8月 2016のお知らせ

UNI Apro ICTS部会委員会、多国籍情報通信企業の組織化に注力

img_2472-ss2016年8月26~27日、UNI Apro ICTS部会委員会が台北で開催され、10カ国21人が参加した。日本からは、情報労連・野田委員長、木村国際担当部長、NTT労組・柳浦中央執行委員、KDDI労組・後藤委員長、登尾中央執行委員が参加した。

img_2461-s開会にあたり野田議長は、「事業構造の転換やそれに伴う雇用・労働条件の変化のスピードは従来よりも早くなっている。これに伴い、労働組合が会社側と日常的に対話を行い、労使協議を行なえる環境づくりがこれまで以上に重要である」と挨拶した。台湾の朱中華電信労組委員長は、「UNIから学び、自組織の取組みに生かすことは多い。今後も支援を必要とする労働者のためにUNIと連携していきたい」と述べ、参加者を歓迎した。

ウンUNI Apro地域書記長は、基調講演の中で、「デジタル化の進展により、労働環境や生活は快適なものになると言われていたが、実際には所得は減少、非正規労働者は増加し社会格差は拡大している。今年の世界経済フォーラムでは、第四次産業革命により今後4年間で失われる雇用は710万だが、新規雇用は210万で500万の差があるとの予想が発表された。労働組合はこのような実態をしっかり理解し、団体交渉や賃金のあり方を考えなければならない。重要なのは、従業員の訓練や再訓練を受ける権利を確保し、環境を整備することだ」と述べた。

img_2459-s続く各国報告では、日本から柳浦NTT労組中央執行委員が、事業構造転換のスピードが加速している中、セキュリティリスクへの対応とセキュリティ人材の確保・育成が急務であり、労働組合として速やかに対応しなければならないと述べた。また、登尾KDDI労組中央執行委員は、「グローバルビジネス展開が拡大する中で、現地採用社員の労働条件や課題などが把握しづらい。UNIのグローバルなネットワークを生かした取組みを進めたい」とUNIからの情報とアドバイスに期待した。

その他の国の報告は以下の通り。

  • 香港(PCCWSA、CWSAHK):団体交渉権の欠如、対中国関係、経済情勢の悪化などにより、組合活動が難しい。会社は組合を認めておらず、従業員の組合加入の関心も低い。対経営者という点ではUNIの力が有効であり、ハイレベルのミッション派遣を検討して欲しい。
  • 台湾(CTWU):民営化したが株式の過半数は政府が保有、従業員の平均年齢は51才で、今年も早期退職が行われた。持続可能な経営となるための人員政策を会社に求めていく。また、固定通信部門分離の動きがあるが反対の立場である。
  • マレーシア(UNIVEN):マレーシアのアクシアタ労組における過半数組合員を獲得と労働協約締結をめざす。また、DIGI(テレノール子会社)はマレー半島では組合が出来たが、サバ、サワラク島での組合結成に取り組んでいく。
  • インドネシア(ASPEKインドネシア):ファーウェイサービス組合の組織化が進んでいる。組織率は83%、労働協約締結に向けて交渉中である。また、エクセルアクシアタ労組は会社の人員整理計画について経営側と協議中である。
  • シンガポール(UTES):30社が合同でセキュリティ人材研究所を設立し、シンガポールテレコムも参加している。現在の課題はICT分野での人材確保であり、セキュリティ人材の育成も重要である。政府が行っている情報通信部門の能力開発プログラムにも期待している。
  • ネパール(UNICTS):ネパールテレコムは今年12月に400人規模の早期退職を計画しており、派遣労働者や契約社員を増加しようとしている。また、Ncellでは企業売却の動きもあり、UNIのネットワークを通じて現所有会社のアクシアタ本社に働きかけて、労働者に不利な状況とならないように対応を試みる。
  • スリランカ(メディアプロテク):スリランカテレコムの労働協約について協議中だが、感触は良い。労働協約の事例調査のため、スリランカテレコムの労使代表団が来月インドネシアを訪問し、各事例を研究する。また、新たにIT労働者のための産別組織の立ち上げを検討する。
  • インド(NCU):インドの6州で情報通信労働組合を結成、登録できた。交渉力を高める目的で6労組を統合して「NCU」を立ち上げた。
  • バングラディシュ(GPEU):グラミンフォン労組の組合登録に関する裁判闘争で勝利したが、会社側は上訴しようとしている。GPEU組合員は団結しているが、これ以上裁判が長引けば組合はダメージを受ける、UNI Aproの支援を期待する。

活動計画としては、(1)多国籍情報通信企業の組織化、(2)団体交渉、グローバル協定、社会対話の推進、(3)連帯の構築と組合強化の各項目について進捗状況と今後の活動を確認した。


UNI Apro郵便・ロジスティクス部会委員会、イノベーションを議論

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第18回UNI Apro郵便・ロジスティクス部会委員会は、2016年8月25~26日、委員及びオブザーバーを含む33人が出席し台北で開催された。新しく着任した大崎部長にとって初めての委員会となった。

ゲストスピーカーとして、中華郵政の江瑞堂副社長から「中華郵政の現状と将来展望:時代に適応した経営と将来のための投資」と題する基調講演を受けた。中華郵政の新しいサービス展開や、新しいロジスティクスセンター建設を含め、中華郵政の将来を見据えた経営方針について聞いた。特に、郵便離れが進む若い世代に郵便局をアピールするため、例えばLINEに郵政マスコットの無料スタンプを提供したり、追跡サービスや記念切手購入などが可能なスマホアプリを開発したりするなど、変化するライフスタイルに対応しサービスも進化している状況を強調した。

郵政事業の改革、新しい郵便サービス

郵便事業体が国営であれ民間であれ、各国で郵便事業の変革が進んでいることが、台湾、スリランカ、シンガポール、マレーシアの委員から報告された。シンガポールでは、離島への配達方法として、メールドローンでの配達と、スマートフォンでの追跡システムについても試行を行っていることがビデオを放映しながら報告された。

多国籍ロジスティクス企業の組織化

img_5528-sシャフィーUNIマレーシア加盟協(UNI-MLC)議長は、DHLサプライチェーンでの労組結成に向けた秘密投票を再度年内に実施予定であると報告した。テグーASPEKロジスティクス部会長は、すでに組織化している多国籍企業について状況を報告した。シンガポールSMMWUのエルヴィン・リー書記次長は、トール・オフショア・ペトロリウム・ロジスティクスやDHLグローバルフォワーディング等の多国籍ロジスティクス企業を既に組織化した経験から、DHLは従業員の制服が全て同じで誰が組織化対象かわからないため、1人ひとりアプローチを行っている状況を、実際に使用したチラシを配布しながらわかりやすく報告した。八木JP労組国際部長は、昨年行われた日本郵政グループ3社のIPO、昨年7月の豪トール社の買収、UNIとITFが仲介している米チームスターや豪TWUといったトール関係労組との会合、アジアでのトール組織化に向けた情報共有について報告した。

APPUとの関係強化

これまでのUNI AproとAPPUの関係の歴史を振り返った後、大崎部長から、今年のAPPU執行理事会にUNI Aproが招待されなかったこと、APPUの内部改革が進められており、会議の日程短縮やオブ招待範囲の規模が小さくなる傾向であることが報告され、来年のMOU再締結を含め、今後の関係強化とAPPU内部の理解促進のためには新しいプロジェクトが必要ではないかと提起された。インドのテアガラジャン委員からは「具体的にどうすればよいのか。インドの郵政総裁と我々組合の関係は非常に良好である」とのコメントがあった。多くの国では国内の労使関係は良く、今年のAPPU執行理事会に参加できなかったことは大きな驚きとして受けとめられた。国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関係した共同プロジェクトの提案や、APPU事務局長とUNI Apro郵便部会役員との意見交換の場を持つなどの提案が出された。今後、事務局とAPPUとの間で検討を続けていく。


第12回UNI Apro青年委員会、青年と政治の関わりを共有

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第12回UNI Apro青年委員会が2016年8月22~23日、マレーシア・クアラルンプールで開催され、日本、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ネパール、スリランカ、オーストラリアの委員12人他オブザーバーが出席した。

img_3727-s会議の冒頭、ウンUNI Apro地域書記長は、アジア太平洋地域の状況について、ILOの中核的労働基準を批准し、法の整備がなされた国であっても、単にそれだけでは不十分であり、労働者を保護するには、実効的な仕組みづくりがなされなければならないと述べた。また、TPPに労働憲章が盛り込まれた点や、ASEANサービス労組協議会(ASETUC)を通じたASEANとの労働条項に関する交渉の取組みと成果の事例も紹介された。さらに、第4次産業革命によりもたらされる労働者への影響(雇用の喪失)は、世界中のあらゆる地域にあてはまる課題であり、今の段階から予期し対応を取ることが重要で、そのためには労働者1人ひとりの意識を高めるべく労働運動は大きな役割を果たすべきだと述べた。

UNI Apro青年委員会構成の変更として、日本・日放労の岡﨑淳司委員から釘本聖司委員への変更や、フィリピン、シンガポール、オーストラリアの青年委員の変更も確認された。アリス・チャン青年担当部長は退任する岡﨑委員のUNI青年委員会への多大な貢献に感謝した。

委員からの活動報告では、日本から佐々木UNI Apro青年委員会副議長(JP労組)が、今回の参議院選挙におけるユース活動を報告するとともに、ユースネットワークの組織、社会貢献活動、UNI Aproと協力した英語セミナーの取組み、平和活動等を紹介した。UAゼンセン・寺嶋委員は、UAゼンセンのヤングリーブス活動を報告、その中で北朝鮮による拉致被害者の家族支援活動を紹介し、若者の健全な育成、活力ある運動構築に貢献していると報告した。日放労・岡﨑委員は、今回の参議院選挙での活動を、公共放送NHKと政治との関わりという視点から、若い組合員と議論する場を設けてきた取組みを報告した。情報労連・浦委員は参議院選挙活動について、フレージというNTT労組の青年組織の活動を紹介し、健全な社会のために、若者にどのように政治に関心を持たせ、投票率を上げていくかが喫緊の課題だと述べた。

日本の委員には、「なぜ選挙権が18歳に引き下げられたのか」、「労働組合と政治との関係はどう変わったのか」、「組織内候補を出す意味は?」、「日本人がなぜ北朝鮮に拉致されたのか」等の質問が出された。

uni-apro-youth-committee-group-photo-s他国の報告では、まずバングラデシュのタスリマ・メジャビーン委員が、労働運動を歓迎しない社会の風潮の中、経営の嫌がらせに直面しながらも労働組合を組織化した自身の体験について報告し、労働運動を通して若い世代の士気を高め、蔓延する差別をなくしていきたいと述べた。

マレーシアのモハマド・アズラン・アシュワド・ラムリ委員は、ユースで取組む活動の成功事例を共有するとともに、若者に関する課題(薬物、無謀運転、エイズ等)をあげ、それらの課題に労働組合として取組むことで、若者を取り込んでいきたいとした。

ネパールのクマール委員は、人々の労働組合に対する知識不足を課題にあげ、大学で労働組合の権利を伝えるなど意識啓発に力を入れたい、また、より多くの女性が組合に参加できるよう取組みを続けたい、と述べた。

パキスタンのシュジャ・ウル・ラーマン・ドゥラニ委員は、不十分な労働法とその運用により、低賃金・不当な労働時間など多数の課題を抱える一方で、労働に関する権利や労働運動への理解も進んでおらず、まずは活動の基盤となる体制を整えていきたいとした。

シンガポールのケビン委員は、成熟した社会の中で組合員を増やすため、キャリアアップのためのワークショップやトレーニングに参加できるようにするなど、付加価値をいかに提供できるかに力を入れており成果が出ているとした。

インドネシアのユリアン委員は組合潰しが存在する現状に触れ、経営者の意識を変えていくことが重要だとした。また、最低賃金に関する新しい政令“PP78”について、労働組合の権利が侵害されているとして撤回を求めて取組んでいくことを報告した。

オースラリアSDAのステファニー委員は、若者の非正規化が進み、頻繁な転職により組織率が低くなっていることに対して、組合への入会をオンラインで簡単にできるようにしたこと、企業の入社に関する一連の説明の中でオルグのための時間を設定してもらうなどの事例を報告した。

スリランカのノリカUNI Apro青年委員会副議長は、若い組合員に権限強化を行い、あらゆる業種の若者に組合に参加してもらうよう働きかけていると報告した。

フィリピンのカレンUNI Apro青年委員会議長代行は、先に行われた大統領選挙に触れ、新政権は労働組合にとってもプラスになる選挙だったと述べた。新しい大統領は、就任した1日目から非正規は廃止するという強い姿勢を見せ、今まで排除していた外資企業を受け入れて雇用の創出をする予定とのことだった。

玉井キャンペーン・組織化部長は、UNI Aproの行動計画の中から組織化を中心に説明し、「組織化は終わりの無い活動であり、続けなければ弱体化につながっていく」と述べた。また、企業と労働組合はウィンウィンの関係が必要で、敵対関係は問題の解決にはならない、パートナーシップに基づく組合活動が必要と訴えた。イオンやHERO(インドネシア)などを例に挙げ、ベストなパートナーシップによって企業のブランドイメージが強化されたことを報告した。それぞれの国で組合を取り巻く環境、法律は違うが、挑戦できる可能性はあるとの見方を示した。


UNI-LCJユース、英語で国際連帯を学ぶ

P1150903第16回UNI-LCJユース英語セミナーは、2016年8月19〜21日、湘南国際村で開催され、8組織から28人の青年・女性が参加した。海外からは、韓国プロサッカー選手会のヘンリー・マツダ事務局次長、ニュージーランド・ファーストユニオンのロビン・ウィルソン・ホワイティング商業・金融部門オルグ、フィリピン銀行労組のデニス・ロデル・ババオ青年委員会副議長、スリランカ銀行上級職労組のランキカ・アリヤシンゲ執行委員、スリランカ郵電労組のロハン・グナワルダナ青年委員の5人を講師に迎え、様々な地域訛りの英語に四苦八苦しながらコニュニケーションを図った。

P1150769冒頭、田原UNI-LCJ副議長から、「様々な国や産業のUNIの仲間とUNIについて学び、各国の青年・女性労働者の課題を共有しながら、友情を深めてほしい」と激励の言葉をいただいた。早速ウォーミングアップとして、自己紹介と各自の本セミナーでの目標を英語で発表した。今回のセミナーでは従来のような海外講師による講演ではなく、初の試みとして、「各国の労働運動」、「組合における青年・女性活動」、「日本と講師の出身国(居住国)の文化の違い」をテーマに5人の海外講師によるパネルディスカッションを行った。同じテーマで各国の比較ができた他、フィリピンの青年委員会が継続しているパヤタス(マニラ圏のゴミ集積場)における貧困児童向け給食活動、スリランカの女性委員会が実施する女性組合員向けエンパワーメント、ニュージーランドにおいて搾取されている外国人労働者の救済等の活動事例を聞き、参加者は各国の組合活動について理解を深めた。

また、グループワークにも多くの時間が割かれた。毎回講師とメンバーを1人ずつ入れ替えながら、できるだけ多くの人と会話の機会が持てるようにした。グループワークでは、「クール・ジャパン!紹介1分コマーシャル」、「若年労働者向け組合アピール1分コマーシャル」、「平和キャンペーン1分コマーシャル」作りを通して、いかに印象に残るメッセージを英語と工夫を凝らしたビジュアルで伝えるか、アイデアを出し合った。その他、各グループには、初日の懇親会での交流イベント企画、リフレッシュのためのゲームや体操の企画、グループワーク発表時の司会担当、前日の要約発表、毎日のブログ更新などのタスクが与えられた。

P1150855更に特別講師として、日本プロ野球選手会の森事務局長から「プロ野球選手も労働組合が必要だ!」と題する講義をいただいた。選手会は「選手を1人にさせない」をモットーに、選手へ組合の重要性を説明したり、現役生活全般からセカンドキャリアに至るまで相談にのったり、社会貢献活動を通じた野球の普及活動を行なったりしている。2004年のスト決行は、選手会が一丸となり、ファンの支持も得て闘った結果、変化を起こすことができた。参加者は夜遅くまで森事務局長から話を聞く貴重な機会を得た。

セミナーのハイライトは、最終日のグループワークである。5つのグループに、「UNI」、「組合」、「青年」、「平和」、「グローバル化」のいずれかのテーマと10分の持ち時間が与えられ、全員参加で自由に英語で表現するという課題に取組んだ。各グループは、ニュース番組風、ドラマ仕立て、各自の経験発表など、それぞれユニークな形式で素晴らしい発表を行い、他の参加者や講師から多くの質問やコメントを受けた。

P1150987閉会式では、2泊3日の学習を振り返り、グループ賞と個人賞が授与された。海外講師からは、「この3日間で驚くべき進歩があった」、「参加者と一体となってチームワークの素晴らしさを体感した」、「日本の良さを実感した」などのコメントがあり、「今後もFacebookなどを通じて、情報交換を続けていこう」との激励を受けた。

 


アジア太平洋地域の労働組合と青年・女性

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2016年8月18日、東京・情報労連会議室でUNI-LCJ青年・女性意見交換会が開催され、情報労連、全印刷、JP労組から青年・女性活動担当役員が出席し、ユース英語セミナーのため来日した海外参加者と「アジア太平洋地域の労働組合と青年・女性」をテーマに意見交換を行った。

フィリピン銀行労組のデニス・ロデル・ババオ青年委員会副議長からは、UNIフィリピン加盟協(UNI-PLC)青年委員会が日本をはじめとする多くのサポーターの協力を得て10年に渡り継続している、パヤタス地区の貧困児童給食プロジェクトの経緯、目標、今後の計画について報告を受けた。もともと、フィリピンにおける組合のイメージを変えるため、青年組合員に呼びかけ始めた社会貢献活動だったが、今では食事を与えて栄養失調児を救うだけではなく、学校に行かせるための奨学金・学用品の提供や、親にも教育の重要性を理解させ、親の就業支援も行うなど、包括的な貧困削減プロジェクトとして展開されているとのことである。この他、UNI-PLC青年委員会は、キャンパスへ赴き学生に労働者の権利の話をしたりして、就職前から労働組合に関する正しい知識を持ってもらうような活動を行っている。

スリランカでも一般的に労働組合のイメージは良くないという。それでも、郵便局や国営銀行には労働組合があり、入社すると殆どの労働者は労働組合に加入する。しかし、労働組合がイデオロギーや支持政党、宗教等様々な理由で複数存在しており、組合の連携が課題となっている。UNIスリランカ加盟協(UNI-SLAC)では、女性委員会、青年委員会がそれぞれ積極的に活動を行っている。女性委員会はメンター制度を通じて、経験ある銀行労組の女性役員が、同じ組合や郵便労組の若い女性をメンティとして指導・育成している。また、JP労組が後援する郵便労組子弟向けの奨学金プログラムにおいて、UNI-SLACの女性・青年委員が、奨学生選抜のための面接を行ったり、労働組合の社会貢献活動について説明したりしている。

ニュージーランドでも若年労働者は入社前には労働組合の知識はあまりなく、働き始めて、職場で問題があって初めて組合について知るケースが殆どである。流通・金融産業を代表しているファーストユニオンでは、若い労働者向けのセミナーを実施しているが、流通産業では転職も多く、組合員を定着させることが課題である。また低賃金で働かされている外国人労働者の保護の取組みについても聞いた。

韓国プロサッカー選手会のヘンリー・マツダ事務局次長からは、プロサッカー選手の労働者としての問題解決を支援する取組みについて聞いた。

会議後、参加者は立食パーティで交流を図った。


日本の高校生平和大使、核兵器の無い世界を訴える

Peace Messengers

今年も長崎及び広島からの平和大使がスイス・ニヨンにあるUNI本部を訪れた。この後、核兵器全面禁止を訴える嘆願書をジュネーブの国連に届ける。広島及び長崎の被ばく第一、第二、第三世代の思いを継承しながら、日本の高校生は今回約125千筆の署名を集めた。これまでに集めた署名は150万筆にのぼる。

この若い活動家達は、広島及び長崎の経験から核兵器の恐怖を生々しく描写した。高校生平和大使は、長崎を最後の被爆地とするための取組を続けている。彼らは被ばく者の話を直接聞くことができる最後の世代となろう。

彼らは12年前から毎年UNI本部を訪れている。今回のメンバーは、核兵器の非人道性を以前にも増した強さと説得力で非難した。原爆とその影響によって苦しむ人々の恐ろしい体験談を聞き、平和大使を迎えたUNI本部のスタッフには強い感情が生まれた。

平和大使との懇親会で、アラン・テイトUNI世界ICTS部会担当局長は、「皆さんの再訪はUNIにとっても非常に重要な機会だ。毎年皆さんをお迎えする度に、平和への取組み、とりわけ核兵器廃絶運動へのUNIのコミットメントを再認識する。何よりも長崎の皆さんとの絆が更に深まることが嬉しい」と挨拶した。「第二次世界大戦後の平和運動を推進したのは、広島、長崎の恐ろしい経験だ。私達も皆さんに会う度に、平和な世界をつくるという責任をあらためて感じる」と述べ、再訪を歓迎した。

UNIは長崎の人々と温かい友情を築き、深い絆で結ばれている。UNI201011月、長崎で世界大会を開催した。その大会で採択されたUNIの戦略ブレイキングスルー計画の中では、核軍縮の世界的な取組みへの全面支持が謳われている。UNIは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメンバーにもなっている。

マルシオ・モンザネUNI世界金融部会担当局長は、「もっと平和な世界をつくろうとするなら、社会的包摂を通じて貧困や不平等の問題に取組む必要がある。それを忘れてはいけない。 労働運動は、世界から核兵器を廃絶する運動で重要な役割を果たさなければならない」との決意をあらためた。

平和大使はこの後、ジュネーブの国連に嘆願書を届け、核不拡散のアクションを訴える。世界で米国、ロシア、北朝鮮、中国など9か国が15千基の核兵器を所有している。

 


UNI-LCJ/モンゴル加盟協(UNI-LCM)共同セミナー

2016年7月26~29日、モンゴル・ウランバートルで、UNI-LCJ/モンゴル加盟協(UNI-LCM)共同セミナー及び関連プログラムが開催され、UNI-LCJ加盟組合より小川損保労連中執(あいおいニッセイ同和損保労組委員長)を団長に5人の講師、UNI Aproより玉井組織化キャンペーン担当部長、UNI-LCJより森川事務局次長が参加した。

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日本側参加者(団長以下は組織正式名称の50音順):

団長 損保労連 中央執行委員

(あいおいニッセイ同和損害保険労働組合委員長)

小川 真弘
団員 情報労連 通建連合

ミライトグループ労働組合

ミライトテクノロジーズ企業本部 副書記長

藤原 宣
団員 UAゼンセン 男女共同参画・社会運動局 副部長 岡部 匡
団員 自動車総連 組織局部長 後藤 大輔
団員 JP労組 中央執行委員(組織活性化担当部長) 峰行 一夫
事務局 UNI Apro 組織化キャンペーン担当部長 玉井 諭
事務局 UNI-LCJ 事務局次長 森川 容子

 

1990年に複数政党制を導入して70年続いた社会主義体制を放棄し民主化されたモンゴルにおける労組支援は、UNI-LCJ結成以前のFIET時代より続く歴史あるプロジェクトである。「2015~2018年度UNI-LCJ海外活動の方向性」では、モンゴルの支援について「パートナーシップ労使関係」への理解を深めるための現地セミナー3回(2015年、2016年、2018年)と日本への代表団招聘(2017年)を実施することになっており、今回は今期2回目の現地セミナーとして開催された。

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セミナーはUNI-LCM加盟組合でゴビ労組を通じてゴビ社の会議室を借りて1日半にわたり行なわれた。冒頭にはゴビ社副社長が歓迎挨拶を述べる等、ゴビ社の良好な労使関係が伺われた。UNI-LCMを構成する7組織からは、若手組合員、組合役員を中心に28人(女性21人、男性7人)が参加した。日本語や英語に堪能でコミュニケーション能力の高い積極的な参加者も多く、若い労働人口が多い人材の豊富さも感じさせた。また、新規加盟組合として550人が加盟することになったチンギスハーン国際空港労組のインへ委員長も初めての参加となった。今回のセミナーは、日本側・モンゴル側からのプレゼンを聞くだけでなく、テーマごとに2つのグループに分かれ、与えられたトピックについてグループディスカッションを行う時間を多く取り、話し合った内容を発表し全体で共有するという形で進められた。その結果、参加者同士の活発な意見交換が促進され、より双方向型・参加型のセミナーとなった。

オユンバヤールUNI-LCM議長の挨拶に続き、UNI-LCJ代表団の小川団長(損保労連)が挨拶し、UNI-LCJ結成前から続くモンゴルとの交流の歴史を振り返り、参加者の積極的な参加を呼びかけた。森川UNI-LCJ事務局次長は、UNI、UNI Apro、UNI-LCJの組織機構や活動の概要、パートナーシップ労使関係を利用したUNI Aproの組織化方針等について講演した。

「日本を知ろう:社会・文化、政治・経済、労働事情」のセッションでは、小川講師が日本型労使関係について理解する上での基礎となる「少子高齢化」「長時間労働」「非正規雇用の増加と経済格差の拡大」等日本の社会が抱える課題について紹介した。その後のグループワークでは、「日・モンゴルにおけるワークライフバランス」「日・モンゴルにおける若い世代の労働組合のイメージと社会的影響力」のテーマで、いかに若年層に組合加入のメリットを伝えるか等を議論した。

08 Group B_s2「パートナーシップ労使関係の構築」のセッションでは、岡部講師(UAゼンセン)が生産性向上を目指す日本型労使関係のメカニズム、それを実現する労働組合の役割、団体交渉と労使協議について小売業加盟組合の例を示して説明し、「組合員とのコミュニケーションを密にし、現場で起きている課題を吸い上げ、解決を図る現場起点の活動」の重要性を強調した。藤原講師(情報労連)は、情報労連・通建連合加盟のミライトグループ労働組合における実際の労使協議と団体交渉の内容や進め方について具体的に紹介し、「労働組合が会社と共に会社の社会的な企業価値を高めていくためには随時必要に応じて組合員の意見を会社に伝えていく努力が必要だ」と述べた。続いてモンゴル側からも労使協約の意義、中身、基本原則についてプレゼンがあった。グループワークでは、モンゴルにおける労使のコミュニケーションの現状と改善点、各労組における団体交渉の成果、パートナーシップ労使関係構築に向けた課題等について議論が行なわれた。

「組織化」のセッションでは、ペトロスター労組のツォージ委員長がモンゴルにおける組合組織率が18%に留まっており組織拡大が喫緊の課題であること、産別労組レベルで企業の調査を行い、従業員及び企業へのアプローチを行なっていること等を報告した。課題として、使用者や国による干渉や圧力があること、非正規雇用の増加等、日本と共通する問題も抱えていることが分かった。後藤講師(自動車総連)は、組織率低下(未組織・未加盟企業)や非正規労働者を含む組織拡大の取り組み状況と、連合・地方連合会・自動車総連の三位一体の取組みを通じた最近の成功事例を紹介した。峰行講師(JP労組)からは、全国組織のネットワークを生かした福祉型労働運動、リサイクルブックエイドや書損葉書集約等のユースネットワークによる社会貢献活動を通じた組織活性化の取組みが報告され、特に書損葉書の換金方法等について質問が集中した。グループワークでは、①組織化の可能性がある企業と効果的なアプローチ、②外国人労働者や非正規労働者の組織化について討議された。携帯電話会社等が今後の組織化対象として挙げられ、外国人労働者・非正規労働者について労働法に規定し、組織化を進めるべきとの意見が出た。

23 Group A_s特に組織化については、今後UNI やUNI Aproの支援を受けながら、モンゴル側のニーズに特化した教育・研修の実施を検討していくことが確認された。これにより、既存労組のUNI加盟の促進、さらには未組織企業における新規加盟組合の結成等につながることが期待される。UNI-LCMとしては、オユンバヤール議長の下で団結し、情報交換を密にしながら次世代のリーダー育成や組織化に力を合わせて取り組むことが今後の発展の鍵となろう。これを踏まえ2017年の日本招聘にあたっては、次世代のUNI-LCMを担う若手組合役員を中心としたメンバー構成をモンゴル側に要請しているところである。

UNI-LCJ代表団はこの他、日本大使館訪問、日本式の小・中・高・高専・大学の一貫教育を行なう新モンゴル学園訪問、ゴビ社のカシミア工場見学、加盟組合訪問・職場視察等盛り沢山のプログラムをこなし、モンゴルの社会・経済事情や労働運動への理解を深めると共に、草原の伝統的なゲルに宿泊してUNI-LCMメンバーのホスピタリティーに触れ、ともに両国の労働者をめぐる問題に取り組む仲間としての強い絆を再確認した。


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