2019年1月22~25日、世界経済フォーラム(WEF、通称ダボス会議)がスイス・ダボスで開催され、クリスティ・ホフマンUNI書記長は、他の組合リーダーと共に、「組合はWEFに強力に関わり続けていく」というメッセージを発信し続けた。
今年のダボス会議のテーマは、「グローバリゼーション4.0」。UNIからの重要なメッセージは、「グローバリゼーション4.0は、社会契約に沿ったものであるべきだ」。労働者と民主主義のための「社会契約4.0」である。ダボス会議に合わせたかのように、ILO仕事の未来世界委員会報告が発表された。その中でも、新たな労働の未来の問題に対処するために、社会契約の再活性化が必要だ、としている。
組合にとって、社会契約の重要な要素は、全ての人のための生活賃金及び社会的保護、仕事の形態に関わらずあらゆる労働者の労働基本権を普遍的に保障すること、生涯学習の権利、団体交渉の強化、企業の説明責任等である。
WEFは年次リスク報告の中で、多国間国際機関が、欧米に蔓延する国粋主義的政権やポピュリスト政権により、危機にさらされるリスクを強調した。この懸念は多くのセッションで繰り返された。CNNのリチャード・クェスト氏から受けたインタビューに、ホフマン書記長は「労働者への富の配分が減り続ける限り、全ての民主的な組織は脅威にさらされる」と答えた。ガーディアン(英紙)のラリー・エリオット氏には、「労働者は、グローバル化はエリートのためのもの、ダボス会議もエリートのためのものだと思っている。経済のグローバル化を望むなら、企業のためだけのものであってはならない」と語った。
この何年か、ダボスの主要な話題は、格差の拡大であった。今年もなんら変わりなかった。ガーディアンには、「聞こえの良い言葉ばかり並んでいるが、行動の兆しはほとんどない。犠牲の感覚が全くない。富をひとつのポケットから別のところへ移さなければならない」と語った。
ホフマン書記長は、「富豪に課税するという新たな政策と合わせて、強力な団体交渉ができなければ、格差を無くすことはできない」と強調した。
デア・シュピーゲル(独誌)とのインタビューには、「デジタル化によって、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスのような人々の富が莫大になった一方で、2017年、西欧の実質賃金は伸びていない」と語った。
ダボスで様々なマスコミからインタビューを受けたホフマン書記長は、新しい労働の世界へと公正な移行を実現するためには、交渉の役割が重要だと繰り返した。「私たちは、新たな技術の利活用について、デジタル技術によって加速された非現実的なスケジュールについて、過度な監視について、その他多くの問題について交渉することができる。労働者に発言権がなければ、これらの技術の活用に抵抗する。私たちは、新たな技術を恐れているわけではないが、安全で公平な環境で使われなければならない。交渉こそ様々な手段の中心だ。」
スキルの向上は、ダボスのもう1つの大きなテーマであった。あらゆる産業において、社長達は、デジタル技術を利用した既存の労働者のスキル向上へのコミットメントを表明した。今後も仕事はなくならず、むしろ新しく創出される仕事の数の方が多いだろうという楽観的な感覚が広がっていた。同時に、この移行期に失職する労働者もいるだろうとの認識もあった。ガイ・ライダーILO事務局長も参加していたパネルディスカッションで、ホフマンUNI書記長は、「このような労働者が新しい仕事に公正な移行を遂げるために、政府は、理想的には新たな三者システムを通して、スキル向上を強化する必要がある」と訴えた。
シャラン・バロウITCU書記長は、組合リーダー達のダボスでの経験を総括し、「ビジネス界は、2つの陣営に分かれている」とツィートした。すなわち、組合と協力し、新たな社会契約を通して、地球を救い、格差をなくすためにルールを変えていこうとする企業がある一方、人々のことではなく利益のみ考える企業もある。ホフマン書記長は、最近UNIとグローバル枠組み協定を締結したウニクレディト(伊銀行)のように自社の労働者に責任を示す企業と協力し、アマゾンのような無責任な企業に責任を問い続けていくUNIの意志を繰り返した。