第6回UNI Apro東アジア労組フォーラム

第6回UNI Apro東アジア労組フォーラムが、2017年10月26~27日、台湾・台北の中華電信本社体育館で開催された。日本、韓国、台湾、香港より136人(うち女性21人、女性参加率15%)が出席し、「第4次産業革命の時代に、包括的な成長を遂げるために」というメインテーマの下、報告・議論を行なった。日本からは、12加盟組合より総勢48人(うち女性17人、女性参加率35%)が参加した。

開会式では、ホスト国・台湾のUNI加盟3労組代表、中華電信社長等から歓迎挨拶を受けた。松浦昭彦UNI-LCJ議長は、フォーラム開催の準備に尽力した台湾の3加盟組織に感謝を述べ、「政労使の対話を通じ、我々の未来は我々が創るという意気込みでデジタル化のメリットを最大化し、デメリットを最小化する取組みを始めよう」と、東アジアにおいて建設的かつ有意義な意見交換ができることを期待した。

まず各国の最近の「政治・経済・社会的課題への対応」を共有した。日本については金子晃浩UNI-LCJ副議長が、先の衆議院議員選挙の結果を報告すると共に、労働力が不足する中、日本経済の持続可能性を高めるためには生産性の向上が喫緊の課題であり、政府の「働き方改革実現計画」の下、労働組合としても長時間労働の是正や多様な働き方への意識改革を推進していること等を説明した。韓国、台湾、香港からも、急激な少子高齢化、労働人口の減少、長時間労働、非正規労働の増加、男女間格差、若年労働者の失業問題等、類似の課題が挙げられた。韓国からは、労働組合や市民による「ろうそく革命」によって10年近く続いた保守政権を打倒し、革新系政権の下で労働者寄りの政策へと転換を図っていく決意が述べられた。一方、中国返還後20年が経過した香港では、団体交渉権をはじめとする労働者の基本的権利が侵害されている苦境が報告され、連帯支援が要請された。

「デジタル化の、雇用と仕事への影響:企業、産業、国レベルでの対応」のセッションでは、リウ・シーハオ銘伝大学教授が基調講演を行った。特にクラウドワークの増加により、多くの企業は新規採用の必要性がなくなり、雇用・労働形態の変化により、従来の労使関係の対象外の労働者が増加する。また、プライバシーの保護も課題であり、インターネットにアクセスすることにより個人情報が流出するリスクが高まっていると警鐘を鳴らした。梅原貴司全印刷委員長は、デジタル化による、日本の労働者や労働法制への影響について分析し、テレワークの普及等により、勤務時間や勤務場所の自由度が高まる反面、長時間労働が懸念される点や、複数企業に所属する場合の雇用・労使関係に課題を提起した。渡辺由美子JP労組書記次長は、支払審査業務やコールセンター業務へのAI(ワトソン)導入事例、作業負担軽減のためのロボットスーツ導入事例について紹介した。技術の進化により、労働力不足や労働時間短縮等、組合員が働きやすい環境づくりに役立つと期待するものの、働き方や労働力の在り方、価値観も大きな影響を受けることから、柔軟な対応が必要だと述べた。

韓国の、キム・ヨンスKPWU労使交渉部長は、無人郵便局等のAI導入事例や物流網の改変に伴う人員削減への反対、韓国政府による第4次産業革命への対応策について報告した。コン・クワンキュKFIU副委員長は、金融部門におけるフィンテックの拡大等、急激なデジタル化への移行状況と金融労働者の雇用危機、労働組合の対応について、シティ銀行の店舗閉鎖問題を例に報告した。台湾のハミルトン・チェンTPTSEU執行委員は、公共放送部門のデジタル化に関する投資及び労働者教育が不十分であることを懸念した。香港のキャロル・チャンRCCIGU委員長は、政府主導で進む小売業におけるデジタル化によって、雇用削減や返品不可能という消費者へのサービス低下等の弊害が発生していると指摘した。

「デジタル経済における組織化」と題するセッションの導入報告として、柴田謙司情報労連書記長は、日本に200万人以上存在するクラウドワーカーの現状について、2016年12月の連合による調査をもとに報告した。収入面に不満がありながらも、時間や場所を選ばず働ける点に魅力を感じている労働者が多いが、半数近くがトラブルを経験している。今後求められる対応として、政府による更なる実態把握と法整備、個人加盟ユニオンの設置、SNS等インターネットを活用した組織化等を提言した。中村正敏日放労委員長は、デジタル経済における新しい組織化について、産業、会社、個人の各レベルにおける持続可能性の視点から、ディーセントワークに基づく労働の概念の問い直しが求められていると提起した。

カン・ヨンベ韓国KHMU教育宣伝部長は、「高齢化が進み介護人材が不足する中、組合員拡大の機運は高まっており、組織拡大に注力している。SNS等を通じたデジタル化時代に対応した組織化が課題だ」と報告した。リン・シューフェン台湾CTWU執行委員は、中華電信の子会社「宏華会社」へのアウトソーシングによって雇用危機に直面したものの、会社との協議により解決した経験を挙げ、デジタル経済においても労働者の権利擁護と代弁という組合の基本理念と存在意義は変わらない、と地道な活動の重要性を訴えた。

「労働の未来未来に向けて労働者はいかに備えるべきか」のセッションは、ウンUNI Apro地域書記長が導入報告を行い、「デジタル化による変化や雇用代替は不可避だが、労働者がいかに包括的で公正かつ持続可能な方法で変化に対応し、長期的な雇用可能性(エンプロイアビリティー)を構築できるかが鍵だ」と強調した。安藤賢太UAゼンセン流通部門執行委員は、深刻な人手不足に直面する日本の流通産業におけるAIの活用事例として、レジの無人化や無人店舗、ロボットによる接客、気象データ分析を利用した効率的な発注等を紹介し、AI活用により産業全体を高度化させ、生産性と労働価値を向上させるためにも、産業の未来を創造できる人材育成を推進すべきだと述べた。谷知美損保労連中執は、損保産業や組合員を取り巻く環境変化や多様な価値観に対応するため、組合員自らが働き方を考え行動することが重要だとして、損保労連が推進する「めざす働き方」の実現に向けた取組みを紹介した。

ピーター・チョイUNI Aproインターン(仁川大学)は、技術革新による失業が一定程度発生することは避けられず、社会全体の問題として解決するための一つの方策として、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の可能性を提起した。UBIは、政府が収入・仕事の有無に関わらず基本所得を無条件に全ての市民に支給する制度で、年金や生活保護等、既存の社会保障制度に比べ透明性が高く、行政の負担軽減、貧困削減効果といったメリットがある一方、働く意欲の喪失やインフレを引き起こす懸念といったデメリットも指摘されている。世界では試験的な導入も始まっており、格差が拡大し非正規労働者が増加する中で、一選択肢として検討の価値があるのではないかと提言した。続く質疑応答では、韓国の政権交代による今後の労働政策面での期待感や、日本の正規・非正規労働の格差、UBIの課題等について質問やコメントが出された。

閉会式では、フォーラム参加者は満場一致で共同宣言を採択した。第7回フォーラムは2018年に日本で開催する予定で、労組だけでなく社会パートナーを招待することが確認された。合わせて、韓国メディア労組/KBS労組及びMBC労組への連帯、香港の団体交渉法復活闘争への連帯を表明する声明を採択した。


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