グローバル経済は曲がり角にきている。格差は拡大し、企業の業績は右肩上がりの一方で、労働者の賃金は伸び悩んでいる。この危機は、経済理論の失敗、資本主義の失敗、企業の傲慢さが招いたものであり、一刻も早く、我々の経済を富裕層や権力者だけを潤すものではなく、全ての人に公正で持続可能なものにしなければならない。
組合員を増やすこと、団体交渉の強化こそが、この経済の転換を実現するために必要だというコンセンサスができてきている。格差が急速な拡大すると同時に、組合組織率も落ち込んでいる。右翼やポピュリストの潮流に対抗し、持続可能で公正な経済を形成するために労働組合が必要なのは明白だ。また、人々と地球を優先する、公正な経済及び新しい貿易・開発モデルを生み出す必要がある。
来賓として挨拶したシャラン・バロウ国際労働組合総連合(ITUC)書記長は、まずホフマン書記長が率いるUNIの新時代の到来を歓迎すると共に、退任したジェニングス前書記長の多大な功績を称え、会場にいる人々全てにとって、永遠にリーダーでありメンターであり友人であると述べた。バロウ書記長は、女性蔑視、女性への暴力、人種差別、外国人排斥の高まりに挑んでいく決意を明確にし、労働組合リーダーに、国際的な視点から共通の課題に共に取組もうと呼びかけた。「格差と不正に反撃するには、労働者の組織化を通じた力の構築と国際連帯しかない。我々は公正な世界を求めて闘い、必ず勝利する。強力な国際労働運動を引っ張っていくのはUNIだ!」

ステファン・ロヴェーン・スウェーデン首相はビデオで大会代議員にメッセージを送った。ロヴェーン首相は溶接工から組合活動家になり、金属労組の会長になった。リバプールが世界に誇るサッカーチームのサポーターズソング「You’ll never walk alone(君は決してひとりではない)」を引用し、「労働者が力を合わせ、1人も置き去りにすることなく、互いのために立ち上がれば、必ずうまくいく」と強調し、「“君は決してひとりではない”というメッセージは、労働者から労働者へ、国から国へ、大陸から大陸へと伝わり、団結の力で我々の将来を形作ることができる。共に実現していこう!」と訴えた。

フロア発言では、日本の加盟組織から積極的な提言が相次いだ。
齋藤久子代議員(情報労連)は、グローバル化の恩恵が全ての人に行き渡り、持続可能な“人間中心の”RCEPを構築するためには、ILO中核的労働基準の遵守条項と環境条項を組込む必要があり、ASEANで整備されている社会対話の機構を足場として、RCEP加盟国の労働組合が連帯し、RCEP交渉の論議にもっと関与すべきだと訴えた。

柏木裕也代議員(全信連)は、日本の金融産業を取り巻く環境が激変し、従来のビジネスモデルが通用しなくなっている中、産業別労働組合として、キャリアの複線化や多様化する従業員のニーズにも応えていくと同時に、企業に対してはESG投資、環境保護、女性活躍の推進、人権の面から責任ある提言を投げかける必要が高まっており、UNI活動等を通じ、適切な情報収集、研鑽を図りたいと発言した。
八野正一代議員(UAゼンセン)は、UNI本部SCOREの資金援助による多くのプロジェクトが各国で実施され大きな成功を収めていることを称賛した上で、UNIのグローバルな戦略を受け、地域・国の加盟組合の考えと組合文化を十分理解し考慮したアプローチをとることが重要だと主張した。アジアでは労使の相互信頼と尊重を基礎にして労働者の権利と諸条件の改善及び企業の成長を目指す「パートナーシップ労使関係」がより有効に機能する例も多くあり、UNI本部と地域組織の間で十分な情報共有を行い、今まで以上に緊密に連携・協力してほしいと要請した。

末留新吾代議員(全労金)は、UNIに結集する全組織が、市場万能・短期利益最優先の風潮に歯止めをかける労働組合の社会的機能を強化し、協同組合経済の領域拡大を図り、新自由主義に変わる持続可能な社会を実現しようと提起した。連帯と協同を通じ安心・共生の社会を築くことで、世界から貧困・児童労働・奴隷制を無くすことにつながるとし、そのために労働運動と協同組合は更なる連携強化が必要だとSDGs実現に向けた積極的な取組みを要請した。
金子晃浩代議員(自動車総連)は、少子高齢化・人口減少、就業人口減少が急速に進む日本では、労使で確認された『生産性三原則』に基づく生産性向上運動を通じて付加価値を高め、経営者と労働者との報酬配分の偏りを均そうとしていると紹介した。また、自動車産業全体で拡大する産業内格差及び労働者間の格差の是正を目指すと共に、グローバルにバリューチェーンが形成されている自動車産業として、日本に限らず全世界で労働基本権が確保され、建設的な労使関係が構築されるよう連帯を惜しまないと述べた。

中村正敏代議員(日放労)は、会社の持続可能性が強調され、労働者個人の持続可能性が蔑ろにされ、新しい時代の奴隷労働になりかねない現状に警鐘を鳴らした。労働への価値観を共有する活動によって、企業も労働者個人も、またAI等によって変化する仕事も全てが持続可能となる道を探す視野を持つべきだと述べた。特にメディア産業で労働組合が社会対話の主体として認められ、グローバル経済に消費されない強靭な社会の主体となれるようよう行動を起こしていくべきだと訴えた。
様々な提言や支持の発言を受け、動議3は採択された。