1月 2009のお知らせ

UNI-Apro/UNI-LCJ郵便テレコム部会第17期国際労働学校(2008年12月1~5日、マレーシア・クアラルンプール)

~UNI-Aproユース ステップアップ!~
UNI-Apro/UNI-LCJ郵便テレコム部会第17期国際労働学校が、2008年12月1日(月)~12月5日(金)の5日間、マレーシア・クアラルンプールで開催された。国際労働学校はUNI-Aproの青年を対象としたワークショップで、日本からNTT労組9名、KDDI労組5名、情報労連2名、JP労組9名の計25名、Apro地域の6ヶ国(フィリピン6名、インドネシア1名、バングラデシュ1名、ベトナム4名、シンガポール1名、マレーシア8名)から21名、総勢46名の参加となった。
マレーシアへの出発前日、日本人参加者向けにオリエンテーションが行われ、小川陽子UNI-Apro青年・女性コーディネーターよりUNIの概要および国際労働運動についての講義、前回の参加者である後藤一宏KDDI労組企画部長より、外国人参加者とのコミュニケーションの方法、ワークショップ中の注意事項など細かいアドバイスを受けた。さらに、宇田珠美NTT労組中央執行委員(国際担当)、渡辺拓也KDDI労組中央副執行委員長、安永貴夫情報労連書記長、佐々木貢JP労組国際部長から各組織概要および国際活動の紹介もあり、初めて顔を合わせる参加者にとって非常に参考になった。オリエンテーション終了後の懇親会には、野田三七生NTT労組事務局長、竹内法心JP労組中央副執行委員長も駆けつけ、緊張気味の参加者を激励した。

プログラム
プログラムは、基本目的である①労働組合の基本コンセプトを学ぶ、②国際労働運動の基礎知識の習得、③国際連帯の促進とネットワークの構築をもとに、より深い理解を得られるように毎年改善・工夫されている。国際労働運動やグローバル化で労働者が直面する課題を学ぶ講義と、それを受けて議論するグループワークに分けられ、積極的な関与が求められる参加型ワークショップである。グループは、英語力、国籍、ジェンダーなどを考慮して6つに分けられる。加えて、参加者は4つの委員会(ワークショップでの規則作り・司会進行などを行うプログラム委員会、毎日の活動を総括するリポート委員会、講義の合間に気分転換のエクササイズを行うファン&ソーシャル委員会、参加者が持ち寄った物品を販売し、収益をフィリピン・パヤタス貧困地区の子供達に寄付するマーケティング委員会)のいずれかに所属し、互いに助け合いながら役割を果たして連帯を深めていく。
初日は、オリエンテーションとして、ワークショップの意味、進め方、基本ルールの説明、自己紹介、委員会メンバー登録などが行われた。2日目の開校式に続く基調講演では、主催者代表として出席したUNI-LCJ郵便テレコム部会世話人の渡辺KDDI労組副委員長が、高齢化、非正規労働者の増加という日本社会の現状を背景に労働組合の組織化の取り組みを報告した。クリストファー・ウンUNI-Apro地域書記長は、自らの国際労働運動における経験を紹介するとともに、いまだにある「労組は使用者に対立するもの」というイメージを変えるには青年の力が必要だと訴え、「強い意志を持てば、何事も成し遂げられる」と呼びかけた。また、日本の協調的労使関係はアジアの他の国においても有効だと強調した。
3日目には、各国代表が青年活動を報告。フィリピンの貧困地区児童への給食ボランティアをはじめとして、マレーシアの移民労働者ヘルプデスク、インドネシアにおける自由で民主的な組合設立の歴史的背景など、初めて知る他国の様々な課題と多彩な活動に参加者は熱心に聞き入っていた。日本からは、①JP労組の柿田将博・九州地方本部ユースネットワーク議長および中島紗緒里・東京地方本部スタッフが、民営化の影響および労組統合、青年部の今後の展望について、②NTT労組の川村洋平ドコモ本部執行委員が、プルタブを集めて車椅子を贈るなどフレージの社会貢献活動を紹介。午後には、シャフィー・BP・ママル・UNIマレーシア加盟協議会(UNI-MLC)議長から、マレーシア労働運動の現状と課題の講演も行われた。シャフィー議長は、「UNIファミリーの一員としての自覚を持ち、共に協力していこう」と参加者を鼓舞した。

課外活動
ワークショップ4日目は、グループごとにクアラルンプールの多様な文化・多民族性とグローバル化を観察する課外活動を行った。参加者は、事前に計画した主要ポイント(中華街、インド人街、中央郵便局、ショッピングモールなど)を訪問し、通りすがりの人へ労働組合に関するインタビューをすることになっていた。途中で激しい雷雨に見舞われるなどのハプニングもあったが、互いの職場環境、労働条件などを話し合うなど、足止めされた時間も有効に活用していたようだ。早朝から終日、共に行動して課題をこなした後は、参加者間のコミュニケーションが格段に円滑になっていた。翌日のグループ発表では、チームワークについて、グローバル化のメリット・デメリット、労働組合に関する一般の人々のイメージが報告され、活発な質疑応答が行われた。

寄付金
参加者が持ち寄った物品販売と、遅刻者からの罰金徴収、日本の各組織における事前カンパなどで、総額約18万円の寄付が集まった。閉会式で、マーケティング委員会からパヤタスの子供達のために役立てて欲しいと、レイナー・クルスUNIフィリピン加盟協青年委員会議長に贈呈された。

終わりに
最初は緊張に顔をこわばらせていた日本人参加者だったが、グループ討論や委員会活動を通じて次第に外国人参加者とも打ち解け、最後の課外活動を経て強い連帯感が生まれたようだ。連日、深夜まで作業が及び、その課題量の多さ、外国人参加者の時間のルーズさを指摘する声もあったが、大多数の参加者から達成感・充実感と共に「若者の組織化など、各国共通の課題が分かった」、「これからも外国の仲間との交流を続けていきたい」、「他国の状況を知ることが出来て、有意義だった」などの肯定的な意見が多く聞かれた。アリス・チャンUNI-Apro青年・女性担当部長は、「このワークショップにおける経験は最初のステップに過ぎず、ここで見聞きし感じ学んだことを今後の活動に生かしてほしい」とまとめた。


ユニバーサルサービス維持に向けて-UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会 伊藤栄一担当部長に聞く

グローバルな金融・経済危機は、郵便・ロジスティクス部門にどのような影響を与えていますか?
経済・金融危機は、郵便・ロジスティクス部門に極めて大きな影響を与えています。生産が落ち、消費が減退すれば、モノを運ぶ必要も無いからです。事実航空宅配各社は軒並み財務目標の修正や事業拡大計画の縮小を行っています。IATAによれば、昨年11月世界の航空貨物の輸送量は13.5%の減少を記録したとのことです。最近しばしば「危機は、危険と機会という2つの単語からなっている」と語られます。経済・金融危機は、「翌日配達航空配送サービスに特化した企業よりも、安価で確実な配送サービスが得意な企業(例えば、郵便局)にはプラスに働く」と言われています。郵便事業から進化した多国籍ロジスティクス企業であるTNTにせよ、DHLにせよ、伝統的な郵便事業部門を強化する方向に動いています。郵便物数は各国で減少しており、この傾向は必然のように言われますが、ドイツポストの取り扱い郵便物数は増大しています。私たちは、「常識」に惑わされず、各国の状況を良く把握し、ベストプラクティスを集め、政策に生かしていく必要があります。

2008年を振り返り、UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会はどのような成果を上げましたか?
第1に、民営化・規制緩和に対する取り組みです。競争の導入とユニバーサルサービスは、どこの国でも再調整が課題となっており、労働組合はチャレンジに直面しています。私たちは、各国の状況を定期的に発信し、各国における規制議論に組合が有効に対応できるように支援してきました。第2に、組織化です。2007年UNI郵便部会大会は、郵便・ロジスティクス部会と名称変更し、民間急送便・ロジスティクス企業の労組も受け入れることとしましたが、民間急送便・ロジスティクス企業はほとんど組織されていないのが実態です。UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会は、この分野で最も活動的に組織化を進めています。勿論、伝統的な郵便部門の組織化にも力を入れています。韓国、ベトナムで、郵政事業の上級職員労組が結成されました。しかしアジア太平洋地域には、まだまだ郵便労組が無い国が多いことも事実です。少なくともAPPU加盟国には郵便労組がある状況を作りたいと考えています。第3に、UPU、APPUとの連携強化です。昨年はUPU大会議が開催され、ジェニングスUNI書記長がハイレベル会議でパネラーとして参加しました。APPUとの連携も継続しています。小地域における連携の強化も進めています。

2009年の活動計画を教えてください。
UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会が、パワフルな存在、影響力を持った国際労働組合組織として登場するには、少なくとも各国に郵便・ロジスティクス労組が存在し、良くネットワークされる必要があります。現在UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会の勢力は、39組合、61万7000人です。現在各国で組織化の努力が進められています。組織拡大が最大課題です。その上でグローバルな政策力、グローバルな代表制を高めて行かねばなりません。UNIは、今年中に自由化について調査し、政策をまとめ、国際機関の場で発表し、ユニバーサルサービスを守る国際世論を高めることとしています。今年7月にはUNI-Apro郵便・ロジスティクス部会大会が開催されます。ここでは民営化をテーマとした討論を行います。金融・経済危機の中、イデオロギー的な民営化論者の影響力は低下しましたが、将来の発展のための投資資金が不足していることは、特に途上国の多くの郵政事業が抱える問題です。その点で郵政改革は、必ずすべての国でテーマとなります。アジア太平洋地域の組合のリーダーたちは、このチャレンジに備え、政策力を向上させる必要があります。その点でJP労組の経験が大いに役に立ちます。

日本の郵便・ロジスティクス部会加盟組合へメッセージをお願いします。
山口JP労組委員長は、UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会の議長、UNIの副会長を務めております。世界の郵便労組を概観すると、JP労組は米国、英国、ドイツ、中国に次いで5番目に大きな組合となります。是非組合員の皆様にもこのグローバルなポジショニングを理解いただき、これまで以上に国際活動の強化を図って頂きたいと思います。特にアジア太平洋地域の郵便労組の強化は、必ず日本の郵便労組の国際的なポジションを強化します。今後とも、UNI-Apro郵便・ロジスティクス部会をリードして頂きたいと思います。


日本の加盟組合のリーダーシップに期待-UNI-Aproテレコム部会 クン・ワルダナ・アビョト担当部長に聞く

グローバルな金融・経済危機は、テレコム部門にどのような影響を与えていますか?
米国AT&Tで人員削減が報じられるなど影響が出ています。UNI欧州は、金融・経済危機に対し、グローバルな規制強化を呼びかける13ポイントの決議を出していますが、我々もこれを支持します。アジア太平洋地域のテレコム部門に限れば、現在のところ大きなインパクトは感じられません。しかし今後アウトソーシングなど、組合員数に対するインパクトが表面化してくるでしょう。コアビジネスまでアウトソースすることは受け入れられません。レイオフに対する保護の仕組みを作る必要もあります。グローバル金融・経済危機は4年以上続くと言う学者もいます。米国や欧州の動向を観察しつつ、対応を準備していく必要があります。

2008年を振り返り、UNI-Aproテレコム部会はどのような成果を上げましたか?
第1に、テレコムの規制に対する取り組みは、グローバルに共通するテーマです。テレコムと放送の融合、携帯による支払いなど金融との融合というコンバージェンスの枠組み、機能的分離への対応、ユニバーサルサービスなど、どこの国でも枠組みの変化が課題となっており、労働組合はチャレンジに直面しています。私たちは、定期的で緊密な情報交換を行い、各国における規制議論に組合が有効に対応できるように支援してきました。
第2に、組織化です。既存の「レガシー」と言われる分野で組合員が減少する一方、携帯、専門職・監督職、アウトソーシング企業などにおける労働者の増大に対応し、私たちはテレコム労組が新たな領域で組織化を行うように働きかけ、成果を上げてきました。ASEANでは2国間交流で助け合っています。フィリピンでは携帯会社のスマートやグローブをカバーするCWU(通信労組)が形成されました。タイでは、TRUEに働きかけを行っていますが、さらにノルウェーの傘下にあるDTAGも組織したいと考えています。
第3に、小地域における連携の強化と、政治的な存在感の拡大です。地域統合の枠組みに対応し、ATUC(ASEANテレコム労組協議会)、SATUC(南アジアテレコム労組協議会)を結成し、ASEAN、SAARCに対話のパートナーとして認知されることを目指しています。フィジーでUNI加盟協が結成されたこともあり、オセアニアではネットワーク化を図りたいと考えています。東アジアテレコム労組フォーラムは定期に開催されており、UNI-Aproテレコム部会をリードしています。個人的な意見ですが、3カ国プラス1オブザーバーから、モンゴル、中央アジアなども含める形に発展できればより良いと考えています。

2009年の課題をお聞かせください。
今述べた規制、組織化、小地域の連携と地域経済統合に対する対応は、継続的な課題であり、当然のことながら今年も重点課題となります。さらに今年は、グローバル枠組み協定(GFA)締結に力を入れたいと考えています。UNIは、2010年長崎世界大会までに50のGFA締結を目標としています。UNI-Aproテレコム部会としてもこの課題に応え、対応を強化します。テレコム・マレーシアなど可能性はあります。ヴァーチャル・テレコム労組アライアンスで青年と女性の参加を促進していますが、この分野も発展させたいと考えています。

日本のテレコム部会加盟組合へメッセージをお願いします。
加藤UNI-Aproテレコム部会議長(NTT労組委員長)にはいつも感謝しています。NTT労組のイニシャティブによる多くの活動が、UNI-Aproテレコム部会の活動の基礎を作っています。又KDDI労組、情報労連の組織化の取り組みにも敬意を表します。日本は、テレコム産業という技術面で最も発展しているばかりではなく、組合も多くの経験を積み、各国の労組は多くを学ぶことが出来ます。日本で起こったことは他の国でも起こります。今後ともUNI-Aproテレコム部会における日本の加盟組合のリーダーシップを期待します。今年7月UNI-Aproテレコム部会大会がジャカルタで開催されます。ぜひ皆様とともに、UNI-Aproテレコム部会の将来を討論し、有意義な結論を得たいと考えています。そして2010年長崎では、アジア太平洋地域のテレコム労組の強さを示したいと思っています。

クン・ワルダナ・アビョト―インドネシア出身。2005年5月、UNI-Aproテレコム部会担当部長に就任。バンドン工科大学博士課程修了。東京大学への留学経験もある。1995年から2004年までPTインドサット社に勤務、UNI-Apro青年委員会の議長を務めた。


4月P&MSフォーラムの成功を-UNI-Apro専門職・監督職委員会 ジャヤスリ・プリヤラル担当部長に聞く

P&MS委員会の、2009年のビジョンをお聞かせください。
2008年3月に、オーストラリア・メルボルンで、UNI-Apro専門職・監督職大会が開催され、地域における活動計画が確認されました。専門職・監督職委員会のビジョンは、専門職及び監督職に就く労働者が、労働組合を通じて「ディーセントワーク」を達成することができるよう支援することです。専門職・監督職も他の労働者と同様、組合に加入し、団体交渉を行う権利を享受すべきです。そのためには、組合自体が彼らのところに行き、組合加入を勧めなければなりません。
組合の中には、特に監督職は経営側の人なので組合に加入させることは不利になると考えている場合もあります。しかし、それは誤解です。監督職と呼ばれる人々の多くは、一般の従業員の利益に反した行動をとる権限を持っているわけではありません。実際、労働組合には専門職・監督職の組合員が必要だし、彼らも組合を必要としています。

日本のP&MSメンバーにメッセージをお願いします。
2009年4月に東京で、NTT労組の連帯支援をいただき、「アジア太平洋地域の専門職・監督職にとっての革新的な労働組合」をテーマに、フォーラムが開催されます。そこで、UNI-Apro加盟組織が専門職・監督職組合員を勧誘・組織化し、維持していくためのガイドラインの策定について話し合う予定です。ディーセントワークの確保や、ワークライフバランスの実現、定年後の生活等に関心のある日本の専門職、監督職の皆さんにはぜひ、海外の事例も共有できるこのフォーラムに参加していただければと思います。


2010年長崎に向けてチャレンジ-UNI-Apro青年委員会 マグダレン・コーン新担当部長に聞く

グローバルな金融・経済危機を、どのようにお考えですか?
UNIの一員、及びUNIアジア太平洋地域組織の青年活動担当部長となり、大変うれしく思っております。アリス・チャン現商業部会担当部長が築いた、青年活動の強固な礎を引き継ぎ、大役を仰せつかりました。
2009年は、誰にとっても厳しい年となることは明白です。世界的な金融危機を背景に、労働運動は、雇用の安定が脅かされ、労働市場が緩和されるなど、大変な難問に直面するでしょう。今後、アウトソーシング/オフショアリングがますます一般化し、非正規雇用の拡大により、さらなる困難な時代を経験することになるでしょう。
しかし、物事には常に二つの局面があるもので、逆境の中にもチャンスはあると思います。苦しいときこそ労働運動にとって、グローバル化の主導権を握り、経済発展を見直し、もっと現実的な代替案や持続可能な開発戦略を助言するチャンスであると思います。
その過程で労働組合は、世界的問題の解決策だけでなく、新しいタイプの労働者を組織化する、創造的で革新的な戦略を模索しなければならなくなるでしょう。様々な形態の非正規雇用が急速に広がっていますが、これは労働組合にとって組織改革と、組合主義の考えを広めるチャンスです。
アジアをリードする日本の労働組合の役割は、この時代、非常に重要です。人々の関心が東アジアに移る中、グローバルプレーヤーの一員として、日本が果たす役割に大きな期待が寄せられています。労働組合運動においても同じことが言えます。

2009年の活動計画をお聞かせください。
国際労働組合運動を持続させるために、青年組合役員の参加と成長を無視することはできません。私たちは、若い人々に関わる問題は何であるかに的をしぼり、彼らの意見を聞く必要があります。自分達が若かった頃の問題とは、違うことがよくあります。それゆえに、今の若い人々の要望を把握しサポートしていかなければなりません。
UNI-Aproでは、青年組合員の育成に全力を注いでいます。今年7月25日、UNI-Apro4部会大会に合わせて、青年委員会を開催します。青年が、アジア太平洋地域の組合役員と交流するよい機会でもあります。今年も、南アジア、及び東南アジアの青年組合員向けの、UNI-Apro/FES後援の研修コースが開催されます。

日本の青年メンバーにメッセージをお願いします。
2010年長崎での世界大会は、素晴らしい大会になると確信しております。この重要な大会の準備で、日本のUNI-Apro青年委員が中心的役割を果たしていることに敬意を表します。UNIの活動そして労働運動全体に、若い人たちが関わるすばらしい機会です。アジア太平洋地域からより多くの青年組合員が長崎大会に参加し、日本の青年と交流を深めることができるよう、UNI-Apro青年大会を世界大会と合わせて開催することにしました。
青年活動の担当部長として、より多くの若者が、チャレンジに一歩前進し、ステップアップする覚悟があれば、そしてビジョンを表明するしかるべき仕組みがあれば、前途は明るいと楽観しています。皆さんと近いうちにお会いして、意見交換することを楽しみにしています。

マグダレン・コーン―シンガポール出身。2009年1月、青年活動担当部長に就任。シンガポール国立大学で社会学修士号取得後、同社会学部で授業助手を務めた。学生時代には活動的な学生リーダーであっただけでなく、卒業研究のフィールドワークのために様々な場所で暮らし、東南アジアの労働者や移民の家族と交流を深めた経験がある。


成長を続ける流通産業の新たな展望-UNI-Apro商業部会 アリス・チャン新担当部長に聞く

グローバルな金融・経済危機は、商業労働者にどのような影響を与えていますか?
昨年来の世界的な金融危機によって2009年も、全ての商業労働者にとって困難な時期となるでしょう。しかし、これまでも様々な困難を乗り越え成長を続けてきたグローバルユニオンとして、UNI及びUNI-Aproは加盟組織とともにこの新たな問題に積極的に対応していけると確信しています。当然、企業は成長を維持するためにリストラや戦略変更を余儀なくされるでしょう。UNI-Aproはこれを、労働者を組織化しディーセントな(働きがいのある人間らしい)労働条件を実現することにより、企業の「資産」である労働者が自分の企業の成長に貢献できるようにする機会であると考えています。

これまでのUNI-Apro商業部会の成果と、2009年の活動計画をお聞かせください。
UNI-Aproは、以下の国々の商業部門組織化に取り組んできました。
マレーシアでは、10社以上の商業企業において労組結成に成功しました。2009年には、団体協約の締結、積極的な組合員拡大、組合承認に向け努力し、持続可能な労組へと強化を図っていきます。
ベトナムでは、ベトナムに進出する多国籍商業企業の労組との関係を構築し、同時にナショナルセンター(VGCL)と協力して、これら多国籍商業企業の全国レベルの産別労連を設立することにより、両方のレベルで労使関係を発展させ、従業員の労働条件など問題を解決していきたいと思います。
インドネシアでは、加盟組織であるヘーロースーパーマーケット労組が使用者との模範的な協調的労使関係を構築しており、私たちはこれを、他の使用者、労働者、労働組合に普及していきたいと思います。引き続き、既存の商業労組の強化と、新たな商業労組の組織化に取り組みます。
タイも、組織化戦略を見直す重点国であり、UNI-Aproは商業部門の調査を始めようとしています。タイにおいても成長産業である商業部門の組織化戦略について議論しているところです。
インドではUNICOMEを結成し、組織化の対象企業を絞りました。2009年からは、ニューデリー、ハイデラバード、バンガロールで大々的な組織化を始めます。
他の国については、時機を見て商業部門組織化の機会を検討します。
UNI-Aproは、各国の加盟組合協議会を通じ、UNI-Aproの全ての加盟組織と連帯し、商業部門の労働者の組織化に取り組んできました。組織化にご協力くださったUNI-Apro加盟組織及び連帯組織のご支援に大変感謝しています。
商業部門は、労働者の多くがシフト勤務や非定型な労働条件で働く女性と若者であり、それぞれの職場において労働運動への関心を持ってもらうには、独創的な方法が必要です。私は商業部門の組織化活動を、女性や青年を労働運動に参加させるための場でもあると考えています。そのため、これは「商業部会」の組織化だけでなく、UNI-Aproの女性・青年グループを強化する機会でもあります。

商業部会担当部長としての抱負を教えてください。
私は常に自分をオルグであると思っていますので、組合活動における目標は変わることはありません。つまり、組合員の組織化と勧誘。組織労働者は健全な労使関係を構築する基盤を持つからです。
組合員の育成。「休眠」組合員ではいけません。労働運動を信望し、組合員と労働者にとって有益な組織にするため積極的に労働運動に参加する、変革推進者でなければなりません。
既存の労組を強化することにより、差別や偏見無く連帯して、他の産業や全ての労働者を組合に加入させることが重要です。

日本の商業部会加盟組合へメッセージをお願いします。
私はUNI-Aproで働く中で、すばらしい組合役員や進歩的な組合と活動する喜びと幸運に恵まれ、自分自身を成長させることができました。人生には課題が山積していますが、UNIとUNI-Aproの同僚や加盟組織からのご協力と連帯支援をいただき、「連帯」を共有することによって、「課題」は私たちにとって「機会」に変わりました。UNI-Apro商業部会とUNI-Aproの発展に向け、微力ながら新たな任務に邁進していきたいと思いますので、2009年も皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

アリス・チャン―マレーシア出身。香港上海銀行勤務時代は、サバ銀行労組で交渉部長、教育部長、執行委員を歴任、APRO-FIET時代から女性・青年コーディネータ、教育トレーナーとして活躍。1997年から、APRO-FIET及びUNI-Aproにおいて女性・青年担当部長を務める。2009年1月、商業部会担当部長に就任。


世界的な金融危機に立ち向かう労働組合の共同戦略-UNI-Apro金融部会 ジャヤスリ・プリヤラル担当部長に聞く

グローバルな金融・経済危機は、金融部門にどのような影響を与えていますか?
国際金融市場の崩壊によって、今や主要国経済は不況に陥っています。危機に対処しようと各国政府はバラバラで相反する行動をとっています。過去、保護主義を打破する自由市場理論を擁護した国は、逆に自国の利益を保護する動きをとっています。多くの人にグローバルエコノミーは存在すると思われていたものが、実は単にグローバル市場に過ぎなかったのです。グローバル化のプロセスを推進してきた規制緩和や自由化の動きは、急に止まってしまいました。労働組合はこれまでずっと、企業の押し進める非情な競争、倫理に反する利潤極大化に大いに懸念を抱いてきました。工業化の時代から始まり現在の「金融化」に至るまで、危機の際に最も打撃を受けたのは労働者です。それでも労働組合は、社会における変化の悪影響を軽減する勢力として生き残ってきました。21世紀になってもその事実は変わりません。投資を惹きつける目的の新しい金融商品は、リスクの高いデリバティブでした。プロモーターも投資家も有毒な金融デリバティブ商品に潜むリスクがどれほどかを理解していませんでした。これが、現在の混乱の原因のひとつと言えます。
銀行に加え規制当局の側のモラルハザードについても、UNIは非常に懸念しています。投資家の信頼を損なうことは、ビジネスに大きな影響を及ぼすだけでなく、北米及び欧州の金融産業に携わる従業員の雇用を危険に晒すことになり兼ねません。UNI金融部会は既に、国際金融市場における同様の不正取引を防止し二度とこうした大惨事を繰り返さないよう、有効な規制システムの導入を関係当局に働きかける取組みを実行しています。多くの商業銀行には国際的なガイドラインに基づくリスク測定システムがあるようですが、リスク管理と破綻回避の有効なシステムや手続きはないように思われます。

2008年の成果、および2009年の課題をお聞かせください。
UNI金融部会は、銀行、保険、金融機関の従業員を代表する組合を関わらせ、ボトムアップの規制システム導入に尽力する先駆者です。我々は、企業の長期的持続性を犠牲にして、ただ株価をつり上げるため短期的利益を追求する「プロフィット・エンジニアリング」はやめるべきだと主張しています。従業員全員の利益を代表する組合として経営側と協力し、顧客に最大限の利益を確保すると共に、銀行の持続的成長を透明性あるやり方で管理監督するよう、規制当局に働きかけていくべきです。
このような危機に直面し、労働組合は現場の組合員のために考え、グローバルに行動する必要があります。UNIは金融産業の持続的発展に好ましくない傾向を反転させるべく、グローバルに行動するための基盤です。金融の安定は公益であり、市場の力に任せておくことはできません。日本を含めアジア太平洋地域のUNI加盟組合は、今こそ手を携えて影響力ある役割を果たしていかなければなりません。
2008年8月に、UNI-Apro金融部会委員会が東京で開催され、石川議長(損保労連委員長)が議長を務めました。金融部会委員会は毎年会合を行い、地域の活動を計画・実施しています。委員会では、日本も含め、アジア太平洋地域各国における金融危機のインパクトについて情報を共有しました。2009年の優先課題は、インド、インドネシア、フィリピンにおける組織化です。昨年8月の時点では、アジア太平洋地域の銀行にとって、それ以前の金融危機ほどの甚大な影響はなかったようですが、市場の統合が加速する中、新たな問題が起こりつつあります。従って、UNI-Apro金融部会としては、金融産業の労働組合が油断することなく状況を監視し続けると共に、各国の規制当局に対し、金融産業において顧客及び社会に責任ある安定した金融サービスを提供するため、「監視と透明性を求めるボトムアップ・アプローチ」というUNIの呼びかけを支持するよう働きかけるべく、対話を始める必要性を繰り返し主張してきました。
日本では、ゆうちょ、労働金庫、共同組合、都市銀行、信託銀行など、貯金から投資まで様々な金融機関が存在していることに感銘を受けました。日本社会に、貯蓄と倹約という豊かな伝統があるためでしょう。金融産業における多様性は適切な監視と有効な規制をもって継続されるべきです。そのために金融労組は、良き倫理的慣行を促進するために積極的な役割を果たすことができます。一方で、何万人という市民の年金記録に関する事故が発生したことにも驚かされました。このような事故を防ぐには、労働組合が『内部告発者』としての役割を果たす必要もあるでしょう。

日本の金融部会加盟組合へメッセージをお願いします。
世界300万人の金融労働者を代表するUNI金融部会は、日本の加盟組合の皆さんと協力し、労働組合の監視の下、責任あるビジネス慣行に関する憲章を促進していきたいと思っています。
本年7月25~27日にはジャカルタで、第3回UNI-Apro金融部会大会が開催されるので、日本からも多くの皆さんの参加をお待ちしています。大会では、現下の金融危機への労働組合の対応を議論し、互いの経験を学ぶことが期待されます。そして、我々の課題を克服し、金融産業を強化するための共同戦略を立てたいと思います。今年もご支援ご協力よろしくお願いいたします。

ジャヤスリ・プリヤラル―スリランカ出身。コロンボのインド銀行に25年間勤務し、国際貿易ビジネス及び財務等を担当。1984年よりセイロン銀行労組(CBEU)の執行委員、副委員長を歴任。国際労働運動との関わりは1990年、APRO-FIETで青年コーディネータを務めたのがきっかけ。2006年より、UNI-Apro金融部会及びUNI-Apro専門職・監督職(P&MS)委員会担当部長。


重要な日本のプレゼンス アドリアーナ・ローゼンツヴァイクUNI印刷部会担当部長に聞く

グローバルな金融・経済危機は、印刷関連産業にどのような影響を与えていますか?
グローバルな経済・金融危機は、印刷関連産業にも大きな影響を与えています。少数の多国籍企業による寡占化、生き残りをかけた中小企業の価格破壊、コンピューター化、デジタル化といった技術革新は、この数年間進んできた事態ですが、この傾向はさらに強まっています。仕事内容に大きな変化が生じているばかりではなく、雇用の削減が進んでいます。新しい労働者の組織化と彼らへの職業訓練の提供が組合にとって喫緊の課題となっています。
この事情は、全ての印刷サブセクターに共通しています。新聞産業でも、発行部数の減少、M&A、広告収入の減少が進んでいます。新しい技術の到来による仕事内容の変化、アウトソーシングが全世界的に進んでいます。又他の産業と非常に密接な関係にあるパッケージング産業は、顧客企業の移動に伴い他国へ移転することが多い部門です。紙幣や証券などセキュリティーペーパー分野でも、多国籍企業のシェアが拡大しています。このように印刷関連産業の動向は多国籍企業の行動に大きく左右されており、UNI印刷部会としても多国籍企業の組織化、関係作りを重要な戦略としています。

2008年の活動の成果をお話ください。
昨年の最も重要な会議の一つは、11月に開催されたセキュリティーペーパー会議でした。この会議の開催は、2007年UNI印刷部会代表団が日本の全印刷を訪問した際の討論の結果です。この分野で大きな影響力をもつ、ギーセック、デラル、ABCという3つの多国籍企業の分析を行い、ギーセックとデラルの労働組合ネットワーク形成に結びつきました。民営化された国、民営化と闘っている国もあり、官民で対立してはならず、各国の違った動きを認識することが基本です。一つのモデルを全ての国に押し付けるわけにはいきません。日本の全印刷は、セキュリティー印刷部門を公的部門に維持するために闘っており、それを支持することは、UNI印刷部会の重要な任務です。セキュリティー印刷分野労働組合ネットワークを作りながら対応したいと考えています。今年5月ドイツでギーセックの会議を開催し、ネットワークの強化を図ります。この分野は、紙幣や官報の印刷に限らず、クレジットカードやスマートカードの分野にも拡大しており、発展する分野です。
アジア太平洋地域の印刷部会も前進しています。アムコール、キンバリークラーク、SIGなどの多国籍企業における組合強化にも取り組みました。ベトナムでは、11月にパッケージング・製紙部門会議を開催しました。キンバリークラークに焦点を当てましたが、ベトナム代表団からは、「ベトナムに来る多国籍企業は、ベトナムの労働組合法を守らねばならない」との発言があり、ビラの配布や、家族も参加するレクやパーティで組織化を行っているとの報告がありました。キンバリークラーク労組運営委員会がこの会議で結成され、今後の発展を分析していきます。
2009年1月27日UNI印刷部会は、スウェーデンのイーランダース社とグローバル協定の締結に成功しました。同社は、中国やインドでも展開しており、今後の発展が期待されます。

日本の印刷部会加盟組合へメッセージをお願いします。
日本からアジアに進出している企業も多く、アジアにおける日本のプレゼンスは非常に重要だと認識しております。竹井全印刷委員長におかれましては、昨年ザグレブで開催されたUNI-Apro印刷部会運営委員会で副議長に、UNI世界印刷部会執行委員会で印刷部会世界執行委員に選出されことを改めてお祝い申し上げると共に、今後も是非アジアの印刷部会活動を牽引されご活躍いただきますよう祈念いたします。全印刷労組には、2006年11月のUNI印刷部会中国ミッションの成功など、大きな貢献をして頂いております。中国とUNIの関係も新しい方向が見えつつあり、今後ともご支援よろしくお願いいたします。
さて今年の予定です。昨年11月にもミュラーUNI世界印刷部会議長、ローゼンツヴァイクUNI世界印刷部会担当局長、トミー・スウェーデン印刷労組委員長が訪日し、セミナーを開催すると共に、日本の印刷労組の皆さんと交流しました。この取り組みは今年も継続し、日本の加盟組合の皆さん、及び印刷労連や印刷関連の皆さんとの対話と理解を更に進めていきたいと考えています。
今年もインド、ベトナム、マレーシア、タイなどでの組織化セミナーを開催します。又今年4月には、ベルリンでパッケージング分野の労組会議、9月には、インドでUNI世界印刷部会委員会、UNI-Apro印刷部会委員会と共に、アジア太平洋新聞労組会議を開催する予定です。全ての日本の加盟組合の皆さん、関係労組の皆さんの参加を期待しています。


アジア太平洋地域におけるUNIメディア部会の活動と今後の展望 ヨハネス・ストゥディンガーUNIメディア部会副部長に聞く

これまでのUNIメディア部会の成果をお聞かせください。
これまで、UNIメディア部会は組織化に焦点を当て、新しいキャンペーンを展開してきました。組織化はメディア・娯楽関連労組の支援と、欧州以外の地域での組合員を拡大することが目的です。
アジア太平洋地域では、東南アジアの放送業界労組のネットワークを構築し、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)との協力を強化するために、マニラで放送労働者会議を開催しました。香港ディズニーランド従業員の組織化キャンペーンは、世界的なエンターテイメント企業、ディズニーのテーマパーク従業員をグローバルな労組同盟結成にむけてまとめるのに大きな一歩となりました。2008年4月に香港で開催された会議には東京を含む全てのディズニーランド労組代表者が参加しました。会社側と会って、組合が香港ディズニーの敷地に自由にアクセスできるよう要求しましたが、認められませんでした。ディズニー組織化キャンペーンの最終目的は労組ネットワーク構築や香港の仲間達への支援だけではなく、世界中で組合のアクセス権が認められるようなグローバル枠組み協定の締結が長期的な目標です。
アジア太平洋以外の地域では地域ごとの運動および、南アフリカ、ブラジル等の映画製作労働者を対象とした国別プロジェクトを推進しています。地域キャンペーンが情報交換や協力を促進する組合間のネットワーク構築を目的としているのに対し、国別プロジェクトは組合の組織化支援に重点を置いています。米州では脚本家、監督、映画製作技術者の組織化に、欧州では東欧の映画・放送産業労働者の組織化に取り組んでいます。
この他にも2008年は各地でさかんに活動が行われました。多くが公共放送(PBS)擁護の活動でした。フランス、韓国、ニュージーランド、英国でUNIメディア部会は持続可能な財源、質の高い番組作り、編集上の独立性を守ろうとする加盟組織を支援しています。欧州レベルでは、EU関係機関および各国政府によってPBSへの資金供給に関する新たな規定が議論されています。UNIメディア部会は、こうした議論で大きな存在感を示し、IFJと連携して活動しています。1月16日にはPBSの財源に関する共同声明を発表しました(www.union-network.org/meiをご覧下さい)。私達は、知的所有権保護にもさらに力を注いでいます。海賊版に立ち向かい、作品を使用したら公正な報酬が支払われるよう各国法および国際法(EUと世界知的所有権機関)の整備を他の関係団体とも協力して促進してきました。また、国内・国際レベルで著作権協会とも強力な連携を築いています。海賊版については国際プロデューサー連盟のIVF、FIAPFと共に活動しました。商業放送分野においては、業界のグローバル化を調査し、グローバルな労組ネットワークに向けて活動を始めました。そのターゲット企業であるRTLとNews Corpはどちらもアジアに進出しています。放送業界全般については、2012年のロンドン夏季オリンピックでのメディアの労働条件に対策を講じています。国際オリンピック委員会と交渉し、あらゆるメディア労働者を含む協定の調印を目指しています。オリンピック期間中、国際放送センターには世界各国から20,000人が集まると見込まれています。
2007年10月の部会大会で、UNIメディア部会加盟組織は2011年の次回大会までにUNI-Aproと協力してアジア太平洋地域の部会を組織化することを明記した宣言を採択しました。UNIメディア部会には欧州、米州の2地域組織があります。2008年、アジア太平洋地域で様々な労組や未加盟団体と新たな関係を構築してきました。日本の加盟組織との情報交換は非常に有意義です。
同時に、UNIメディア部会は日本のメディア・娯楽産業の未加盟組織・団体にも協力を呼びかけています。2008年3月、ジム・ウィルソンUNIメディア部会担当部長と私は、日放労、民放労連の他、未加盟組織も訪問し、UNIメディア部会の世界的・地域的課題と活動を説明すると共に、日本のメディア・娯楽部門労働者が直面する課題について理解を深めました。私はまた、11月に米国脚本家組合(WGA)のチャールズ・スロッカム副書記長と、かつてのMEI加盟組織、広告業界の労働者、映画製作会社の労組を訪問し、関係を強化することが出来ました。さらに、監督と脚本家両方の製作者団体と初めて意見交換を行いました。この対話を維持し、アジア太平洋地域および他地域の映画製作者労組・団体との架け橋にしたいと考えています。当面は、私達のグローバルなアジェンダ、活動、キャンペーンに関する情報を定期的に提供したいと思います。今後は域内のイベントに参加するよう提案し、アジア太平洋地域のみならずそれ以外の地域の仲間達と情報共有できる場を設ける予定です。

2009年以降の活動計画をお聞かせください。
UNIメディア部会は昨年の訪問で得られた経験を足場にして、今後日本の加盟組合及び未加盟組合との連携・協力関係を強化していきます。昨年2度の来日に当たり、UNI日本加盟協にご協力いただき感謝しております。2010年に世界中から加盟組織が日本に集まる機会を利用し、UNI長崎世界大会の前後で2日間の会議を開催したいと計画しています。1日目はUNIメディア部会執行委員会、もう1日は日本のメディア・娯楽産業に関するセミナーです。
2009年にアジア太平洋地域で予定されている活動としては、2月にインドの映画・TV製作労働者との大規模な安全衛生プロジェクトが発足します。UNI-AproとUNIインド加盟協の協力を得て、大手映画製作会社がある州のほとんどで個別にイベントを開催します。7月初旬には、韓国で映画産業労働者のためのセミナーがあります。アジア太平洋地域の映画製作者・技術者を団結させるためのこのセミナーに日本の加盟組織のみならず未加盟組織からも是非ご参加ください。域内の映画産業労働者が経験を共有し、共通の目標と連携に向けた課題を話し合うことが目的です。また、年の前半にマレーシア、インドネシアのとりわけ民間放送労働者の組織化プロジェクトがあります。
全地域にわたってメディアの多元性、公共的価値、知的所有権の保護といった普遍的政策目標を強化していくつもりです。そして、グローバル同盟、グローバル枠組み協定に向けて前進していきたいと考えています。

ヨハネス・ストゥディンガー―ドイツ出身。2000年1月、UNIメディア部会副部長に就任。フリードリヒ・ナウマン財団ブリュッセル事務所、グラハム・ワトソン欧州議会議員事務所、欧州委員会事務局に勤務した経験をもつ。


女性の力をステップアップ!-UNI-Apro女性委員会 小川陽子新担当部長に聞く

ジェンダー平等を求めて闘う女性労働者にとって、昨今の経済のグローバル化、経済・金融危機は大きなインパクト
アジア太平洋地域は、特に女性労働者にとって組合活動への参加にいまだ多くの障壁がある地域の一つと言えます。社会的、文化的、伝統的障壁によって女性の参加が阻まれ、結果、女性労働者の声が反映されにくい男性中心の組合になっているのが現状です。また、アジア太平洋地域には中国及びインドという世界の2大市場が存在し、成長の中心地であると同時に、質の高い安価な商品を生み出す源にもなっています。従って、先進国、途上国に関わらず利益のみを追求する多国籍企業が押し寄せ、生産コストを抑え安価な労働力を搾取するようになっており、グローバル化の勢いに便乗したいと願う政府もこれを後押ししています。こうした動きは労働者にかつてない悪影響を及ぼしています。底辺への競争によって貧富の格差は広がり、特に貧困の女性化が進行しています。多くの国で女性が、労働市場、特にスキルを必要としないサービス産業に参入するにつれて、男女格差、男女不平等が広がっています。
女性への差別や不平等の原因は何千年も前から社会的に継承されてきた規範や慣行によるもので、歴史的にも文化的にも深く根ざしており、女性に対する見方や女性自身の考えを変えるのは容易ではありません。特に貧しく識字率の低い国においてはとりわけ、この傾向が顕著に見られます。概して、女性の権利や女性の問題について、女性労働者自身も、女性組合員も組合役員も余り関心を持ってきませんでした。女性が無関心である背景には、一家の稼ぎ手であり主婦でもあるという二重の負担を負わなければならない経済的・文化的理由も存在します。そこで、余暇を仕事や家庭以外のボランテイィアや組合活動に当てる余裕はないのです。また、そうしたことをしたいと思っても、男性(夫や父親)の許可を得なければいけないという状況も、積極的な組合参加を阻害する一因となっています。

女性のエンパワーメント
UNI及びUNI-Aproはその結成当初から、女性及び青年労働者にも組合活動にもっと積極的に参画してもらうこと、意見がきちんと反映されるよう意思決定プロセスに関わることを目標に、主に女性・青年の教育活動とリーダー育成に力を入れてきました。アジア太平洋地域においては、日本のように自由で独立した民主的な労働組合活動を行うことすらできない国や、反組合的な態度の使用者が少なくありません。そのような状況下にあって、また経済がグローバル化し、企業も労働者も国を超えて移動する現在、女性と青年の組織化・エンパワーメント、組合活動への積極的な参画とそれによる組合自体の活性化は、労働運動の弱体化に歯止めをかけるのみならず、新しい時代に組合が存続するためにますます重要になっています。
UNI-Apro女性委員会は、昨年の委員会で、退任した宮本尚子議長(NTT労組)の後任に、インド・ステート銀行労組ムンバイ地本委員長を務めるアンジャリ・ベデカーさんを新議長として承認しました。アンジャリ議長は、UNI-Aproがインド国内及び南アジア地域で実施した様々な組合研修に参加し、女性リーダーとして後輩の女性メンバーを勇気付け、女性労働者のネットワークを拡大し、ステート銀行労組初の重職に選ばれた、まさに草の根から男性中心の組合のトップに就いた方です。彼女とは、昨年、インドの郵便労組女性セミナーに講師として共に参加しましたが、組合活動に積極的でない理由を分析した時に参加者が述べた「組合から情報が届かない」とか「組合は男性だけで運営されている」という文句に対し、「女性労働者に組合への関心を深めてもらうには、同じ悩みを共有する女性自身が話しかける(オルグする)方がよい」、「良い組合リーダーとは、人の話を聴くことができる人」だと、労働者どうし有効なコミュニケーションをはかり、仲間の女性メンバーを増やしていくにはどうしたらよいかを、わかりやすい言葉で自らの経験から説明し、最後には郵便労組の女性参加者から「産業を超えて女性どうし結束を高めていこう」という力強い意見が多く出されました。

日本の女性メンバーの皆さんへ-ブレイキングスルー@長崎!
国を超えても同じことが言えると思います。UNI-Apro女性委員会における活動とは、共通の問題を抱える女性が各国の経験から学び、互いにサポートしていくことに他なりません。日本の労働組合が日々奮闘している女性、若年労働者や非正規労働者の組織化をはじめ、男女間格差の是正、均等待遇要求、育児支援政策、ワークライフバランス達成に向けた取組みなど多面的な経験は、他の国でも非常に参考になります。北欧やオーストラリアなどのように、男性も育児や家事に参加するという文化・習慣や、シンガポールのような国を挙げてのワークライフ・ハーモニー・プログラムなどは、私たちにも参考になるでしょう。最近結婚した、シンガポール人と韓国人の若い夫婦が、それぞれの母国で暮らさず、オーストラリアでの生活を選択するに至った理由を、「シンガポールや韓国では、仕事と生活を両立したライフスタイルが不可能だから」と言っていました。皆さんは、どう思われますか?
さて、2010年には長崎で世界中のUNI女性メンバーが結集する、第3回UNI世界女性大会が世界大会前段に開かれます。世界大会のメインテーマは「ブレイキングスルー」。女性大会のテーマはこれを、「ガラスの天井」を打破する、「階級の壁」を打破する、「家父長制」を打破する、というように各国の状況に照らして解釈し、女性をもっと組合活動へ参画させ、労働組合においてジェンダー平等を達成し、女性組合員がパワーを得るための行動計画を立てることになっています。
日本のUNI-Apro女性委員会メンバーは、既に世界大会・女性大会の準備に積極的に関わっています。女性メンバーからは、海外参加者に日本の労働運動の到達点、特に男女共同参画社会とワークライフバランスの達成に向けた取組みの成果を示すことに加え、長崎の街や歴史・文化を知ってもらったり、ローカルな職場に案内するなどして地元との交流を図ったりするための、様々なアイデアが出され、実施に向けて検討を重ねています。世界の女性からも、「折り紙などの日本文化を象徴するような装飾」や、「開会式には日本女子サッカーチームに来てほしい」とか、国際労働運動の象徴である“平和とパンと薔薇”を日本流になぞって、「“平和像、カステラ、菊”を記念品にしてはどうか」などの要望も出されており、日本開催への期待も大きくなっています。アジア太平洋地域の女性活動をリードし、長崎で「日本の女性はスゴイ!」と言われるよう、STEP UPしていきましょう。

小川陽子-津田塾大学卒業後、日野自動車勤務を経て、1997年よりUNI創設パートナーのひとつPTTI東京事務所に入職。2000年のUNI統合後は、UNI-Apro女性・青年活動コーディネーターとしてアリス・チャン同部長を補佐、2009年1月からUNI-Apro女性委員会担当部長に就任。


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