6月 2018のお知らせ

コルティナ新UNI会長にバトンタッチ

第5回UNI世界大会の最終日、ルーべン・コルティナ氏が新たなUNI会長に選ばれた。幼い頃から苦労が絶えなかったが、コルティナ氏はアルゼンチンの労働運動で頭角を現し、2003年にUNI米州地域会長に就任すると、ラテンアメリカにおける組織化と組合強化を主導してきた。

4年間UNI会長を務め、今回退任するアン・セリン会長は、アルゼンチンの商業部門から始まり、30年に渡ってラテンアメリカの労働運動に影響力を及ぼしてきた同氏の多大な貢献と揺るぎない決意に敬意を表し、「ここでコルティナ氏に引き継げることを嬉しく思う」と述べた。セリン会長は、癌と闘いながらも、指導体制移行期のUNIを支えてきた。

コルティナ新会長は就任演説で、将来の世代のための労働組合の戦略的行動の必要性を強く訴えた。「問題の原因究明はよいが、変化のための行動を起こさなければ意味がない。不確実性を排したいなら、明確なビジョンと計画に基づいた行動を起こさなければならない。政治家が行動するだろうと座って待つ余裕は無い。」

「どの多国籍企業の門戸も叩き、プラットフォーム経済の隅々まで出かけて行く。子供達に寄り添い、子供達が働かなくて済むようにする。働く女性に寄り添い、賃金格差を埋めていく。青年に寄り添い、将来の機会を与える。必要とされるところへは、どんなに遠くても出かけて行く。世界中の2000万人の兄弟姉妹のために、UNIはある。」

「我々は、団結と平等のために闘う。我々のために誰かが社会正義をもたらしてくれるわけではない。我々自身で共に社会正義を構築していこう!」

コルティナ氏は、家族とアルゼンチン商業サービス労連(FAECyS)、UNI米州地域組織、UNI本部、そしてUNI加盟組織からの支援に感謝した。

ホフマンUNI書記長は、セリン会長とコルティナ新会長が何年にも渡りUNIの目標達成に貢献してきたことに心から感謝した。

世界大会はまた、各地域を代表する副会長と内部監査も選出した。UNI Aproからは、増田光儀JP労組委員長がUNI Apro副会長に選出された。

 


世界平和、民主主義、人権を求めて

平和と民主主義は労働運動にとって重要である。UNIは国連核兵器禁止条約の成立に大きく貢献した2つの平和推進組織、ICAN及びIPBのメンバーである。1891年に設立された世界で最も歴史のある平和団体、国際平和ビューロー(IPB)は1910年に、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は2017年に、それぞれノーベル平和賞を受賞した。ライナー・ブラウン国際平和ビューロー(IPB)共同会長は、世界大会で演説し、「平和は今脅かされ、世界は混乱状態にある。軍備拡大から縮小へ舵を切らねばならない。対立と軍事化の政治を克服しなければならない」と強く訴えた。2010年に開催された長崎世界大会において、UNIファミリーは、核兵器の恐怖を再認識するとともに、核兵器廃絶を求める世界平和の大使となることを誓った。

UGTT(チュニジア労働総同盟)のフセン・アバシ前書記長は、希望と連帯のメッセージを大会代議員に送った。国民対話カルテットの一員として、アバシ前書記長は不断の努力を続け、チュニジアを内戦から救った。2015年10月、UGTT、チュニジア商工業・手工業経営者連合、チュニジア人権擁護連盟、チュニジア全国法律家協会から構成される国民対話カルテットはノーベル平和賞を受賞した。「グローバル化によって我々は、強欲な企業、不安定な雇用、民主主義の縮小といった同じ課題に直面している。UNIは単に2000万人の労働者を持つ組織であるだけでなく、アイデアを持つ組織だ。みんなで立ち上がり、平和、労働者の権利、正義のために闘っている。我々が直面するグローバルな課題には、組織間、国家間の連携を強化してこそ打ち勝つことができる。一貫したアクションと、経済・社会・教育的行動を通じて、国際連帯を持続していかなければならない。」国民対話カルテットの事例は、市民社会、とりわけ労働組合が社会の亀裂を癒す上で大きな役割を果たせることを証明した。

続いて、不正に立ち向かっている人や団体にUNIから「恐怖からの解放賞」が贈られた。

ヒルズボロ遺族支援グループ、ヒルズボロ正義キャンペーン、故アン・ウィリアムズ氏は皆、1989年4月に発生したヒルズボロの悲劇(サッカースタジアムで発生した将棋倒しで96人のファンが犠牲になった)の遺族と生存者のために正義を勝ち取るまで、その闘いを決して諦めなかった。代表して受賞したジリアン・エドワーズ氏とシーラ・コールマン氏に、大会代議員は総立ちの拍手で称えた。「私達は女性として決して諦めなかった。リバプールの女性のDNAかもしれない」とコールマン氏は述べた。英国政府は96人の死亡の原因を隠蔽しようとしたが、彼女達の正義を明らかにするという決意は揺るがなかった。「他の人のために集団で闘う意味を理解する、UNIのような同志から表彰されて光栄だ。」ヒルズボロの悲劇の正義は実現したが、現在は他のキャンペーングループが真実を明かそうとするのを支援している。彼女達は、恐怖からの解放賞を、グレンフェルの正義を求めるキャンペーン(2017年に発生したグレンフェルの火災で72人が犠牲となった後、結成された)に捧げた。

偏狭、人種差別、外国人排斥に立ち向かっている国際奴隷博物館にも同賞が贈られ、リチャード・ベンジャミン館長が受賞した。同博物館は、道義に反する奴隷制度を風化させないよう、今でも闘い続けている。同博物館は、奴隷貿易廃止法制定200周年記念の、2007年8月に開館した。だが、未だに世界史の暗く野蛮な出来事の遺産は残っている。「2007年の開館以来、400万人を超える人がこの示唆に富む博物館を訪れた。我々は来館者に、大西洋奴隷貿易の遺産を思い巡らすだけでなく、現代の奴隷の形態すなわち人身売買や債務労働等の奴隷についても積極的に考えてもらいたい」とベンジャミン館長は述べた。国際奴隷博物館は、奴隷制度の国際的な重要性を歴史的及び現代的視点から訴えかけている。他の団体と連携し、奴隷制度と自由に焦点を当て、現代の奴隷制度の理解と意識喚起の機会を提供すると共に、人種差別や憎悪犯罪と闘っている。第三者憎悪犯罪報告センターに指定された英国で唯一の博物館でもある。

米国のプロバスケットボール選手、ビルキス・アブドゥル・カーディルは、イスラム教の女性が被るスカーフ(ヒジャブ)を着用して競技する権利を要求して闘った勇気を称えられ、恐怖からの解放賞を受賞した。3年間競技停止を受けてもなお、彼女はUNI世界選手協会、世界各国のバスケットボール選手協会、EUアスリート及び人権ウォッチ(NGO)等と連携して差別をなくすキャンペーンを展開し、国際バスケットボール連盟(FIBA)の禁止規定を覆させた。受賞演説で彼女は、バスケットボール選手への平等な扱いという観点だけでなく、イスラム教の女性への偏見や差別をなくす闘いだったと振り返った。「若いイスラム教の女子選手が安心して競技できる場をつくりたかった。イスラム教の女性はどこにでもいる。彼女達は他の人々と同様に扱われ、同様にする権利がある。」それでも人種差別や外国人排斥との闘いは続く。全ての組合活動家は、逆境を跳ね返した彼女の強さに勇気付けられるだろう。バラク・オバマ前米国大統領は、「ビルキスはイスラム教の女児だけでなく、我々全員に感動を与えた」と称えた。

フロアから発言した藪裕之代議員(JP労組)は、東日本大震災の直後に世界の仲間から受けた連帯支援に感謝すると同時に、自ら被災しても地域の役に立ちたいという使命感を持って仕事をしたことを振り返り、助け合い労わり合う心があれば、争いはなくなるだろうと述べた。そして将来を担うユース世代が中心となって、人を思いやる精神をもって全ての労働者の社会的地位の向上に取組み、世界平和の実現に向けて行動していくとの決意を述べた。

動議5については、LGBTQI、メディア、スポーツの視点を追加し、トルコ情勢等を修正した、決議委員会の最終案が採択された。

 

 


組合の意思決定に、より多くの青年・女性が必要だ!

UNI世界青年委員会は、各地域議長が登壇し、UNI及び加盟組織に、青年メンバーを意思決定機関に統合するよう訴えた。法被を着た日本の青年メンバーも壇上で応援した。

世界大会直前に開催された世界女性大会で退任したデニス・マクガイア前議長から同大会の報告を受け、続いてパトリシア・ナイマン新議長及び各地域を代表する副議長が今後も、ジェンダー代表制確保、女性に対する暴力廃絶、メンター制度をはじめとする女性のエンパワーメント等の取組みを継続・強化していくと抱負を述べた。

相川和男代議員(新聞労連)は、新聞社で働く女性が、社内では上司や同僚によって、社外では取引先や取材先によってセクハラの被害にあっていること、「セクハラに我慢するのはもうやめよう」という緊急アピール文を採択し、女性も安心して働ける職場環境・労働条件を早急に整備するよう新聞協会に要請したことを報告した。新聞社で働く女性比率は今後も増える見通しで、女性の意見や要望を実現化するため女性の労組役員比率3割を目標に掲げる予定だと述べた。


労働組合と労働の未来

UNIは「労働の未来」に関するオピニオンリーダーとして、デジタルの世界が全ての労働者に力を与え、誰をも包摂するよう潮目を変えるために努力してきた。労働組合は、政府の政策に影響を及ぼし、透明性、機会、責任を確保し、新しいテクノロジーが少数者だけでなく多くの人に恩恵をもたらすものとなるよう適正化する力を持つイノベーターである。

この議題では、労働者のデータに関する権利、拡大するデジタル格差をいかに是正するか、倫理的なAIの活用、新しい世代の労働者といかに接点を持つかについて議論した。

UNIと加盟組織は、公正なデジタル化の未来に向けた発展にとりわけ責任があることについては疑いの余地が無い。なぜなら、新たな仕事の90%がUNIの関わる部門で創出されると見込まれているからだ。

ガイ・ライダーILO事務局長は、ILO創設100周年「仕事の未来」イニシアチブについて報告し、「かつてない速度で労働の世界が激変する中、労働者に有利な変革を起こすには、労働者を動員し、労働組合が様々な組織と連携して我々の望む労働の未来を形作る上で中心的役割を果たしていかなければならない」と訴えた。「さもなければ、将来は残酷な極論者によってつくられてしまう。我々が過去闘って勝ち取ってきた労働者の権利、包摂性、社会正義、持続可能な民主的な社会は将来、居場所がなくなってしまうだろう。」

ジャーナリストであり作家でもある、オープン・マーケット研究所のバリー・C・リン所長は、巨大テクノロジー企業の間の独占力が我々の経済・政治システムに及ぼす脅威について語った。

カーディフ大学の、ヘレン・ブレイカリー博士とスティーブ・デイビス博士は、UNIから委託された「労働組合のイノベーション」に関する調査の結果を報告した。

リバプール・ガール・ギークスの、ジョアン・モーフィとジェス・イングリーは、英国のテクノロジー分野におけるジェンダー格差をなくすため、女子学生に理数系の学習を奨励し、将来テクノロジー分野の職に就けるよう支援するプログラムに参加した体験を紹介した。

松浦昭彦UNI-LCJ議長は、UNIの労働の未来の取組みに沿って、UNI-LCJとしても、集中的に議論してきたこと、UNI本部のクリスティーナ・コロクロフ部長から、労働者データの扱いや、AIの倫理的活用を求める取組みについて情報共有したこと等を報告し、連合の労働の未来に関する認識を紹介した。「人口減少・超少子高齢に向かっている日本では、技術革新により、労働力不足を補い、生産性の向上が期待できる側面がある。産業内・産業間の労働力の需要の変化が見込まれるが、新規雇用が創出され、労働者が失業することなく新しいディーセントな仕事に移行できるよう、能力強化対策をとらねばならない」とする一方、クラウドソーシング、シェアリングエコノミー等、働き方が多様化する中、労働契約、安全衛生、教育訓練、社会保障制度も、働く人を守る視点から、改革する必要があると述べた。UNIを通じて、世界で起こっていること、海外の組合の対応に関する最新情報を共有し、日本の現状を踏まえ、将来を予測し、迅速な行動をとっていきたいと発言した。

日下部大樹代議員(生保労連)は、デジタル化によりサービスのあり方や働き方が大きく変化し、無くなる仕事も予測される一方で、東日本大震災直後の生命保険会社の営業担当者の経験を挙げ、人にしかできない、感情を動かすホスピタリティのあるサービスを創造し提供することが、これまでにない顧客の満足と新しい価値を生み出し、人間としての心の豊かさにもつながるのではないかと、問いかけた。

リバプールに結集した大会代議員はまた、アマゾンの事業モデルは労働者を底辺への競争に駆り立てていると非難し、レッドカードを突き付けた。ベシガーUNI副書記長は、同社の労働者への不当な扱いに抗議して、UNIの要求を明確に示した。「アマゾンは、法人税を適正に支払い、責任あるグローバル企業としてふるまうべきだ。我々はアマゾンの悪しき慣行に立ち向かう。アマゾンは、労働者をロボットではなく人間として尊敬すべきだ!」

動議4は満場一致で採択された。

 


持続可能なグローバル経済のための労働組合

グローバル経済は曲がり角にきている。格差は拡大し、企業の業績は右肩上がりの一方で、労働者の賃金は伸び悩んでいる。この危機は、経済理論の失敗、資本主義の失敗、企業の傲慢さが招いたものであり、一刻も早く、我々の経済を富裕層や権力者だけを潤すものではなく、全ての人に公正で持続可能なものにしなければならない。

組合員を増やすこと、団体交渉の強化こそが、この経済の転換を実現するために必要だというコンセンサスができてきている。格差が急速な拡大すると同時に、組合組織率も落ち込んでいる。右翼やポピュリストの潮流に対抗し、持続可能で公正な経済を形成するために労働組合が必要なのは明白だ。また、人々と地球を優先する、公正な経済及び新しい貿易・開発モデルを生み出す必要がある。

来賓として挨拶したシャラン・バロウ国際労働組合総連合(ITUC)書記長は、まずホフマン書記長が率いるUNIの新時代の到来を歓迎すると共に、退任したジェニングス前書記長の多大な功績を称え、会場にいる人々全てにとって、永遠にリーダーでありメンターであり友人であると述べた。バロウ書記長は、女性蔑視、女性への暴力、人種差別、外国人排斥の高まりに挑んでいく決意を明確にし、労働組合リーダーに、国際的な視点から共通の課題に共に取組もうと呼びかけた。「格差と不正に反撃するには、労働者の組織化を通じた力の構築と国際連帯しかない。我々は公正な世界を求めて闘い、必ず勝利する。強力な国際労働運動を引っ張っていくのはUNIだ!」

ステファン・ロヴェーン・スウェーデン首相はビデオで大会代議員にメッセージを送った。ロヴェーン首相は溶接工から組合活動家になり、金属労組の会長になった。リバプールが世界に誇るサッカーチームのサポーターズソング「You’ll never walk alone(君は決してひとりではない)」を引用し、「労働者が力を合わせ、1人も置き去りにすることなく、互いのために立ち上がれば、必ずうまくいく」と強調し、「“君は決してひとりではない”というメッセージは、労働者から労働者へ、国から国へ、大陸から大陸へと伝わり、団結の力で我々の将来を形作ることができる。共に実現していこう!」と訴えた。

フロア発言では、日本の加盟組織から積極的な提言が相次いだ。

齋藤久子代議員(情報労連)は、グローバル化の恩恵が全ての人に行き渡り、持続可能な“人間中心の”RCEPを構築するためには、ILO中核的労働基準の遵守条項と環境条項を組込む必要があり、ASEANで整備されている社会対話の機構を足場として、RCEP加盟国の労働組合が連帯し、RCEP交渉の論議にもっと関与すべきだと訴えた。

柏木裕也代議員(全信連)は、日本の金融産業を取り巻く環境が激変し、従来のビジネスモデルが通用しなくなっている中、産業別労働組合として、キャリアの複線化や多様化する従業員のニーズにも応えていくと同時に、企業に対してはESG投資、環境保護、女性活躍の推進、人権の面から責任ある提言を投げかける必要が高まっており、UNI活動等を通じ、適切な情報収集、研鑽を図りたいと発言した。

八野正一代議員(UAゼンセン)は、UNI本部SCOREの資金援助による多くのプロジェクトが各国で実施され大きな成功を収めていることを称賛した上で、UNIのグローバルな戦略を受け、地域・国の加盟組合の考えと組合文化を十分理解し考慮したアプローチをとることが重要だと主張した。アジアでは労使の相互信頼と尊重を基礎にして労働者の権利と諸条件の改善及び企業の成長を目指す「パートナーシップ労使関係」がより有効に機能する例も多くあり、UNI本部と地域組織の間で十分な情報共有を行い、今まで以上に緊密に連携・協力してほしいと要請した。

末留新吾代議員(全労金)は、UNIに結集する全組織が、市場万能・短期利益最優先の風潮に歯止めをかける労働組合の社会的機能を強化し、協同組合経済の領域拡大を図り、新自由主義に変わる持続可能な社会を実現しようと提起した。連帯と協同を通じ安心・共生の社会を築くことで、世界から貧困・児童労働・奴隷制を無くすことにつながるとし、そのために労働運動と協同組合は更なる連携強化が必要だとSDGs実現に向けた積極的な取組みを要請した。

金子晃浩代議員(自動車総連)は、少子高齢化・人口減少、就業人口減少が急速に進む日本では、労使で確認された『生産性三原則』に基づく生産性向上運動を通じて付加価値を高め、経営者と労働者との報酬配分の偏りを均そうとしていると紹介した。また、自動車産業全体で拡大する産業内格差及び労働者間の格差の是正を目指すと共に、グローバルにバリューチェーンが形成されている自動車産業として、日本に限らず全世界で労働基本権が確保され、建設的な労使関係が構築されるよう連帯を惜しまないと述べた。

中村正敏代議員(日放労)は、会社の持続可能性が強調され、労働者個人の持続可能性が蔑ろにされ、新しい時代の奴隷労働になりかねない現状に警鐘を鳴らした。労働への価値観を共有する活動によって、企業も労働者個人も、またAI等によって変化する仕事も全てが持続可能となる道を探す視野を持つべきだと述べた。特にメディア産業で労働組合が社会対話の主体として認められ、グローバル経済に消費されない強靭な社会の主体となれるようよう行動を起こしていくべきだと訴えた。

様々な提言や支持の発言を受け、動議3は採択された。

 


今後4年間のブレイキングスルー戦略計画を採択

UNIは2010年の長崎世界大会において、組織化及び労組の強化を目指すブレイキングスルー戦略を打ち出した。労働者の権利を勝ち取るためのブレイキングスルー(突破!)は、全ての地域と部会におけるUNIのあらゆるキャンペーン活動や組織化の取組みに一貫するスローガンである。2014年の ケープタウン世界大会以降、本部組織化基金の支援を受け、UNIは51カ国130の組織化キャンペーンを支援してきた。中欧で非常に成果を上げている組織化センターCOZZを設置し、コロンビアに組織化センターCOEを設置した。UNIは、50以上のグローバル枠組み協定(GFA)を締結しており、ジェンダー平等を含めた労働者の権利に関する企業の責任を明確にしている。2017年のG20では、持続的かつ責任あるサプライチェーンを構築するためのGFAの重要性がようやく認識された。

クリスティ・ホフマンUNI副書記長から、GFA及びグローバルな組織化キャンペーンについて説明があり、GFAがいかに各国における組織化と団体交渉に活用されているかの実例を紹介した。

フロアからは、大谷篤史代議員(全国農団労)が発言し、日本が人口減少や地域の過疎化・高齢化に直面する中、地域のインフラとしての機能を提供する農業協同組合組織の労働組合として、共助や自助、相互扶助の重要性や地域での協同組合運動の必要性を確認し、活動を展開していると述べた。一部の大企業・多国籍企業の農業参入を促し、農協を潰し小規模・家族農業を切り捨てる新自由主義的な政策に対抗するため、国際的に協同組合の役割を評価し、協同組合運動を強化・拡大する必要性を訴えた。

また、水本勝代議員(UAゼンセン)は、日本社会では、お客様の行動は常に正しいとの認識が強く、モンスター化する客を助長させ職場環境に悪影響を及ぼしている現状を報告した。流通・サービス産業は、悪質クレームが起因していると考えられる退職者の増加、接客応対の難しさから敬遠される傾向にあり、慢性的な人手不足となっている。労働者の尊厳を守るために、悪質クレームをなくしていく労働運動を進めていこう、と呼びかけた。

 

 

次の重点課題を含む2018~2022年度のUNIブレイキングスルー戦略(動議1)が採択された。

  • 組織化及び勧誘活動の戦略
  • グローバル協定及びグローバル労組同盟
  • 企業に説明責任を果たさせる
  • 団体交渉を守り拡大する資格審査委員会によれば、113か国523組織1,953人が参加している。代議員及びオブザーバーの男女比率は女性43%、男性57%、青年(35歳未満の男女)比率は5%だった。
  • また、2014~2017年度会計報告及び監査報告が承認され、UNI加盟費値上げ提案(動議2)も採択された。

資格審査委員会によれば、113か国523組織1,953人が参加している。代議員及びオブザーバーの男女比率は女性43%、男性57%、青年(35歳未満の男女)比率は5%だった。

 


UNI-LCJユース、海外ユースと交流

2018年6月18日、英国・リバプールで開催されているUNI世界大会の機会を活用し、UNI-LCJユースは、海外のユースとランチ交流を行い、情報労連、全印刷、自動車総連、大日本印刷労組、日放労、JP労組から16人(女性10人、男性6人)が出席した。海外からは、スリランカ郵便労組のノリカ・ワルナスリヤ(UNI Apro青年委員会議長)、ボツワナ銀行労組のレボガング・ケベツェ(UNIアフリカ青年委員会議長)、フィリピン金融労組のベルナデット・レイズ(UNI Apro青年委員)、シンガポールDBS銀行労組のケビン・コウ(UNI Apro青年委員)が参加した。

海外のユースから自己紹介と各組織における主な青年活動について報告を受けた。4人は全員、組合の非専従役員であり、普段の仕事と両立しなくてはならない。ノリカは2児の母でもあり、夫の理解と協力があって、仕事、組合、UNI Apro青年委員会活動をこなしていると述べた。レボガングは、青年の組織化として卒業間近の大学生に組合の基礎知識について教えたり、祝祭日の機会に青年イベントを開催して、若年層の連帯感を醸成し、組合活動への参加を促進していると述べた。ベルナデットは、「フィリピンでは特に若い人の間で組合のイメージが悪く、自分たちの条件改善のためだけに交渉しストをしている組織だと思っている。そのため、社会貢献活動(パヤタスの栄養失調児童への給食活動等)を通じて、青年労働者に意義のある組合活動について知ってもらうようにしている」と説明し、日本の組合からの支援に感謝した。ケビンは、シンガポールのナショナルセンターが取組む青年労働者の組合加入促進について、学習・転職支援、職業斡旋、優待・特典等のプログラムがあると紹介した。

その後、4つのグループに分かれ、各国における女性の活躍や、組合員のモチベーションを高める工夫についてグループディスカッションを行い、最後に全体で共有した。

今回のUNI世界大会に参加した35歳未満の代議員・オブ比率は5%である。議題7「UNI世界青年委員会からの報告」で、ノリカUNI Apro青年委員会議長、レボガングUNIアフリカ青年委員会議長らがそれぞれ動議10「実現しよう:UNIにおける青年代表の拡大」への支持を訴える演説を行った際、ユースは登壇し、一緒に大会へアピールした。

 

 


ホフマン新書記長のリーダーシップの下、UNI新たな出発

UNI世界大会2日目の冒頭、満場一致でクリスティ・ホフマンが新書記長に選出された。就任挨拶でホフマン書記長は、「1人の労働者、1つの組合、1か国では、多国籍企業がごく少数のための経済モデルへとゲームのルールを変えようとする、世界の潮流を変えることはできない。我々は、多くの人々のための経済モデルにするよう結束してアクションを起こしていこう」と呼びかけた。UNI副書記長に就任するまで、彼女はUNI本部SCORE(連帯・キャンペーン・組織化・調査・教育)局を指揮し、世界で150を超えるキャンペーンを支援してきた。また、2013年に締結されたバングラデシュ協定(バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関する協定)の交渉と延長にも関わり、バングラデシュの衣料産業で働く何百万人もの労働者がより安全な環境で働けるようにした。この数年は、OECDガイドラインのような企業に説明責任を持たせる国際的メカニズムを活用し、リーダーシップの発揮に努めてきたが、書記長としても引き続き尽力すると決意を語った。ホフマン書記長は、18年間UNIを率いたフィリップ・ジェニングスからバトンを受けた。「私のページは閉じられたが、まだまだページは続く。クリスティの指導の下、組織は更に強化されるだろう」とジェニングスは期待すると共に、加盟組織に引き続き協力を要請した。

ホフマン書記長が米国で労働運動に関わり始めたのは、2,000人が働く、コネチカット州のジェットエンジン工場で職場委員長に選ばれた1978年に遡る。その後、組合にオルグとして雇用された。1997年からはチームスターやSEIU(サービス労組)で労働弁護士として活躍し、当時は不可能だと思われていた、UPSでのパート職のフルタイム化キャンペーンを主導し、1万のフルタイム職の創設を勝ち取った。2004年にUNI本部のビル管理部会局長に就任したが、一度米国に戻り、SEIU国際組織局長として活躍した後、2010年にUNI副書記長に就任した。ニューヨーク大学名誉法律学位、スミスカレッジ経済学士取得、既婚、2児の母。

また、副書記長には新たにアルケ・ベシガーICTS部会担当局長が就任した。

 


UNI-LCJ金融部会、英国UNITE the UNION金融部会と情報交換

 

2018年6月17日午前中、英国・リバプールで開催されるUNI世界大会に合わせ、UNI-LCJ金融部会(全信連、生保労連、全国農団労、労済労連、全労金、損保労連、JP労組が参加)は、英国のUNI金融部会加盟組合UNITE the UNIONの金融部会担当、ドミニク・フック氏(UNI世界金融部会委員)、ゲイル・カートメイル副書記長と情報交換を行った。アンジェロ・デクリストUNI世界金融部会担当局長、ジャヤスリ・プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長も参加した。

英国労働組合会議(TUC)には現在49組織、620万人(組織率23%)の組合員がいる。1979年は1300万人だったが減少している。現在の課題は、若年層の組織化、低賃金、長時間労働、ゼロ時間契約等である。UNITE the UNIONは産業別労働組合が何度も統合を重ね、現在120万人を有する。

英国EU離脱決定後、フルーツ収穫等に従事する移民労働者が減ったが、金融産業で働く労働者は主に国内業務に関わっているため雇用の流失はそれほどでもない。しかし経済・社会には大きな影響が予想され、最悪のシナリオに備えるしかないと覚悟している。

デジタル化の影響については、2015年にHSBCは事務センターの8000人分の仕事を人件費の安価なインド及び中国に移した。それにより影響を受ける労働者の怒りや未来への希望の喪失を、組織化・組合活動を通じて希望を見出せるように支援した。また、コールセンターという呼称からコンタクトセンターと呼ばれるようになっている。電話だけでなく、ビデオチャット、ウェブチャット等を通じて顧客対応をするためである。コンタクトセンターでの賃上げは、使用者から業務内容の変更提案があった際、より複雑で多様かつマルチスキルを要求される業務であることから賃上げを交渉することができた。組織率が高かったから、組合の要求が応えられたと思う。コンタクトセンターも、デジタル化で業務は縮小するだろう。自然言語を理解するAIの開発が進めば、人間がもっと不要になる。まだ導入コストは高いが、6年後には機械による応対サービスはもっと安価になり、更に導入が進むだろう。

金融産業の特徴として女性労働者が圧倒的に多く、しかも低賃金である。英国の産業別でみると、金融産業における男女賃金格差が最も大きく、英国の平等監視組織から女性労働者の待遇が不公平であると指摘された。仕事及び職位における差別がある。低賃金の仕事に従事するのは殆どが女性で、昇進するにつれて男性が増えていく。女性の得意とするソフトスキル(対人・コミュニケーションスキル)は過小評価されてきた。コンタクトセンターでの賃上げは、ソフトスキルの価値が認められたためである。組合の役割として、組合員の学習を支援することが重要で、労働党政権時代に組合学習プロジェクトを立ち上げた。問題は、保守党政権下でプロジェクト資金が縮小されていることである。


退任するジェニングスUNI書記長への感謝

フィリップ・ジェニングスUNI書記長は、国際労働運動に38年携わってきた。1989年からFIET書記長として、2000年からUNI初代書記長として、両組織を率いてきた。

UNI Aproを代表して、野田三七生会長が感謝の言葉を述べ、似顔絵と人形をプレゼントした。今日まで、労働運動に注いだ情熱、残した多くの足跡、そして労働運動への崇高な志をしっかり受け継ぎ、クリスティ・ホフマン新書記長の下で、UNIの運動を次代へと繋いでいく、と約束した。


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