振り返り、UNI世界金融部会が目指すべき新たな方向性について議論し、ポストCOVID-19 の活動方針を確認した。UNI Apro金融部会からは境田道正議長(損保労連中央執行委員長)、ジュリア・サングリアノ副議長に加え、日本(全信連、全労金)、韓国、スリランカ、ネパールの委員がオブザーバー参加した。
冒頭、参加者は、リタ・ベルロファUNI世界金融部会議長の「感染リスクのある中、最前線で働いてきた世界の金融部門労働者を称えよう」との呼びかけに応え、全員で拍手し、その勇気ある貢献を称えた。続いて連帯挨拶を行ったクリスティ・ホフマンUNI書記長は、「COVID-19危機によって労働組合は、労働者の生活に大きな違いをもたらす存在として認識されるようになった。組織化を進め、団体交渉を強化していくことがいかに重要かを証明するチャンスだ。オールドノーマルに戻るのではなく、共にビルド・バック・ベター(創造的復興)を目指そう」と力強く呼びかけた。
委員会はまず、第5回UNI世界金融部会大会で「デジタル化」に関して多言語意見集約オンラインツールThought Exchangeを利用して行われた意見交換の詳細な分析結果の報告を受けた。続いて、ポストCOVID-19に関する4つのテーマ:「金融機関が未来に果たす役割」、「団体交渉と社会対話」、「リモートワーク」、「労働組合の対応」について各国参加者の報告を受け、社会において金融部門が果たすべき役割と重要性、新しい働き方に対応する労働者をサポートするために労働組合が取り組むべきこと、可能性等を中心に、前向きな議論が行われた。
「労働組合の対応」のセッションでは、UNI Apro金融部会を代表して登壇したジュリア・サングリアノUNI Apro金融部会副議長(FSU、オーストラリア)がコロナ禍での運動の成果を紹介し、危機をチャンスと捉え、積極的に運動を進めることが重要だと訴えた。例えば、初期の感染拡大時に最前線で働く組合員の労働安全衛生の確保に尽力した結果、組合員の新規加入が急増した。また、100以上の支店の一時閉鎖や従業員の異動を突然通告してきたコモンウェルス銀行に対し、即座に労働形態や賃金について説明を求め、特別手当を要求し、500人以上の賃上げに成功した。更に、コロナ禍でコールセンター業務が急増する中、その重要性が見直され、これまでオフショアリング(海外委託)に頼っていたコールセンター業務を国内に戻そうというキャンペーンを展開し、ウェストパック・グループでは1000人の雇用が復活した。
最後に、日本をはじめ、加盟組織からの情報提供に基づき作成されたUNI世界金融部会ポストCOVID19戦略と活動計画(案)が提案された。境田UNI Apro金融部会議長は、活動戦略および計画案への全面的な支持を表明し、「今後の活動を進める上で2つ重要なポイントがある。1つは、リモートワークにより働き方が大きく変わる点。2つ目は、ビジネスモデルが対面からリモートへと変わる点。1点目については、UNI金融部会によるガイドラインの策定に大きく期待している。雇用、労働条件、費用面等について、メリット・デメリットを整理し、労働者がメリットをしっかり享受できるようにすべきだ。Aproとしてもできる限り貢献したい。2点目については、フィンテックによるリモートでのサービス提供により、どのようにビジネスモデルが変わるのかに関して、調査研究のタイムリーな共有をして頂けるとありがたい。」と述べた。
こうした意見を踏まえ、委員会は提案を承認し、今後各地域において具体的な地域の状況やニーズに合わせた議論が行われ、本部へフィードバックされることが確認された。また、アンジェロ・デクリストUNI金融部会担当局長からは、9月28日にUNI金融部会主催ウェビナーを大々的に開催すること、更にその講演者として2001年にノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者で米国・コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ氏を迎えることが発表された。詳細については後日案内される予定で、加盟組織に留まらない積極的な参加が呼びかけられた。