2016年8月26~27日、UNI Apro ICTS部会委員会が台北で開催され、10カ国21人が参加した。日本からは、情報労連・野田委員長、木村国際担当部長、NTT労組・柳浦中央執行委員、KDDI労組・後藤委員長、登尾中央執行委員が参加した。
開会にあたり野田議長は、「事業構造の転換やそれに伴う雇用・労働条件の変化のスピードは従来よりも早くなっている。これに伴い、労働組合が会社側と日常的に対話を行い、労使協議を行なえる環境づくりがこれまで以上に重要である」と挨拶した。台湾の朱中華電信労組委員長は、「UNIから学び、自組織の取組みに生かすことは多い。今後も支援を必要とする労働者のためにUNIと連携していきたい」と述べ、参加者を歓迎した。
ウンUNI Apro地域書記長は、基調講演の中で、「デジタル化の進展により、労働環境や生活は快適なものになると言われていたが、実際には所得は減少、非正規労働者は増加し社会格差は拡大している。今年の世界経済フォーラムでは、第四次産業革命により今後4年間で失われる雇用は710万だが、新規雇用は210万で500万の差があるとの予想が発表された。労働組合はこのような実態をしっかり理解し、団体交渉や賃金のあり方を考えなければならない。重要なのは、従業員の訓練や再訓練を受ける権利を確保し、環境を整備することだ」と述べた。
続く各国報告では、日本から柳浦NTT労組中央執行委員が、事業構造転換のスピードが加速している中、セキュリティリスクへの対応とセキュリティ人材の確保・育成が急務であり、労働組合として速やかに対応しなければならないと述べた。また、登尾KDDI労組中央執行委員は、「グローバルビジネス展開が拡大する中で、現地採用社員の労働条件や課題などが把握しづらい。UNIのグローバルなネットワークを生かした取組みを進めたい」とUNIからの情報とアドバイスに期待した。
その他の国の報告は以下の通り。
- 香港(PCCWSA、CWSAHK):団体交渉権の欠如、対中国関係、経済情勢の悪化などにより、組合活動が難しい。会社は組合を認めておらず、従業員の組合加入の関心も低い。対経営者という点ではUNIの力が有効であり、ハイレベルのミッション派遣を検討して欲しい。
- 台湾(CTWU):民営化したが株式の過半数は政府が保有、従業員の平均年齢は51才で、今年も早期退職が行われた。持続可能な経営となるための人員政策を会社に求めていく。また、固定通信部門分離の動きがあるが反対の立場である。
- マレーシア(UNIVEN):マレーシアのアクシアタ労組における過半数組合員を獲得と労働協約締結をめざす。また、DIGI(テレノール子会社)はマレー半島では組合が出来たが、サバ、サワラク島での組合結成に取り組んでいく。
- インドネシア(ASPEKインドネシア):ファーウェイサービス組合の組織化が進んでいる。組織率は83%、労働協約締結に向けて交渉中である。また、エクセルアクシアタ労組は会社の人員整理計画について経営側と協議中である。
- シンガポール(UTES):30社が合同でセキュリティ人材研究所を設立し、シンガポールテレコムも参加している。現在の課題はICT分野での人材確保であり、セキュリティ人材の育成も重要である。政府が行っている情報通信部門の能力開発プログラムにも期待している。
- ネパール(UNICTS):ネパールテレコムは今年12月に400人規模の早期退職を計画しており、派遣労働者や契約社員を増加しようとしている。また、Ncellでは企業売却の動きもあり、UNIのネットワークを通じて現所有会社のアクシアタ本社に働きかけて、労働者に不利な状況とならないように対応を試みる。
- スリランカ(メディアプロテク):スリランカテレコムの労働協約について協議中だが、感触は良い。労働協約の事例調査のため、スリランカテレコムの労使代表団が来月インドネシアを訪問し、各事例を研究する。また、新たにIT労働者のための産別組織の立ち上げを検討する。
- インド(NCU):インドの6州で情報通信労働組合を結成、登録できた。交渉力を高める目的で6労組を統合して「NCU」を立ち上げた。
- バングラディシュ(GPEU):グラミンフォン労組の組合登録に関する裁判闘争で勝利したが、会社側は上訴しようとしている。GPEU組合員は団結しているが、これ以上裁判が長引けば組合はダメージを受ける、UNI Aproの支援を期待する。
活動計画としては、(1)多国籍情報通信企業の組織化、(2)団体交渉、グローバル協定、社会対話の推進、(3)連帯の構築と組合強化の各項目について進捗状況と今後の活動を確認した。