シンガポールのUNI金融部会加盟組織の1つ、DBS銀行労組のノラ・カーン委員長率いる組合執行委員会メンバー19人が経営側人事担当重役3人と共に、東京で労使による活動計画協議を行うため、2014年8月29日から9月3日まで来日した。この機会に、UNI-LCJ金融部会メンバーは、多様な国籍、文化、背景を持つ人材こそが強みであるとし、ジェンダー・ダイバーシティも尊重・実践し、社員の58%、役員の3分の1以上が女性であるというDBS銀行及び労組と、両国の女性の活躍について意見交換する機会を設けた。
冒頭、歓迎挨拶として田原UNI-LCJ金融部会議長は、本年2月にUNI-LCJ金融部会海外調査団がシンガポールを訪問した際、DBS労組から温かい歓迎を受けたことにあらためて感謝すると共に、「日本でも女性の活躍推進が掲げられているが、政府の音頭だけでは進まない。労働組合と使用者の協力があって始めて進められるものだ。そういう意味で今日は、女性の活躍推進が進んでいるシンガポールの労使と意見交換ができる非常に重要な機会だ」と述べた。
続いて、労使を代表しノラ・カーン委員長は、「10年以上前、損保労連を訪問した当時は、女性の中執がいなかったが、今は5人に増えたと聞いている。これは大きな前進だ。組合役員の決意と努力の結果であり、敬意を表したい」と挨拶した。
「日本における女性の社会統合の現状」と題し、損保労連の安田晶子中執(UNI Apro女性委員会副議長、あいおいニッセイ同和損害保険労働組合副書記長)から、「日本再興戦略改訂2014」のうちの「女性の活躍推進」の概要と、労組の女性組合員に関する取組みについて紹介した。会社においても組合員全体においても全体の約6割を女性が占めながらも、どちらも指導的な地位にあるのは主として男性であり、組合活動においては女性の参画が遠のいたり、女性のニーズに応えられなかったり、あるいは女性の視点が生かされていなかった。そこで、女性が組合活動に参加する機会や女性の意見が反映される場面を意図的につくる必要性があると判断し、女性層に特化したプロジェクトを設置、女性役員向けセミナーや女性組合員向けイベント、セミナーを実施し、女性のネットワークを強化している。安田中執は、「DBS労使の経験を聞き、気づき・ヒントを得て今後の活動に活かしたい」と述べた。
ノラ・カーンDBS銀行労組委員長は、ナショナルセンターSNTUC(シンガポール全国労働組合会議)女性開発局が主導する4つの取組み―①女性の復職支援プログラム、②女性のリーダーシップ能力強化プログラム、③女性組合員向け活動、④シングルマザー向け活動、を紹介した。SNTUCの現在の会長は女性であり、ノラ・カーン委員長もSNTUC副会長であると共に、女性開発局の議長も務めるなど、女性労働者への各種支援・教育訓練に関わっている。またDBS銀行は、SNTUC及び人材開発省が共同で表彰する「働く母親にとって最良の企業」賞を、2013年、2014年共に受賞している。
「組合役員、管理職への女性登用に関するDBS銀行労使の経験」として、アンジェラ・ラムDBS銀行人事担当上級副社長から、DBS銀行における様々な女性従業員支援について紹介があった。「全て順調に進んだわけではなく、長い道のりだった。最近になってようやく成果が表れてきた」と述べ、成功の秘訣を「経営側が重要性を認識して、トップから女性支援のメッセージを発信し続けたこと、職場の管理職の理解を得られるよう、コミュニケーションをよくしたこと」だと語った。続いて、ケンディ・ハンDBS銀行労組副書記長から、DBS銀行労組の活動について報告があった。「21人で構成される執行委員会のうち、三役含め14人が女性である。会社でも組合でも活躍する女性が多いことが、他の女性従業員の励みにもなっている。家族や子供を招待するプログラム等を通じて、家族からも働く母親へのサポートが得られるよう工夫している。」と述べた。
