10月 2018のお知らせ

UNIとUPU(万国郵便連合)、新しいグローバル協定に署名

クリスティー・ホフマンUNI書記長とビシャー・A・フセインUPU事務局長が2018年10月25日、スイス・ベルンのUPU本部で開催中の管理理事会の場でグローバル協定に署名した。

新しい協定では、郵便部門における持続可能な開発とイノベーションを強化するための、UNIとUPUの協力のアジェンダが盛り込まれている。また、世界の郵便労働者と国際郵便コミュニティーを強い絆で結び、将来的に強化していくことを約束している。

クリスティー・ホフマンUNI書記長は「郵便部門は、現在進行中のデジタル革命により数多くの課題に直面している。しかし本質的な問題の核心は変わらず、それはディーセント・ワークの権利である。UNIは、新しい労働の未来において、革新するための計画、特に郵便ではポテンシャルの高い雇用分野の拡大を歓迎する」と挨拶した。

「郵便部門は世界で最大の従業員である。そして社会における活発な構成員でもある。今回の協力では、各国の郵便オペレーターが職員にどのように仕事をさせるのかではなく、我々がコミュニティーに対してどのようなサービスを提供するかに焦点を当てている」とビシャー・A・フセインUPU事務局長は述べた。

新しい協定は郵便産業の労働者の価値を認め、UNIとUPUが郵便労働者のディーセントな労働条件を促進することに深くコミットすると強調している。

デーブ・ウォードUNI郵便・ロジスティクス世界議長は次のように述べた。「世界には60万もの郵便局があり、地球上の最果ての地域もカバーし、他に比類のない、人的なネットワークを形成している。このネットワークは郵便配達員や郵便内務職員の頑張り、そして、連携とイノベーションの精神によって形成されている。新しい協定は、職員そして私たちのコミュニティーのために郵便産業のスタンダードをおし上げることを約束し、業務を高く評価している」

「UPUは協力と連携を進めるために設立された。そしてUNIは、本協定の原則を実現するためにUPUとの協力に期待している」とコーネリア・ブロースUNI郵便・ロジスティクス部会担当局長は述べた。

UPUは国連の専門機関のひとつ。世界の郵便事業者間の協力を醸成し、真にグローバルな郵便のユニバーサルネットワークを確保している。

UNIはUPUとその加盟国に関する幅広いステークホルダー団体、UPU諮問委員会の活発な構成員で、毎年ベルンで開催される会議に出席し、規則、総務、法制、法律問題に関する活動や研究を監督している。


UNI世界ICTS部会委員会

2018年10月22日、南アフリカ・ヨハネスブルグでUNI世界ICTS部会委員会が開催され、アジア太平洋地域を代表して情報労連・野田委員長と木村国際担当部長が参加した。開会にあたりアンディ・カー議長は、新たにICTS部会担当局長に就任したテレサ・カセルターノを紹介し、全米通信労組での組織化活動の経験をUNIでも存分に生かしてほしいと歓迎した。さらに、これまでICTS部会でシニアリサーチャーを務めていたアレックス・ホグバックが専門職・監督職(P&M)委員会担当局長に就任したことを報告し、ICTS部会とP&M委員会の連携強化への期待を述べた。続いて、UNIアフリカ地域を代表して、キース・ジェイコブス地域書記長が参加者を歓迎し、「2014年12月に南アフリカでUNI世界大会が開催されて以来、アフリカ地域においても社会・経済状況が大きく変化した。欧米系に加えて中国企業もどんどんアフリカ大陸に進出してきている。このような中で多国籍企業に対応するためには、組合の交渉力を向上させて組織力を高めなければならない」と述べた。

委員会では、次の5点の活動計画について具体的取組みを議論・確認した。

1. 多国籍企業対策

ドイツテレコム、オレンジ、テレフォニカ、テレノール、アメリカモビル、MTN、アクシアタ、エリクソン、リバティグローバルの各労組アライアンスを強化する。アクシアタについては12月3日にアクシアタ労組アライアンス会議を実施し、各国のアクシアタ労組における経験の共有と全体的な戦略を検討する。また、欧州労使協議会がある場合には連携をはかる。

2. コンタクトセンター

コンタクトセンターの国際的な労働基準の引上げを意識して組織化に取組むこととし、コンタクトセンター組織化フォーラムを開催する。特に76カ国で28万人以上が雇用されている世界最大のコンタクトセンター「テレパフォーマンス」において労働者の基本的権利が守られていないことを鑑み、「テレパフォーマンス労働者の権利向上に関する声明」を採択した。

3. IT企業の組織化

各地域で設置されたIT組織化ネットワークを活用し、IT労働者の組織化に取組む。また、シリコンバレーのIT労働者へのアプローチを開始する。

4. ICTS労働者の政治的・経済的影響力の構築

AIの倫理原則を検討するとともに、新たな労働の未来におけるスキルに焦点をあててICTS労働者の政治的・経済的影響力を構築する。

5. ICTS部会の戦略課題

アウトソーシング企業の組織化、新しいスキルと仕事、プラットフォーム労働者、将来の仕事等についてICTS部会としての戦略を検討する。

この他、2019年8月末に開催予定のUNI世界ICTS部会大会のプログラムについて意見交換を行い、AIや技術変革がICTS労働者に与える影響等を議題に含めることを確認した。

 


UNI Apro印刷・パッケージング部会委員会

UNI Apro印刷・パッケージング部会委員会及びプロジェクト評価会議が、2018年10月9~10日にマレーシア・クアラルンプールで開催された。キャシン議長(オーストラリア)はじめ、日本、マレーシア、タイ、ネパール、インドの委員・オブザーバー等、10人が出席した。日本からは、梅原副議長(全印刷委員長)、田倉委員(印刷労連委員長)が出席した。

9日には、UNI本部SCORE(連帯・キャンペーン・組織化・調査・教育局)/組織化基金及びスウェーデンの労組からの連帯支援を受け、UNI Apro各国において実施されている様々なプロジェクトの評価が行われ、今後の計画が話し合われた。

  • インド:全般的に多国籍企業の組織化は難航している。下請け労働者が多いことと、使用者が正規労働者との接触を巧妙に妨害しているためである。セキュリティ印刷労組のネットワーク形成のためのセミナー開催を2019年に計画。インド全土に9つある紙幣・硬貨製造工場(計9000人)のうち、ナシクにある最大の労組(5500人)がUNIに加盟。残り8つの加盟を働きかけているところであるが、労連を結成し労連としての加盟可能性を検討する。
  • タイ:アムコール、キンバリークラーク(KC)等は組織化され協約締結に至っている。
  • インドネシア:アムコールは組織化され本年7月、協約締結に至った。年末までに組織率80%を目指し、オルグ、組織化訓練、団交訓練、トレーナー育成等を継続。2019年は、2~3月にKCのマッピングから始め、4~6月に組合の基礎研修を実施、7~12月にオルグ、組織化訓練を展開する予定。
  • マレーシア:新聞産業はリストラが続き、組合員が減少している。プロジェクトの見直しが必要。

10日の委員会では冒頭、担当が本年7月より、アチャリャUNI Apro書記次長から小川に変更になったこと、またシンガポール政府が急遽ASEAN三者対話会議の開催を同じ日に決めたことから、ウンUNI Apro地域書記長、アチャリャ書記次長の出席が叶わなかったことが報告された。

2017年9月、福島におけるUNI Apro印刷・パッケージング部会大会以降の主な活動と成果について、小川部長から次の通り報告された。

  • マレーシアのアムコール・タバコで組合が結成されたが、その後、会社が工場閉鎖、海外移転を発表した。
  • インド国内及び日印のセキュリティ印刷労組の連携が強化された。
  • 日本の大日本印刷労組が加盟した。
  • インドネシアのアムコール・フレキシブルで協約を締結した。
  • UNI・インダストリオール共催ウェストロック労組ネットワーク会議(2018年8月、米国・デスティン):UNI Aproからアチャリャ書記次長が出席、アジア太平洋地域の同社の製造拠点等について現状を報告。
  • UNI・インダストリオール共催アムコール労組ネットワーク会議(2018年9月、ポーランド・ワルシャワ)UNI Aproからキャシン議長、スリン・タイ・アムコール労組委員長、小川部長が出席。同社の事業動向や各国における労働者の扱い等について共有。

印刷・パッケージング部会のデジタル化に向けた対応については、キャシン議長の導入報告に続き、梅原副議長が、世界のキャッシュレス動向、日本のキャッシュレスの現状、キャッシュレス化が国立印刷局に与える影響について、報告した。何れ到来するキャッシュレス社会は、印刷局にとって大きな打撃を与えることが確実視されるが、新たな時代に向けて労使が協力して前向きに取組むことが肝要だと述べた。

各国報告では、田倉委員が、日本の印刷産業の現状と今後の労働環境について報告し、印刷産業の高機能化や高度化、デジタル化の進化に伴う労働環境の変化に対応するには、健全な労使関係、人材育成、多様な働き方の構築、中小企業対策が不可欠であると述べ、具体的な取組みを報告した。合わせて、日本および印刷・製版業における最低賃金と印刷労連の取組みを紹介した。

  • ジャグディシュ委員(インド、セキュリティ印刷労組):国内の9つのセキュリティ印刷労組のネットワーク形成(将来の労連結成に向け)を進めている。セミナー開催支援と共に、梅原副議長のキャッシュレス化の報告を英訳してほしいと切望。
  • バラゴパラン副議長(インド、新聞労組):インドにおける新聞購読者数は2014年以降、1億1200万人増えた。地方で1億4300万人(2014年)から2億1400万人(2017年)、都市部で1億5200万人(2014年)から1億9300万人(2017年)に増加する等、地方の伸びが大きく、識字率の向上と関連している。しかし今後5年間のデジタル化動向は注視が必要。
  • マヘンドラ委員(ネパール、ICTメディア・プレス専門職労組):1980年に印刷労組として結成されたが、2018年に情報通信及びメディア産業の専門職労組と統合し、印刷・パッケージング部門だけでなくICT及びメディア部門も代表している。主な活動は、役員研修、女性・青年会議、スキル開発プログラム等。6ヶ月間で500人の新規組合員を獲得した。
  • アムニュイ委員(タイ、KC労組):タイにおける乳製品パッケージング市場の競争は激しく、テトララバル(未組織)、SIGコンビブロック(1工場で組合有り)、エロパック(未組織)、アムコール(4工場のうち3工場で組合有り)等が進出。キンバリークラーク(KC)は1966年にタイに工場を建設、衛生用品・日用品等を生産。現在2工場に組合が有り、これまで労使関係は良く協約も締結している。しかし、今年1月、米国本社が今後3年間で世界の10工場を閉鎖し、5000~5500人を削減する計画を発表したため、各国のKC労組は懸念している。

今後の活動予定は以下の通り。

  • 2019年5月、インド(ムンバイまたはデリー)で、セキュリティ印刷、新聞、パッケージング多国籍企業の組合/労働者を対象として、2日間のセミナー開催を企画する。
  • UNI世界印刷・パッケージング部会大会(2019年10月21~22日、スペイン・トレド)
  • UNI Apro印刷・パッケージング部会委員会(2019年11月、ネパール・カトマンズ)

 


日本と韓国のUNI加盟金融労組、情報交換

第7回UNI Apro東アジア労組フォーラムの機会を活用し、UNI-LCJ金融部会加盟組織は、韓国金融産業労組(KFIU)と情報交換を行い、懇親を深めた。

日本からは7組織18人、韓国からは、コンKFIU政策部長、ソン・韓国シティバンク労組委員長、キム農協銀行労組部長、パク農協銀行労組局長、チョイUNI韓国加盟協(UNI-KLC)事務局長が参加した。

宮井UNI-LCJ金融部会議長は、歓迎挨拶の中で、「ビッグデータ、AI、IoTといった職場に迫っている大きな変革を的確に捉え、労働者の雇用や働き方に配慮しつつ、持続可能な金融産業を目指していかなければならない。グローバルとローカルの2つの視点を兼ね備えた対応が必要だ」と強調し、両国の経験共有に期待を寄せた。

全参加者の組織・自己紹介に続き、日本から、日本の労働運動(全労金)、現状と課題(労済労連)、FinTechと雇用、特に銀行の現状及び仮想通貨に関する日本の経験(全信連)について報告した。

韓国からは、KFIUの歴史と活動概要の紹介があった。

  • 1960年に5つの商業銀行労組がネットワークを結成し、翌年、産別組織へ変更。
  • 1962年に、世界の金融労組との連帯を強化するため国際産別組織に加盟。
  • 1981年、当時の軍事政権下の労働法の規定により、企業別労組に変更せざるを得なかった。
  • 1997年、アジア通貨危機に見舞われ、5つの銀行が整理され6万人がリストラされた。
  • 2000年、企業別労組の限界を認識し、産別組織へ変更。

現在は商業銀行労組6、政府系銀行労組7、地方銀行労組6、協同組合系金融機関等14、計33の加盟組織、93,000人の組合員を持つ。韓国では3番目に大きい組合である。保険労組は80年代の民主化闘争時代に脱退し、別の産別に加盟している。

主な取組みの成果として、2002年に韓国で初めて週休2日を勝ち取った。

昨今の急激なデジタル化により、非対面チャンネルの販売(インターネットバンキング、モバイル決済・送金、オンライン資産管理等)が増え、店舗閉鎖、人員削減がある中、雇用の安定化に取組んでいる。

最新の団体交渉では、賃金2.6%引上げ、9か月以上勤務した非正規社員の正社員化、妊娠した女性社員の1日2時間の時短等を勝ち取った。

またSDGs達成に向け、金融産業労使で社会的責任を果たす活動として、若年層の失業対策及び雇用創出のための公益基金の創設に労使で合意した。主な業務は、不利な条件の人々向けのジョブフェア開催、北朝鮮と韓国の間の経済協力支援、最も弱い階層への住宅費支援(シングルマザー、1人親世帯)、多文化家族や外国人労働者への支援、高齢者1人世帯の支援、難病患者の支援、奨学金制度等である。

韓国側からは、日本の金融産業の組合のUNI加盟状況や、マイナス金利下での銀行の収益源、少子高齢化・人口減少傾向を見据えた銀行のビジネス戦略と金融産業の規制との関係等、多岐に渡る質問が出され、全信連から回答した。

最後に、大谷全国農団労書記長は、韓国の金融産業の現状と課題について非常に参考になったと述べ、懇親会でも引き続き意見交換できることを期待して閉会した。

 


第7回UNI Apro東アジア労組フォーラム

第7回UNI Apro東アジア労組フォーラムが、2018年10月2~3日、「実現しよう!東アジアにおけるパートナーシップ労使関係の普及を目指して」というメインテーマの下、東京の全電通ホールで開催された。日本、韓国、台湾、香港より148人(うち女性49人、女性参加率33%)が出席し、「企業の社会的責任(CSR)」、「職場におけるハラスメント」、「新しい多様な働き方」への対応について、各国・労組が報告を行った。日本からは、14加盟組合より総勢99人(うち女性33人、女性参加率33%)が参加した。

クリストファー・ウンUNI Apro地域書記長は、基調講演を行い、UNI Aproは日本に倣って、建設的な労使関係(UNI Aproではパートナーシップ労使関係と呼ぶ)の構築に取組んできたと述べた。とりわけASEANにおいて、労働者や労働組合に、権利を主張するだけでなく労働組合としての責任を果たすよう強く訴え、使用者及び政府にはASETUC(ASEANサービス労組協議会)が信頼できるパートナーであることを具体的な成果をもって示し、毎年ASEAN各国の労働大臣が主催する三者構成対話会議に労働側代表として参加してきた。第4次産業革命で労働市場に劇的な変化が起こりつつある中、政労使の建設的な対話を通じてのみ、労働者や弱者が取り残されない、包摂的な社会をつくることができると強調した。

UNI本部から、クリスティ・ホフマンUNI書記長が初めて本フォーラムに参加し、グローバル枠組み協定(GFA)の概要を説明した。本年6月のリバプール世界大会で書記長に選出されて以来、来日直前にフランスのBNPパリバ銀行、同じくフランスのカジノ大手パルトゥーシュとそれぞれGFAを締結し、翌週には既に締結されているカルフールとの協定を更新する。グローバル協定に詠われる内容は、ILOの中核的労働基準の遵守、人権、平等、多様性の尊重、環境への配慮等、社会的課題への取組みをUNIや加盟組合と共同で宣言するものである。続いて日本企業としてUNIとGFAを締結した髙島屋とイオンの労働組合から、その経緯や締結後の実施状況について具体的な報告を受けた。髙島屋労働組合の橋本国際局長から、組合の社会的責任を果たす活動の1つとして、日本初のグローバル協定を締結するまでの経緯を聞いた。締結が目的ではなく、スリーピング協定にしてはならないとの決意で、労使それぞれの立場から内外に向けて理解浸透を図る活動を継続している。また、イオングループ労連の村上国際局長からは、海外拠点における現地労働者への連帯支援の取組みを通じて、各国労働者の条件改善と企業の発展に寄与している事例の報告を受けた。

また、凸版印刷株式会社・人事労政本部の吉田労政部長から、労使が協力して推進している「働きがい」を高める取組みについて聞いた。これを受け、凸版印刷労組の佐藤委員長は、「労使が対立していた過去の経験を教訓にして、現在の良好な労使関係がある。労使が目指す方向は同じであり、互いの立場を尊重し、コミュニケーションをとりながら進めていくことが何より重要だ」と述べた。

「企業の社会的責任」のテーマでは、この他、自動車総連、韓国KFIU、韓国KHMU、台湾PTSFEU、香港RCCIGU、マカオ・ゲーム労組、ネパールから事例報告を受けた。

「職場におけるハラスメント」のテーマについては、井上久美枝連合総合男女・雇用平等局長から、導入報告を受けた。井上局長は、「男女ともに暴力やハラスメントの対象になり得るが、地位や力関係が平等でない場合、とりわけ女性や性別規範に合致しない立場の弱い人々が対象となりやすい」と述べた。職場におけるあらゆる種類の暴力とハラスメントを根絶するため、ILO総会で条約・勧告の制定が議論されており、そのプロセスや各国政労使の異なる論点、日本政府の態度や連合の取組み等について詳しく聞いた。続いて各国代表によるパネルディスカッションが行われた。UAゼンセンと香港ディズニーランド労組は顧客からのハラスメント、韓国HKMUと台湾CPWUはセクハラに関して、それぞれ現状、組合の対応と今後の取組み等を報告した。これまで被害者が泣き寝入りするしかなかったハラスメントを組合が取り上げ、使用者や政府と協力して世論を喚起し、必要であれば法制度を変える等、社会を巻き込むアクションの必要性が強調された。

「新しい多様な働き方」のテーマについては、情報労連から「働き方改革」をめぐる日本の状況として、本年6月に成立した働き方改革関連法案の内容について報告し、実現に向けては、労使が共に法を理解し運用するための集団的労使関係が不可欠だと述べた。続いて、損保労連、JP労組、韓国KPWU、台湾CTWU、香港BMSWGUからそれぞれ事例報告を受けた。

参加各国は情報交換を通じて、労使関係は対立から協調へ、労使のパートナーシップが不可欠であるとの認識を再確認した。最後に共同声明を採択し、本フォーラムを継続して情報交換を進めると共に、各国において労働者の利益・権利の向上と社会的影響力の強化に引き続き取組んでいくこととした。

 

 


第16回UNI Apro東アジア郵便労組フォーラム

第16回UNI Apro東アジア郵便労組フォーラムは、2018年10月1日、東京で開催された。本フォーラムは東アジア地域にける郵便労組の友好・信頼関係の醸成と、郵政事業を取り巻く情勢の共有のため、2002年から日本・韓国・台湾の持ち回りで開催している。3カ国の郵便労組から約65人が出席、JP労組からは増田JP労組委員長はじめ全国から約40人が出席した。海外からは韓国郵政労組、中華郵政工会、UNI本部及びUNI Aproが出席した。午後にはパネル討論を開き、「Eコマースと労組の対応」というテーマで、各労組のプレゼンテーションと質疑応答及び討論を行った。

増田委員長は、開会挨拶で「日本郵便では郵便物が減少し、ゆうパックを主とする荷物、つまり物流へとシフトが進んでいる。郵便業で働く私たちは日本有数の長時間労働の職場にいる。郵政事業が将来、現場の社員に過重労働かつ低い賃金を強いるようなビジネスモデルになってしまっては、事業発展にはおのずと限界がある」と危機感を示した。そして「『水道、電気、ガス』に続いて『郵便』が私たちの生活の中で欠かすことのできないインフラの一部となり、Eコマースや物流の増加をてこに今後も郵便局が重要な『社会インフラ』としての役割を果たしていくにはどうすればよいのか。本日のテーマであるEコマースが事業の発展と将来の私たちの働き方の両方にこれまで経験のない変化をもたらすことは明らかである。東アジアの郵政労組としてどのように対応していくのかを考えていきたい」と述べた。

フォーラムには日本郵便株式会社から米澤友宏・日本郵便代表取締役副社長兼執行役員上級副社長が「日本郵便における新技術の取り組み」と題した基調講演を行った。

クリスティー・ホフマンUNI書記長は連帯の挨拶の中で、「世界120カ国に郵便労組がUNIに結集している。郵便産業は新しい技術の影響が大きい部会である。私たちは団結しグローバルな行動を取り、より良い労働条件のためにみなさんと草の根のレベルから組合を強くし、ともに闘っていきたい」と述べ、参加者を激励した。

クリストファー・ウンUNI Apro地域書記長は自身の長年の経験から、労使関係に「付加価値」としてパートナーシップ労使関係を加え、企業の成長・発展と労組の組織化を両立させた経験に触れた。そして、APPU(アジア太平洋郵便連合)とUNI Apro郵便・ロジスティクス部会との覚書に基づく社会対話をさらに促進するために、パートナーシップのための対話を行うことを訴えた。

午後のパネルディスカッションでは、各国労組からEコマースに関わる報告を受けた。韓国KPWUのイ・ヘンム広報部長は、韓国郵政のEポスト(オンラインショッピングシステム)により様々なサービスを提供している状況を報告した。台湾CPWUのリー・ポーハン企画部長は、中華郵政が物流増や新サービスに対応するための大型物流ハブを建設し、業務の転換を進めている状況を説明した。JP労組の石川書記長は、日本のEコマース拡大と社会構造の変化がもたらす諸課題に触れ、労組が取り組む雇用形態による格差解消を目指す状況について発表した。質疑応答ではのべ14人から質問が出された。

小売業売上高に占めるEコマース化率は、日本はわずか5.8%、台湾8.7%である一方、韓国は18%、中国ではすでに20%に達している。郵便産業では荷物量増加に伴う人手不足や長時間労働、サービス水準や料金設定等の問題が各国で濃淡はあるものの深刻化している。Eコマースの成長がもたらすプラスとマイナスの側面とも、一国、一企業だけの問題ではなく、産業全体の問題として取り組んでいくこと、そして労働組合が労働者の処遇や労働条件を守るために声を上げ続けることがさらに重要となる。


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