11月 2018のお知らせ

変化を起こす原動力になれ!第5回UNI Apro青年大会

2018年11月23~24日、マレーシア・サラワクにおいて、第5回UNI Apro青年大会が開催され、アジア太平洋地域15ヵ国から、計150人(UNI-LCJより32人、女性16人、女性比率50%)が参加した。

開会式では、ノリカ・ワルナスリヤUNI Apro青年委員会議長が挨拶し、「第4次産業革命の目まぐるしい変化において、私たち青年はまさに原動力そのものだ。私たち青年こそが、青年に対する投資が果たして十分なのかを問い、若手世代を率いていかなくてはならない。そのためには、若者の組合への参画を強化するとともに、意義ある貢献をするための交流が必要である。技術革新により、私たちは膨大な情報を入手でき、物理的に参加できない仲間ともテクノロジーでつながりあえる。これらのテクノロジーも活用しながら、お互いに学び合い、青年の発言力を高めていこう」と力強く訴えた。

開催国のマレーシア加盟協(UNI-MLC)を代表して、モハメド・シャフィー・BPママル議長が連帯の挨拶に立ち、「第4次産業革命の時代に、青年は重要な役割を担っている。アウトソーシングの拡大、国境を越えた移民問題、児童労働、貧困等、青年に関わる重要課題が深刻さを増している中、青年こそが最大限関与し、社会的な変化に対処していかなければならない」と述べた。

クリストファー・ウンUNI Apro地域書記長は、「UNI Apro、変化のチャレンジに対応するため、労働組合を一新する」と題する基調講演を行い、「第4次産業革命の中で、雇用の非正規化はさらに進むだろう。多くの人が労働法の保護を受けられなくなり、格差が拡大し、組織化率も低下している。この変化に対し、抵抗するだけでは労働運動は前進しない。これらの状況を先読みし、最善の努力によって変化がもたらす影響にきちんと準備をしていかなくてはならない。今日のスピーチは、私が青年大会で話す最後の機会となる。青年の皆さんには、自らが困難な課題に対処していくのだというコミットメントが重要だ、ということを伝えたい」と述べた。

大会では、「2018~2022年度UNI Apro青年委員会アクションプラン」を決定するとともに、「組織化と青年の能力開発」や「第4次産業革命時代の変化の担い手としての青年」、「UNI Aproの中核的活動へ青年労働者を完全に統合させていくための包括的支援」等に焦点を当てたセッションが開催され、活発な議論を経て、各種動議が確認された。

UNI-LCJから3人がパネリストとして報告を行った。UAゼンセン・中川代議員は、若手組合員の組合活動への参画向上に向け、青年活動の広報誌への積極的な掲載や新入社員交流会を通じ、組合の認知度向上を図る等の取組み事例について、JP労組・飯澤青年委員は、全国にまたがるJP労組のユースネットワークの組織体制や青年による社会貢献活動について、情報労連・齋藤青年委員は、日本のクラウド・ワーカーやITエンジニアを取り巻く課題を共有し、彼らとの接点拡大に向けた情報労連の取組みについて報告した。

大会の最後に、UNI Apro青年委員会の役員選挙が行われた。東アジア、東南アジア、南アジア、オセアニアの4地区からそれぞれ指名された候補者が選出された。東アジアは日本の4人の委員(情報労連・齋藤委員、UAゼンセン・寺嶋委員、日放労・釘本委員、JP労組・飯澤委員)が再選され、東アジアを代表する副議長に釘本日放労副委員長が再選された。レイズ新議長(フィリピン加盟協・金融労組)のもと、新体制を確立した。

本大会で築き上げたネットワークを礎に、大会参加者が連帯して運動を前進させ、4年後の青年大会でその成果を持ち寄ることを誓い合い、2日間に渡る大会を終了した。


インドにおける労使パートナーシップの普及

2015年から開始した4年間の支援プロジェクトの最終年となるUNIインド加盟協との共同セミナーが、2018年11月18~19日、インドの首都・デリーで開催され、松浦UNI-LCJ議長を団長に9人の講師が参加した。インド側からは、ナドカルニUNIインド加盟協(UNI-ILC)議長、サンジーブ・ステートバンクオブインディア(SBI)労組書記長をはじめ、銀行労組、郵便労組、セキュリティ印刷労組、新聞労組、メディア労組、IT労連等から28人(うち女性5人)が参加した。

セミナー1日目(18日)は、日本人講師から日本の労働運動、格差是正の取組み、労使関係、組織化等について講義を行い、産業別グループに分かれてグループ討議を行った。

日本人講師からの講義

  • 松浦団長(UAゼンセン):「日本の労働運動の概要と今日的課題」
  • 松本講師(損保労連):「“⾮正規雇⽤社員の処遇向上(正社員との格差是正)”に向けた取組み」
  • 栗田講師(JP労組):「日本のパートナーシップ労使関係」
  • 浦講師(情報労連):「青年・女性の組織化」
  • 鈴木講師(自動車総連):「非正規労働者の組織化」
  • 甲斐講師(全信連):「日本の銀行部門におけるフィンテックと雇用への影響、仮想通貨の現状と課題」

グループ討論テーマ

  • 「労働組合の今日的課題」
  • 「家庭、学校、職場、社会における格差、不平等-格差是正、不平等をなくすため、労働組合はどのような役割を発揮できるか?」

社会パートナー対話セッション:「グローバル経済におけるインドの課題と労使による戦略的対応」

セミナー2日目(19日)午前中は、初の試みとして、インドでも模範的なパートナーシップ労使関係を築いているステートバンクオブインディア(SBI)から、アロック・クマール・チョードリーSBIデリー地区統括本部長、インド社会保障協会からプラビン・シンハ事務局長(元FESインド支部長)を招き、「グローバル経済におけるインドの課題と労使による戦略的対応」と題する“社会パートナー対話セッション”を行った。労働側代表として松浦UNI-LCJ議長、ナドカルニUNI-ILC議長、サンジーブSBI労組書記長がそれぞれの立場から意見を述べた。

SBIは、インド国内に約2万の店舗を持ち、銀行部門の利益の25%を占めるインド最大手の国営銀行である。パートナーシップ労使関係の長い歴史を持っており、今回は労使の協力を得て、特別に対話セッションが実現した。

アロック氏は、自由化が進展し益々厳しいグローバル競争に晒される困難な時代を生き延びるためには、労使双方が対立ではなく、市場競争力を高めるため、戦略的・建設的に協力し、イノベーションに対応し労働者への影響を配慮しつつ効率化を図っていくことが鍵となると力説した。

これを受けサンジーブSBI労組書記長は、労働者にとっても困難な時代を迎えており、雇用を守るためには毅然とした態度で臨むが、企業の発展に貢献するため、SBIの良き伝統である対話を軸とした労使関係を維持・強化していくと述べた。

シンハ氏は、現在のインドが直面する課題として、自由化・デジタル化の進展、社会保障の削減、インフォーマル経済及び格差の拡大、労働者の非正規化等を挙げ、企業が健全に存続するためには、労働者の能力開発と生産性向上を支える建設的な労使関係の構築・維持が欠かせないと述べた。

ナドカルニUNI-ILC議長は、UNIの下、サービス産業の労組が、政治・イデオロギー等、様々な違いを乗り越え結集する必要性を繰り返し強調した。国内外のUNI加盟組合とタイムリーな情報・経験交流を行い、UNI Aproや日本が推進するパートナーシップ労使関係構築を推進していきたいと述べた。

松浦UNI-LCJ議長は、日本の高度経済成長の鍵となった生産性三原則の労使合意、UAゼンセンの組織化の進め方、産業別労働組合の役割等について、実践的に分かりやすく紹介した。「枯れた井戸から水は汲めない」との諺を引用し、労働組合として最も優先すべきは「雇用を守ること=企業を存続させること」であり、労働組合も業績向上に向けて真摯に取組むことにより、ひいては企業の発展と労働条件の維持向上につながるとの考えを繰り返し示した。

インド側からは、「欧米の多国籍企業がハイデラバードに多く進出しているが、プロジェクトが終わると労働者を解雇することが多い。過労死も発生している。これに対してUNIや労組はどのように対応しているのか?日本にはこうした労働者を保護する制度はあるか?」、「移民労働者の問題に労組としてどう対応すべきか」という質問が出された。日本からは「経済成長のために、どのような産業の外資系企業を誘致したいか?」と質問する等、活発な質疑応答と意見交換が行われた。

アチャリャUNI Apro書記次長は、UNI Aproが推進する労使パートナーシップ協力の1つの手段として、多国籍企業とのグローバル枠組協定の締結と日本の実践事例を紹介した。

閉会式で、松浦UNI-LCJ議長は、「それぞれ状況は異なるが、雇用を守り、労働条件を良くすることは日印労組共通の課題だ。共にがんばっていこう」とまとめた。

ミリンドUNI-ILC議長は、UNI-LCJ講師陣の貢献に感謝し、インド人参加者に「日本から学んだことを各職場に持ち帰り、他の仲間に共有し組合活動に活かして欲しい」と激励した。また日本側には、「インドに進出する日本企業には是非グローバル枠組協定を締結して、日本の労使関係をインドに普及させてほしい」と期待して、閉会した。

この他、19日午後から20日にかけて、UNI-LCJ代表団は、銀行、郵便局、テレビ・ラジオ局等の職場視察と経営側との懇談、新聞労組役員との意見交換等を行い、インドの様々なサービス産業における労働環境、労使関係等についての理解を深めた。

 


第22回UNI世界執行委員会

第5回UNI世界大会で選出された、コルティナ会長、ホフマン書記長、ベシガー副書記長ら新体制で初の世界執行委員会が、2018年11月14~15日、スイス・ニヨンのUNI本部において開催された。日本からは、増田UNI副会長、野田UNI Apro会長、松浦UNI世界執行委員、金子UNI世界執行委員、宮井UNI世界執行委員、中村UNI世界執行委員(メディア部会選出)、オブザーバーが出席した。

主な議題は、第5回UNI世界大会・女性大会の振り返り、第6回UNI世界大会・女性大会(2022年)の開催地変更、2018~2022年度行動計画の実施状況と主な成果、デジタル化の影響に関する取組み経過報告、等であった。

UNI Apro地域の報告として野田UNI Apro会長は、シンガポールにあるUNI Apro地域事務所の法人化について経過を報告すると共に、2019年11月にカトマンズで開催予定の第5回UNI Apro地域大会は、リーダーシップ交代の歴史的大会になると述べた。世代交代の重要な時期であり、本部からの支援に感謝した。続いて、アチャリャ書記次長は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)にSAARC(南アジア地域協力連合)を加えた“SARCEP”(RCEP+SAARC。更に広域かつ前例のない成長のポテンシャルを秘め、グローバル経済にも大きく影響を及ぼし得る経済圏ができるだろうというUNI Aproの推測)への進化を視野に入れ、UNI Aproにとって、南アジアのまだ組合の無いアフガニスタン、モルディブ、ブータン等での組織化及び、SAARCとの対話に積極的に関与できるよう南アジアの労組の能力強化が重点課題だと述べた。ASEANにおける年次三者対話会議は9回目を数え、ASETUC(ASEANサービス労組協議会)はASEAN政府間人権委員会における労働組合を代表する唯一のパートナーとして認められている。このように、ASEANにおいてASETUCが長年とってきたソフトアプローチは成功しており、SAARCに対してもこのアプローチを採用していく。

世界執行委員会は、テレパフォーマンスへの「労働者の権利に国境無し」キャンペーン、カナダ郵便への抗議キャンペーン、コロンビアで医療介護労働者を弾圧している会社と政府への抗議キャンペーンに対する連帯支援を表明した。

 


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