2014年7月21~24日、モンゴル・ウランバートルで、UNI-LCJ/モンゴル加盟協(UNI-LCM)セミナーが開催され、日本から、宮原情報労連中執を団長に以下6人と、UNI Aproより玉井UNI Apro組織化キャンペーン担当部長が出席した。モンゴル側は、UNI商業、郵便、ICTS部会に加盟する7組織から約30人が参加し(9割以上が女性、約7割が若手組合員や組合役員)、組織化、団体交渉、ワークライフバランスのテーマで報告と意見交換を行った。
団長 宮原 千枝 情報労連組織局中央執行委員
団員 宮島 佳子 UAゼンセン流通部門執行委員
団員 池上 茂光 自動車総連組織・政治局部長
団員 藤田 豪 損保労連中央執行委員 (日本興亜労組中央執行委員長)
団員 山田 裕行 JP労組中央執行委員(郵便担当部長)
事務局 玉井 諭 UNI Apro組織化キャンペーン担当部長
事務局 森川 容子 UNI-LCJスタッフ
(組織正式名称の50音順)
開会式では、オユンバヤールUNI-LCM議長の歓迎挨拶に続き、宮原団長がUNI-LCJ代表団を代表して挨拶した。宮原団長は、今日までのUNI-LCJ、UNI-LCMの交流の経緯を振り返り、組織再編を経ながらもモンゴルでのセミナーが継続的に開催されてきたこと、加盟組合による地道な組織拡大の取組みに敬意を表し、「近代的な高層ビルがあるかと思えば伝統的なゲル地区がある現実の中で、社会的によりディーセントな国にしていくにはどうしたらよいかを考えるのがモンゴルの皆さんに託された課題。日本のパートナシップ労使関係について学んでいただく一方、日本側も女性が活躍しているモンゴルの社会・労働運動について学びたい」と挨拶した。
「UNI Apro及びUNI-LCJの紹介と活動について」では、玉井UNI Apro組織化キャンペーン担当部長がUNI-LCJの組織機構や結成の経緯、アクションプランや海外活動の方向性などに基づいた活動の様子、UNI Aproの戦略目標と組織化・キャンペーン、教育・研修、広報・調査、国際連帯等の活動を紹介した。玉井部長は、UNI AproもUNI-LCJと同様、会社との話し合いを重視しパートナシップ労使関係の構築を目指していること、また組織化においては現地加盟組合や協議会の主体的な取組みが重要だと強調した。モンゴル側参加者からは、加盟費納入の仕組みや日系企業の組織化について質問があった。オユンバヤール議長は、規模は違うがUNI-LCMが目指すものはUNI-LCJと共通するとして、特に最近青年層の組織化の取組みとして、英語セミナー等を開催し、国際労働運動や英語への関心を高めるとともに、国内労働運動の重要性の理解につなげていると報告した。
「組織化」のテーマでは、まず日本から自動車総連の池上組織・政治局部長が、自動車総連の紹介及び組織拡大の取組みについて女性の組織化を中心に報告。続いて損保労連の藤田中執(日本興亜労組中央執行委員長)は、損保労連および日本興亜労組による有期契約社員の組織化に至るまでの経緯を詳細にわたり報告した。モンゴル側からは、有期契約社員の組織化における会社の反応や話し合いの経過、当事者への説明の難しさ、契約後の組合員資格などについて、多くの質問が出され、モンゴルでも増えている非正規労働者の組織化に対する関心の高さが伺えた。モンゴル側からはビャンバー・ゴビ労組委員長がゴビ労組の活動や日本の無償資金協力により1981年に設立されたゴビ社の事業内容、ナショナルセンター・モンゴル労働組合連合の組織機構と活動、ILOからも評価されている政労使三者協議システムや労働法改正のポイントについて紹介した。「組織化に向けて、もっと自分たちの活動を国民に対して周知しなければならない。研修やセミナーなどを徹底し、話し合いを通じて組織化が可能なはず。LCMとして役員研修の機会を設けて、組織拡大につなげていきたい。現場を訪れて日系企業にも組合について紹介していきたい」と力強い決意が述べられた。
「団体交渉」のテーマでは、日本側から、JP労組の山田中執が、団体交渉、苦情処理制度、労使協議等の仕組みについて紹介した。参加者からは、組合を通じた苦情処理制度と通常の個人で行う申立制度の違いや組合に入るメリットについて質問が出た。モンゴル側からはオトゴンビレク郵便労組委員長が協約及び団体交渉の法的環境とその仕組みについて詳細に報告した。
「ワークライフバランス」のテーマでは、日本側からUAゼンセンの宮島流通部門執行委員より、課題と背景についての説明とポスター掲示等を通じたUAゼンセンにおける啓発活動が紹介された。モンゴル側からは、エンフバヤル・ネットコム労組委員長が、経済が発展する中でいかにワークとライフのバランスを保っていくかが課題だと述べた上で、男女のワークライフバランスの違い、労働時間や各種休暇の取得状況、モンゴル独特の職業である遊牧民ヘルパーの労働実態などを紹介した。
「労働組合の社会貢献」のテーマでは、情報労連の宮原中執が、組織率低迷と非正規労働者の増加の中で社会的存在意義が問われており、組合員に留まらない社会全体への働きかけが重要だとした上で、震災復興ボランティア活動、リサイクル活動、平和活動、学生に働くことや労働組合について伝える取組みなどを紹介し、モンゴル側参加者からは「新しい取組みで、是非UNI-LCMでもできることをやってみたい」との反響があった。
閉会式では、宮原団長がセミナーを総括し、「モンゴルは1990年の民主化後24年しかたっていないが、政労使三者協議を確立して取組んでいる皆さんの活動に頭が下がる。日本では、安倍政権が世界一企業の活動しやすい国にするとして、ホワイトカラーエグゼンプションや解雇規制緩和などが労働側の意見を聞かずに推進されており、経済が優先されて、労働者がないがしろにされている。モンゴルのように基本に立ち返って労働者保護の考え方を日本に持ち帰り初心に帰って活動していきたい」と述べた。オユンバヤールUNI-LCM議長は、活発に議論した参加者とUNI-LCJ代表団に感謝し、今後も交流を続けていきたいと述べた。
翌日は、午前中グループに分かれて商業労組、通信労組、郵便労組との意見交換と職場視察を行った後、午後から郊外の草原地帯に移動し、遊牧民の生活体験(ゲル宿泊)並びにUNI-LCM役員・若手組合員との交流を行った。その後、ウランバートル市内に戻り、チベット仏教寺院や博物館等の視察、モンゴル文化ショー鑑賞等を通じ、モンゴル社会・文化への理解も深めた。
写真はFlickr参照