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クリスティ・ホフマンUNI書記長、UNI-LCJ年次総会で記念講演

司会:さて、ホフマン書記長は、年明け早々、世界経済フォーラム、ダボス会議に世界の労働組合リーダーと共に出席されました。まずは初めて参加したダボス会議の様子をお聞かせください。

ダボスには期間中3000人くらい集まり、うち企業は1000社くらい参加しています。今年、労働界からの参加は10人だったので、私たちのプレゼンスは限定的だったかもしれません。それでも存在感を示すことはできたと思います。連合から相原事務局長、3つのGUF代表、デンマーク、スウェーデンと米国の労働組合代表、シャラン・バロウITUC書記長が出席しました。多くのパネルディスカッションに参加し、様々なマスコミからインタビューを受けたので、存在感を示すことができました。今回も、将来についての議論がかなり行われました。グローバル経済にとって最大の脅威は、サイバーセキュリティーと気候変動であると認識されました。テクノロジーについての議論では、ロボットがやってくる、というヒステリックな論調から離れ、テクノロジーの活用に対してより現実的なアプローチになっているとの印象を受けました。

ダボスに参集したリーダーや専門家の意見を総合的に考えると、デジタル化は予想より遅いスピードで起こっており、企業は既存の従業員を置き換えるのではなく、再教育または再訓練してデジタル技術を導入しようとしています。これは私たちにとって朗報だと言えます。表向きには企業はそのようなことを言っており、私たちはもっと懐疑的に思うべきかも知れませんが、ダボスでは、少なくとも真摯な気持ちで言っていたと感じました。

ダボスで共有された雇用に関するデータは以前より良好なものでした。デジタル化によって雇用が大幅に拡大するという見方もありましたが、新たな雇用がどれだけ増えても、仕事を失う労働者は必ず出てきます。私たち労働組合リーダーは、ダボス会議の中で、「誰も取り残されないように、政府主導または政労使の取組みが必要だ。生涯教育を受ける権利を全ての人に保障するべきだ」と訴えてきました。

また、ダボスでは引き続き各国内での所得格差の拡大に懸念が示されました。最新情報によると、世界の富の半分はわずか26人の富豪によって所有されているといいます。しかし、富裕層への税率を引き上げることによって、富の再分配を図るという考えには、ダボスの参加者は反対しました。この考えはいろいろな会議の分科会で笑い飛ばされ、ある分科会では、これを提起した若いオランダのエコノミストの発言が衝撃的とされ、論議の的となり、彼のスピーチの動画はSNSで炎上しました。ダボス会議創設者のクラウス・シュワブ氏は、会議後のフォローアップの中で、「ことによっては富の再分配は必要かもしれない」というコメントを出しています。

ダボス・デビューとしては実りが多かったと自負しています。

司会:書記長は米国出身で、米国の労働運動でも長く活躍してこられました。ということで、米国や、ブラジル、ルーベン会長の出身国でもあるアルゼンチン等における労働運動について簡単にご紹介いただけますでしょうか。

私は米国出身であり、米州(南北アメリカ)で何が起きているか、いつも注視しています。

まず米国について、トランプ政権は組合に非常に敵対的ですが、そのことによって組合の役割が薄れたわけではありません。逆に昨年、組合の闘争活動、スト回数、スト参加人数はここ数十年で最高を記録したのです。現在の組合費徴収の仕組みに対して法的手段を用いた攻撃が続いているにも関わらず、組織人員は変わっていません。こうした攻撃を受ければ組合員は減るのではないかと言われていましたが、労働者はより強く問題意識を持ち、職場で声をあげたい、ディーセントな(人間らしい)仕事がほしい、という気持ちをより積極的に表現するようになりました。調査によると、若者はここ数年で一番労働組合を好意的に見るようになっていると言う結果も出ています。

民主党も労働組合により好意的で、州レベルでもはっきりと物を言う野党に生まれ変わりました。多くの州で最低賃金が1時間15ドルに引き上げられました。これは連邦政府が設定している最低賃金の約2倍です。法律で病気休暇を定めることが義務化された州もあります。今まで米国の労働者にはこうした法定の休暇はありませんでした。

最近では、従来の労働組合に代わる労働者グループの活動が活発になってきています。こうしたグループは、単一の問題についてSNS上でキャンペーンを展開したり、使用者に要求を行ったりしています。昨年だけで200ものキャンペーンが行われました。例を挙げると、昨年、世界中のグーグルで働く2万人の労働者が、組合は無いものの、世界各国で1日ストライキを実施しました。彼らの要求は、セクハラに関するものの他に、自分たちが開発する商品に関して発言したい、というものでした。大局的に見ると、組合費徴収が攻撃されているものの、労働者による行動が活発化していると言えます。ですから、米国の状況は非常に期待できると考えています。

一方、ブラジルの状況は全く違います。ボルソナーロ新大統領は、就任後すぐに最低賃金を引き下げました。新政府は全ての労働者を標的にしています。労働省は切り捨てられ、つぶされてしまいました。1日の労働時間は8時間だったところ、10時間労働を導入し、かつ、労働者の権利保護を縮小する動きが多数出ています。政府は、労働組合の結成承認と規制の権限を連邦警察に委ねると提案しており、これは結社の自由に対する恥知らずな攻撃です。

ブラジルの労働法制において、団体交渉、組合費徴収等の点がかなり前から弱体化されており、その結果、UNI加盟組織は組合費収入の相当の部分を失いました。ブラジルの組合は危機に瀕しており、今後、再編・統合を余儀なくされると思われます。しかし、ブラジルの組合は、極右政府によって突きつけられた制約の中でも闘争を続ける強い意志を持っています。

コルティナUNI会長の出身でもあるアルゼンチンには、リバプール世界大会後、2度訪れています。財政危機、通貨危機に陥って、政府がとった緊縮財政政策に多くの労働者が苦しんでいます。しかし、アルゼンチンの組合の交渉力はまだ強く、産業別労組は未だ健在です。組合は今でも重要な交渉当事者です。政府の力に屈せず、組合の力が強いことに期待していますが、通貨の切り下げの結果、通貨危機以前の資産を取り戻すには、ここから先4世代かかると試算されています。

司会:UNIは“労働の未来”について、5年前のケープタウン世界大会から取組みを始めていました。これについて最新情報をお聞かせください。

UNIにおいては、“労働の未来(Future world of work)”から徐々に“新しい仕事の世界(New world of work)”へと移行しています。ケープタウンで初めて提起されて以来、様々な取組みを経て、現在進行形です。“新しい仕事の世界”におけるUNIの役割は、さらに進化しています。最初はトレンドに対する問題喚起・啓発活動でしたが、その段階は終わり、次は解決策を求めていく段階です。この過程において、いかに労働組合を強化していくか。将来を形成するプロセスに労働者が確実に参画できるようにするにはどうすればよいのか、具体的には将来のあるべき姿に向けての交渉当事者として、労働組合の役割を強化しなければなりません。交渉議題には、新たな技術の再訓練の強化や、新たな技術の導入により可能となった使用者の過剰な監視等が、含まれるでしょう。他にも多くの交渉すべき議題があります。使用者と交渉する際に、加盟組合にはこのような課題を強調するようお願いしたいと思います。UNIは、世界各国から優良事例を集め、共有することを目指しています。UNI加盟組織は既に重要な成果をたくさんあげています。優良事例も教訓も蓄積されています。恐らく私だけではないと思いますが、「労働組合は過去の遺物だ」と言われることに辟易しています。将来のあるべき姿を決めるため、労働者が発言力を持つために、今まで以上に労働組合は大切です。労働組合の交渉は、正義ある未来への移行過程の一部なのです。

この移行期において、置き去りにされる労働者がいないようにするためには、団体交渉の諸制度を強化すべく、ルールを変更し、自営業、自由業、フリーランスの人たちにも組織化する権利や社会的保護を与え、生活賃金が保障されなければなりません。このような主旨がILOの報告書にも提案されています。

テクノロジーと言えば、UNIが組織化活動を推進する上で、いかにテクノロジーを活用できるかを探求する、「デジタル組織化フォーラム」を昨年、欧州で開催しました。そこで優良事例を共有しました。今年も5月に同様のフォーラムを開催する予定です。UNI本部で“労働の未来”を担当するクリスティーナ・コロクロフが、グーグル財団から資金援助を受け、特に若い労働者の組織化に役立つアプリの開発に取組んでいます。良いアイデアが出てきています。今度皆さんにも共有したいと思います。

司会:書記長になってから、既に4つか5つのGFAが結ばれました。短期間にそんなに結ばれた理由は何でしょうか?

新規に加え、更新されたものを入れると、8つだと思います。副書記長時代からGFA締結に取組んできました。リバプール世界大会以前から交渉していたものもありました。新書記長に花を持たせようと、スタッフが締結時期を調整してくれたのかもしれません。

最近調印されたGFAには、デューデリジェンスに関する有意義な文言が盛り込まれました。企業が果たすべきデューデリジェンス遂行計画の中で、UNIの役割もきちんと定められています。このようなブレイクスルーが達成されたことを大変嬉しく思います。他のGFAも新しい文言が含まれています。例えば、セクハラ条項、フランチャイズ条項、“つながらない権利(労働者が持っている通信機器のスイッチを切る権利)”条項が入っている協定もあります。

私は40年近く多国籍企業との交渉を行ってきました。今後もUNIの対象となる産業の多国籍企業とのGFA締結に力を入れていきます。私のアプローチは単純です。グローバル化時代において、多国籍企業が労働者の権利が尊重されていない国に進出する時に、GFAは不可欠だと会社側を説得するのです。リスクの未然防止の点からも、企業の評判を高める点からも、良いものだという付加価値を会社側にオファーするのです。UNIは長きに渡り信頼できるパートナーであることも主張します。私たちは約束したことは必ず守り、企業側にも必ず守ってもらう。目標は野心的に高く設定し、それを明確に相手に伝えなければなりません。

今は、新しいグローバルなルールがあります。企業はデューデリジェンスが求められており、GUF(UNIのようなグローバルユニオン)とのGFA締結の意義を多くの企業が認識するようになっています。私たちは信頼できるパートナーであると、企業も認めています。デューデリジェンスとは、企業が、労働者の人権や権利に関わるリスクの調査を行い、リスク防止の措置をとり、権利侵害が発生した場合には対策をとることが要求されることです。UNIはこの全てのプロセスに付加価値をつけることができるのです。デューデリジェンスの徹底は、私たちに追い風となっています。特にフランスでは法律により、使用者はデューデリジェンスの遂行が義務付けられました。デューデリジェンスの一環としてフランスの使用者は、GFA締結が奨励されており、そのためフランスの多国籍企業とのGFA締結が増えています。

司会:最後に、書記長としての今後4年間の豊富と、UNI-LCJに期待することをお聞かせください。

先週開かれたILO専門家会合で、GFAについても話し合われました。GFAが結ばれたのは欧州企業とだけではないか、と言われ、私は、日本をはじめとするアジアや、ブラジル等の企業とも締結されている、と発言しました。髙島屋やイオンとのGFAの意義について、ILO等の場を通じて他の使用者の理解が深まることを期待しています。

このような取組みを重ね、多国籍企業におけるUNIの認知度を高め、影響力を拡大したいと思います。労使関係の構築において、UNIはもっと重要な役割を担っていくべきだと考えます。

各部会でそれぞれの活動計画を立てていますが、中には部会の活動範囲を超えた分野もあります。例えば、アマゾン対策です。UNIは、アマゾン対策のハブ組織になろうとしています。アマゾンに対するアクションは、UNIの全ての部会を巻き込み、世界中の労働組合や関係者を連携させることが必要です。ICTS部会は、グーグルとの関係構築に取組もうとしています。グーグルで起きていることは、今までとは違います。何人かのグーグル労働者とコンタクトをとりながら、彼らをUNIに引き込み、彼らのまとめ役になりたいと考えています。彼らは自分たちで何でもできると思っていますが、私たちの仲間になって一緒に行動しよう、と粘り強く説得していきます。

世界は新たなルールを必要としています。ルール作りにもUNIは積極的に参加し、貢献していかなければなりません。実効力のあるGFAモデルをつくっていきます。サプライチェーンに正義をもたらす取組み、例えばバングラデシュ安全協定を、パキスタン等、他の南アジアの国にも適用できないか、検討しているところです。

GFA、OECD多国籍企業ガイドライン等の取組みを通じて、GUFをデューデリジェンスのプロセスにしっかりと組み込み、標準化していきたいと思います。これは私たちの将来にとって非常に重要です。さらに雇用労働者の定義を再検討し、自営業者として不当に分類され不利益を受けている何百万人もの労働者の問題に取組む必要もあります。全ての労働者を包摂することが重要です。

そのような中、日本の加盟組織には大変期待しております。皆さんの組織拡大には常に感銘を受けています。日本企業とのGFAは実効力ある理想的なものです。“新しい仕事の世界”で労働者が受ける影響は東洋と西洋で異なっても、世界の働く仲間とUNIを通じて連帯し、多国籍企業と建設的な交渉をしていきましょう。

 

 


第20回UNI-LCJ年次総会

2019年2月21日、第20回UNI-LCJ年次総会が東京で開催され、各加盟組織より運営委員及び総会代議員、オブザーバー等約65人が出席した。2018年度活動報告、会計報告に続き、2019~2022年度UNI-LCJアクションプランやUNI-LCJ海外活動の方向性を含む、2019年度活動計画及び予算が承認された。最後に、松浦UNI-LCJ議長以下、副議長、事務局長、事務局次長、運営委員の再選が確認された。

記念講演及びレセプションには、UNI本部からクリスティ・ホフマンUNI書記長、UNI Aproからクリストファー・ウン地域書記長、ラジェンドラ・アチャリャ書記次長が出席した。また、翌22日に東京で開催されるUNI Apro運営委員会に出席するため来日したUNI Apro運営委員会メンバーも来賓として参加した。

第5回UNI世界大会(2018年6月、英国・リバプール)において選出されたホフマン書記長は、連合、ILO、GUF、友誼団体等から集まった約120人を前に、「皆さんと共にMaking it Happen(実現していこう!)」と題し、最近のホットな話題から、新書記長としての決意や日本の加盟組織に対する期待等を述べた。司会の小川UNI-LCJ事務局長から、書記長として初めて参加した世界経済フォーラム(ダボス会議)の感想を聞かれ、「政界・財界・ビジネス界等から多数参加する中で、労働組合からの参加は非常に少なかったが、多くのマスコミからのインタビューに応じ、一定の存在感を示すことができた」と述べた。「“労働の未来”の議論におけるUNIの役割も、労働者への啓発から、団体交渉を通じたプロセスへの積極的関与の奨励へと変わってきている。いかに労働組合の存在感を高め、未来を形成するプロセスに労働者が確実に参画していくか、将来のあるべき姿に向けて労働組合の役割を強化していかなくてはならない。グローバル企業におけるUNIの認知度を高め、組合の影響力を拡大したい」と書記長としての抱負を熱く語った。また、最近のILO専門家会議において、日本の企業と結ばれたGFAの効果について発言し、欧州だけに限った取組みではないことを強調した。日本の加盟組織に対しては、組織化や効力あるGFAの経験について、UNIにおいて共有してほしい、と期待を寄せた。(全文はこちら

レセプションでは、厚生労働省の麻田千穂子国際労働交渉官、連合の逢見直人会長代行から連帯挨拶を受けた。ドワイヤーUNI Apro会長代行(オーストラリアSDA書記長)は、UNI Apro運営委員会メンバーを代表して挨拶した。ウンUNI Apro地域書記長は年末の自身の退任を控え、国際労働運動に42年もの長きに渡って関わった経験を振り返りつつ、乾杯の音頭をとった。

その後UNI-LCJ年次総会参加者は、他の加盟組織参加者及び国内外の来賓との懇親を深めた。


組合のメッセージ、ダボスで声高らかに

2019年1月22~25日、世界経済フォーラム(WEF、通称ダボス会議)がスイス・ダボスで開催され、クリスティ・ホフマンUNI書記長は、他の組合リーダーと共に、「組合はWEFに強力に関わり続けていく」というメッセージを発信し続けた。

今年のダボス会議のテーマは、「グローバリゼーション4.0」。UNIからの重要なメッセージは、「グローバリゼーション4.0は、社会契約に沿ったものであるべきだ」。労働者と民主主義のための「社会契約4.0」である。ダボス会議に合わせたかのように、ILO仕事の未来世界委員会報告が発表された。その中でも、新たな労働の未来の問題に対処するために、社会契約の再活性化が必要だ、としている。

組合にとって、社会契約の重要な要素は、全ての人のための生活賃金及び社会的保護、仕事の形態に関わらずあらゆる労働者の労働基本権を普遍的に保障すること、生涯学習の権利、団体交渉の強化、企業の説明責任等である。

WEFは年次リスク報告の中で、多国間国際機関が、欧米に蔓延する国粋主義的政権やポピュリスト政権により、危機にさらされるリスクを強調した。この懸念は多くのセッションで繰り返された。CNNのリチャード・クェスト氏から受けたインタビューに、ホフマン書記長は「労働者への富の配分が減り続ける限り、全ての民主的な組織は脅威にさらされる」と答えた。ガーディアン(英紙)のラリー・エリオット氏には、「労働者は、グローバル化はエリートのためのもの、ダボス会議もエリートのためのものだと思っている。経済のグローバル化を望むなら、企業のためだけのものであってはならない」と語った。

この何年か、ダボスの主要な話題は、格差の拡大であった。今年もなんら変わりなかった。ガーディアンには、「聞こえの良い言葉ばかり並んでいるが、行動の兆しはほとんどない。犠牲の感覚が全くない。富をひとつのポケットから別のところへ移さなければならない」と語った。

ホフマン書記長は、「富豪に課税するという新たな政策と合わせて、強力な団体交渉ができなければ、格差を無くすことはできない」と強調した。

デア・シュピーゲル(独誌)とのインタビューには、「デジタル化によって、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスのような人々の富が莫大になった一方で、2017年、西欧の実質賃金は伸びていない」と語った。

ダボスで様々なマスコミからインタビューを受けたホフマン書記長は、新しい労働の世界へと公正な移行を実現するためには、交渉の役割が重要だと繰り返した。「私たちは、新たな技術の利活用について、デジタル技術によって加速された非現実的なスケジュールについて、過度な監視について、その他多くの問題について交渉することができる。労働者に発言権がなければ、これらの技術の活用に抵抗する。私たちは、新たな技術を恐れているわけではないが、安全で公平な環境で使われなければならない。交渉こそ様々な手段の中心だ。」

スキルの向上は、ダボスのもう1つの大きなテーマであった。あらゆる産業において、社長達は、デジタル技術を利用した既存の労働者のスキル向上へのコミットメントを表明した。今後も仕事はなくならず、むしろ新しく創出される仕事の数の方が多いだろうという楽観的な感覚が広がっていた。同時に、この移行期に失職する労働者もいるだろうとの認識もあった。ガイ・ライダーILO事務局長も参加していたパネルディスカッションで、ホフマンUNI書記長は、「このような労働者が新しい仕事に公正な移行を遂げるために、政府は、理想的には新たな三者システムを通して、スキル向上を強化する必要がある」と訴えた。

シャラン・バロウITCU書記長は、組合リーダー達のダボスでの経験を総括し、「ビジネス界は、2つの陣営に分かれている」とツィートした。すなわち、組合と協力し、新たな社会契約を通して、地球を救い、格差をなくすためにルールを変えていこうとする企業がある一方、人々のことではなく利益のみ考える企業もある。ホフマン書記長は、最近UNIとグローバル枠組み協定を締結したウニクレディト(伊銀行)のように自社の労働者に責任を示す企業と協力し、アマゾンのような無責任な企業に責任を問い続けていくUNIの意志を繰り返した。

 


第5回UNIネパール加盟協大会

2018年12月6日、「労働の未来に向けて、組合の力を高めよう」のテーマの下、第5回UNIネパール加盟協(UNI-NLC)大会がネパール・カトマンズで開催された。18加盟組織から約200人名が参集し、UNI Aproからは野田地域会長、クリストファー・ウン地域書記長が来賓として参加した。加えて、各ナショナルセンター、フリードリヒ・エーベルト財団(FES)、オランダ労働組合連盟(FNV)からも来賓が駆け付けた。

開会にあたり、ゴルカルナ・ラジ・ビスタ労働・雇用・社会保障大臣が祝辞を述べ、ネパールの国家発展のためには労働組合の役割が大切であり、UNI-NLCの活躍に期待すると述べた。野田UNI Apro地域会長は「第4次産業革命の進展により働き方や暮らしが変化する中で、労働組合としての情報収集と分析に基づく政策立案はこれまで以上に重要だ。組合の力を高めよう」と挨拶した。また、来年11月のUNI Apro地域大会への支援と協力を要請した。ウンUNI Apro地域書記長は、UNI-NLCの組織化の取組み成果を称えると共に、次期地域書記長にラジェンドラ・アチャリャ書記次長を推薦したいと述べ、出身国のサポートを要請した。

活動報告や今後の活動に関する議論を経て、向こう4年間の行動計画を盛り込んだ決議が採択された。また、シャンカール・ラミチャーニ氏(ネパールテレコム労組)が議長に再選された。加えて副議長5人、委員5人を中心とする新執行部が選出された。

 

 


第7回UNI Apro東アジア労組フォーラム

第7回UNI Apro東アジア労組フォーラムが、2018年10月2~3日、「実現しよう!東アジアにおけるパートナーシップ労使関係の普及を目指して」というメインテーマの下、東京の全電通ホールで開催された。日本、韓国、台湾、香港より148人(うち女性49人、女性参加率33%)が出席し、「企業の社会的責任(CSR)」、「職場におけるハラスメント」、「新しい多様な働き方」への対応について、各国・労組が報告を行った。日本からは、14加盟組合より総勢99人(うち女性33人、女性参加率33%)が参加した。

クリストファー・ウンUNI Apro地域書記長は、基調講演を行い、UNI Aproは日本に倣って、建設的な労使関係(UNI Aproではパートナーシップ労使関係と呼ぶ)の構築に取組んできたと述べた。とりわけASEANにおいて、労働者や労働組合に、権利を主張するだけでなく労働組合としての責任を果たすよう強く訴え、使用者及び政府にはASETUC(ASEANサービス労組協議会)が信頼できるパートナーであることを具体的な成果をもって示し、毎年ASEAN各国の労働大臣が主催する三者構成対話会議に労働側代表として参加してきた。第4次産業革命で労働市場に劇的な変化が起こりつつある中、政労使の建設的な対話を通じてのみ、労働者や弱者が取り残されない、包摂的な社会をつくることができると強調した。

UNI本部から、クリスティ・ホフマンUNI書記長が初めて本フォーラムに参加し、グローバル枠組み協定(GFA)の概要を説明した。本年6月のリバプール世界大会で書記長に選出されて以来、来日直前にフランスのBNPパリバ銀行、同じくフランスのカジノ大手パルトゥーシュとそれぞれGFAを締結し、翌週には既に締結されているカルフールとの協定を更新する。グローバル協定に詠われる内容は、ILOの中核的労働基準の遵守、人権、平等、多様性の尊重、環境への配慮等、社会的課題への取組みをUNIや加盟組合と共同で宣言するものである。続いて日本企業としてUNIとGFAを締結した髙島屋とイオンの労働組合から、その経緯や締結後の実施状況について具体的な報告を受けた。髙島屋労働組合の橋本国際局長から、組合の社会的責任を果たす活動の1つとして、日本初のグローバル協定を締結するまでの経緯を聞いた。締結が目的ではなく、スリーピング協定にしてはならないとの決意で、労使それぞれの立場から内外に向けて理解浸透を図る活動を継続している。また、イオングループ労連の村上国際局長からは、海外拠点における現地労働者への連帯支援の取組みを通じて、各国労働者の条件改善と企業の発展に寄与している事例の報告を受けた。

また、凸版印刷株式会社・人事労政本部の吉田労政部長から、労使が協力して推進している「働きがい」を高める取組みについて聞いた。これを受け、凸版印刷労組の佐藤委員長は、「労使が対立していた過去の経験を教訓にして、現在の良好な労使関係がある。労使が目指す方向は同じであり、互いの立場を尊重し、コミュニケーションをとりながら進めていくことが何より重要だ」と述べた。

「企業の社会的責任」のテーマでは、この他、自動車総連、韓国KFIU、韓国KHMU、台湾PTSFEU、香港RCCIGU、マカオ・ゲーム労組、ネパールから事例報告を受けた。

「職場におけるハラスメント」のテーマについては、井上久美枝連合総合男女・雇用平等局長から、導入報告を受けた。井上局長は、「男女ともに暴力やハラスメントの対象になり得るが、地位や力関係が平等でない場合、とりわけ女性や性別規範に合致しない立場の弱い人々が対象となりやすい」と述べた。職場におけるあらゆる種類の暴力とハラスメントを根絶するため、ILO総会で条約・勧告の制定が議論されており、そのプロセスや各国政労使の異なる論点、日本政府の態度や連合の取組み等について詳しく聞いた。続いて各国代表によるパネルディスカッションが行われた。UAゼンセンと香港ディズニーランド労組は顧客からのハラスメント、韓国HKMUと台湾CPWUはセクハラに関して、それぞれ現状、組合の対応と今後の取組み等を報告した。これまで被害者が泣き寝入りするしかなかったハラスメントを組合が取り上げ、使用者や政府と協力して世論を喚起し、必要であれば法制度を変える等、社会を巻き込むアクションの必要性が強調された。

「新しい多様な働き方」のテーマについては、情報労連から「働き方改革」をめぐる日本の状況として、本年6月に成立した働き方改革関連法案の内容について報告し、実現に向けては、労使が共に法を理解し運用するための集団的労使関係が不可欠だと述べた。続いて、損保労連、JP労組、韓国KPWU、台湾CTWU、香港BMSWGUからそれぞれ事例報告を受けた。

参加各国は情報交換を通じて、労使関係は対立から協調へ、労使のパートナーシップが不可欠であるとの認識を再確認した。最後に共同声明を採択し、本フォーラムを継続して情報交換を進めると共に、各国において労働者の利益・権利の向上と社会的影響力の強化に引き続き取組んでいくこととした。

 

 


UNI、AIパートナーシップ(PAI)に参加

UNIは、2018年8月3日、多様なステークホルダーから構成される人工知能(AI)研究団体「Partnership on AI(PAI)」に加入した。

PAIは、AIが将来の働き方にいかに影響を与えるかを予測し、AIが社会に確実に恩恵をもたらすよう、幅広い問題に対応する。

PAIの創設者であり、会長のエリック・ホービッツ氏とムスタファ・スレイマン氏はこう語る。「AIは、新しい可能性や効率性を約束する。新しい技術の到来が、自然破壊の可能性や仕事の分配について納得のできる問題を提起するのだ。」

テクノロジー企業や教育機関だけでなく、アムネスティ・インターナショナル、Oxfam、国連開発計画など幅広い非政府組織がこの取組みに参加している。UNIはPAIに参加した始めての労働組合である。

クリスティ・ホフマンUNI書記長は、「UNIがPAIに参加することで、労働者に発言権が与えられる機会を歓迎する。AIが、一握りの巨大テクノロジー企業の手において破壊力として使われるのではなく、どうすれば新しい仕事やより良い雇用・労働条件を生み出すための触媒になり得るか、議論を向けていくことが我々の目的だ」と述べた。

「PAIの他のメンバーに、AIの開発にあたり、企業や政府はデジタル経済において労働者が公正かつ確実に移行できるよう責任を持つべきだ、という明確なメッセージを伝えていく。」

UNIは、「労働の未来」のオピニオンリーダーとなり、ILO、経済協力開発機構、EUにおいて、また、サービス産業の多国間協力及び合意を通じて、デジタルな未来への展望に影響を与えていく。

UNIがまとめた「倫理的な人工知能のための10大原則」には、職場の透明性や実用性に関して具体的な要求があげられている。UNIはAIに関し「行動を今すぐ起こす緊急性」を強く主張し、AI使用による犠牲者を出すのではなく、その恩恵を労働者が確実に共有できるよう取組んでいる。

 


労働組合と労働の未来

UNIは「労働の未来」に関するオピニオンリーダーとして、デジタルの世界が全ての労働者に力を与え、誰をも包摂するよう潮目を変えるために努力してきた。労働組合は、政府の政策に影響を及ぼし、透明性、機会、責任を確保し、新しいテクノロジーが少数者だけでなく多くの人に恩恵をもたらすものとなるよう適正化する力を持つイノベーターである。

この議題では、労働者のデータに関する権利、拡大するデジタル格差をいかに是正するか、倫理的なAIの活用、新しい世代の労働者といかに接点を持つかについて議論した。

UNIと加盟組織は、公正なデジタル化の未来に向けた発展にとりわけ責任があることについては疑いの余地が無い。なぜなら、新たな仕事の90%がUNIの関わる部門で創出されると見込まれているからだ。

ガイ・ライダーILO事務局長は、ILO創設100周年「仕事の未来」イニシアチブについて報告し、「かつてない速度で労働の世界が激変する中、労働者に有利な変革を起こすには、労働者を動員し、労働組合が様々な組織と連携して我々の望む労働の未来を形作る上で中心的役割を果たしていかなければならない」と訴えた。「さもなければ、将来は残酷な極論者によってつくられてしまう。我々が過去闘って勝ち取ってきた労働者の権利、包摂性、社会正義、持続可能な民主的な社会は将来、居場所がなくなってしまうだろう。」

ジャーナリストであり作家でもある、オープン・マーケット研究所のバリー・C・リン所長は、巨大テクノロジー企業の間の独占力が我々の経済・政治システムに及ぼす脅威について語った。

カーディフ大学の、ヘレン・ブレイカリー博士とスティーブ・デイビス博士は、UNIから委託された「労働組合のイノベーション」に関する調査の結果を報告した。

リバプール・ガール・ギークスの、ジョアン・モーフィとジェス・イングリーは、英国のテクノロジー分野におけるジェンダー格差をなくすため、女子学生に理数系の学習を奨励し、将来テクノロジー分野の職に就けるよう支援するプログラムに参加した体験を紹介した。

松浦昭彦UNI-LCJ議長は、UNIの労働の未来の取組みに沿って、UNI-LCJとしても、集中的に議論してきたこと、UNI本部のクリスティーナ・コロクロフ部長から、労働者データの扱いや、AIの倫理的活用を求める取組みについて情報共有したこと等を報告し、連合の労働の未来に関する認識を紹介した。「人口減少・超少子高齢に向かっている日本では、技術革新により、労働力不足を補い、生産性の向上が期待できる側面がある。産業内・産業間の労働力の需要の変化が見込まれるが、新規雇用が創出され、労働者が失業することなく新しいディーセントな仕事に移行できるよう、能力強化対策をとらねばならない」とする一方、クラウドソーシング、シェアリングエコノミー等、働き方が多様化する中、労働契約、安全衛生、教育訓練、社会保障制度も、働く人を守る視点から、改革する必要があると述べた。UNIを通じて、世界で起こっていること、海外の組合の対応に関する最新情報を共有し、日本の現状を踏まえ、将来を予測し、迅速な行動をとっていきたいと発言した。

日下部大樹代議員(生保労連)は、デジタル化によりサービスのあり方や働き方が大きく変化し、無くなる仕事も予測される一方で、東日本大震災直後の生命保険会社の営業担当者の経験を挙げ、人にしかできない、感情を動かすホスピタリティのあるサービスを創造し提供することが、これまでにない顧客の満足と新しい価値を生み出し、人間としての心の豊かさにもつながるのではないかと、問いかけた。

リバプールに結集した大会代議員はまた、アマゾンの事業モデルは労働者を底辺への競争に駆り立てていると非難し、レッドカードを突き付けた。ベシガーUNI副書記長は、同社の労働者への不当な扱いに抗議して、UNIの要求を明確に示した。「アマゾンは、法人税を適正に支払い、責任あるグローバル企業としてふるまうべきだ。我々はアマゾンの悪しき慣行に立ち向かう。アマゾンは、労働者をロボットではなく人間として尊敬すべきだ!」

動議4は満場一致で採択された。

 


UNIの新たな未来に、ブレイキングスルー!

2018年2月27日、第19回UNI-LCJ年次総会が東京で開催され、各加盟組織より運営委員及び総会代議員、オブザーバー等約80人が出席した。2017年度活動報告、会計報告に続き、「UNIの新たな未来に、ブレイキングスルー!」をコンセプトとした2018年度活動計画及び予算が承認された。また、新メンバーを歓迎した。

UNI本部からフィリップ・ジェニングスUNI書記長、UNI Aproからクリストファー・ウン地域書記長が来賓として出席した。今年6月にリバプールで開催される第5回UNI世界大会で退任予定のジェニングスUNI書記長は、他の友誼組織からの参加者も含めた約130人を前に、「労働の未来を私たちの手に」と題して講演を行った。松浦議長が司会を務め、釘本UNI Apro青年委員会副議長(日放労中央執行委員)、杉山UNI Apro女性委員(全印刷企画部長)がインタビューする形で進められた。ジェニングスUNI書記長は、UNI世界大会の舞台となる英国・リバプールの街と世界大会の概要、英国の労働運動が直面する課題、UNIの『労働の未来』の取組み等について熱く語った。

リバプールは、英国の北西部に位置し、綿や機械製品輸出の拠点であり、新大陸への移民を乗せた船が出発し、アフリカからの奴隷貿易の中継港として発展してきた世界遺産にも登録されている歴史的な都市。世界大会は港近くのコンベンションセンターで開催され、大会テーマ「Making It Happen!(実現しよう)」の下、組織化、労働の未来、平和等について議論が行われる。また、ネルソン・マンデラ生誕100周年、女性参政権獲得100周年、英国ナショナルセンターTUC設立150周年等を祝い、コービン労働党党首やノーベル平和賞を受賞したICAN代表等、多彩な来賓を迎える予定である。

英国の労働運動は18世紀の産業革命がきっかけで発展し、今年はTUC設立150周年にあたる。TUCが強さを誇るのは公共部門で、民間部門は20%の組織率に留まり、労働協約で守られている労働者は30%に過ぎない。こうした状況を打破するため英国の労働組合は組織化に力を入れ、公共部門では17万人、民間部門では、一般労働者10万人、運輸労働者12万人、小売店労働者8万人の組織化に成功している。現在、英国はEU離脱がもたらす経済の影響や、ゼロ時間契約(オンコール労働)、格差拡大などの課題に直面している。

「労働の未来」は非常に重要な問題であるが、そもそも国際社会において「労働」を政治的な議論の場の中心におくこと自体が困難であり、「賃上げがなければ経済回復はない」という国際労働運動のメッセージは長年軽視されてきた。そうした中で、UNIは「労働の未来」について他に先駆けて取組みを始め、AIの倫理的活用、労働者/消費者データの保護の必要性等を訴えてきた。ジェニングスUNI書記長は退任後も2019年まで、ILOの仕事の未来世界委員会の委員として、デジタル化が進む中で労働者が「誰一人取り残されない社会」を目指していく、と抱負を述べた。

最後に、日本の加盟組合へのメッセージとして、「UNI-LCJの皆さんには今後もいっそう国際労働運動に積極的に取組み、UNI、UNI Aproにおいてリーダーシップを発揮してほしい」と、アジアおよび世界の労働運動の牽引役としての役割を期待した。また、2010年の長崎世界大会以来UNIとしても力を入れている平和の取組みの重要性にも言及し、「日本から世界へ平和のメッセージを発信し続けてほしい」と訴えた。

レセプションでは、本多厚生労働省総合政策・政策評価審議官、逢見連合会長代行、ウンUNI Apro地域書記長から連帯挨拶を受けた。また、ジェニングスUNI書記長の長年の功績に感謝し、野田UNI-LCJ副議長から記念品が贈呈された。2010年のUNI世界大会の長崎開催にあたり、地元の取りまとめ役を務めた宮崎連合長崎会長(元情報労連長崎県連絡協議会議長)は、長崎大会開催にまつわるジェニングスUNI書記長との思い出を振り返り、国際労働運動に直に触れることができた貴重な体験だったと感謝した。


2017年、UNIにおける「労働の未来」の取組み

2014年の第4回UNI世界大会以降、UNIは「労働の未来」について現状分析と課題への対応を検討してきた。2018年の第5回UNI世界大会の議題の1つとしても「労働の未来」が取り上げられる。

ここには、2017年の世界及びアジア太平洋地域における取組みと報告資料を掲載する。

UNI世界執行委員会における取組み

  • 第20回UNI世界執行委員会(2017年10月、スイス・ニヨン)における、「労働の未来へ向けた労働組合のイノベーション」背景文書
  • 動議5:労働の未来へ向けた労働組合のイノベーション
  • 労働者データのプライバシーと保護のための10大原則
  • 倫理的な人工知能のための10大原則

アジア太平洋地域組織の取組み(UNI Apro部会大会背景文書)

  1. 第5回UNI Apro ICTS部会大会   第4次産業革命における情報通信技術(ICT)産業    アジア太平洋地域の労働者にとっての展望と課題
  2. 第5回UNI Apro郵便・ロジスティクス部会大会  新たな経済における郵便事業
  3. 第2回UNI Aproメディア部会大会  デジタル時代のメディア
  4. 第5回UNI Apro金融部会大会  フィンテック革命 金融サービスの再改革
  5. UNI Apro合同部会大会 声明「経済統合と第4次産業革命の課題に取組むUNI Apro」

第6回UNI Apro東アジア労組フォーラム

第6回UNI Apro東アジア労組フォーラムが、2017年10月26~27日、台湾・台北の中華電信本社体育館で開催された。日本、韓国、台湾、香港より136人(うち女性21人、女性参加率15%)が出席し、「第4次産業革命の時代に、包括的な成長を遂げるために」というメインテーマの下、報告・議論を行なった。日本からは、12加盟組合より総勢48人(うち女性17人、女性参加率35%)が参加した。

開会式では、ホスト国・台湾のUNI加盟3労組代表、中華電信社長等から歓迎挨拶を受けた。松浦昭彦UNI-LCJ議長は、フォーラム開催の準備に尽力した台湾の3加盟組織に感謝を述べ、「政労使の対話を通じ、我々の未来は我々が創るという意気込みでデジタル化のメリットを最大化し、デメリットを最小化する取組みを始めよう」と、東アジアにおいて建設的かつ有意義な意見交換ができることを期待した。

まず各国の最近の「政治・経済・社会的課題への対応」を共有した。日本については金子晃浩UNI-LCJ副議長が、先の衆議院議員選挙の結果を報告すると共に、労働力が不足する中、日本経済の持続可能性を高めるためには生産性の向上が喫緊の課題であり、政府の「働き方改革実現計画」の下、労働組合としても長時間労働の是正や多様な働き方への意識改革を推進していること等を説明した。韓国、台湾、香港からも、急激な少子高齢化、労働人口の減少、長時間労働、非正規労働の増加、男女間格差、若年労働者の失業問題等、類似の課題が挙げられた。韓国からは、労働組合や市民による「ろうそく革命」によって10年近く続いた保守政権を打倒し、革新系政権の下で労働者寄りの政策へと転換を図っていく決意が述べられた。一方、中国返還後20年が経過した香港では、団体交渉権をはじめとする労働者の基本的権利が侵害されている苦境が報告され、連帯支援が要請された。

「デジタル化の、雇用と仕事への影響:企業、産業、国レベルでの対応」のセッションでは、リウ・シーハオ銘伝大学教授が基調講演を行った。特にクラウドワークの増加により、多くの企業は新規採用の必要性がなくなり、雇用・労働形態の変化により、従来の労使関係の対象外の労働者が増加する。また、プライバシーの保護も課題であり、インターネットにアクセスすることにより個人情報が流出するリスクが高まっていると警鐘を鳴らした。梅原貴司全印刷委員長は、デジタル化による、日本の労働者や労働法制への影響について分析し、テレワークの普及等により、勤務時間や勤務場所の自由度が高まる反面、長時間労働が懸念される点や、複数企業に所属する場合の雇用・労使関係に課題を提起した。渡辺由美子JP労組書記次長は、支払審査業務やコールセンター業務へのAI(ワトソン)導入事例、作業負担軽減のためのロボットスーツ導入事例について紹介した。技術の進化により、労働力不足や労働時間短縮等、組合員が働きやすい環境づくりに役立つと期待するものの、働き方や労働力の在り方、価値観も大きな影響を受けることから、柔軟な対応が必要だと述べた。

韓国の、キム・ヨンスKPWU労使交渉部長は、無人郵便局等のAI導入事例や物流網の改変に伴う人員削減への反対、韓国政府による第4次産業革命への対応策について報告した。コン・クワンキュKFIU副委員長は、金融部門におけるフィンテックの拡大等、急激なデジタル化への移行状況と金融労働者の雇用危機、労働組合の対応について、シティ銀行の店舗閉鎖問題を例に報告した。台湾のハミルトン・チェンTPTSEU執行委員は、公共放送部門のデジタル化に関する投資及び労働者教育が不十分であることを懸念した。香港のキャロル・チャンRCCIGU委員長は、政府主導で進む小売業におけるデジタル化によって、雇用削減や返品不可能という消費者へのサービス低下等の弊害が発生していると指摘した。

「デジタル経済における組織化」と題するセッションの導入報告として、柴田謙司情報労連書記長は、日本に200万人以上存在するクラウドワーカーの現状について、2016年12月の連合による調査をもとに報告した。収入面に不満がありながらも、時間や場所を選ばず働ける点に魅力を感じている労働者が多いが、半数近くがトラブルを経験している。今後求められる対応として、政府による更なる実態把握と法整備、個人加盟ユニオンの設置、SNS等インターネットを活用した組織化等を提言した。中村正敏日放労委員長は、デジタル経済における新しい組織化について、産業、会社、個人の各レベルにおける持続可能性の視点から、ディーセントワークに基づく労働の概念の問い直しが求められていると提起した。

カン・ヨンベ韓国KHMU教育宣伝部長は、「高齢化が進み介護人材が不足する中、組合員拡大の機運は高まっており、組織拡大に注力している。SNS等を通じたデジタル化時代に対応した組織化が課題だ」と報告した。リン・シューフェン台湾CTWU執行委員は、中華電信の子会社「宏華会社」へのアウトソーシングによって雇用危機に直面したものの、会社との協議により解決した経験を挙げ、デジタル経済においても労働者の権利擁護と代弁という組合の基本理念と存在意義は変わらない、と地道な活動の重要性を訴えた。

「労働の未来未来に向けて労働者はいかに備えるべきか」のセッションは、ウンUNI Apro地域書記長が導入報告を行い、「デジタル化による変化や雇用代替は不可避だが、労働者がいかに包括的で公正かつ持続可能な方法で変化に対応し、長期的な雇用可能性(エンプロイアビリティー)を構築できるかが鍵だ」と強調した。安藤賢太UAゼンセン流通部門執行委員は、深刻な人手不足に直面する日本の流通産業におけるAIの活用事例として、レジの無人化や無人店舗、ロボットによる接客、気象データ分析を利用した効率的な発注等を紹介し、AI活用により産業全体を高度化させ、生産性と労働価値を向上させるためにも、産業の未来を創造できる人材育成を推進すべきだと述べた。谷知美損保労連中執は、損保産業や組合員を取り巻く環境変化や多様な価値観に対応するため、組合員自らが働き方を考え行動することが重要だとして、損保労連が推進する「めざす働き方」の実現に向けた取組みを紹介した。

ピーター・チョイUNI Aproインターン(仁川大学)は、技術革新による失業が一定程度発生することは避けられず、社会全体の問題として解決するための一つの方策として、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の可能性を提起した。UBIは、政府が収入・仕事の有無に関わらず基本所得を無条件に全ての市民に支給する制度で、年金や生活保護等、既存の社会保障制度に比べ透明性が高く、行政の負担軽減、貧困削減効果といったメリットがある一方、働く意欲の喪失やインフレを引き起こす懸念といったデメリットも指摘されている。世界では試験的な導入も始まっており、格差が拡大し非正規労働者が増加する中で、一選択肢として検討の価値があるのではないかと提言した。続く質疑応答では、韓国の政権交代による今後の労働政策面での期待感や、日本の正規・非正規労働の格差、UBIの課題等について質問やコメントが出された。

閉会式では、フォーラム参加者は満場一致で共同宣言を採択した。第7回フォーラムは2018年に日本で開催する予定で、労組だけでなく社会パートナーを招待することが確認された。合わせて、韓国メディア労組/KBS労組及びMBC労組への連帯、香港の団体交渉法復活闘争への連帯を表明する声明を採択した。


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