4月 2008のお知らせ

第3回UNI専門職・監督職(P&MS)世界大会(2008年3月26~28日、オーストラリア・メルボルン)

開会
ジョン・バインス議長は全員を歓迎し、有意義な議論を期待した。ジョセフ・デブリュンUNI-Apro地域会長は、昨年11月の総選挙で労働党政権を奪回したことを報告し、オーストラリアの労働運動の転換期に本大会が開催できることを喜んだ。シャラン・バロウITUC会長(ACTU会長)は、UNIの活発な活動に敬意を表すると共に、様々な取組みにおいてUNIをはじめとするグローバルユニオン(GUF)との協力を継続していきたいと述べた。

活動報告
ゲルハルド・ローデUNI P&MS担当局長がこの間の活動を報告。毎年UNIでは加盟組合の統計をとっているが、P&MSはここ数年で急成長し、370組合計130万人がP&MSメンバーだと申告されている。特筆すべき成果として、2006年、2007年に開催されたUNI-Apro P&MSフォーラム(東京)の成功が報告された。ネパールなどアジア太平洋地域におけるP&MS活動の前進に大きく貢献し、後援したNTT労組に対し感謝の意が表された。またセカンドライフにおいてイタリアIBMに対し、初のグローバルな仮想抗議活動を行った結果、CNNなどマスコミに大きく取り上げられたり、CEOが辞任したりした他、UNIは革新的なネットを活用した活動に対し贈られるNetXplorateur賞を受賞した。

「P&MSの組織化」
ハード教授(米コーネル大学)が、P&MSを組織する労働組合と職能団体の違いを説明し、専門職の組織化には職能団体の経験から学び、協力しあうことが非常に有益であろうと導入報告した。
この後、専門職を組織する加盟組合から事例報告があった。ジョン・バインス議長は、オーストラリアAPESMAの概要や、給与調査、雇用契約ビルダー(ウェブ上で自分の契約を作成したり、今ある契約と比較して問題点を検証したりすることができるソフト)、ビジネススクール運営、キャリア開発プログラムなど、専門職を惹きつける各種サービスを紹介した。
パー・クロック代議員は、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーという北欧3カ国のエンジニア協会が、国際問題を結束して解決するために結成した、北欧エンジニア協会の事例を説明した。
クリスター・フォースランド代議員は、スウェーデンで今年1月に2労組が統合して結成されたUNIONENの活動を紹介し、伝統的な組合員(ブルーカラー)と専門職(ホワイトカラー)へのサービスのバランスをとることが今後の課題だと述べた。
セッション後の質疑応答では、NTT労組の西山代議員が、日本では男女雇用機会均等法の制定後、女性の就業率も高くなったが、専門職・技術職の成果を測ることは難しく、納得のいく評価・処遇を得られていない女性の悩みが多いことを指摘し、ワークライフバランス実現のため、処遇決定における評価指標のあり方について、新たな法整備や国際標準の制定の必要性を訴えた。

「移動する専門職労働者への支援」
ローデ局長は、IT産業における外国人労働者の急増と共に、外国人と受入国労働者との賃金格差、熟練専門職の流出といった様々な問題が出てきていると報告した。これらを解決するための手段として、加盟組合の協力を得ながら「UNIパスポート」の改善を重ねてきた。ベルギーとインドの組合間の協力協定も構築された。北欧エンジニア組織間で、外国に行ったメンバーを追跡し、赴任国でもサービスを受けられる相互協定などの事例も紹介された。

「P&MSのためのディーセントワーク」
NTT労組の渡辺代議員は、NTT研究所におけるフレックスタイム制及び裁量労働制の導入について報告した。
北欧金融労組のローン・ピーターセン代議員は、5カ国の銀行・金融・保険など8労組、16万5千人が加盟する北欧金融労組の取組みを紹介し、管理職に対する調査の結果、個人のニーズに対応していく必要性があると述べた。
シンガポールSMMWUのフローレンス・フォン代議員は、経済再構築の結果、中高年のPMET(専門職・管理職・エグゼクティブ・技術職)が直面した雇用とスキルのミスマッチ問題を解決するための政労使による取組みを紹介した。
質疑応答では、サービス・流通連合の澁谷代議員が、一般従業員と仕事は変わらない「名ばかり管理職」が社会問題化している現状を、日本マクドナルド訴訟を例に挙げながら報告し、UNI P&MSにおける管理職組織化の促進を期待した。

「P&MSのグローバルな移動-ASEANにおけるP&MSの移動」
フィリピン大学、オフレネオ教授が導入報告。ASEANの中でシンガポール、マレーシア、タイが3D職(危険、汚い、難しい)の移民労働者を受け入れ始め、続いてP&MSの移動が見られるようになった。移民労働者問題は様々あるが、法外に高い斡旋料、カルチャーショック、突然の契約変更などP&MSの問題は見えにくい。2007年にUNI-Aproは、ASEANサービス労組協議会を設置し、ソーシャルヨーロッパのようなソーシャルアジアの実現を目指して努力している。

「グローバル経済におけるP&MSの責任」
フランスCFDT-Cadresのジャンポール・ボウシェ代議員は、2000年に採択された「UNI専門職・監督職の職業上社会的倫理的責任規範」の見直しを提案した。
フィリップ・ボイヤーUNI副書記長は、プライベートエクィティ(PE)による企業買収が増えている中、PEに11の責任投資原則を認めるよう交渉するなど、UNIのPE対策を説明した。
英国コネクトのレスリー・マナセー代議員は、P&MSとのコミュニケーションとオンライン権について問題提起した。IT部門の2万人専門職の100%がパソコンとメールアドレスを所有しており、組合も若い世代が使っている新しいネットツールをもっと活用すべきだと奨励する一方、使用者の設備に頼りすぎてもいけないし、通常業務に支障をきたしてもいけないと警告した。使用者がメール、ネットの使用をモニターできるので、プライバシー問題も発生している。
ローデ局長は、海外アウトソーシングを持続可能なものとするための「オフショア管理規範」を提案し、これを本大会で議論した後、普及させていくキャンペーンを始めたいと述べた。

大会コミットメントの採択
各セッションで行われた様々な討論をもとに、大会結論をまとめた。

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グローバル経済における専門職のための組合を発展させる共同コミットメント

UNI-P&MS委員会は、UNIグローバルユニオンにおいて重要な役割を果たしている。世界及び地域レベルで、専門職及び監督職のための組合政策を支持し調整する。UNI-P&MS委員会は、実際、UNIの全ての部会において飛躍的に増加している人々を代表している。P&MSは、経済変化、技術変化、組織的変化の最先端にいる。P&MSは企業、組織及び社会において主要な役割を果たしている。労働組合にP&MSが加わることは双方に取って利益がある-P&MSはネットワークとサービスへのアクセスを得られ、組合はP&MSのプロ意識、専門知識、革新的な考え方を通して強化される。
第3回UNI世界P&MS大会において、UNI-P&MS委員会の加盟組織とUNI-P&MS委員会は、大会で確認された今後4年間の優先課題の実施に向けて、共に必要な手段を取るというコミットメントを宣言する。
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選挙
大会は、議長・副議長、運営委員会メンバーを以下の通り選出した。
議長  スウェーデンUNIONEN  クリスター・フォースランド
副議長  シンガポールSMMWU  ジョン・デペイバ
アジア太平洋  日本NTT労組  渡辺保
日本サービス・流通連合  澁谷稔
米州  調整中
アフリカ  UNIアフリカ地域書記長代行  ザカリ・コドグ
欧州  フランスCFDT-Cadres  ジャンポール・ボウシェ
ポルトガルSBSI  マリア・テレサ・シーブラ

なお、本大会で議長を退任するジョン・バインス氏の長年のUNI P&MS委員会への多大な功績に対し、フォースランド新議長はじめ多くの代議員から感謝の言葉が贈られた。


第2回UNI-Apro専門職・監督職(P&MS)大会(2008年3月29日、オーストラリア・メルボルン)

開会
ジョン・デペイバUNI-AproP&MS議長は、2日間の世界大会を総括した後、アジア太平洋地域でも、伝統的な労働組合には入りたくないと考えているP&MSを組織するために、何か革新的なことをしなければならないと訴えた。シンガポールでは、「Labor Movement 2011」というキャンペーンの中で、組合員と呼ばれたくないP&MSを「ゴールドカラー」と呼ぶこととし、2011年までにこうした人々を組織する目標を立てた。
続いて、ジョセフ・デブリュンUNI-Apro地域会長、ゲルハルド・ローデUNI P&MS担当局長、フィリップ・ボイヤーUNI副書記長が連帯挨拶を行った。クリスター・フォースランド世界P&MS新議長はまず、2006年、2007年に開催されたUNI-AproP&MSフォーラムの成功を称え、その後ネパールでP&MS協議会が設置され、活動が始められたことを高く評価した。P&MSの組織化については、ダイバーシティーマネジメント(使用者にもジェンダー平等などを理解させること)、生涯学習、ワークライフバランスの重要性を指摘した。

活動報告
ジャヤスリ・プリヤラルUNI-AproP&MS担当部長は、2001年の第1回大会以降の活動を報告。中心となった活動は、NTT労組の後援を受けた2回のUNI-AproP&MSフォーラムであり、森嶋委員長はじめNTT労組の協力と支援に感謝が述べられた。また、難しいと言われていたインドのIT専門職の組織化にも成功し、今では6つの協約を締結している。現在、インドネシア中央銀行の従業員協議会や、インドの銀行従業員協議会、インドのテレコム上級職協議会、スリランカの労組、シンガポールの金融労組などにもコンタクトをとっている。他の国にも、潜在性はあるのにP&MSの組織化ができていないところがまだ多い。今後も、P&MSの組織化という我々の取組みをもっと広く普及させていかなければならない。

「P&MSのためのディーセントワーク」
フィリピン大学オフレネオ教授は、アジアの労使関係に欠けている中間管理職のためのディーセントワークというテーマで講演した。企業のウォルマート化が蔓延し、労働集約化が図られているのに、対価が追いついていない。トップ経営者と部下との間に挟まれ、双方からプレッシャーを受ける。部下に解雇を伝える役目を追うだけでなく、自らも解雇の憂き目に遭うことがある。ほとんどの国で、こうしたP&MSの立場を明確にし保護するような法制度がない。海外に職を求めて移住する。P&MSにとってのディーセントワークを確保するためには、産業、国、地域、国際レベルで、深く戦略を練り、組織化し、意識を高める必要がある。
NTT労組の古賀代議員は、「NTTでもウォルマート化が進み、評価者との面接において、いかに公正な業績評価を得るかが問題。組合は、業績評価の苦情を減らし満足度を上げるために努力している。海外の企業・労組で良い経験があれば聞きたい」とコメントした。ジョン・バインス代議員は、「若い人は上司からきちんと評価してほしい、企業がどう対応しているかを知りたいと思っている。この要望に応えAPESMAは若い人に研修を行い、その企業が働くにふさわしいかどうか判断できるようにしている。企業も選ばれるということだ。労働者が会社についてどう思っているかを交渉の場に持ち込むことができる」と答えた。ジョン・デペイバ議長は、「シンガポールでもKPI(主要業績評価指標)を設定する企業が増えてきた、組合もこれを支持しているが、KPIを高く設定するなら高い報酬を交渉する権利がある。組合員が評価に不満を持っているなら、組合は積極的に関わるべきだ」と答えた。
サービス・流通連合(JSD)の澁谷代議員は、「ダウンサイジングで残された労働者の負担が増える。例えばスーパーの店長は、店舗売上管理の他、顧客クレーム対応などもあり、長時間労働に陥る反面、それをカバーする時間外手当も得られず、その多くは組合員ではないため、使用者に何も言えない。JSDは管理職の組織化を進め、ディーセントワークを担保していかなければならないと考える」と報告した。

パネルディスカッション「P&MSの組織化」
プリヤラル部長は、P&MSの組合に関する認識とニーズを分析することにより、組合にとってもP&MS組織化の機会はあると問題提起した。
オーストラリアAPESMAのアーリン・ウッド代議員は、「プロフェッショナリズムの役割」と題して、若い専門職への調査から、キャリア開発ができるような団体に所属したいというニーズが多いと報告した。そのためのサービスの例として、メンター制度(グループメンター、女性メンター、Eメンターなど)、キャリア指導、就職斡旋などがある」と報告した。
シンガポールSMMWUのフローレンス・フォン代議員は、就業者にはスキル開発プログラムなど継続教育を提供、失業者にはウェブサイトによる就職斡旋広告やジョブサーチのワークショップへの参加を促進するなどの、生涯学習プログラムの取組みを紹介した。
オーストラリア金融労組のレオン・カーター代議員は、「ダイバーシティーマネジメントの役割」と題して、宗教や文化、性別など様々な違いを包含するものとし、ダイバーシティ議論は使用者だけに任せていては解決できないと述べた。例えばオーストラリアの金融産業における40%という男女間賃金格差を是正するためには、組合も積極的に交渉するべきだと訴えた。
NTT労組の森嶋代議員は、“長時間労働やメンタルヘルスの悪化”に象徴される日本の情報サービス産業は、良い人材を確保し長く働いてもらうことが難しいとし、特に女性が仕事と家庭を両立できるように、NTT労組は諸制度の創設と、利用しやすい環境を作るための意識改革に取り組んでいることを報告した。
パネリストの講演後の質疑応答では、JSDの川橋代議員は、2007年12月に「ワークライフバランス憲章」及び「仕事と生活の調和のための行動指針」が策定され、ワークライフバランスを国民的な取組みとすることが確認されたと報告し、特に管理職の働き方の改善には、管理職を組織化し、労使協議の環境を作った上で働き方を見直すべきだと訴えた。

UNI-Apro P&MS委員会の優先課題
大会は以下の優先課題を採択した。

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UNI-Apro P&MSの優先課題(2008~2012年)

前進するために、
●新しい経済において、ウェブを活用した新しい組織化戦略を立てて促進し、P&MSに連絡が取れるようコミュニケーションチャンネルを確立する
●変化に遅れを取らないようP&MSのための学習のネットワークを作り、新しいスキルや能力を身につける支援を行う
●新しい経済が専門職・監督職に及ぼすインパクトを調査する(例えば、新しい福利制度、利益共有、ストックオプションなど)
●統合されつつある地域経済におけるP&MSの報酬のベンチマーク。P&MS雇用の最低基準。企業が最低遵守すべき採用、配置、労働基準。P&MS自身がそうした雇用基準に同意するかどうか、について検討する。
●ジェンダー平等を促進し、女性が専門職・監督職に就くことを支援する
●ワークライフバランスの新しいコンセプトを発展させ促進する
●P&MSの専門的、社会的、倫理的責任規範を促進する
●必要に応じ、P&MSの労働組合権を擁護し、ディーセントワークを確保できるよう支援する
●現存のUNI-Apro連絡協議会に、各国のP&MSの状況を調査させ、未組織の専門職と接触し、彼らの権益を促進するため、国毎にP&MS協議会を結成する
●ASEANサービス枠組み協定の進展をモニターし、外国人専門職・監督職のサービスを送り出す国と受け入れる国の間の相互認証協定について、加盟組織に最新情報を周知する

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選挙
大会は、役員及び委員会メンバーを以下の通り選出した。
議長        シンガポールSMMWU        ジョン・デペイバ
副議長        日本NTT労組            渡辺保

東アジア    日本NTT労組            渡辺保
日本サービス・流通連合        澁谷稔
東南アジア    シンガポールSMMWU        ジョン・デペイバ
マレーシア加盟協        調整中
南アジア    インドUNITES            カルティック・シェカール
オセアニア    オーストラリアAPESMA        調整中


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