第18回UNI世界執行委員会が2015年11月11~12日、ニヨンのUNI本部で開催され、36か国116人の委員及びオブ、UNI本部・地域スタッフ29人が出席した。
開会挨拶でアン・セリンUNI会長は、「社会モデルを標榜する北欧で起こるとは思っていなかった組合に対する攻撃が自分の国フィンランドで起きている」と強い危機感を示し、闘う決意を表明した。一方、ミャンマーの民主的選挙におけるNLDの勝利やチュニジアの労働組合の仲間のノーベル平和賞受賞を喜んだ。続いてフィリップ・ジェニングスUNI書記長は、UNI結成から15年、ケープタウン世界大会の決議を受けた今次執行委員会では、労働の将来を構想し、デジタル資本主義における労働者自らのマニフェストを作り実施するための議論ができることを期待した。
第5回UNI世界大会及び女性大会(英国・リバプール)の準備状況については、英国加盟組合や自治体、コミュニティとも協力して進めていること、2018年はリバプールが欧州文化都市に指定され10周年を記念する年であること、リバプールの移民・奴隷貿易の歴史やコスモポリタンを表現する大会にしたい等の計画が説明された。現在、英国は保守政権下で労働運動は危機にあるが、2018年に大会をホストするあたり、パンチの利いたエネルギーを感じる大会スローガンにしたいとの提案があり、執行委員会は「Making It Happen」を確認した。しかし他言語への翻訳に工夫が必要だとの意見が出た。保守政権によるスト権縮小と闘う英国労働組合への連帯声明が採択されると共に、多くの委員から、他の国の政策や労働者にも波及する恐れがあり、欧州で見られる保守政権の動きは決して他人事ではないとの強い危機感が繰り返された。アグネス委員(英国)は、長崎で女性代表40%決議が満場一致で採択されて5年が経過するが、未だに大会に複数男性を派遣するにもかかわらず女性を1人も派遣しない組織がある点を指摘し、ペナルティを課すべきではないかと意見を述べた。ダニエルUNI世界青年委員会議長は、ケープタウン大会では35歳以下の参加が5%であったと報告し、リバプール大会には少なくとも青年の参加を20%に増やすよう、「インクルーディング・ユー!」の意図をあらためて強調し、加盟組合に青年参加への更なる支持を呼びかけた。
組織化及びグローバル協定の取組みについては、ホフマンUNI副書記長からまず、加盟組合からの組織化基金への拠出に対し感謝が述べられ、部会及び地域で多国籍企業毎に展開されている70もの組織化キャンペーンの主な成果や、グローバル協定の交渉・実施状況等が報告された。例えば、カルフールとフランチャイズやサプライヤーも対象とする新たなグローバル協定を締結したこと、モロッコのコンタクトセンター11社における職場投票で勝利し約2万人の労働者の団体交渉権を勝ち取ったこと、他方、ドイツテレコムの米国及び他の国における組織化の権利を勝ち取るためグローバル協定交渉を継続していること、ITUと連携した各国におけるDHL等ロジスティクス企業の組織化について共有した。小俣JP労組委員長は、日本郵政グループに関する最新情報として、3社の株式上場とトール買収について説明し、オーストラリアの運輸労連はじめ関係労組との関係を構築しつつ、連携を模索していく考えを示し、UNIの協力を求めた。ウンUNI Apro地域書記長は、インドにおけるIT労働者の組織化の成果(5州における組合登録と20を超える団体協約締結)と、香港の加盟組合の仲介でマカオのカジノ労働者の組織化を始めたことを報告した。アチャリャUNI Apro労組強化部長は、バングラデシュのIT企業の組織化により、団体協約が締結され12%賃上げ獲得等の成果が出たことを報告した。ユー韓国医療労組委員長は、MERS発生時の教訓として、政府の初期の対応がまずく医療従事者が感染したと批判し、医療労組自体が情報収集に努め、医療機器整備や予算措置を政府に強く働きかける等した経緯を報告した。この他、イケアの米国における労組承認を求める闘いに連帯を示し、執行委員会でメッセージを掲げた写真を撮影、キャンペーンサイトに掲載した。
国際政策課題として、気候変動、TPP等貿易協定、グローバルサプライチェーン、デジタル革命、責任ある持続可能な金融サービス等のテーマを取り上げ議論した。
ガネシャUNIネパール加盟協(UNI-NLC)事務局長から、大地震の被災者に対する、日本をはじめとする世界中のUNI加盟組合からの支援に対し感謝の言葉が述べられ、現在までの復興に向けた取組みが報告された。復興によって雇用が創出されることが重要だと強調し、UNI-NLCは復興の財源を提供する代わりに被災者に労働を提供してもらっている。ジェニングス書記長は、繁雑な手続きを排除して迅速に支援を過疎地に届けられた点を評価すると共に、単発的にバラバラ支援するのではなく、最大限効果的に活かされるようUNIが支援を調整し、継続的に支援していくことが大事だと述べた。
続いて各地域書記長が地域大会の計画について報告した。ウンUNI Apro地域書記長は、UNI Apro地域大会開催地の変更、討論テーマについて紹介すると共に、地域の最新情報として、マレーシアUNI加盟協のシャフィー議長から職場投票16回連続勝利のニュースを得たこと、ミャンマーの総選挙における民主主義の大勝利等を追加報告した。
2014年度会計報告承認、2016年度予算の留意に続いて、インゲボルグ加盟費検討作業部会座長は、11月10日に開催された第1回会合について次の通り報告した。(UNI Aproからは、東アジアを代表して野田UNI副会長、南アジアを代表してガネシャUNI-NLC事務局長、オセアニアを代表してドワイヤーSDA書記長が出席。東南アジアを代表するシャフィーUNIマレーシア加盟協議長は欠席)作業部会の権限は、加盟費額を決定することではなく、設定プロセスについて現在のやり方を変更する必要があるか、他のGUF等とも比較しながら検討し、世界執行委員会への勧告をまとめることである。①4年毎のUNI世界大会が加盟費を決定する権限を持つが、特別な状況が発生した場合、世界執行委員会にもう少し権限を与えるべきか、②統一レートを100%支払えない組合も多く、スライド制を導入するべきか、③特別な状況が発生した場合、国家の所得ベースに基づく減額基準を明確化するか、④為替変動にどのように対応するか、2016年5月の次の作業部会までに事務局は調査を行う。世界執行委員会は座長の報告に留意した。