情報労連大会出席のため、2015年7月14日から16日まで、クリストファー・ウンUNI Apro地域書記長及びラジェンドラ・アチャリャUNI Apro労組強化部長が来日し、この機会に日本の様々なUNI加盟組織・役員と意見交換を行った。

情報労連大会で挨拶したウン地域書記長は、野田委員長の強いリーダーシップの下、情報労連が、特にアジア太平洋地域における情報通信及び関連産業の労働者の組織強化を、国際連帯を通じて支援してきたことに感謝した。その成果として、多くの国で民主的な労働組合が発展し、国際労働運動の重要な担い手となっている。野田委員長からは、UNI-NLCへのカンパと『絆』の文字を入れた黄色いポロシャツ100着が贈られた。アチャリャ部長は、「これを着たUNI-NCLボランティアに助けられる被災者は、日本からの支援に励まされ、再び立ち上がる気力が湧いてくるだろう」とあらためて感謝した。
逢見UNI Apro地域会長に、来日直前に訪問したカトマンズ視察を報告したウン地域書記長は、UNI-NCLとしては大会開催を切望しつつも、現実的には700人規模の国際会議を行うためのインフラの復旧が見込めず、参加者の安全性重視の観点から、遺憾ながら開催地変更を受け入れたと述べた。代わりに、マレーシア・クアラルンプールでの開催と、首相を招待する関係で当初の日程を2日ずらすこと(地域大会は12月7~8日)が提案され、逢見会長の了承を得た。合わせてウン地域書記長は、11月18~20日にカトマンズで、南アジアのUNI加盟組合を対象とする会議の開催を提案した。
小俣UNI-LCJ議長(JP労組委員長)を表敬し、アチャリャ部長はUNI-LCJの迅速な支援に対するシャンカールUNI-NLC議長からの感謝を伝えつつ、「この絵を見る時、地震で崩壊してしまったこれらの遺産とネパールのことを思い出してほしい」との願いを込め、ネパールの世界遺産を描いた絵を贈呈した。小俣議長は、東日本大震災の経験から、被災者を孤立させないよう心のケアが重要だとアドバイスすると共に、6月のJP労組全国大会で集められたカンパ金を渡し、復興までの道のりは長いだろうが日本としても引き続き支援していくと激励した。
UNI-LCJ印刷部会会議(7月14日、凸版印刷労組本部会議室)では、ウン地域書記長は、アジア、特にインドネシア、マレーシア、インド等における印刷・パッケージング部会の組織化に対する日本の労組の支援に感謝した。釣本全印刷委員長は、インドネシアのトッパン工場労働者に関する情報を、会社側だけでなくUNI Aproからも得られたことは有益だったと述べた。ウン地域書記長は、アジアでもパートナーシップ労使関係を現実に機能する選択肢として労働組合を説得していくとし、日本の労組の継続的な支援を要請した。続くレセプションでは、8月に退任予定の竹井全印刷委員長の、長年のUNI Apro印刷・パッケージング部会への多大な貢献に対する感謝の盾が贈られた。また、ネパール大地震への支援カンパも行われ、アチャリャ部長に渡された。
UNI-LCJ金融部会会議(7月15日、損保労連会議室)では、ウン地域書記長から、最近マニラで開催されたASEAN銀行部門三者会議の成果について報告を受けた。ASEAN経済共同体(AEC)成立を目前に、ASEAN銀行部門の完全自由化、外資の更なる参入が見込まれる中、労働組合としてこの傾向にただ反対するのではなく、労働者への影響を最小限に抑えるために何ができるかを、政府及び使用者と共に定期的に議論する場の重要性を強調し、フィリピンにおける銀行部門の三者メカニズムをASEANの他の国にも模範として普及していきたいと述べた。また、日本の金融労組には、日本の金融機関がASEAN諸国でますます活発に事業を行うにあたり、このような三者会議に出席し、情報交換や人脈作りを行うことは非常に意義があるだろうと、参加を奨励した。
自動車総連では、郡司事務局長から今春闘の結果や日本の現在の課題等について説明を受けた後、ウン地域書記長は自ら40年に渡りUNI Aproを率いてきたが、ようやくUNI及びUNI Aproの知名度や評価が高まってきたと報告した。例えば、ジョン・ラギー教授が提唱した国連ビジネスと人権に関する指導原則に対応した人権の取組み状況に関する世界初の包括的報告枠組みが今年2月にロンドンで発表されたが、その策定に関わった14人の賢人グループに、ウン地域書記長が労働運動代表として唯一関わった。ウン地域書記長はまた、世界経済フォーラムの世界規模の課題を設定する、グローバル・アジェンダ・カウンシルのメンバーでもある。昨年、タイ労働法改革委員会から招聘され、ASEAN10か国に一律適用される労働権に関する協定の策定に、ASETUC(ASEANサービス労組協議会)が労働者を代表して参画していること等に、UNI Aproの実績が高く評価されていることが示されている。
ウン地域書記長は訪問先それぞれで、カトマンズ視察を報告し、ネパールの被災者は、財政的支援だけでなくモラルサポート(世界中からネパール被災者を心配する気持ちが届けられたこと)によって大変勇気づけられ、それが希望につながっていることを強調した。一方、主な収入源である観光産業が大打撃を受けており、地域大会の開催地変更がUNIネパール加盟協(UNI-NLC)全体の大きな落胆と自信喪失につながる恐れがあると懸念した。アチャリャ部長は、UNI-NLCが取組む、政府や他のNGO支援が行き届かないコミュニティへの、初期段階の支援(緊急救援物資配給)は完了し、これから夏と雨季の到来に向け、より耐久性ある仮設住居の支給と感染症防止対策が次段階の課題だと説明した。長期的には、コミュニティセンターを建設し、靴や衣服等の製造設備を併設し、住民のために安定した収入を確保するような雇用を生み出す計画があると述べた。
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