UNI世界金融部会運営委員会は、UNI欧州金融部会大会に先立ち2013年10月23日、アテネで開催され、約40名が出席した。委員会は、「規制の影 響」と「組織拡大」を中心に議論を行った。イオジア議長は各地域からの参加者と、特に新たに就任したUNI Apro金融部会の田原議長及び新たに加盟した全信連の田中氏、西村氏の出席を歓迎した。開会の挨拶でホフマンUNI副書記長は、欧州の緊縮財政で非常に 困難な時期にギリシャで開催する本委員会の意義を述べた。特に金融産業で大規模なリストラやアウトソーシングが進み、雇用喪失による組合員減少傾向にある 中で、コロンビアで新たに組合が結成されたこと、ブラジルやアルゼンチンの強い組合が米国の金融労働者組織化を支援していること、アジア太平洋地域では日 本で全信連がUNIに加盟し組織拡大に貢献したことなど、この間大きな成果も見られたと喜んだ。 「規制の影響」に関して、まずUNI本部のマッケンジー同部会政策担当から失業調査第2版(2013年10月出版)の結果として、地域で程度の差はあれ金 融危機という理由でリストラは継続していることと、成果給と連動し厳しい販売ノルマを課されていること、雇用の海外移転、心理的圧力(失職の不安や顧客か らの怒りなど)による金融労働者の健康悪化などの傾向が概説され、リアルバンキングの促進と団体交渉を通じた雇用・労働条件維持の重要性が強調された。モ ンザネ同部会担当局長は、2012年に世界経済フォーラム(WEF)が開始したマルチステークホルダーによる金融システムの規制改革プロセスを補完する取 組みを紹介した。WEFの場では経済危機以降2008年から金融産業の社会における役割―社会に対するコミットメント―について、大企業のCEO、金融政 策立案者、エコノミスト、学者、労働組合や消費者団体などの市民団体がいっしょになって議論を始めた。第1ステップとして金融システムが社会に提供すべき 点を、金融・経済の回復、安全な貯蓄・金融契約へのアクセス、経済成長を支える効率的な資本の配分、金融サービス・商品への広範なアクセス、安価で安全で 信頼性ある送金、金融リスクマネジメント、顧客の経済的意思決定に有益な情報・アドバイスの提供などであると確認した。 続いて各地域からの報告・意見提起では、プリヤラルUNI Apro金融部会担当部長が、金融包摂の重要性を訴えた。「アジアでは未だ15億人が銀行口座を持たない。欧米では金融安定化を重視しているが、アジアで は開発目標を満たすための資本の獲得も必要で、規制が障害となってはならない。欧米でうまくいく規制が他の地域にそのまま当てはまるとは限らない。社会の 発展や貧困削減について配慮が少ない。監督機関を作るのであれば組合も関与すべき」と述べた。コケラ委員(南ア)も、単一の規制を一律に適用するアプロー チに疑問を呈した。イオジア議長は、「金融規制は国際問題であり、金融安定化委員会、バーゼル委員会、欧州司令など様々な国際レベルで議論されている。 我々は有効な規制には賛成するが、社会的責任を忘れてはならない。職場を守っていかなければならない。消費者団体などとの連携も考えられるだろう」と、消 費者インターナショナルのオレリー氏を紹介した。オレリー氏は組織の活動と、UNI金融部会の行動目標との共通点を紹介し、「販売と適切なアドバイス」 キャンペーンの分野で協力していけるのではないかと述べた。 「組織拡大」について各地域から報告した。米国には金融部会加盟組織が無いが、通信労組(CWA)のステファン氏が、ブラジルやアルゼンチンの金融労組の 支援を得ながら、NGOとも連携し、主要都市をターゲットに展開している米国金融産業の組織化状況について説明し、引続きUNI金融部会を通じた世界の金 融労組の連帯支援が必要だと協力を要請した。田原UNI Apro金融部会議長は、全信連の加盟による同地域の組織人員が増大したこと、インドのステート銀行労組の再加盟を促進していること、その他、バングラデ シュ、マレーシア、ネパール、パキスタン、スリランカ、タイ、パプアニューギニア等で組織拡大が見込まれることを報告した。また途上国では加盟費徴収率が 低く、また為替の影響を受けることから、加盟費支払い人数は、実際の組合員数より少ないと説明した。UNIアフリカ地域金融部会は、39組織、16万 2000人を擁する。能力開発プロジェクトを通じて組織拡大を目指すと共に、アフリカの多くの国で事業を行う多国籍銀行エコバンクをターゲットとした組織 化にも取組んでいる。UNI欧州地域は2011年以降、組織化作業部会を設置し、毎年「組織化フォーラム」を開催し、東欧や中東での組合結成の成功事例も 紹介した。 最後にUNI世界金融部会運営委員会として、行動計画を実施するために、分野毎に作業部会を設置し、各地域の委員で責任分担することが提案された。 「CSR」作業部会はアフリカ、「組織化」作業部会は米州、「コミュニケーション」作業部会はUNIApro、「規制」作業部会は欧州が主担当となり、各 地域代表と協力していくこととなった。イオジア議長は、「欧州地域では既に各副議長が責任を分担して欧州行動計画を実施している。このアプローチを世界レ ベルに適用するということだ」と述べ、委員の協力を要請した。 欧州以外の参加者は、翌24~25日のUNI欧州地域金融部会大会を傍聴する。 |