2月 2012のお知らせ

UNI、マルチブランド小売企業のインド参入に、警戒と厳重な条件を要求

インドの4500億ドル規模の小売市場に、外国直接投資(FDI)を認めるかどうかの激しい議論が行われている最中、クリスティ・ホフマンUNI副書記長 率いるUNI代表団が先週、インド政府と面会し、参入による社会的影響について議論した。UNI代表団は、仮に認めるとしても、団結権を保障し、小規模小 売業や国内サプライヤーの保護を確保するため、投資には厳重な条件をつけるよう提案した。また、何千万もの小規模な小売店によって占められる同産業におい て、条件に適応し混乱を最小化する能力を保つため、巨大小売企業参入許可のペースや規模を遅らせるようアドバイスした。
多国籍企業の参入により、深刻な事態を招くようなインドの商業改革が起こることが予想される。経済成長が続き、消費者数も増大する中、インドは多国籍小売 業者にとって、多くの点で最後の未開拓地となっている。ウォルマートの存在が、メディアやNGO、労働組合によって「待った」をかけられたのは当然のこと だ。

南アフリカでは既に、ウォルマートによるマスマートの買収が果たして国益にかなうかどうかを控訴裁判所が裁定しようとしていることに触れ、我々は、ウォル マートの参入がインドの労働者、製造業、農家、中小企業の大規模な混乱を意味するかもしれないと主張した。 UNI代表団は、FDIにより大規模な雇用成長が予測されているが、他の国の経験ではそうならなかった点も指摘した。小売業全体としての雇用成長率は、 ウォルマートが存在しない方が高かったことが明らかになっている。

ウォルマートは世界最大の民間企業であり210万人以上を雇用する使用者だ。その経済力をバックに行く手を阻むものはない。

UNI代表団は、世界中で経験したウォルマートの事例に基づく詳細な報告書を提示した。

意外にもインド政府代表は、UNIの見解を聞きたがっていた。実際、彼らは国内での議論の過程で、UNI以外に労働者の権利の問題を提起したものはなく、 その貢献は「比類ない」とさえ言った。更に、南アフリカで既に提示された論点について学ぶことにも関心を示した。歴史的にインドと密接な関係があるから だ。

インド政府は11月に、53の大都市で外国企業がインド小売企業の51%を所有することを認めると発表した。しかし数日後、主に小規模小売店や小売業の利 害関係者によって主導された政治的大反対を受け、計画を保留とした。恐らく、都市の数をずっと制限して認めるつもりのようだが、その他の条件はまだ決まっ ていないようだ。

小売産業は今のところ「インフォーマル」で、労働者も組織されていないため、労働者の利益は概して無視されている。労働者をフォーマル経済に取り込むこと は何でも前進だという見方がある。しかし、ウォルマートは既に卸売店舗を通じてインドに進出しており、UNIの調査担当が集めたデータでは、その仕事には 最低限の賃金しか払われていないことがわかっている。多くの従業員は、インフォーマル部門のレベルより更に安い賃金しか得ていない。つまり、小売の雇用が フォーマル化したとしても、「良い仕事」やディーセントワークになる保障はないのだ。UNI代表団は政府に、伝統的に組織されている産業でなされている例 と同様に、小売産業でも賃金基準に関する三者交渉の場を検討するよう要請した。これによって、労働者も交渉テーブルに着くことが保障され、インドのサービ ス経済の発展において、別なかたちで前進する可能性が期待される。

UNI代表団の訪問は、広くメディアの関心を呼んだ。報道はUNIのウェブサイトにリンクされている。UNIは、次のステップとして、インド社会から関係諸団体を代表する150人ほどが一堂に会するフォローアップ会議を3月にデリーで計画している。


UNI-LCJapan年次総会、フィリップ・ジェニングスUNI書記長記念講演 「グローバル経済における欧州金融危機のインプリケーション」

 

2012年2月2日、東京で、第13回UNI-LCJ年次総会が開催され、2011年度活動報告、及び会計報告、監査報告、2012年度活動計画、予算が承認された。本部及び地域組織からはジェニングスUNI書記長とウンUNI-Apro地域書記長が駆けつけた。

「グローバル経済における欧州金融危機のインプリケーション」と題したジェニングス書記長記念講演には加盟組合を含め100名を超える参加者が集まった。
東日本大震災以降、初来日となった今回、ジェニングス書記長は冒頭、被災者とその家族へ深い哀悼の意を表すると共に、日本の労働運動を長年主導してきた芦 田氏、宇佐美氏の逝去に対し、両氏のご冥福を祈った。UNI-Apro会長に就任した加藤情報労連委員長には激励を、UNI-LCJの国際会議開催貢献賞 受賞については祝福の言葉を述べた。

世界各地で政治変革が起こり、市民による社会格差に不満を訴えるオキュパイ運動が拡大する中、今年のダボス会議ではディストピア(逆理想郷)という言葉が 使われた。ジェニングス書記長は「完全雇用やディーセントワークが実現する世界がユートピアであるなら、金融危機によって人々が憤り不平等が蔓延する今日 の欧州はディストピアの状態だ」と述べた。

欧州の長年の夢であったEU統合は、政治・経済的統合そして共通通貨ユーロ導入により域内の市民に様々な恩恵をもたらした。しかし、2008年金融危機が発端となり、銀行が破綻し、公的債務危機も加わって、緊縮財政、失業率増大につながり、悪循環に陥っている。

このような状況下で欧州労働運動は経済成長計画を求め、正しい選択がなされるよう闘っている。ジェニングス書記長は、「UNIは国際機関で発言力を強化 し、そして各地域、各部会がブレイキングスルー戦略のもと、各国内の政策決定プロセスで発言力を強化していかなければならない。協調した対応が不可欠だ」 とさらなる連帯を呼びかけた。

質疑応答で、柿田JP労組ユースネットワーク議長は、欧州での若年失業問題に対する組合の対応について質問した。「欧州金融危機の最大の被害者は若者であ る。多くの企業はコスト削減のため、採用を見送っている。欧米のビジネス界は、2兆ドルもの現金の山にあぐらをかいているが、先行きが不透明なためそれら 財源が投資されずにいる。今こそ、経済成長のために労働者に再投資されるべきである。緊縮財政では根本的な解決にならない。欧州の組合は、全ての若者に雇 用と教育の機会を確保するよう求めている。」

橋本JSD国際局部長が、インド小売業界における外資参入規制について見解を求めたのに対し、ジェニングス書記長は、「インドにおける小売のグローバル化 についてUNI代表団がデリーで政府関係者に意見提起した。インド世論の反発による外資の自由参入阻止が背景にある。6億人の中産階級を抱えるインドは小 売業最後の未開拓地である。UNIは、外資参入に当たり、インド側と知見を分かち合いながら、節度ある政策を立てるようインド政府に提言している。」また LCJの全部会に対し、日系企業の海外進出をつぶさに見ていき、進出先でも国内と同様、強力な労働組合運動そしてパートナーシップ労使関係を普及するよう 鼓舞した。

続いて行われたレセプションでは、落合UNI-LCJ議長が「UNI-LCJ組織の純増で101万7200人となった。ブレイキングスルー戦略の下、加盟 組合と共に更に前進したい」と開会挨拶を行い、続いて妹尾厚生労働省総括審議官、古賀連合会長そしてウンUNI-Apro地域書記長より連帯挨拶を受け た。ウン地域書記長は、加藤新会長の強力なリーダーシップのもと、ブレイキングスルー戦略を邁進していく決意を述べた。

写真はFlickr参照。


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