2017年1月17~19日、ドイツ・ベルリン(Ver.di本部)において、UNIグローバルIT組織化会議が開催された。UNI欧州加盟組織を中心に、33カ国、52組織、120人余が参加した。日本からは情報労連の木村国際担当部長が参加した。①大手多国籍企業対策、②クラウドワーカーの組織化について状況確認と情報共有し、今後の取組みについて確認した。
開会の挨拶を行ったクリスティ・ホフマン副書記長は、新たな労働の世界における組織化の問題について課題提起し、労働組合としての取組みの重要性を述べた。また「幼い頃からデジタル機器を使いこなしてきたミレニアル世代が労働組合に関心がないというのは思い込みである。こうした若い労働者にも関心を持ってもらえる組合へと進化を遂げなければならない。労働運動という1つの傘の下にさまざまなスタイルがあっても良い」と述べ、労働組合自身の変革の必要性を訴えた。
大手多国籍IT企業対策
IT市場の動向と組織化状況について共有した。IT企業は主に3つの形態に分類された。①ハードウェアからソフトウェア会社へと事業転換している企業(IBM、HP、富士通等)②コンサルティング会社からIT企業へと事業拡大している企業(アクセンチュア等)③従来よりソフトウェア中心に事業を行っている企業(マイクロソフト、オラクル、SAP、CSC等)
OECDは、世界のGDPに占めるIT産業の割合は今日6%程度だが、2020年には25%まで上昇すると予測している。ビッグデータ、IoT、クラウドコンピューティング等の増加が要因である。
UNIはIBM、HP、CGI、アトスにおける取組みに引き続き傾注し、特にIBMについてはインダストリーオールと連携して実施しているIBMグローバル労組アライアンスをさらに充実させていくことを確認した。
ITクラウドワーカーの組織化
オンライン上で仕事を請け負うクラウドワーカーが世界中で急増しているが、労働組合の対応が遅れている実態を全体で課題として認識した。UNI欧州地域組織が昨年実施した調査によると、欧州全体で労働者の8人に1人がクラウドワーカーであると報告されている。また、若い世代のクラウドワーカーが多いことが明らかになっており、全クラウドワーカーのうち、スウェーデンで57%、英国で50%、オランダで42%、オーストリアで47%、ドイツで50%が35歳以下との結果であった。クラウドワーカーのメリットは「自由に働ける」、「融通がきく」、デメリットは「収入が不安定」、「将来の保障がない」と考えられている。
クラウドワーカー組織化のための取組み事例が紹介された。ドイツVer.diは、特定の企業に属さない自営労働者のための「メディアフォン」というオンラインサイトを運営している。メールで相談を受け付けて、電話で回答する方式である。スウェーデンのユニオネンは、テレビ広告やインターネットによる自営労働者向けの勧誘活動を積極的に行い、この5年間で12万人の新規組合員獲得に成功、多くのクラウドワーカーも含まれている。米国では自営労働者のための「フリーランサーズユニオン」という組織があり、寄付金を活動の財源とし、自営労働者のための医療保険プログラム等を実施している。
最後に、今後、ますます増加するであろうIT労働者の組織化の取組みが必要であること、そのためのネットワークを強化していくことを確認した。当面、UNI世界ICTS部会の全ての活動でIT労働者の組織化について議論を行い、地域別、企業別の活動計画を策定していくこととした。UNI世界ICTS部会委員会(6月、クロアチア)、UNI Apro ICTS部会大会(8月、マレーシア)でも議論が行われる。