2015年4月24~25日、インドネシア・ジャカルタでXL(エクセル)アクシアタ労組の大会が開催され、大会代議員、来賓等、約60人が参加した。2003年の組合設立以降、初めての大会開催となった。XLアクシアタは現在、インドネシアでシェア第2位の通信事業者。昨年9月に野田議長を代表とするUNI Apro ICTS部会代表団がインドネシア通信事業者4社の労使を訪問、その中でXLアクシアタは会社側から副社長も出席し、非常に内容の濃い会合となった。XLアクシアタ労組はこの会合を機に活動が活発化し、大会開催に至った経緯がある。
開会式には、情報通信省と労働訓練省の代表、KSPIルスディ書記長、ASPEKミラ委員長、XLアクシアタ社パヒラ副社長が出席。また、UNI Apro ICTS部会を代表して野田議長が祝辞を述べた。開会式に引き続き、野田議長が「健全な労使関係の必要性」について対話形式で講演し、自身の労働組合役員の経験も含めて説明した。
大会では4年間の行動計画を策定し、新たな執行部を選出して閉会した。委員長に再選されたアンワー氏は、「今年中に労働協約を締結し、組合員数を増加し、良い組合を作っていきたい」と抱負を述べた。
XLアクシアタはインドネシアの経済発展に伴い、順調にシェアを伸ばし、組合も毎年賃上げを行ってきた。しかし、昨年のM&A等が影響して業績が低迷、今年は賃上げが行われなかった。また、まもなく導入予定の年金制度が労働側にとって不満がある内容となっているなど、課題は山積している。まずは、労働協約を締結する事こそ、健全な労使関係につながるだろう。現地労組の状況改善につながるよう、UNI Apro ICTS部会として、今後も必要な支援を行っていく。
2015年4月22~23日、ジュネーブのILO本部において、「小売業における雇用関係がディーセントワークと競争力に与える影響」世界対話フォーラムが開催された。
労働側グループはUNI商業部会委員会メンバーを中心に、チリ、ネパール、アルゼンチン、マラウィ、ニュージーランド、ルーマニア、南アフリカ、イタリア、オーストラリア、フランス、米国、スペイン、ベルギー、日本から構成され、UAゼンセンの八野副会長、藤吉副会長、檀上国際局部長が参加した。
政府グループは、アンゴラ、オーストラリア、ベラルーシ、ベルギー、ボリビア、カメルーン、中央アフリカ共和国、コートジボアール、フランス、ギニア、韓国、ラトビア、リビア、マダガスカル、マレーシア、ニジェール、ナイジェリア、サウジアラビア、南アフリカ、スペイン、チュニジア、米国、ベネズエラ、ザンビア、日本から代表が参加し、厚生労働省大臣官房国際課海外情報室の原田室長、職業安定局雇用政策課の高崎企画係長が出席した。
使用者側グループは、ポルトガル、南アフリカ、ナイジェリア、モンテネグロ、コスタリカ、ドイツ、米国、カナダ、ギニア、ベルギーから参加があった。日本の商業経営者団体へも参加を働きかけたが叶わなかった。
労働側グループは、使用者の都合による、ゼロ時間(または短時間)契約、オンコール労働といった、予測不能な雇用形態を認めない等、強く主張した。2日間の議論を経て、政労使で、雇用形態に関わらず全ての労働者に公平な待遇を確保するため、社会対話を行っていく等の合意に達した。
合意項目は下記の添付ファイル参照:
2015年4月3日、竹井UNI Apro印刷部会副議長(全印刷委員長)の呼びかけで、印刷関連の組合が集い、独立行政法人国立印刷局小田原工場を見学し、その後情報交換を行った。
全印刷から竹井委員長、梅原書記長、安部財政局長、下川小田原支部執行委員長、印刷労連から釣本委員長、田倉委員長代行、鈴木書記長、UAゼンセンから小林製造産業部門執行委員(イムラ封筒労組委員長)、中村関東印刷労組会長、富永関東印刷労組執行委員、吉山製造産業部門常任執行委員、折笠製造産業部門常任執行委員、大日本印刷労組から別府委員長が参加した。
全印刷・竹井委員長はじめ梅原書記長、安部財政局長、下川支部執行委員長の案内で、製紙から印刷・封包まで一貫した銀行券製造工程や、高度な偽造防止技術等の説明を受けた。各現場の労働者は役員・来賓の訪問に明るい笑顔と挨拶で応対し、組合の存在感と役員・組合員の信頼関係が各所で伺われた。質疑応答では、労働安全衛生や技術等に関する質問が出された。
工場視察後には、春闘状況をはじめとする参加労組間の情報交換と共に懇親が図られ、印刷産業で働く労働者を組織する組合間の有意義な情報共有の場となった。今後も定期的に情報交換を行っていく。
UNI世界アスリート部会執行委員会の開催と合わせて、2015年3月26~28日、オーストラリア・メルボルンにおいて、スポーツ選手のキャリア開発(PDP)に関する会議が開催され、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、アイルランド、英国、スロベニア等から、サッカー、クリケット、ラグビー、野球、ホッケー、アイスホッケー等のPDM(選手キャリア開発マネジャー)をはじめとする選手会関係者30余人が出席し、経験を共有した。日本からは、日本プロ野球選手会の森忠仁次長、松本泰介弁護士、タム・ピーター弁護士、日本プロサッカー選手会の髙野純一事務局長が出席し、現状を報告した。
スポーツ選手のキャリア開発は、2014年12月にケープタウンで開催された同部会大会で決議された2014~2018年の重点課題の一つで、教育・訓練、セカンドキャリア、メンタルヘルスも含む健康、生活スキル等を網羅する包括的な自己開発プログラムの運営ガイドラインを作成するため、好事例を共有すると共に、同課題に対する選手本人、コーチ、選手会、PDM、クラブ等全ての関係者の認識と関与を高めることが目的である。ニュージーランド・ラグビー選手会の行った調査では、自己開発プログラムがうまくいけば、良いパフォーマンスにつながり、ドーピングや八百長試合のリスクを減らす可能性も示唆されたという。
冒頭「選手が心身ともに健康であることはキャリア開発の核心」と題する講演を受け、PDPの好事例、理想的なPDMの資格や適性、成果を測る基準、選手会の役割、こうした情報をグローバルに共有する方法等について、グループ討議を重ねアイデアを出し合うと共に、PDMをはじめとする選手会関係者の人脈作りにつながった。2日間の議論の結果は、3日目に執行委員会に提案された。
競技種目、選手生活の平均寿命や文化的背景、PDP及びPDMにかけるリソースは異なるが、スポーツ選手がますます国境を越えて移動する中、グローバルな経験交流を通じた情報共有や、グローバルなガイドラインの策定は、選手の現役及び引退後の生活にとって有意義であることが改めて確認された。
なお、並行して開催されたUNI世界アスリート部会執行委員会には、日本プロ野球選手会から松原徹運営委員に代わり、山崎卓也弁護士が出席した。
国内外でご活躍のUNIリーダーから、国際労働運動でのご経験や意義についてお伺いするコーナー。今回は、アン・セリンUNI会長(フィンランドPAM委員長)です。
組合活動にはまるようになったきっかけは?
私は労働者階級の出身なので、就職したら組合に入るのは当たり前のことでした。15歳で学校を卒業して、腰掛け程度の仕事を探していました。将来、何を学ぶべきか、或いは大人になって何をしたいのか、考えるのにしばらく時間が必要だったのです。ちょうど、商業労組でメッセンジャーを募集していて応募しました。おわかりのように、ちっとも腰掛けにはなりませんでした。今もその仕事の延長線上にいるわけです!
初めて国際労働運動に関わったきっかけは?
組合で青年委員会の書記をしていた1987年に、パリでEURO-FIET(UNI統合前のパートナー組織FIETの欧州組織)青年大会が開催され参加しました。その時の印象がとても深く、国際労働運動に携わる長い道のりの始まりとなりました。
特に若い世代に向けて、国際労働運動の役割と意義を伝えるとしたら?
国際労働運動の役割は大きく変化してきました。私は1960年に生まれ、欧州、或いはグローバルな運動に初めて関わったのは20代後半の頃でした。当時、国際労働運動の役割は、相互理解を深めることだと考えていました。意見交換を通じて、ある政治的・社会的目標、経営者の目標が、世界中で一つの方向に向かって動いていると認識することなのだと。しかし、労働者のニーズや要求とは相反する方向でした。国際労働運動に関わって、世界がより小さくなっていくのを実感しましたが、目標に照準が定まっていなかったような気がします。
その後、欧州、そしてグローバルな運動は、より具体的な課題に取組むようになってきました。課題認識だけでなく、実際に行動を起こすようになりました。グローバルな共通の目標を設定し、世界中の経営者や政策決定者に交渉を挑んでいくための国境を越えた協力が、今では当たり前になっています。
私がこの20年間実感しているのは、「企業がローカルだった時代は、組合もローカルでよかった。企業が全国規模になると、組合も全国規模で活動をするようになった。企業がグローバル化した今、組合も当然グローバルに活動する必要がある」ということです。
グローバルな舞台で日本のUNIメンバーに期待する役割は?
日本のUNI加盟組合は、グローバルなUNIファミリーにとって大変重要な存在です。UNIの中では、日本の加盟組合は自分たちの組織のことだけでなく、支援を必要とする他の国のUNIメンバーのため、いつも最善を尽くしてくれるという信頼があります。私たちは日本の経験から学び、同時に私たちの経験も皆さんと共有していきたいです。皆さんには是非、国際連帯の重要性や、労働者が建設的かつ効果的に力を合わせた時に生まれる大きな可能性について、日本のメンバーに広く伝えていただきたいと思います。
日本についての印象は?
日本を訪れたのは、長崎世界大会の時だけですが、とても素晴らしい経験でした。日本の皆さんは準備を万全に整え、私たちを温かく迎えてくださいました。大会そのものが、文字通りブレイキングスルーでした。個人的に残念だったのは、決議委員会の議長を務めていたため、自由時間が少なく、長崎の街や歴史について見聞きする機会が限られていたことです。いずれにしても、長崎からの平和メッセージは、敬意をもってケープタウンに引き継がれました。
ケープタウンを振り返って
UNIの素晴らしい伝統は、ケープタウン世界大会でも明確でした。長崎の「ブレイキングスルー」戦略は、ケープタウンでは「インクルーディング・ユー」、現地の言葉で「ウブントゥ」の決議へと歩を進めました。「インクルーディング・ユー」は、労働組合にとって非常に中核的な決意を示しています。組合は、できる限り多くの人々を包摂することで、労働者の発言力を高めていく組織です。組合の取組みに、労働の世界における課題を取込み、労働者が組合に何を求めているか耳を傾けていく必要があります。組合への参加を可能にするだけでなく、もっと身近なものとしていかなければなりません。そこで必要なのは、組織化、組織化、組織化です。包摂の理念は、職場から地方組織へ、全国組織からグローバルユニオンへとボトムアップで進めていかなければなりません。小さな力をまとめて大きな力にしてこそ、成果を挙げることができると思います。
国内外でご活躍のUNIリーダーから、国際労働運動でのご経験や意義についてお伺いするコーナーが始まります。第1回は、小俣利通UNI日本加盟組織連絡協議会(UNI-LCJ)第7代議長(JP労組委員長)です。(聞き手:小川陽子UNI-LCJ事務局長)
小俣UNI-LCJ議長は現在、UNI世界執行委員、UNI Apro会長代行、UNI Apro郵便・ロジスティクス部会議長を務めていらっしゃいますが、初めて国際労働運動に関わったきっかけは何ですか?
冷戦終了後にハンガリー郵便労組との定期交流に参加しました。当時は、世界の郵便が国営でしたから、政策議論というよりも、いかに自分たちの身分(公務員)を守り労働条件を向上させるかが主題で、深い議論をした記憶がありません。それ以上に、ヨーロッパの歴史の奥深さと、美しい街並みが印象に残っています。また、ベトナム郵電労組との交流では、労働運動と政治や社会制度が一体となっていることに改めて驚きを感じました。
その後、JP労組(及び旧組織)独自交流やUNI(及び前進のPTTI)、ITUCを通じて、様々な国を訪問されていますが、ご自身の経験から国際労働運動の意義はどのように感じていらっしゃいますか?
日本は企業内労組を中心とする運動ですから、どうしても内向きになりがちです。しかし、連合の結成を一つの機会に他の産別との交流が拡がり、更に、UNI等のGUFを通じて世界の仲間と繋がることができました。郵政事業を例にすれば、自由化、民営化、株式公開等の課題は、国の違いはあっても共通の課題になっています。特に、既に上場している他国の経験は大変参考になります。
つい最近、日本郵政グループが豪物流大手トールを買収すると報道されました。
企業のグローバル化は人材のグローバル化にも繋がります。今までの常識では想像できないことが起こると考えています。今後、労働者が世界の仲間と連携する必要性は益々高まると思います。
昨年末のケープタウン世界大会はいかがでしたか?
労働運動の幅広さを改めて実感しました。また、反アパルトヘイト闘争の歴史を体感することもでき貴重な体験となりました。特に今回の大会は、国内の政治日程が重なり、青年・女性を中心に代議員を構成しました。参加した若者は積極的に交流し新たな発見もしたようです。将来の役員候補としての自覚をもって今後も積極的に運動に参加してくれることを期待しています。
最後にUNIに期待することをお聞かせください。
国際会議では言語の違いからニュアンスの違いもあり、時に本音の議論が難しいこともあります。しかし、せっかく各国から集まり、現状やお互いの経験を共有するのですから、表面上だけではない議論をしていく工夫が必要だと思います。世界の労働者が繋がりを深め仲間を増やすことでUNIのプレゼンスや発信力が高まると考えています。このことは労働条件、福祉、労働環境の向上に良い影響を与えるでしょう。そのためにJP労組としても積極的な役割を果たしていきます。