第28回UNI世界運営委員会が、2016年5月26~27日、スイス・ニヨンのUNI本部で開催され、14か国24人の委員、オブザーバー及びUNI本部役員/各地域書記長、スタッフ等、計33人が参加した。
アン・セリン会長は開会挨拶の中で、相次ぐテロ、英国のEU離脱問題、緊縮財政に伴う労働組合及びディーセントワークへの攻撃、密室で交渉されている貿易協定、未来の労働と雇用へのインパクト等、世界で起こっている労働者の生活に影響を及ぼす出来事に慎重に対応しなければならないと喚起した。パナマ文書で暴露された腐敗したルールを変えるため今こそ国際労働運動の連携が重要であり、一丸となれば実現できると訴えた。
フィリップ・ジェニングスUNI書記長は、UNIの知名度を高めるため、世界経済フォーラム(ダボス会議)におけるマスコミ対策、本部での簡易スタジオ設置をはじめとする本部広報チームの取組みを紹介し、シンプルかつ強力なメッセージを発信する能力を各地域でも改善していく必要性を強調した。組合組織率、団体協約の対象範囲、収入格差の相関図を示し、科学的なデータで労働市場の現状と問題点を、マスコミを通じて世論に訴えていくと述べた。
ホフマンUNI副書記長からは、各部会における組織化、労組同盟、グローバル協定等に関する主な成果が報告された。
持続可能性に向けたUNIのロードマップ
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17目標、169ターゲットを達成するため、またCOP21で合意された気候変動に関するパリ協定を実施するため、ITUCをはじめUNIも、貧困撲滅、ジェンダー平等、ディーセントワーク、格差是正、気候対策等に真剣に取組んでいる。
貿易交渉は密室で進められており、各国の議会や労働組合も関与していく必要がある。経済の相互依存、投資の必要性は認識するも、ルールは公平でなければならない。特に郵便、情報通信、金融、Eコマース、移民政策を注視していく。
UNIリバプール世界大会準備状況
テーマ及び議題案について報告を受けた後、「UNI大会・諸会議における加盟組合代表団の女性比率40%達成に向けた戦略」について、マクガイアUNI世界女性委員会議長より、「長崎世界大会前後で、女性比率を17%から35%に上げることができたのは大きな前進だが、まだ40%の目標には達していない」と報告があった。そこで、目標達成に向けた具体的方策の提案があり、運営委員会は承認した。続いて、「UNI大会・諸会議における加盟組合代表団の青年比率の改善」について、カールステッドUNI世界青年委員会議長は、UNIリバプール世界大会の青年参加比率20%達成に向けて協力を要請した。
仕事の未来
過去、世界執行委員会に合わせて、「プライベートエクィティ」、「金融危機」、「平和」等をテーマに議論をしてきたが、今年は11月15日にグローバルリーダー・サミットを開催予定である。テクノロジーが雇用の数と質を変えることが十分認識されていない。世界銀行、OECD、欧州連合等で「デジタル単一市場の誕生に向けたデジタル戦略」が議論されているが、議論の中心を我々労働者に置くべきである。UNI欧州地域大会では、オンコール労働、クラウドソーシングに見られるような、見えない、曖昧な仕事をし、しかも生活賃金を得られない人が増えていることに危機感が表明された。仕事の未来と共に「連帯の未来」も考えていく。野田UNI Apro地域会長は、「ビッグデータ、IoTの時代に入り、労働に対する影響は大きい。イノベーションにより創出される仕事もある。仕事のあり方/処遇形態の大きな見直し、人材育成は労使の共同作業であり、組合の大きな役割となる」と意見を述べた。
グローバル・サプライチェーン(GSC)と生活賃金
間もなくILO総会でGSCの議論が始まる。我々の目標は、①ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(MNE、1977年採択)の最新化、②GSCに関するILO条約策定のための三者議論の開始、③ILOによる賃金ガイドラインの策定である。
バングラデシュ・アコードは、この間UNIもコミットしてきたが、具体的成果があがっている。社会パートナーのプロジェクトとしても評価されている。5年期限のアコードに、団結権を盛り込むようアコードIIの交渉をしていく。
スポーツにおける人権
シュワブUNI世界アスリート部会担当局長は、スポーツ界で起こっている人権侵害、人種差別、契約違反・無視、いじめ、男女格差、プロ・アマ格差等に加え、労働裁判所へのアクセスも拒絶され仲裁メカニズムが存在しない点を問題視した。選手だけでなく、スポーツイベントに関わる全ての労働者の人権が尊重されなければならない。
最後にジェニングスUNI書記長は、運営委員会及びUNI加盟組合のコミットメントに感謝し、1%に偏っている政治・経済的環境で苦しむ労働者のために我々の目標を実現していこう!とまとめた。