2016年3月14~16日、ウマリ委員長を団長とするフィリピン銀行労組(NUBE)代表団が来日し、UNI-LCJ金融部会の仲間と交流した。NUBE側からは、日本の金融労組の経験から学びたいとの強い要望があり、今回の受入れが実現した。メンバーは、ジーザス・ニデア副委員長(貯蓄銀行従組委員長)、ボールドウィン・セキムテ監査(預金保険機構従組委員長)、レイナー・クルス部長(スタンダードチャータード銀行従組委員長)、フェデリコ・ロハス顧問弁護士の5人。
14日の到着後、直ちに全労金本部を訪問し、桜井副委員長、深見書記長、奥井書記次長と意見交換を行った。NUBEからは協同組合銀行としての労金の役割に関して特に熱心な質問が出された。ウマリ団長は、日本の銀行で働く労働組合として初めてUNI加盟を果たした全労金の功績を称えると共に、NUBEが(UNIの前身である)国際産業別組織FIETへ加盟したことにより、銀行業界に押し寄せた技術革新の波にいかに対応すべきかを他国の例から学ぶことができた経験を述べ、海外事業を行っていなくても、同じ産業で働く者どうしの情報交換は非常に有益であると強調した。深見書記長からも、韓国の金融労組との交流で得られた情報を今年の要求に反映したこと等、国際労働運動の意義が報告された。
15日には新生銀行従業員組合、全銀連合と意見交換を行った。ウマリ団長からは「全銀連合との情報交換は、NUBEが今後取り組もうとしている農村銀行の組織化に大変参考となった。是非、フィリピンに来て、農村銀行協会と会ってほしい」との要望が出された。また、加藤元UNI Apro地域会長を表敬訪問し、ウマリ団長は、「加藤氏の退任後に、また会えるとは思ってもいなかった。今は日本再共済連理事長として、我々と同じ金融部門で活躍されていると聞き大変嬉しい」と再会を喜んだ。
16日には、UNI-LCJ金融部会主催「フィリピン金融産業と労働運動について聴く会」が損保労連会議室で開催され、損保労連、生保労連、労済労連、全信連、新生銀行従組が参加した。ウマリ団長は、NUBE及びフィリピンの金融産業概要を報告し、現在のNUBEの基礎は国際労働運動への参加を通じて確立されたと言っても過言でないと断言した。NUBEは1980年代、マレーシアやシンガポールの金融労組から支援を受けてFIET加盟を果たして以来、パートナーシップ労使関係作りに努力してきた。そして銀行業政労使協議会(BITC)設立はNUBEが主導し実現させたこと、BITCを通じた社会対話を通じて、金融産業で起こる変化や政策変更に労働組合も関与し、意見反映していく機会の重要性を強調した。フィリピンの他の産業でこのような三者対話のメカニズムを持ち定期的に対話を行っている組合は殆どない。NUBEはUNI Aproが推奨するパートナーシップ労使関係を推進し、銀行使用者とも良い関係を構築しており、ASEANの他の国にとっても先進的なモデルとなっている。
宮本生保労連副書記長から、フィリピンにおける青年組合員の活動について質問が出され、UNI Apro青年委員会の前議長も務めたレイナー部長が次のように説明した。フィリピンでは一般的に労働組合はトラブルメーカーだという悪評が先行しており、特に入社したばかりの若い世代は加入したがらない。「組合は良いことをしている」、「企業内の従業員の利益のためだけに活動しているわけではない」という正しいメッセージを伝えるために、フィリピンのUNI加盟組織の青年組合員で構成される青年委員会メンバーは、大学で学生に労働者の権利についてレクチャーする取組みを続けている。また、ゴミ集積場付近に暮らす貧困家庭の栄養失調の子供達に給食を与えると共に、子供達に日銭稼ぎの労働をさせるのではなく、貧困の連鎖を断ち切るためにも親に子供への教育の重要性を説く取組みを、UNI Apro青年委員会及び日本の加盟組織の支援も得て、10年以上継続している。レイナー部長は最後に、日本の金融部門の若い組合役員もUNI Apro青年委員会の取組みに積極的に参加してほしいと呼びかけた。
田原UNI-LCJ金融部会議長は、UNI Apro金融部会の仲間としてNUBEと今後も様々な場を通じて情報交換を続けていきたいとまとめた。
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